2020/12/07 のログ
ご案内:「平民地区民家」にエルファラさんが現れました。
ご案内:「平民地区民家」にロイスさんが現れました。
■エルファラ > 料理人、と主張しながらも兵士をリンチにしたり、魔物を狩ったりどちらかと言えば冒険者みたいな事をしている女は。
「サブは格闘かなんでね。」
どう考えてもサブが料理人と思われているが、注釈する様に告げて。
「そう? 家に来るのを躊躇したからてっきりあらぬ噂を立てられるのが厭なのかと思ったわ。」
見た所独身の様だし、冒険者としての信用は女の家に出入りした所でビクともしないのは、判る。なんだか微妙に噛み合わないなあと小首を捻りつつもまあ、変わった人であるのは認識済みなので深く考えず。
「料理用だけど悪くないでしょう。そのワイン。」
出したワインは無名の醸造所の物であるが。値段の割に味は悪くない。
それを呑んでいれば多少は間も持つだろうと調理に掛かり。
手の込んだ物を作りたくはあったが、時間が掛かってしまうのでさっと仕上がるパスタを、謎の怪音を響かせて後。客の待つテーブルへと運んで来た。
………が。
何とも形容しがたい、微妙に薄暗く発行している奇妙な色の麺料理は……うにょうにょと動いていた。
怪異・ムービングパスタである。
■ロイス > 「へえ、格闘家。それは凄いな……二足の草鞋って簡単に言うけど、ジャンルが違う二つの技能を修めるのは大変だろうに」
街の兵士を殴り倒せるレベルとなれば、殆ど中堅冒険者級と言っていい。
その年齢で、そこまで達するには相応の努力があったはずだ。
「どっちかっていうと、君の方が心配だったんだよ。
嫁入り前の女の子が男を家にあげたと噂が立ったら、嫌だろう?」
害のない、やがて立ち消える噂であろうが、それでも暫くは残る類の噂だ。
人によっては気を病んでしまうし、そうでなくても不愉快には違いあるまい。
尤も、エルファラの気の強さがあれば、吹き飛ばしてしまいそうでもあるが。
「うん、そうだね。銘柄は知らないワインだけど……やっぱり自分で選んだのかい?」
調理用のワイン一つにも、きちんと気を配っているのであるならば、出てくる料理も期待できそう。
そう思い、今日は珍しく運のいい日だなあ、と暢気に構えていたのだが――その笑みは、料理中の効果音に曇り、出てきた料理を見ると引きつり歪んだものになった。
取り敢えず、まずは手でこの謎の料理らしき物体の周りの空気を扇いで匂いを嗅いでみる。
料理している最中にエルファラが倒れなかったという事は、少なくとも気体性の毒は入ってなさそうだが……
「その、食べる前に料理の名前と、使った食材を聞いてもいいかな?
ほら、食べる前にどんな物を食べるか分かってた方が、より美味しく食べられそうだし、さ?」
と、無理に作った笑顔で彼女に聞いてみる。
せめて、使っている食材を聞いて、覚悟を決めておきたいと、そういう理由から。
■エルファラ > 「格闘家はやりたくてやってる訳じゃなくって、家業だから強制的に習得しただけだから。
あたしは飽くまで料理人。」
やや苦笑気味に首を傾けて、生まれながらの実力者の様な立派な物でもないのだと補足した。
「はー……、考え過ぎじゃないの?
お里はどこなのかしら。よっぽどお堅い地域だったんでしょうねえ……」
良く分からない顔をして世間体を重んじる、他国では一般的な考えをこの乱れ切った国に持ち込んでいる様子に呟いた。
やっぱり、他国では普通でもここいらでは立派な変わり者に違いないと。
「ええ。さすがに味の判らない物は使えないし、不味い素材を使うと美味しい料理は出来ないでしょう?」
正論だが、出てきた料理がヤバ過ぎて悪い冗談の様に響いてしまう。
今日一の笑顔で、ニコニコと上機嫌そうに料理を持ってきた女は、質問を受けてさらに笑顔を深めて。
ことん、と客人の前に置いた皿。ミミズの様にうねっていて青黒い色彩で素材の正体がまず判らない、食べ物なのかと疑いたくなる代物。
「これは、魔王烏賊のパスタよ。珍しい食材何だけどちょうど手に入ったから是非誰かに振る舞って見たかった処!
烏賊墨を使ってあるからちょっと色味は悪いけど……旨味は十分で美味しい筈よ。」
美味い不味いよりも、ビジュアルが怖すぎますが。
そして、火を通した烏賊の身は百歩譲っていいとして、なんでただのパスタまで蠢いているのか、科学的な説明はつかない。
召し上がれと笑顔で、対面に座って見守る姿勢。あたし食べない。観てる。そんな風体。
■ロイス > 一応、王都生まれ王都育ちだぞと内心むくれていたが、今考えるとなんと牧歌的な会話であっただろうか。
この謎のパスタという現実を前に、先走って走馬灯まで見えそうになってきたが、
「そ、そうだよね。わざわざ不味い食材を使ったりとかはしない、よね?」
ニコニコと上機嫌で笑う少女を見て、取りようによっては疑っている様な疑問を言ってしまう男。
そう、これは食材で出来たものである筈で、だとしたら食べられない訳がないのである。
魔王烏賊という通常明らかに組み合わさる筈のない二単語が、微かに不安を煽るが。
「な、成程。烏賊墨なのかこれ。
……呪いか?それとも、何かそういう魔術的な物質が含まれてるのか……?」
魔術師ならぬ男の知識では、このパスタに対する合理的な説明はつきそうもなかった。
……魔術師の知識でも合理的な説明がつかない可能性を一瞬考えたが、それは思考の奥に埋めておくことにした。
「……頂きます!」
彼女が食べない姿勢である事に気づきもせず。
男は、パスタを串刺しにして――巻いて食べると、何か逃げそうな気がしたので――口に運ぶ。
■エルファラ > 「まあ、美味しくない物も美味しく調理するのも料理人の腕だけどね。」
美味しい食材をヤバい料理に変異させてしまう、それこそ黒魔術師の様な料理人はどうしてだか得意げな様子で答えた。
うにん、うにん、とムーブしているパスタが怖過ぎる。黒々とした色合いもまた不吉過ぎて、恐らくこの冒険という難局を日常的に乗り越えている職業の人でないと裸足で逃げ出すだろう。
しかし、さすがは本職冒険者と言えよう。逃げたいのはやまやまだったかも知れないが、立派に挑む様を、非常に良い笑顔で見守る。
「どうぞー。お代わりもあるからね。沢山食べて行って頂戴。」
さらに不吉な単語を織り交ぜてパスタを口に運ぶ姿を眺める女は善意の塊の様だった。
――味は、咀嚼されながらも蠢く触感で、多分それどころじゃないだろう。
烏賊は吸盤が吸い付いて来て舌を圧迫するし、墨は少し焦げた風味だし、何より物凄く磯臭い。生臭い。
ニンニクの風味が寧ろそれを消さずに助長しているのがまた不思議だ。
魔物か何かには受けそうな味。魔界の食べ物みたいな。
■ロイス > 「成程。じゃあ、つまりこれも美味しくなってると、そう信じて……」
前と言ってる事が矛盾するが、とにかく美味しいという保障が欲しくて、良いように相手の言葉を解釈した男。
そして、食べてみれば、口の中に広がる不快な風味、食感。
良く味わえば、烏賊墨の風味を感じることは出来なくもないが、味わおうとすると強烈な生臭さをセットで感じる事になるので、全くそんな気にはならない。
男は、正に苦虫を噛み潰した様な表情で、エルファラの方を見る。
「その……ご馳走してくれるという君の善意に対して、こんな事を言うのは非常に申し訳ないのだけれど、」
と、遠慮がちに言った後、
「これ、お客さんに出すのはやめといた方が良いよ、うん……ぶっちゃけ、まずい。ちょっと吐きそう……う、うっぷ……うぇぇぇっ……」
吐き戻しそうになるのを、口に手を当てて無理矢理えづく程度に抑えつつ。
ワインで無理矢理押し流し、頑張って飲み込もうとしている。
例え、不味かろうとも、二口目をいけるか解らなくとも、料理人の前で吐き出す様な真似だけは避けるべきだと、男の最後の良心が踏ん張っている。
■エルファラ > 何故この破壊料理人の言うそんな無茶な事を信じてしまえるのか、お人好しは恐ろしい。
きっとモンスター相手には美味と賞賛されただろうが、生身の人間にはそんな事は絶対不可能に違いなく、寧ろよく食えた物だと言えるが。
期待に輝いて感想を求めるようにそちらを見ていた目が、苦み走った視線に、一気に色を失くす。
そして続いた感想と、言葉より雄弁な態度に、さらにむっと顰め切った面をして。
「何て失礼な人なの!
もういいわ! 帰って頂戴!」
家に上げて料理を振る舞ったら不味いと吐かれた。
この経緯だけ見れば、こちらに非はないのだが……。
だが、実際魔界の料理なのだから仕方がないと言えばないけれど。
本人はせっかく作った物を貶されて勿論ブチ切れである。
塩をまきかねない勢いでガタン、と立ち上がり、憤然と言い放った。
■ロイス > 「ちょ、ちょっと待った……」
何とかごくん、と飲み込んで、それから言葉を紡ぐ。
確かに、怒って然るべきだが、しかしこちらにも言い分がある。
グラスに残っていたワインを全部飲み干して、口直しをしてから。
「ふぅ……。うん、ごめん。まずい、は酷すぎた。
でも、実際これは、普通の人が食べるのは無理だ。
墨が焦げてるのは、多分この食材を扱うのに慣れてないからだろうけど、生臭さはそう簡単には取れなさそうだし」
と、諭す様に言う。
親切にしてもらって、嬉しい。それは事実だ。だが、この料理を美味しいという事はできない。
だから、せめて改善に繋がる感想をと、そういう理由。
何より、この味を他で振る舞ったら、エルファラの料理人の前途に傷がつきかねない。
「だから……その、もう一回。今度は臭みを取るのと、墨が焦げないのに注意して、作ったらどうだろう。
多分、そしたら大分一般受けすると思うんだ。食べさせるのは、俺でなくてもいいからさ」
と言って。男は、彼女の反応を見る。
勿論、怒るのは無理もない。
だから、彼女が納得できないのなら、帰ろうと、そう思いつつ。
■エルファラ > 「は? 何ですか?」
絶対零度の眼と声で、立ち上がって腕組みをし、見下ろす姿勢で圧を掛けてワインを飲んで口の中を落ち着けてから何事か言い出す言葉を少々待った。
事に依っては殴り掛かりかねない闘志が渦巻いていた。
「ですよね?
いきなりそれは無いんじゃないの? 大人としてどうかしら?
アンタは常識めいた事を主張する割には非常識ではなくて?」
メラメラとメドゥーサもかくやと言う様な空気を滲ませていたが。
人間界で料理をするのは諦めて魔界のシェフを目指すのが正解に違いない女は、一応、改善点を込めた意見に耳を傾け。
「……臭みと、焦げ、か……確かに墨は焦げやすいし色的に焦げても判らないから……ちょっと火力が強すぎたかも知れない……烏賊墨はそのまま和えるには癖が強すぎたかしらね……。」
むかっ腹立たせて、ヒグマと化しそうだった女は。料理の事となると真面目な顔になり、顎に手を当てて思案顔でブツブツと独りごち。
「判ったわ。貴方が失礼な人と言うのは揺るぎないけど、貴重な意見として受け止めた」
■ロイス > 圧を掛けられても、男は意外と動じていなかった。
申し訳なかった、とは思っていても、彼女自身に対し怯えるつもりはなかった。
今更、そんな素振りを見せるのは、かえって彼女に失礼だ。
「うん。それは本当にごめん……」
幾らなんでも作ってくれた相手に言うべき事ではなかったと、後悔して頭を下げる。
勿論、吐きそうになったりするのは、体の反応なのでどうにもならなかったろうが、それでも言葉の選びようというのがあった筈だったと。
エルファラが自分の意見を吟味するのに胸をなでおろす。
彼女を怒らせた分の何分の一かでも、男は返すことができたのだと。
「うん、ありがとう。……その、何かお詫びできないかな」
と、男はおずおずと切り出した。
彼女の事を思うなら、このまま帰るのが良いというのは解っているが。
しかし、このまま帰っては、それこそ彼女の損が大きすぎる気もして。
「俺は、冒険者だから……多分、君の料理に必要な食材を取って来ることは出来ると思うんだ。
さっきはああ言ってしまったけれど、君の料理には個人的にも期待してるんだ、だから」
要らない、と言われればそれまでだ。
だが、彼女の料理人になりたいという夢は応援したいし、何より彼女の料理そのものには大きな可能性を感じるのだ。
あんな、訳の解らない料理を作れるなら、例えば魔物の料理なんかも、作れてしまうのではないか、と。
「君の料理を、手伝わせては貰えないかな……?」
と、もう一度頭を下げるのだった。
■エルファラ > 胆の据わった冒険者相手には、多少凄んだ所で余り意味はなかったらしい。
別に脅すつもりはなかったというか、単にムカついていただけだったが。
「喩えそう思っていたとしても次からは言葉を選んで頂戴ね。」
お怒りモードも素直な謝罪を受けて、流石に張り倒そうと思うまではなく。
一応受け入れた。
言われたくなければ美味い物作れと普通は言うものだが。
「……お詫び?
はあ、まあ……悪気はなかったんだし、無神経なのは今後治して貰えばいいし。そんなに気にしなくてもいいんだけど。
……食材ねえ。自力で狩って来れるけれども……。」
サブとよりほぼメインジョブの格闘技で、食えそうなモンスターを狩り上げて調理と言うのはもう着手しているが、協力したいとまで言われては悪い気はしない。
腕に期待しているという意見も中々料理人心を擽り。
「――いいわ。そう言うのなら折角だから協力して頂こうかしら。独りじゃ手に負えない魔物の肉も手に入れられそうだし。
お願いするわ、ロイス。」
一回りは年下の筈だが、年功序列の思考もないらしく、対等な立場の相手の様だ。ツッコミも入らないので改正はされない。
手伝いをする、と申し出たからには、助手とポジショニングされていた。
■ロイス > 「うん。気をつけるよ。」
今回は、金を払ったわけでもないのであれば、その上で失礼な物言いをするのは良くない、というのもあった。
それに、料理人であれば味見をした筈であり、であれば彼女の味覚を否定したという意味もある。
……まあ、以上の点が頭から吹っ飛ぶほど、不味かったのも否定はできないのだが。
「あ、自力で狩ってるのか……。でも、魔物の分布や習性とかは、多分君より詳しいし、料理に使えそうな魔物の討伐依頼があったら、君の所に持って来れるし。結構役立つと思う、よ?」
此処で振られるのも格好悪いので、必死で自分のアピールポイントを繰り出す男。
無駄なプライドだが、やはり冒険者として要らないと言われるのは堪えるのだ。
だから、お願いすると言われたら、ほっとして。
「うん、ありがとう。これから宜しく、エルファラ」
冒険者として、年上でどうしようもない大人も、子供でありながらロイスをゆうに凌ぐ実力者も腐るほど見てきた。
だから、年功序列という考え方があまりない。自分よりも年上の者に敬意を払うこともあるが、基本は実力主義である。
「あ、そういえば、残った料理、どうしよう」
まだ、一口食べただけなので、当然皿にはまだムービングパスタが殆ど残っているが……?
■エルファラ > 今日会ったばかりの他人に料理を出して不味い、と開口一番言われる。
それは何が悪いと言えば不味いのが悪いのだろうが。
いい気がするかと言えばそんな訳はない。
けれど、謝罪は受け入れたし、さらに食材調達の補助をしてくれると言うなら留飲を下げて。
「そうね、確かにそうだわ。
プロの冒険者に頼った方がスムーズな場合は多い。力を貸して貰うわ。」
何でまたそんなに協力的なのかはサッパリ判らないが。
当初から変わり者と認識していたので、違和感は薄い。
裏があるのではと思わないでもないが。
「お礼まで言うなんて可笑しな人ね。
こちらこそ宜しく。
――それは貴方次第じゃないの? 食べられないなら自分で棄ててくれる?
それが責任と言うものよ。」
お残しされた料理に関してはやはり根に持っているらしく。にーこりと目が全く笑ってない笑みを向けて、ぴくぴくと蠢いている魔界のパスタを指差した。