2021/02/10 のログ
クレス・ローベルク > 「まあ……ピンチの時に現れる友人こそ、本当の友人っていう謂もあるから」

喋るのに夢中になっていたが、そろそろ意識して食事を片付け始める。
白身魚も、後1/3を切った。パンはまだ半分残っているが、これはトマト煮のソースを拭うために残してあるから、これでいいのだ。

「それを言われると言葉に詰まるが、一応外ではそういう事はしないという契約だよ、うん。俺も闘技場の外では基本やらないし。
っていうか、流石したたかというか何というか……でも、逆恨みには気をつけなよ?」

いくら仕事仲間とは言え、女友達と同僚なら流石に前者が大事であるし、そもそも知り合いの女の子にセクハラするような奴に情けをかける謂れはない。
尤も、だからといってわざわざ去勢スキルの被害者を増やす理由もないので、自分も後でそれとなく広めておくか、とは思うが。

「まあ、空を飛ぶってのはやっぱ本能的に怖いものがあるよねえ
俺はまあ、そっちの方はある程度恐怖心を抑えられるんだけど」

何せ、今は魔導飛行機などない時代である。
空を飛べるのは一部の魔術師ぐらいであろう。
男とて、それに本能的な恐怖を感じないわけではないが……この辺はある程度、実家での訓練が活きているのだろう。

「まあ、絡繰りが解ってるからこそ儲けられる種類の物もあるけど。まあ、そう考えるのが一番安全だよ」

あ、でも俺に賭けたら7割で増やすから、試合観に来た時は宜しくね!賭けの時のオッズも給料査定の内だから!と、忘れずに剣闘士としてアピールする男。
せせこましいが、こういう地道なアピールが、明日の収入増に繋がるのである。

「何なら、簡単な観光地リストを作るなり、観光案内するなりしても良いよ?」

と言いつつ、食べ終わったトマト煮の、ソースをパンで拭って食べ始める男。
そろそろ、食事も終わる頃。
後は、お会計か、或いはもう少しゆっくりするか、だが……。

ティアフェル > 「そんなもんかなあ……借りが多すぎるのも考えものだけど」

 あんまり返済する機会がなく溜まっていくばかりの借り。本格的に借用書でも突きつけられたらどうしようもないなーと頬を軽くかいて考え。
 残った苺の赤をなんとはなしに眺め。

「っへー……? 場合に依るとかじゃないのー?
 どっからでも恨んできやがれ、返り討ちよー」

 とことん屈しない。正義は我にありとでも云ったような過剰な自信を持ち、胸を張る。
 去勢と一時的な不能処理はまた違うものだが、思いこまれているのなら修正するのは面倒くさいので放置。

「なんだか、振り落とされても自己責任なんて印象があるのよ……。わたしは飛べないものとして達観し大地をゆくわ」

 めっちゃ高速移動とかも酔いそうになるので非常時しか受け付けたくない。人間分を超えた速度は経験するもんでもないとちょっと頭が固いのでしみじみと主張していた。

「あぶく銭は身に付かないものだし、賭け事なんて、おやつのあみだクジぐらいにしとくわ。
 んー……一応わたしとクレスさんって友達だし、臨時救護とは云え闘技場に関係してるから賭けれないんじゃないかなー……。あと、そういうのって八百長疑惑かけられたら面倒だからよしさないよ」

 特にスリルを求める性分でもない。やはり手堅い考えは抜けずに平和なところだけで賭けとも云えない賭けくらいに留める所存。
 試合の賭け、と云い出す相手に肩を竦め、7割とか具体的な数字出すとトラブルの元だぞと人差し指を向けた。

「えー。それは助かるなあ。たまには観光もいーかも。お勧めスポットは知りたい!」

 気軽にそう申し出てくれる声に弾んだ声を出した。観光なんてここ数年ゆっくりやってない。方々回る冒険も観光のようなものかと物見遊山で回ることがないものでよろしく!と手を挙げた。
 ぱく、と残った苺を口に入れて甘酸っぱい風味に目を細め。

「あ、時間大丈夫? 明日はオフなの?」

クレス・ローベルク > 「俺は借りは返す主義だけど、貸しは忘れる主義なのさ。
っていうか、本当にあんまり気にしないでいいよ?
単にこっちが放っておけないから助けてるだけなんだからさ」

命の恩人であると言えばそうなのだが。
だが、別に見返りを期待している訳でもない。
それは勿論、相手は女の子。下心はあるが、しかし果たされない事も知ってるわけで。

「そりゃ、逆恨みで襲ってくる様な子はお仕置きも兼ねてそういう事もするけど。でも、俺は外じゃいちゃいちゃしたい派なんだよ。
……いや、本当に不味くなったら、大声出すなりしなよ?

正直、彼女が無理やり犯されている所を想像できないが。
数人ぐらいに囲まれても、顔中に青痣を作りながら勝利している所が容易に想像できてしまう。
とはいえ、それは印象であり、実際ではないだろう。
故に、そこはちょっとだけ真面目な顔で。

「あー、まあ。そもそも訴えようにも、落ちたら地面のシミだろうしなあ」

どれぐらいの高さを飛行するのか知らないが、少なくとも二階や三階の高さでは済むまい。
死んだ人間には賠償金は受け取れないのだ。

「あー。そうかそういうリスクはあるか。
……まあ、無断でハンデつけたり一方的に有利な裁定が下ったりする闘技場で今更だとは思うけど」

とはいえ、ティアの側に変な悪名がつくのもまずい。
言ってはなんだが、男とは違い、彼女は綺麗な身分である。
そういう疑いは、お互いなるだけ引っ被らないほうがいいだろう。

「良いよー。刺激は足りないだろうけど、ゆっくり出来る場所を教えたげる」

さて、彼女が好きそうな物はなんだろう。治療の神様とか居たかな等と記憶を参照していたが、彼女に時間を聞かれると、

「こっちは大丈夫だよ。どうせ明日もオフだし。
剣客仕事はキツイけど、その分休みも多いのさ」

ティアフェル > 「そ? そりゃーありがたいけど、悪いわねえ。んー……確かに友達なのに、困ってて助けないってのはないかも知れないけど……。
 あと、いちいち貸しだぞっていうのもセコイしね」

 友人同士となれば気を遣い過ぎるのも水臭いけれども。
 我ながらこうも度が過ぎると、と悩んでしまうのはしょうがない。
 返せる隙があれば返そうと心に誓い。

「ほれ。するんじゃん。なんと云おうがやったら一緒。
 バカいっちゃいけないわ。大声なんか出したら――片づけなきゃいけないのが増えるだけじゃない」

 悲鳴に釣られて参戦してこられても困る。ふる、と首を振り。
 路上でたまにボコボコにされて転がっていることもあるという、野生のヒーラー。負ける時は負けるが助けを呼んでも普通こない。ふざけた時か犬が出た時にしか云わない科白だと笑った。

「高所恐怖症ではないけど、重力に無理に逆らおうという意思はないわ」

 落っこちたら即死必至。うんうんと肯いてわたしはキビキビ歩くと引き締めた表情で。

「そりゃー。クレスさんは納得尽くだからいーだろーけど。わたしまでズルしてるなんて思われたくないわよ」

 ズルをされてもしてはいけない。いかさまも八百長も手を出したくないし、それにかかわってると思われたくもない。
 ズバズバとはっきり物を云って堂々とする厚顔さは充分持っているが。

「んんー。楽しみー。たまには景色のいい所でぼうっとするのもいーわねえ……。
 そしてごはんは一人で食べてもおいしくないわ。クレスさんが行く時便乗するね」

 そこの名物料理なんかを楽しみにして味わう際は一人では味気ないだろう。一人旅は気楽だが食事で淋しくなるものだ。

「そっか、じゃあもう一杯飲むか……あ、そー云えば送り狼作戦なんだっけ? 全然呑ませないよね、挫折はっや」
 
 ふむふむと肯いて何か追加、と考えるがふと思い当ってけらけら笑いながら揶揄った。

クレス・ローベルク > 「そうそう。まあ、日頃頑張ってる君への、神様からのご褒美だと思えばいいさ。実際――あー、いや。何でも無い」

と、今まで軽妙な語り口だったのが、そこで一度途切れる。
口が滑った、という風情で、いかんいかんと水を店員に頼む。
そして、出てきた水をごくごくと飲んで。

「うんまあ、ぐうの音も出ない訳じゃないけど、無罪判決は勝ち取れなさそうだ。
……まあ、それはそうか。闘技場なら、俺が高確率で気づくんだが」

流石に、路上でのファイトには気づけない。
ダイラスだろうと王都だろうと、基本的には叫んでも助けは来ない。
野生のヒーラーというのは、正に彼女にピッタリの称号だ。食物連鎖の中で逃げ回る兎的な意味で――まあ、兎も時折、首を狩ったりするが。

「そりゃそうだ。これは俺の方が悪かったな。忘れてくれ。
……しかしまあ、何というか、そういう所がそこら辺の女の子とは違う所なんだよなあ」

無謀もしないが遠慮はしないというか。それは勿論、こちらが友人である気安さもあるだろうが。
勿論、見た目の綺麗さもあるのだろうが、そういう気の強さも、或いは男を呼ぶ要因なのかもしれない。
実際、男もその口であるし。

「お。良いねえ。勿論。もし、行く機会があったら連絡するよ。
……シスター服をレンタルしてくれる店を探しておくべきか」

等と、半分冗談、半分本気で言う男。
実際、彼女のコスプレなど、そうそう見れる物ではないし、出来れば見たい気持ちはある。
意外と似合いそうなんだよな、というのは男の直感だが――ともかく。

「うおーい、そこでそういうからかいはナシだろ」

もともと、飲みに誘うための方便である。
カウンターの後ろで、あらまあ、と頬に手を当てている店員もいるが、彼女には仕事に専念して欲しい。
ともあれ、本来ならば適当な所で解散のつもりであったが。

「……じゃあ、そうだな。折角だし、ちょっと勝負しない?」

と言って、ポケットのベルトポーチからトランプを取り出す。
適当にショットガンシャッフルしつつ、言うことには。

「お互いトランプのカードを引いて、高い数を引いた方が、その数値だけショットグラスで、ワインを一杯呑むってのは、どう?
勿論、限界が来たら止めてもいいけど、次に会った時にしこたまネタにされるって感じで」

まあ、飲み会でやるような遊びである。
本来、こういう店ではやらないが、お互いその辺の酒量は弁えていると信じている。
度数も軽めのワインだし、余程の数を引いても店に迷惑をかける事はないだろうと。

ティアフェル > 「あら、ご褒美をくれてるのは見ず知らずの神様じゃなくって、クレスさんでしょ?
 ぇーなにー…? 云いかけてやめるのなしよー」

 ふと途切れた声に、不服そうに唇を尖らせる。
 云いかけてやめたということは何か悪口か、と勘繰ったような半眼にすらなり。

「友達のよしみで執行猶予つきの有罪くらいにしといてあげる。
 とはいえ、いつも闘技場にいる訳じゃないでしょ? お休みも多いんだしさ」

 当てにして悲鳴を上げるほど楽観的にはなれない。し、それは正しくもないだろう。
 悲鳴を上げるとしたら、犬出没時だけだ。その場合はその後襲われる可能性があっても誰か呼ぶ。

「営業も程々に、ね。
 ………そ? そうなのかな……。ま、きっと実家でサルに揉まれてたせいね……」

 普通と違うところがあるとしたら、それは弟達のせいということにしておく。無駄に気が強いのは地だという説が有力だが。

「わーい、楽しみ。よろしくねー。
 ? 修道着? なんで?」

 観光するのにそんなものが必要なのか?と思惑には気づかず不思議そうな顔で疑問符を浮かべる。
 そういうしきたりだと云われれば信じてしまうかもだが、真実を知った時に血を見る。

「っはっはっは、送り狼返り討ち、なんてね」

 朗らかに笑いながらカウンターの奥の反応に、「いやねえ」と云いながら彼の方を指差してけらけらと笑声を零し。

「勝負? 
 ――ふーん……うん、いーよ。やってやろーじゃない」

 トランプを取り出して不意に提案された勝負、にきょとんと眼を瞬いたが内容を聞いては。ふむと肯いてそれから、に、と口角を上げて乗った。
 ショットグラスなら小さいからなんとかなるだろうと踏んで。

「負けないぞー」

 と云うと負けフラグになりそうだが。軽く腕まくりして。

クレス・ローベルク > えー、何?と不服そうに唇を尖らせる少女を「まあまあ」ととりなす。
実際、言うのは滅茶苦茶恥ずかしいというか、言ったら変な空気になりそうだ。
或いは、言えば持ち帰りまでは行かずとも、それなりにナンパらしき事が出来るかもしれないが……話そうとするだけでサブイボができそうだ。

「まあ、そりゃそうだね。どうしたって一か八かって感じになっちゃうな」

常に守ってあげられるという訳でもないのだ。
最悪、襲われて、"事が済んだ"後で、彼女の訃報を聞く事になりかねないし、今のは蛇足だったな、と反省。

「環境が人格に及ぼす影響を考慮に入れても、流石に無理があると思うけど……。まあ、悪い事じゃないし、そういう生き方も自分の道と受け止めて、切り開いていくと良い……主に拳で」

実際、そういう性格だからこそ付き合いやすいというのは多分にある。
彼女のその竹を割った様な性格で救われた人も多いだろう。
……が、そういう事を直接言うのが照れくさいので、結局オチを付けてしまうのが、男の悪いところである。

「ん?いやほら。折角観光行くんだし、形だけでも成り切ってみたくない?俺神父服とかめっちゃ着てみたいけど」

等と、さらっと嘘を言う男。
とはいえ、言ってから「そういえば着たことないなあ」と思ったのは事実だが。
基本、コスプレは女の子がするものという認識だが、ティアと二人ならコスプレとしては様になるだろうし、アリだなと思う。

「……さてさて。それじゃあ、本当に返り討ちといくかどうか、いざ勝負、と」

ショットガンシャッフルからヒンズーシャッフルに切り替え、最後に何度かリフルシャッフルしてテーブルの上に置く。
ティアに、「一応、イカサマ防止で一回カットして」と頼んだ後、

「お互い、勝敗が予想できないように、引いたカードは見ないで伏せる事。良いね?」

そう言って、一枚カードを引いて、そのまま滑らせる様に伏せる男。
[1d12→10=10]
ティアフェル >  なんだか分からないが云いかけてやめるのはよしてくれとやはり不満顔を晒す。口を割らないならやむをえまい。

「やっぱり、自力でどうにかしないとね」

 襲われたところで、不能スキルのお蔭で最悪のケースは回避できるが、腹癒せにボコボコにされることはままある。けど、なくあってほしい。ふ、と肩を竦めて苦笑いし。

「………失礼ね。うちの家庭の内情、クレスさんは知らない癖に決めつけるなんて間違ってる。
 今拳を行使したくなってきたんだけど、どうしよう?」

 むう、としかつめらしく眉を寄せ、そしてもっともらしいことを口にした後で、拳を握って、「これどうしようか」と相談を持ち掛ける。今切り開きたいなあと笑いかけもして。

「……いや、民族衣装を着て見よう、なら分からないでもないけど……なんてーか、罰当たりね。
 でも、クレスさんのその恰好で行くより目立たなくていいかも知れないけど……」

 普通その職業でなければ着るものではないのは事実だが、観光で来てみようという発想はなかった。よく考えるもんだね、と半ば感心して見やり。

「よーし……潰してやる」

 云われた通り、切られたカードをさらに自分でも一度切って、見ないでとのことにこくりと首肯を見せ、続いて一枚引いて伏せる。

 そして同時に捲ろうか。
[1d12→11=11]
クレス・ローベルク > 「中々難しいよなー……君の場合」

何せ、フリーのヒーラーである。
戦闘能力はあるとはいえ、徒党を組まれてはどうしようもないし、逃げるにしても限界がある。
そもそも、彼女の性格上、自分から騒ぎに首を突っ込む可能性まであるのだ。手助けにも限度がある。

「ふ。良いのかい。俺と戦った結果、殺人犯として官憲に捕まるのは君の方だぞぉ……。証人もきちんと店員がいるんだからなァ……!」

下衆い顔で言うが、普通に勝てないと自白している様なもんである。
現実問題、本気で戦った結果勝つのはクレス……の様でいて、しかし彼女が本気で暴れまわったら、男とてそうそう制圧は不可能である。
男の方に殺すつもりがないという条件下では、案外ティアとは5:5であったりする。

「その時は懺悔して許してもらおう。
何、君は日頃の行い良いし。神様も緩めの罰にしてくれるさ」

苦笑して、神様の量刑をどんぶり勘定で語る男。
神聖都市への案内人としての資質が問われる所である。
「まあ、悪目立ちが気になるなら、私服なり正装で行くよ。一人の時はともかく、パートナーが居る時に制服ってのも変だしね」と一応提案しておいて。

「……それじゃあ、行くぞ……いざ、オープン!」

開かれるカード。こちらのカードは、10。
やばい、と思って、開いているであろう彼女のカードを見やる。
彼女のカードは……絵札のJ。つまり、11。

「おーっと俺の勝ちだぜティアちゃん。
これは早くもお持ち帰りコースが見えてきたんじゃないかなあ?」

等と、最後だけ少しイントネーションを上げて煽る男。
勝負事の時は口が悪くなるのは、闘技の時だけではないらしかった。

ティアフェル > 「大丈夫よ、元気に生存している」

 修羅場はすでに経験済みだ。
 なんとかなると深く考えずにまあまあ楽観的に、ぐっと親指を立てた。伊達にゴリラではありません。
 大分死にかけたけど。

「大丈夫だよー? 死ぬ前にヒールするからぁー」

 何故にやられる気満々なのかは知らないが。にこにこ笑い掛けながら握った拳をもう一つ増やし、両の手で、しゅ、しゅ、とシャドウボクシングの真似事。
 瀕死くらいで回復させるから死にません、とどうにも不遜な発言。

「じゃあクレスさんはアウトね。神様は厳しい天罰を下すわ」

 日頃の行いがいい奴がこんなことを口走るだろうか。ああ、お気の毒に…と目元を拭う所作までする。
「制服だったんだ……」茫然とした呟き。驚愕の真実である。てか、なんでオフまで制服で歩き回ってんの、という顔で見ていた。

「っぁあー……そーだ、これ、弱い数字出さなきゃなんだー……きっとわたしの勝負根性が擡げて大きい数へといざなわれたのね……」

 開かれたカードの結果に、負けたーと頭を抱えて唸る、ぐぬぬと歯噛みしては、

「持って帰れや、不能にしてやるからなぁぁ~……」

 恐ろしい呪いの言葉を吐きながら、ショットグラスとワインを瓶で持って来てもらうと、手酌で注いで、ぐび、と規定通り干し。

「はい! 次々! しっかり切ってえぇー…… これだ!」

 負けてる場合じゃないぜと気を取り直してまたカードをしっかりシャッフルし、はい、と渡してそちらにも一回切らせると、一枚選んで伏せようか。
[1d13→9=9]
クレス・ローベルク > まあ、あまり気にしていると、楽しい酒の席が陰鬱な雰囲気になるので、その辺りは気にしないことにする。
楽しい事だけに目を向ければ人生はハッピーだ。そうできなくなった時に現実が一気に来るが。

「それはもう拷問する人の台詞だよ……!
っていうか、そういう事を言ってるから余計にゴリ……おっと危ね!」

そこで言葉を切ったら余計に"マジ"っぽさが出るのだが、勿論わざとである。
この辺りの漫才の呼吸は、伊達に一年の付き合いではない。尤も、ドツキ漫才に発展する可能性もあるのだがそれはそれである。

「おーっと、さりげない褒めに対する厳しい対応にクレス選手挫けそうです!だが、クレス選手まだ膝を突きません!」

制服というのは言葉の綾で、実際は何を着るかは各人の自由なのだが、男の場合は尤も解りやすいトレードマークとして、この服を着ている。
仕事着、の方が正しかったかと思うが、後の祭りである。

「うん。まあ、別に強い方でも良かったんだけどね。
っていうか、君のポジティブさって偶に論理を超えるよな……」

小さい方が敗けだったら、「私の謙虚さが裏目に……!」とかいい出すのだろうか等と考える男。
ワインは後で割り勘かなーと思いつつ、男らしくぐびと飲み干すのを見やる。

「すげえ、色気がなさすぎて持ち帰る気が段々失せてきた……。
対ナンパスキル上級者かこの子」

ともあれ、彼女の勢いにやや押されつつ、カードをカットして彼女に渡す。そして、こちらもカードを――
[1d13→11=11]
ティアフェル > 「あらやだ人聞きの悪い――まあその通りですけど。
 ゴリ力を発揮して欲しいのは君かなぁ~?」

 白々しく言葉を切って見せる様子に一発くらいは殴っても許されると思えてならない。ツッコミとして。ボケには突っ込まなければ。拳を鼻先すれすれの寸止めまで突き上げて目が笑ってない顔でにっこり笑みを向けた。

「早めに折れた方が楽になれるよ」

 緩く首を右に傾け、提案の形で人差し指を立てて見せる。積極的に人の心を折ろうとするヒーラー。
 どちらにせよ、仕事着を毎日着て歩いてるのはどういうつもりかと。問題は何もすり替わっていない。

「いちいち難癖つけないで。
 ふん、色気のある子が良ければ他を当たりなさいよ。わたしにそんなものある訳ないでしょ、どーせ」

 まるでどっちでも自分のいいように解釈すると思われている様子に憮然。眉をしかめて、そのしかめたまま、一気飲みした。
 それから指先を伸ばし二人とも引いたカードを同時にオープンすると、

「よーし、一勝一敗ね」

 9の時点で駄目かと思ったが、11を引いてくれた。なんだろう、この後で引いた方が高い数字出す確率。
 ともあれにやりと口角を歪めるようにして笑みを刻みながら、ショットグラスにワインを注いで渡した。

 ――そんな調子で勝負は続いていくのかどうか。夜も更け始めた頃にどちらかが潰れた姿が見られるのかも知れない。

ご案内:「隠れ家的レストラン」からティアフェルさんが去りました。
ご案内:「隠れ家的レストラン」からクレス・ローベルクさんが去りました。