2021/04/11 のログ
■イスルス > グラスを磨く間、奥では話がはずんでいる
外ハネの、アシンメトリーの上から畳むように潜ませた耳に聞こえる会話の声色
不審なものがあれば、すぐにでも飛んでいくだろう
しかしそれは無さそうだった 今頃は、景気の良さと共に、お気に入りのワインを片手にしているのだろう
肥えた酒精腹を詰めた、黒ずくめのストライプスーツが、椅子の上で機嫌よく酒精を詰める
その姿がどうであれ、主であることに変わりはない
金属杯 銀杯 グラス 磨き終わり、最後に手を拭うとやることが本当になくなってしまった。
店の中で主以外に給仕をするつもりもなく、支配人が好いブランドワインが入ったのだと、イスルスに確認してくる
これをふるまってもいいだろうかと聞くのは、耳で向こうの様子を知れているせいだ
機嫌よさげな主の様子を想えば、サプライズには喜ぶだろう
コクッ
一つ頷くだけで、支配人とは意思疎通ができる
ワインを片手に持っていけば、ハイブラの中に店を構えたこと、それからの発展を願うように酒精が皆にふるまわれる。
ワインを振舞う際、傍に赴き、栓を開けたそれらの渋い香りを嗅ぐことは勿論、行ったものの
用が無くなればまた戻っていく。
こうなっては、用心棒としての役割しか残らないだろうか
時折ドアベルの向こうへ視線をやり、入店してくる客の匂いを嗅ぐくらいしかない。
■イスルス > やがて主の帰宅する頃となる
黒いロングコートを片手にそばを訪れ、肩にそっとはおらせた
後は道中 葉巻の煙に塗れながら馬車の中で過ごすだけだ
勿論、護衛として 傍仕えとして。
ご案内:「港湾都市ダイラス 富裕地区 リストランテ・ダイラス」からイスルスさんが去りました。
ご案内:「女子修道院」にヴェレニーチェさんが現れました。
■ヴェレニーチェ > ―――――少女が王都に来てから、数日が過ぎていた。
祖母が伝手を頼って見つけてくれた、安全なはずの逗留先が、
女子修道院の皮を被った体の良い売春施設だったことを知って、
それでも、少女はまだ、その修道院に身を寄せている。
他に行く当てもない、伝手があるわけでもない。
それにここ二、三日は、ひどく熱を出して動けなかった。
ようやく起きあがれるようになった今宵、皆は寝静まっているのか、
それとも皆が、どこかで客を取っているのか。
誰に見咎められることもなく、少女は敷地の片隅に佇む、小さな礼拝堂へ辿り着いた。
重く軋む木製の扉を、体重をかけるようにして押し開き、
ぽつぽつと照らされた蝋燭の明かりだけが、か細く揺れる堂内へ。
扉を自重で閉じるに任せ、絨毯の敷かれた中央の通路を進み、
祭壇の前で、そっとひざまずき頭を垂れた。
両手を胸の前で、祈るかたちに組み合わせる。
幼い頃から何度も唱えた、夕べの祈りの言葉。
けれども今宵は、それが自分に相応しいものなのか、
ちくちくと胸を刺す痛みは、きっと、罪悪感と呼ばれるものだ。
身体の傷や痕跡は、ひとつ残らず修復されている。
それでも、記憶は、心は、決してもとに戻らないものだから。
「………おかあ、さま。
わたし、……悪い子に、なってしまったんでしょうか……」
■ヴェレニーチェ > 祈りとも、自問とも、懺悔ともつかない、か細い声に応える者はない。
それでも少女は、ただただ頭を垂れたまま、誰かに向かって語り続ける。
―――――――その晩、少女は与えられた部屋には帰らなかった。
朝の光がステンドグラスを透かし、幾重にも帯を描く頃。
少女は聖堂の中、ひとり泣き疲れた子供のような顔で、
眠りに落ちていたという―――――――。
ご案内:「女子修道院」からヴェレニーチェさんが去りました。