2021/03/26 のログ
ご案内:「九頭竜山脈 山中の温泉宿」にエレイさんが現れました。
エレイ > ──九頭竜山脈のとある山の麓付近にある、やや寂れた感のある小規模な温泉宿を、男は訪れていた。
ロケーション的に立ち寄りやすい場所ではあるものの、あまり目立たない隠れ家的な
建物ゆえか客は殆どおらず、人気もあまり感じられない。
食事を済ませ、ひとっ風呂浴びようと露天風呂まで足を向け、脱衣所で服を脱ぎ
タオル一枚を携え、浴場へと足を踏み入れて。

「いつもの旅籠の温泉もいいのだが、たまには違う風呂も楽しんでみるのが大人の醍醐味」

などと得意げに独り言ちながら、目前に現れた露天の岩風呂を眺め回す。
見慣れた旅籠のそれとは違う趣に、表情を緩めて。

「あっちよりは出会いの期待値が低いが、まああそこら辺はしょうがな──て、おや?」

その視界に、先に湯船に入っている人影を捉え、男は意外そうに目を丸めた。
てっきり自分以外は居ないものだと思っていたので驚きだ。
そう思いつつ、タオルを腰に巻くと湯船にゆるりと歩み寄って行き。

「……やあやあドーモッ。湯加減いかがですかな?」

と、緩い笑みを浮かべながら、片手を上げつつ気安く声をかけてみた。

エレイ > そうして温泉での一時は過ぎてゆき──
ご案内:「九頭竜山脈 山中の温泉宿」からエレイさんが去りました。
ご案内:「檻のなか」にルッカさんが現れました。
ルッカ > 小動物を入れるにしては大きすぎる、大型の獣のためなら小さすぎる。
人間の子供を入れるのなら、やや手狭だがちょうど良い、そんな大きさの檻のなか。
黒革の首輪を嵌められ、からだの前で両手首を縄でくくられた白く小柄な人型が、
涙目で鉄格子の向こう、暗がりを窺い見ていた。

「うう……ん、これ、痛いです、ぅ……首も、苦しいですぅ……」

先刻から、思い出したようにガジガジと、手首を縛る縄をかじってみたり、
くくられたままの両手で首輪をカリカリ引っ掻いたりしているのだが、
どちらも嫌になるほど頑丈で、やりすぎれば爪や歯の方がボロボロになりそうだった。
檻のサイズが仔ウサギ用ではなく、人間用、であるらしいのが救いと言えば救いだが、
果たして自分は売られるのか、それとももっと怖い目にあわされるのか。
わからないから訊ねたいのに、訊ねられる相手も見当たらない。
仕方なく、また、ガジガジと―――――白く大きな前歯を、縄に食い込ませる。

ルッカ > ガジガジ、ガジガジ。
かじり続けていても、縄が綻びほどける気配はなく。
次第に顎が疲れてきて、あが、と口を離して肩を落とし、

「はぁ……」

溜め息をひとつ、ころりと檻のなかで寝転んで。
背中を丸め、膝を抱え込むようにして目を閉じれば、
すぐに睡魔の手招きに負けてしまう。

すよすよと、のどかな寝息が聞こえ始めるまで、さして時間はかからず――――――。

ご案内:「檻のなか」からルッカさんが去りました。