2021/08/04 のログ
ご案内:「九頭竜山脈 山中の温泉宿」にエレイさんが現れました。
エレイ > ──九頭竜山脈のとある山の麓付近にある、やや寂れた感のある小規模な温泉宿を、男は訪れていた。
ロケーション的に立ち寄りやすい場所ではあるものの、あまり目立たない隠れ家的な
建物ゆえか客は殆どおらず、人気もあまり感じられない。
食事を済ませ、ひとっ風呂浴びようと露天風呂まで足を向け、脱衣所で服を脱ぎ
タオル一枚を携え、浴場へと足を踏み入れて。

「いつもの旅籠の温泉もいいのだが、たまには違う風呂も楽しんでみるのが大人の醍醐味」

などと得意げに独り言ちながら、目前に現れた露天の岩風呂を眺め回す。
見慣れた旅籠のそれとは違う趣に、表情を緩めて。

「あっちよりは出会いの期待値が低いが、まああそこら辺はしょうがな──て、おや?」

その視界に、先に湯船に入っている人影を捉え、男は意外そうに目を丸めた。
てっきり自分以外は居ないものだと思っていたので驚きだ。
そう思いつつ、タオルを腰に巻くと湯船にゆるりと歩み寄って行き。

「……やあやあドーモッ。湯加減いかがですかな?」

と、緩い笑みを浮かべながら、片手を上げつつ気安く声をかけてみた。

エレイ > その後どのようなやり取りがあったかは、当人たちだけが知るところで──
ご案内:「九頭竜山脈 山中の温泉宿」からエレイさんが去りました。
ご案内:「聖剣の安置所」にロブームさんが現れました。
ロブーム > その荒野は、不思議と魔物が出ない事で知られている。
荒野を走るのは、動物だけ。
だが、荒野に在る事を許された動物ですら、荒野の中心、聖剣が安置された台座とそこに続く道では戦意を失う。

此処は近くの村人達から、『聖剣の安置所』と呼ばれる場所だ。
此処には、一つ言い伝えがある。

『心美しき乙女、聖剣に試されるべし。
節制と自制の美徳証されし時、聖剣は土の鞘より放たれる』

この荒野には、幾人もの乙女が――聖女が、勇者が、或いはその仲間が訪ねた。
だが、誰一人この聖剣を抜く事はできなかった。
聖剣の試練を、誰一人突破することができなかったのだ。

今もなお、その聖剣は荒野にある。
台座に描かれた、"金色の眼"に見守られながら――

ロブーム > その台座には、時折黒いローブの男が現れるという。
ただ現れるだけで、何もせず、台座に腰かけているだけ。
それは、聖剣を狙う悪魔とも、聖剣を守護する精霊とも言われているが。
今、正に聖剣の傍に隠身の魔法を使って隠れて座る男からすれば、そのどちらも的を外してはいる。

「(ただまあ……これは人間の愚かさとは別の問題であろうな。
"聖剣を守護する悪魔"など、長くとも百年の時しか持たない者どもには、埒外の存在だろう)」

彼は、この聖剣の試練を司る悪魔である。
本来、聖女や清廉なる者を堕とすはずの悪魔が、何故その様な事をするのか。
それは、この聖剣の元の持ち主――とある聖女と契約を交わしたからである。

『私の聖剣を貴方に預けます。貴方が最も価値を認めた女性にこの剣を渡してください』と。
その聖女自身も、自分が堕とした聖女だったのだが――まさか、その様な要求をされるとは思わなかった男は、うっかりその要求を呑んでしまったのである。

「(とはいえ、美しき心を持つ者を誘うには、中々良い餌なのも事実――だ)」

故に、男は待つのである。
この聖剣を引き抜くに相応しい、聖女を――

ご案内:「聖剣の安置所」からロブームさんが去りました。