2020/09/01 のログ
ご案内:「妖精の森」にミミックさんが現れました。
ミミック > 夜行性の蟲に有るまじき行動を見せるのはミミックに分類される蟲型のモンスター。
時間はまだ太陽が直上近くに昇り、照りつける陽光が木漏れ日より草葉の積み重なり苔むす地面を明るく彩る時間であるのにその蟲は木から木へと飛び移り、獲物を探している。

そんな異常行動が許されるのは眩い太陽が木々の葉で遮られ、朝露が森の木々が蓄えた水分がその木漏れ日に蒸され、森にむせ返るほどに濃厚な緑の香りを広げているからである。

それにこのミミックにとって苦手な陽光を浴びてまで行動する利点が幾つかあった。
ひとつは夜と違い眼を輝かせ生物の体温を視認しても眼の輝きが気づかれ難いこと。
もうひとつはこの湿度とむせ返る緑の香りが甲殻を潤し、体臭を掻き消してくれること。
最後の一つは獲物が油断し易い時間である事だ。

他の個体であったらなら、どの理由よりも本能が眠りへと誘い、それに負けて地面の中や木にしがみついて陽光が沈むのを待つのだろうが、この個体は繁殖欲が旺盛なのか繁殖相手に恵まれなかったのか、この時間帯でも活発に動いている。

甲殻に包まれた多脚で枝を木の側面を掴み、シルエット通りの生物であればハサミが存在する場所にある筒状の前足から太い触手を伸ばして枝に絡ませ、ぶらさがるようにして移動するミミック。

時間が時間だ。
木漏れ日に周囲の木々に擬態した色合いの甲殻が跳ねてきらりと輝くこともあるだろう、それも理解してかなるべく木漏れ日を避けるようにミミックは移動し、辺りに獲物がいないかどうか眼を文字通り輝かせて、その移動中も辺りに視線を配っている。

ミミック > 狩場を変えるにはまだ周辺の散策が足りないと考えたか、一度辺りに生えている大樹の中で一際目立つ大樹の枝を多脚で挟み込んでギシッと枝をきしませてしがみ付くと、ぐるりとそのまま逆さまになり、大樹の下に赤く輝く眼を向ける。

移動して獲物を探すのではなく一箇所に留まる事で獲物が通りかかるのを待つ狩猟方法へと変えたようだ。

ただこのミミックは飢え具合が酷いのか、口から唾液を一筋ぬらぁと滴らせ、細く木漏れ日に輝く糸にかえ、途中でそれがぷつりと途切れ、ぽたぽたと地面に唾液を落として土に重なりあう葉に触れるとぬるりとした怪しげな染みを作ってしまう、それにもし其処に布や金属を触れさせればシュッと嫌な音共に腐食が始まり溶けてしまうだろう。

狩猟としては何かが付近にいる事を知らしめてしまうミスであるが、それだけミミックが獲物に餓えている証拠でもあるが、この時間帯を選んだミミックの経験が功を奏するか、視覚は何とも出来ないが本来ならば森の草木以上に草を煮詰めたような臭いをさせる唾液だが、森に広がる湿度により臭いはほぼ紛れ、嗅覚を頼りに唾液を滴らせるミミックを見かけるのは難しいだろう。

ミミック > 蟲の身で暑さを感じるかは別として、湿度こそあれ甲殻が徐々に乾き始めると、水分が不足している合図か下方に滴らせていた唾液までも量を減らし、ぼたっ、と最後に大きく唾液の玉を落とした後に口を閉じてなるべく体内の水分の消耗を避けようと、それと共に水分を補給すべく己がしがみ付いている枝の傍まで伸びる別の枝を前足の触手を使い、べき、ともぎ取るとそれを口にくわえて顎で挟み、中から水分を啜り始める。

朝露を吸い上げ、蒸すほどの湿度を吸い上げた木の枝は当然水分が多く含まれており、メキ、メキ、ギチと強靭な顎で噛み砕くたびにミミックの口内には水分が満ちていき、それを嚥下して体内の水分補給をする。

蟲なので特別味覚はない。
但し全く無いわけではない。
今は味覚を生かす必要性がない為、身体が枝を齧る程度では味を感じる必要性がないと判断し、全く味のしない木の特有の香りも感じない、何かをただ盲目的に齧り噛み砕き飲み込んで、生存に必要な分の水分を摂取し続ける。

ミミック > 木の枝を数本齧り終えると水分だけは満足したのか、己の腹部を前足の触手で擦るようにして見せると、此処では獲物を見つけられないと判断してか、その前足を直ぐに他の木の枝に伸ばし今度は折るのではなく、巻きつけ触手を縮める事でひゅんと別の木の枝に移る。

ミミックはそうやって素早く移動し、森の奥のほうへと姿を消すのだった。

ご案内:「妖精の森」からミミックさんが去りました。