2020/10/04 のログ
エイガー・クロード > 頭を下げて、全力で謝罪を行う目の前の者の姿
人によってはその必死さに心打たれることもあるのだろう
だがこの男――エイガー・クロードは、今はそんな心の余裕などなかった

「なるほどなるほど。戦っててここに落ちてしまったと」

とはいえ、事情は理解できるし、不可抗力ともいえよう
目の前のこの冒険者はおそらく、実力はあるのだろうがソロ
であれば、そういう用意もできるはずもない

「そうねぇ。…運が悪かった、わねぇ。うん、そうねぇ……」

しかし、今の彼は冷静に分析ことできれど、感情的になっている
なんせ自分の家なのだ
こんなにもボロボロにされて、どこにもぶつけないなんてことができるだろうか?

「じゃあ、あなたの体で支払ってもらおうかしら」

誤解招き率100%の言葉を吐くが、その顔は満面の笑みを浮かべている
しかしその背後には、修羅が見えた

紅月 > 彼の声は、静かだ。
それはそれはもう凪いだ海のように、無理矢理平らかにしたかのような声色。
だが、頭を下げているからわかる、彼の表情を見ていないからこそヒシヒシと伝わる…同情的な台詞の裏に、怒気。

「…っか、身体で…です、か……」

案の定、思わず顔をあげて後悔した…悪鬼か羅刹か、故郷の同士もビックリな鬼が其処には居らっしゃった。
化粧をしている辺り、般若かもしれない。

「……いやぁ~、そのぅ…さすがに、奴隷堕ちとなると困っちゃうな、なぁんて…」

尻すぼみになりつつも、何とか少しでもマシな方向へと交渉せねば。
本来なら彼の要求は基本的に飲むべきなんだろう。
だがしかし、身の安全や今後の人生がかかってくるとなると話も変わってくる。
…この国の貴族の提案する『身体で払え』がマトモである可能性など猫の額しかないことくらいは、さすがに理解しているつもりだ。

エイガー・クロード > 「えぇ、そうよ。だって……」

頷きながら周囲を見渡して、そこにあるいろいろな品々を見る
粉々になった彫刻品、ボロボロに汚れた絵画、足元で崩れているシャンデリア
確かに使ってないが、どれも値打ちは張るものだった

「あらあら、確かにあなたに全責任を負ってもらうのは筋違いだとはわかってる。
けれどね、だからといってあなたに全く責任がない、なんて言わないわよね?」

腕を組み、笑みはそのまま、しかし修羅は確かにそこにいた。
彼自身、自分がそんな風に取られるような言葉を吐いてるのか自覚はないのだ

「あなたがどんな仕事してるかはわからないけど、おそらく冒険者でしょ?
ならこの家を元に戻すまではずっと私が雇うわ、文句ある?」

言外に断ったらどうなるかを匂わせる。
ただ、その言葉は確かに怒りを感じる。
その視線は紅月の肉体を観察している。
しかしなんだろう……嫌らしさは、そこまで感じない。
不思議なことに、その視線はどこか……そう、観察しているような……。

「……それに、こういったことしてるだけあって、イイ体してるじゃないの」

ペロリ、と上唇を舐めるその姿は、化粧もあってどこか妖艶だった。

ご案内:「設定自由部屋」に紅月さんが現れました。
紅月 > ◆紅月撃沈につき、一旦クローズ◆
ご案内:「設定自由部屋」から紅月さんが去りました。
ご案内:「クロード領の屋敷」にエイガー・クロードさんが現れました。
ご案内:「クロード領の屋敷」に紅月さんが現れました。
紅月 > 「……、…」

あ、ハイ、そうッスね……いや、ぅ、言わないッス、言えないッス…
時折相槌を打ちつつ、心の中で土下座しつつ、若干ふるふると震えながら冷や汗を流す…が。

「…えっ、雇ってくれるの?私を?
バフート逝きでもタダ働きでもなく?」

きょとん…と。
心底驚いたような呆けた表情を向ける。
彼が匂わせた言葉にも気付いたのか気付いていないのか…ぱちくり、と、ほぼほぼ初めてきちんと彼を見る。
服装からみて騎士だろう…あのマントも王城内で見た覚えがある、たしか貴族階級の者に下賜されるものだ。
艶やかな濡れ羽の髪は毛先にいくほど青みがかって、その奥にはぬばたまの瞳。
おそらく元が良いのだろう、中性的な美、美…美オネェ様だ。
サッと観察しつつよくよく考えれば、これまで彼が言った言葉も至極当然なものばかりで…何というか、品の無さを感じない。

「……、…ソッチをご所望で?」

…品の無さは感じないが、異性からイイ体などと言われれば疑心も浮かぶというもの。
ましてや己はどんなに必死に鍛えても身体が絞まるだけで筋肉が育ってくれない、非常に残念な体質…思わず微妙な表情と視線を返し、両手で胸元を隠して。

エイガー・クロード > 「はぁ?なんでこんな魔物をソロで倒せるあなたにそんなマネするのよ。
有事の国の戦力をむざむざ無駄にさせるわけないでしょう?」

何言ってるんだこいつは、と言いたげな視線と表情をして肩をすくめる。
そう、巨大な魔物は、それだけで脅威だ。しかもここまで伸びていた存在を、倒してくれた。
そこは分かってるが、それはそれとして家の事は領民たちへの見せしめのためにもこういう処置が領主として必要ということだ。

「資材とかはこっちが買うから、修理が終わるまで三食風呂はそっちがやってくれる?
その間この家の寝室適当に使っていいから。
まぁその寝室も潰れちゃったんだけど」

頭が痛そうに籠手で覆われた右腕を額に当てて、二階建てで横に広い我が家の、二階がほぼ全損しているサマを見上げる。
寝室は二階にあった。つまりそういうことだ。
この目の前の冒険者に責任を負わせるのは忍びないが……まぁ雇う分には文句は言わせない。

それにウチに使用人いないし

「あら?そういうのしてくれるならいいけど、彼氏とか夫とか、もしくは彼女とか妻とかいる?
いるならそんなこと要求はしないし、いいわ。そんなのより家の事の方が大事だし」

はぁ、と溜息をつきながら。
確かにイイ体してるとは思うが、だからといってそんなことは毛頭考えていない。
というか、疲れててそんなことすることすら考えられない。

「とりあえず屋根だけでも今からなんとか応急処置しないといけないわね……」

この冒険者に背を向けて、どうするか考える。本当に家のことのほうが今は大事らしい。

紅月 > 「凄い、貴族さんがマトモなこと言ってる…珍しい」

思わずポロリと出た本音。
普段貴族と関わる職場が何かと無茶振りをさせられることが多いと言うのもあり、天然記念物でも見た気分だ。

「あ、ハイ。
ええと、炊事洗濯、掃除と修理と…」

まだ若干呆けている頭を動かし、指折り数えながら業務内容を並べてみる。
『家の事』『屋根』『寝床』
…とりあえずの優先順位は彼が嘆きながらつけてくれたようなので、ん、と背中を向けた彼に一つ頷いて。
古い古い言葉を唱え、紡ぐ。
両手の中に生まれた術式を宙へとあげれば、キラキラと光の粒子がのばした右手のひらから空へと昇り…パッと光の陣がいくつか広がった。
丁度屋根の傾斜にぴったりと重なり大穴に蓋をした其れは、魔法障壁と呼ばれる類いのものだ。
…本来は攻撃を防ぐために使われるものだが、魔力さえ切れなければ雨風ぐらいは余裕で防いでくれる。

「…玄関はさすがに目隠しになるものを用意したい所だけど。
急場くらいは凌げます、よ?」

さてどうだろうか。
新たな依頼人に笑顔を向けた。

エイガー・クロード > 「……まぁ、アタシがまともかどうかはともかく。至極当然のことしか言ってないわよ?」

この者が普段からどういう依頼を受けてるか、なんとなく察した。
同時に申し訳ないことをしたような気もするが、これも領主の務めなのだ。

「……あら、これは……」

見上げた天井に、何らかの陣が複数貼られていくのを見つめる。
これが今後ろにいる者の行ったことだとわかったのは時間がかからなかった。
さっきからずっと疲れたような顔をしていた騎士の貴族は、嬉しそうに振り向く。

「ありがとう!とりあえず今夜寝床で領民の家を借りずに済んだわ!
ここの領民のみんなは気がいいけど、さすがにそんな迷惑はかけられないからね。
多分修理はこんなことできるならそうかからないみたいね。
まぁ資材はこっちで注文していくから、少しの間よろしくね?」

近づいて、感激したように目の前の中性的な冒険者の両手を握る。
右腕全体に覆われた籠手と、薄い滑り止めと縄を握る用の黒い手袋とアームカバーをした左腕。
どこかちぐはぐだが、暖かかった。

紅月 > あっ、この人普通にイイ人だ…
彼のなんとも言えない表情に、こちらもまた察するものがあった。
ついついポロリした暴言に怒るでもなく、ごくごく普通のやり取りができる…そんな平民同士の"当たり前"が貴族に通じるとは限らないし、ちょっとした事での無礼討ちだってそれなりに聞く話。

「いえいえ、どういたしまして」

…穴を開けた犯人が穴をふさいだ事に感謝できるような人が、悪い人な訳がない。
どうやら良い依頼人に出会えたらしい。
存外可愛らしい彼の笑顔を眺めつつ、されるがままに手を握り返す。

「確かに、ちょっと泊まらせて~ってのは気まずいもんねぇ。
えぇ是非に、宜しくお願いします…えぇっと」

そう言えば名乗っていなかったな…と、ここでようやく気付いた。
まだ互いの手を握り合ったまま、とりあえず先に名乗らねばと口を開く。

「私はコウゲツ、果ての地にては紅の月と書きまして紅月と申しまする。
冒険者ギルド所属、クラン『愚者の旅路』のメンバーであり…一応、よそで客将なんかもしておりますの。
…御主人殿の名前をお伺いしても?」

もし彼が平民地区の酒場に行くことがあるなら、ウワサくらいは聞いたことがあるかもしれない。
…優秀な変わり者ばかりが揃う、ギルド所属の冒険者グループが存在する事を。

エイガー・クロード > しばらくこき使える臨時の使用人が手に入ったと思えば万々歳だ。
別に一人でしか住んでない豪邸だし、寂しい夜を過ごすこともない。
夜伽なんぞよりも一人の家じゃないという方が重要なのだ。

「えぇ、さすがにそれは領主としての面目が立たないしねぇ。
そりゃ、平民達と距離が近いって言うのもいいけど、逆に言えば他の領主たちからナメられかねないし」

はぁ、と憂鬱そうに溜息を吐く。あまり他の貴族との関係はよくないらしい。

「紅月、さんね。よろしく。……客将……。
……あぁ、爪弾き者ばかりの優秀集団って……」

それを聞いて脳裏に浮かぶ他の貴族や同僚の噂。
なるほど、確かに目の前にいるこの冒険者は非常に優秀だ。

「私はエイガー。エイガー・クロードよ。現クロード家当主で、ここの領主よ。
とりあえず日給これぐらいでどう?」

立てた指の数は、今回受けた依頼よりもずっと多かった。
羽振りがよいというべきか、オーバーというべきか。
まぁ少なくとも、それだけの資産は持っているということだろう。

クロード家というのは、ハッキリ言って聞いたことはない。
だが、王国から少し離れたこんな土地だ。少し辺境とも言える。
それでもここで見た領民は、みな、少なくとも生き生きとしていたように見えた。

紅月 > 「あー、貴族社会の何とやら…
面倒なアレコレが多いとか?」

詳しくは知らないし、知ったら巻き込まれそうだから当時は詳しくは訊かなかったが…以前ギルドの依頼人が愚痴を溢していたのを思い出す。
「いつもお疲れ様です」
と言うに留めるが、何だか頭を撫でてやりたい気分だ。

「あら御存知で…?
そうそう、みんな一芸特化だったりマイルールに生きてたり、へんてこりんで面白いんだよ!」

相手が己の所属先を知っていると気付くやいなや、まるでお気に入りのオモチャでも自慢するかのように嬉々として語る。
…自慢の言葉が全部ブーメランとして刺さっていることには気付いていないようだ。

「ふむ…えいがぁ様、エイガー様……
…へ、ぇえ……いいんです?そんな出しちゃって。
そりゃまぁ私はありがたいけど…家でちっこい子を色々育ててるし」

まずは彼の名前を舌に馴染ませようと、何度か呟いてみる。
発音しやすい名前で良かったと逸れた思考と視線は、彼の提示した日当の額に引き戻されて思わず二度見する羽目になるのだが。
ポンと出す額の規模がおかしい。
依頼1回の値段と日給ではそもそも形態が違うし、それなのに1日あたりこの金額となると…ちょっと、だいぶ、差が開く訳で。
「これが金銭感覚の違いかぁ…」
なんて遠い目をしながら溢し、何だか彼の金庫の具合が心配になってしまった。

エイガー・クロード > 「まぁ、そんなところよ。ありがとう、心配してくれるのね」

苦笑をしながら誤魔化す。言ったところでどうしようもないし。
でも、こういうことを軽くとはいえ理解してくれる人がいてくれるのは少し胸が軽くなった気がする。

「えぇ。結構噂になってるしね。へんてこなのはよく聞いてたけども……。
貴女を見たらよくわかるわ」

うんうんと頷いて何とも言えない温かい目で紅月を見る。

「うん、そうそう。ちゃんと言えたわね。
……ん、えぇ。ただし、ちょっと粗相があったら指一本ずつ日給が減るからね?
逆に増やすこともあるかもしれないけど……いいわね?」

家の資産は別に問題ない。ここの領民たちがしっかり税を納めてるし。
騎士としての給料もある、そして『家の仕事』も高額なのだ。
まぁ使うことはあんまりないからこんなに給料を出せるのだが。

「そう言えばあなたって女?男?」

紅月 > 一応、察しはするし理解もする。
けれどもこの国の其れに直接関わった訳でもないし、客将としてお呼びがかかる社交の場は基本的に片っ端から回避してきた。
…だからというのもあり、良くも悪くも彼の事を全く知らなかった訳だが。

「へぇ、ウワサかぁ~…え、よくわかる?
えぇ…そう、かなぁ…?」

一度不思議そうに首を傾げ…また、今度は訝しげに首を傾げる。
へんてこりん、なのだろうか…?
比較的マトモなはず、たぶんマトモだ…マトモ、かなぁ?
ちょっぴり自信なくなってきた。

「わわっ、1ずつ減るのは痛い!
はぁい…誠心誠意、お世話させていただきまぁす」

あわあわと狼狽え、ピシッと姿勢を正してみる。
が…次の彼の言葉に頬をぷくぅと膨らませるのだから、なんとも先が思いやられる話だろう。

「ちょ、っ、エイガー様ったら。
このバインボインが目に入らぬか~っ!」

寄せて上げるように腕を組み、胸を強調してみせる。
…男にもなれるが少なくとも今は人間の女で通している以上、どっちにもなれますとは言えない訳で。

エイガー・クロード > 「えぇ、まぁ。でも能力が優秀なのはよくわかるわ。
だってソロでアレを倒したわけだし……」

そう言ったところで思い出す。
ガーゴイルをどかさなければならないということに。

「…………アレもなんとかできる?」

不安そうに言いながらそう聞いて。
また一つため息を吐く。

「えぇ、しっかりお願いするわ。勿論、無茶な要求をするつもりもないわよ。
そんなことさせたら家の修理も遅れるだろうし」

常識的なことを考える。ちゃんとやることはやり、順序もわかってる貴族なのだ。
それにこれから領主の仕事も行う必要がある。
であれば、優先順位はしっかりと決めておかないと。

「ごめんなさいね。別に胸があるからって女とは限らない場合あるじゃない?
逆もまた然りだからね。でも、申し訳ないことしちゃったわね」

強調された胸を見た後、クスクスと口を手の甲で隠して笑う。
実に気品のある自然なサマだった。

「とりあえず今夜は寝る場所だけちゃっちゃと作って晩御飯お願いするわ。
材料は領民のみんなからもらえるから問題ないし」

そう言って、紅月の手を引いて、家の中へと上がっていく。

ご案内:「クロード領の屋敷」からエイガー・クロードさんが去りました。
ご案内:「クロード領の屋敷」から紅月さんが去りました。
ご案内:「帝国との暫定境界線」にエミネさんが現れました。
エミネ > 【継続待機中です】
ご案内:「帝国との暫定境界線」にセリアさんが現れました。