2020/12/22 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区 鍛冶場工房」にスピサさんが現れました。
スピサ > カンッ カンッ カンッ カンッ
鉄を一定のリズムで打ち続ける音は外でも鳥の鳴き声程度には聞こえるだろうか。
来客以外は一人の空間
火と鉄に向き合い、金床の上で重いハンマーを軽々と振り上げ、打ち下ろす。

真っ直ぐに伸ばされた細身の刃は、鋳造性とは違い、金属の方向を整え、鍛え、不純物を削っていく。
眼帯を外したサイクロプスの単眼は、熱で変貌した白いくらいに熱を持った金属の塊
色を、音を見分けながら表面が剥がれ落ち、熱が消えていくと白が赤へ変わっていく。
そして赤から鋼色へ戻るたびに、再び炉の中へと潜ませ、変形するための熱を持たせる。

真っ直ぐな細身 両刃にするための幅 そして薄さ
大きな単眼が認める形になるまで、グローブに包まれた両の手が緩むことはない。
叩くたびに火花が 鉄の産声が鳴り続ける。

依頼や顔見知りの冷やかしでもない限り、鍛冶師は鉄を打つことした知らない世界に没頭するだろうか。

「ふう。」

炉に再び潜ませ、傍にあった革袋から水を呷る。
季節は冬だというのに、汗をにじませ、頬には煤が黒く一筋。

ご案内:「王都マグメール 平民地区 鍛冶場工房」にグランツさんが現れました。
グランツ > その男は、工房に訪れてもしばし沈黙を保ち、貴女の仕事を見つめていた。
身の丈2mにも匹敵する偉丈夫。
豪奢な装飾をまとい、貴族であることが容易に伺える、
しかし、オールバックにまとめた黒髪の下では、厳粛に表情を変えることなく、唇を釣り上げたまま微動だにすることなく、貴女の仕事を見つめていて、

グランツ > 貴族というには体格に恵まれた、しかし
出で立ちからしてそれなりの身分である男は、
やがて後を追うように現れたメイド二人の同行を片手で制し

「もし。もし。ミス・スピサ。貴女に仕事を依頼したく参ったのですが。

職人の方々の成すべき御業は心得ているつもりです。
もし、今時分不都合である、というのであれば、
ここにメイドを控えさせますので、お話を聞いていただければ幸いです」

静かに、ゆっくりと。
貴族のようないで立ちにしては、高圧的というにはほど遠い
隆々とした身にしては慎ましい物言いで貴女に言葉を投げかけるだろう。

スピサ > 鉄を打つ音
金床で切っ先を向け、形を確かめる単眼。
火が燃え揺らめく空気の流れ

工房内の明かりは決して明るすぎることはない。
薄暗い もしくは夜のように演出するところさえある
そうすることで炎の色をより見分け、鉄の熱を見分ける。

この工房も日向の時間といえど、工房内は炉の火が一番強いと言えるほど。
外から差し込む日明かりは鉄を打つ現場には入っていない
向こう側の生活空間にこそ、ランプが天井から下がっている。

そうして鉄を打つ時間に終わりがくる。
細く、両刃にするための形状が整い、焼き入れが始まった。
水を張った剣が浸かれるほどの細長の水場

やっとこに摘ままれたそれ
呼吸を整え、スピサが水に瞬時に着ける

―――“ギュブウウウウウウウウウウウウッ……!”―――

熱と冷の反応する音
鉄が最も硬くなっていく音が聞こえた。
鉄が割れる音もせず、引き上げるといまだ煙を上げながら、細身の正確な剣が出来上がる。

「……。」

鼻息で、肺から溜めた吐息が漏れた。
この瞬間に、台無しになることすらある。
そして、この硬くなった剣を、敢えてもう一度生ぬるい火にかけることで、粘りを生み、脆さを消す
そのための青い火種から燃え上がらせている、別の炉で焼き戻しを行う。

すべての工程を終え、研ぎや柄などの制作に移ろうと思っていたときだった。
単眼は、そこでやっと工房に黙って眺めていたであろう益荒男と呼べそうな体躯の男がいたことに気づく。
況してや、こちらの状況が落ち着くまで敢えて無言で控えていた。
その心遣いに気づかないほど、鈍くはない。

「ぁ……。」

そして、それは顔見知りでもなんでもない、知らない顔だ。
薄青の肌の上から直接着ている裸オーバオールでも関係なしに、紫色に染色された革の眼帯を身に着け、瞳を隠す。

「ま、待たせてしまったみたいですみません……。」

手ぬぐいで汗を拭い、相手の前に現れる。
体格のいい相手だった。
自身も種族性の筋質や、女としては長身なほう
しかし相手は、見るからにわかる筋肉。
身分の良い身なりだが、重量武器を扱うか力に富んだ攻撃が得意だとわかった。

「気遣い、ありがとうござい、ます……。」

そうして、貴族だからというわけではない。
丁寧な物腰と気遣いに腰を折って改めて礼を述べる。
顔を上げれば、いらっしゃいませから始まり。

「初めまして、ですよね……?
 スピサです……何方かに、聞きました……?」

ミスをつけて名前を呼んだ相手
誰かの紹介だろうか
とある将の鎧を制作したことはあるものの、貴族向けでは決してない
質実剛剣と言葉で表せるのが、スピサの売りであった
華やかさや雅さではない。

しかし、却ってこの御仁は、質実を求めてきたのだろうとはわかっている。

グランツ > 「これは無作法でした」

貴族であろう男は胸に手を当て、職人の貴女に頭を下げて

「グランツ=ウィラクィスと申します。
魔物の研究に勤しんだ末に、資金援助をしてくださる貴族の方々の好意で爵位を得ておりますが、
元は平民の出であります。

ミス・スピサ。常より己の技法の研鑽に邁進されるお方。
こと街において名が広まりつつ貴女の名を耳にし、足を運ばせていただきました。

……件の将の鎧。貴女の作。拝見させていだきました。
戦乱、内紛、それ等から離れて久しいこの国の、上の方々はさぞ、見目以上に内包された技量に魅了されたことでしょう」

その言葉の後に、姿勢を正し、ともすれば貴女の目線より上から、沈黙を以て見下ろして

「故にこそ、貴女に依頼すべきだと確信いたしました」

その言葉の後に、指を鳴らす。ただのフィンガースナップにいたらず、破砕音じみたそれと共に、メイドが三層、計九つに至るレアメタルのインゴットを運び込む。

「お話だけ聞いていただくだけでもインゴット三つ、
お受けいただけるなら前報酬に三つ
完遂の際にはこのインゴット全てを報酬として。

……お話だけでも聞いていただけば、幸いです」

スピサ > 職人気質とはいえど、客は選ばない
求めに応じ、剣を打つ。

適当に切れる剣を作ってよ などという者はこないのだから
相手は貴族であり、且つ平民からの別口での叩き上げ
スピサは少し首をかしげて見せる。

「はい、よろしくお願いします、ウィラクス様……
 研究者……?」

貴族故に、言葉遣いは互いに丁寧なやりとり。
最初に感じた印象とは違い、首を勝ち取る、領民を守る類ではなく、研究と述べた相手。
そして鎧を確認し、且つ自身の造った物が認められていると聞き、嬉しくもあり、やや戸惑う。

冒険者や猛者ではなく、戦離れした貴族が認めるとは皮肉な流れだろうか。
しかし、煌びやかな剣ではなく、敢えて質の剣になにかしらの新鮮さを感じたのかもしれない。
両手を腹部で絡ませ、指先をもぞもぞとさせながらも、確かなことはある。

この益荒男は確認し、認め、欲している。
ならばこの瞬間は皮肉でもなんでもない。
研究気質なだけの、猛者であることは、間違いなかった。

革の眼帯で一つの大きな瞳を覆う
しかし向こう側の見えるスピサはジッと相手を眺め、礼を言う。

バチンッ!

一つの指鳴らしは、軽快なものではなく弾き飛ばすような火花の指音。
出てきた報酬はレアメタルインゴット
希少金属の塊を魅せられ、思わず一つを手に取った。
ジッと、その金属の塊を眺める。

交渉をゴルドではなく、希少金属を持ってくる辺り、クスッと小さく笑みを浮かべた。
まるで物語の鍛冶師のような流れだ。
そして、金ではなく金属を渡すということは、これを所蔵するもよし
売るもよし、そしてなによりこの金属で挑戦し、且つ成功した武器を売るという流れもできる。

「気前が良すぎるって言われません、か?」

口下手なスピサの声が、引っ掛かりながらも弾んだ。
笑みを浮かべるまま、インゴットを確認に差し出した従者へと返しながら。

「こちらへ、どうぞ。」

そして生活空間の中へと案内していった。
丁寧に削り出しにした木のテーブルと丸太椅子。
この益荒男の重量も支えられるだろう。

金属杯に、前に報酬代わりにと置いていった酒好きの齎した、高い焼火酒
注ぎながら、自身とウィラクス氏へと差し出し。

「それで……武器でしょうか、防具でしょうか?」

武器を話し合いながら造る
二人の話し合いが始まった。

スピサ > そして、体格を図りながら望まれた物への話しは進み、後日へと。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 鍛冶場工房」からスピサさんが去りました。