2020/06/27 のログ
ご案内:「娼館の廃墟」にチマキアさんが現れました。
■チマキア > 月が見えている夜の町はずれ。というよりも町が過去に合った広く閑散とした場所に一つ。
いくらか形を保った石造りの建物が佇んでいた。とはいえ他の建物と同じ運命をもうすぐ辿るであろう
朽ち果て具合で、石造りの建物は殆ど吹き曝しになり、残っているのは半地下の構造だけだった。
「……」
この建物はかつて娼館だったが、ただ女を置いているだけではなかった。それは夏だというのに
黒いマントをなびかせながらどこか頼りなさそうに歩く男の足元に広がる光景が物語っている。
瓦礫、壊れた調度品、ガラスが散乱する床のあちこちに人形が転がっていた。
人形は全て女性型でどれも破片として人型を保つ事は無く転がっている。
身体の一部を見ると人形では本来必要の無い器官が取り付けられていた。
ココは娼館である、その人形が【生きていた】時、どんな役割を持っていたのかはすぐに分かるハズである。
ゆっくりと覇気がない様子でほぼ失われた天井を見上げると、何処にいても簡単に夜の月が見えた。
そして、階段を降りて半地下へと脚を運ぶと、その様子はさらに奇妙な物になった。
今度は人形ではなく、死体が転がっている。だが死体も、ただの死体ではない
「………ホムンクルス」
足元でさらさらに乾いて転がっている女性型ホムンクルスの死体を男は見下ろしていた。
半地下へと脚を一歩踏み入れると、迎え入れる風化したホムンクルス。男は広い部屋を見上げると
其処には娼婦として売られていた、キメラ、ホムンクルス、人形が至る所に転がっている。
ミイラになったキメラや、バラバラの人形に混ざって、静かに転がっている風化したホムンクルスの数々
ホムンクルスの性能は作られた場所によりまちまちなのか、すっかりミイラになっている物もいれば
殆ど生身の状態で眠っているのかと錯覚するほどの死体まで様々だった。
人形でありながら殆ど砂となった物もあれば、肉でありながらその瑞々しさを失わない死体まで
至る所に転がり、自然の在り方がバラバラなその光景は全くの無音で
其処に男は一人、近くの石の台に腰かけ、その光景を無言で眺め続けた。
ご案内:「娼館の廃墟」にホアジャオさんが現れました。
■ホアジャオ > 夜な夜な俳諧するのはぶちのめしても誰からもお咎めなさそうなゴロツキを探すため。
そういう輩はだいたい、人の多い場所のほんのちょっと裏側にくだを巻いているのがお決まりなのだが
女が今宵街をはずれて足を延ばしたのは、今日の昼間の暑さのせいも少しは関係したかもしれない。
人いきれの無い方へ、風通しのいいほうへ、閑散とした方へといくうちに、いつしか街はずれから…廃墟群のようなところへと足を踏み入れていた。
月明りに照らされているそれらは無言で佇んで、いかにも涼し気ではあるが…ゴロツキがたまり場にしている様子はない。
無造作に街の残骸の中足を進めながら、ほんのすこしガッカリしたように鼻を鳴らす、その貌が訝し気に曇る。
ふと、足音のようなものを捉えたような。
(…面白いモノ見つかるかもしンないし)
にまあと紅い唇が弧を描き、音がした、ような気がする方へと女は足を進めていく。
…間も無く、地下へと下る階段を降りる軽い足音が、静かに座る男に届くだろう。
■チマキア > ただずっと月を眺めている男は、奇妙な死体の、物でも生き物でもない物が転がる広い半地下の
広い空間に只腰かけていた。足音が聞こえても、自分以外に脚を踏み入れた女性が同じ場所に脚を付けていても
男は振り返らずぼーっと、天井まで突き抜けた月の空をただ見上げ、頭を動かしたかと思うと
時折、足元の眠るような死体を眺めていた。
男は女性の方を振り返らない。ただ床と月明かりが差す石造りの飾りを見ながら
変わらず佇んでいる。後ろ姿は若いシルエットをしているが、その雰囲気は枯れ切った老人のようだった。
下を眺めていた男は全く朽ちていないホムンクルスの死体の髪を指先で撫でると
再び腰を上げる事もせず、女性の事は気にもかけずただ座っていた。
■ホアジャオ > 地下へと降り立つと、じゃり、と砕けたガラスを踏む音が響く。
広い地下は吹き抜けになったように月明りが降り注いで、女の細い目でも見通すには苦労しない。
そう、こちらに背を向けて座っている男をみつけるのにも。
広い空間に己の足音が響いていなかったわけがない。
それでも振り返らない後ろ姿に躊躇いなく、近寄ろうとして
「――晚上(こんばん)―好(わぁ)!?」
ぐに、と
女が踏みつけたのは、手首。
流石にびっくりしてその踏み出した脚を上げたままピタッと止めて
改めて見回せば、辺りは似たような女の死体―――に見える―――とか、奇妙な容姿のミイラが、累々と。
「…えぇ―――…」
気持ち悪い、というよりは、なにこれ、という表情に顔が曇る。
そうして取り敢えず、この場で他に生きていそうな後ろ姿へ、今度は慎重に足の置き場を選びながら、近づく。
「…―――ねえアンタ、ここで何してンの?
―――あ、アタシはホアジャオってェんだケド」
男のすぐ背後まで近寄ってから声をかける。
そおーとその手元を覗くと、男はどうやら倒れた女―――に見える―――に触れていた、ようで。
「…ソレ、アンタの恋人?」
■チマキア > 暫くその光景を一人黙々と味わっていたが、大きな声と音が聞こえると
ゆっくりと悪い反応で頭を上げた。振り返った男は背中のシルエットと同じく若いが
目の前の女性とは全く違い生き生きとした雰囲気を全く感じさせる事は無かった。
「……………」
恋人かという問いに暫く意味が分からなかったのか、だが暫くすると足元で寝ている死体に目が行く
女性にとってはじれったいと思うぐらい僅かに沈黙があり、その後、ゆっくりと眠たげな眼で
首を横に振った
「いや……恋人じゃない」
ようやっと、といっても数秒だがそう返し、また女性を差し置いて周りを見回す。
また少しの時間の後、相手が名前を言ったのを思い出すと、いくらか早く女性に向き直す。
「…チマキア」
そう、一応名乗った。容姿は若いが、近くで見ればビックリするほど枯れ切った老人の雰囲気をしていた。
■ホアジャオ > 「………」
男がゆっくり反応して振返って、足元を見て、それから首を振るまでを、女は腕組みをしてじーっと待っている。
恋人じゃない、と返答が返って来ればフーンと鼻息なんだか相槌なんだかを打ちながら、男を爪先からてっぺんまで眺める。
見た目は若いのに、動きとか雰囲気はまるで年寄りだ。
―――アレだろうか、何か、そういうのが早めに来てしまった類だろうか。
…そう思うと何だか急に、女の中の親分肌的なものがうずく。
そうしてその間、思っていることは女の表情に全部過ぎっている。
恐らく男の方は一顧だにしていないだろうが。
「…そォ、チマキア。拜托了(よろしく)!
恋人じゃなかったら家族かなンか?
……だとしたらアンタすっごい大家族?
てぇか此処なンなんだろ?
あ、アタシはちょいと散歩したら迷い込んじまったみたいなンだケドさ」
次々まくしたてながらもう少し男の傍へと歩み寄って、その足元の死体へと屈みこむ。
じーっとその貌を見てから、男の顔を見てみる。
…似てない。
「……もしかして、アンタも迷子?」
女は男を覗き込むようにしながら首を傾げる。その表情が訝しげだが、半分は好奇心だ。
■チマキア > 「いや……家族でもない」
男は相手の質問にただ静かに返事をするだけだった。女性が死体に屈みこみ顔を覗き込むと
男も同じようにその朽ちてないガラス玉のような目を眺めていた
「…………迷うような道も、特に無い」
「ココには、何と無く来ただけだ…不思議な場所だなと思ったから」
「ずっとココで、その様子を眺めていた」
男の言葉は少ない。しかしマントが上半身を傾ける事で僅かに翻ると、腰には短剣と長剣の間ぐらいの
かなり取り回しの良さそうな白銀の剣8本を携えているのが僅かに見える。
そして帝国語の言葉を思い出すと、何処か虚ろな瞳を女性に向け、静かに頭を下げた
「…宜しく」
■ホアジャオ > ぽつ、ぽつ、と帰ってくる男の言葉をいちいち反対へ首を傾げながら聞いている。
終わるとフーンとまた鼻息のような音を漏らして、くるりと目を回して見せて
「そォ?何にもないと逆に目印ないから適当な方向に行っちまうンだよね、アタシ。
……確かに不思議な場所…だけど、あンま、眺めてて楽しいカンジもしないケド。
ヤな事でもあったの?」
そのまま、女の死体の傍らにしゃがみ込んで膝に頬杖をつく。
流石に男のように触れる気にはならないが、美しい子だなー、くらいの感じで観察くらいはする。
そうしてちらりと視界の端には男の武装が伺える。
こうした武器は、扱いなれていないと複数を同時に携えるのは逆に負荷になる。
――――即ち、かなりの遣い手の、筈。
(…………喧嘩を売るにも相当焚きつけないと駄目そうだ…し)
何よりなんだか腑抜けたような様子が何となく痛々しい、というか
女的に、勝手に活を入れたくなる。
そう思えばすっくと立ちあがり、けらっと笑ってバシーンと男の肩を叩こうとしながら
「まァ元気だしなって!なンだったらアタシが美味しいごはんでも奢ってあげるからサ!」
■チマキア > 「……嫌な事は特に無い。この場所が、気に入っただけで」
魔としてはこういう自然でも人工でもない場所と言うのが、そして朽ち果て具合も
時空が歪んだようにバラバラがこの場所が好きだった為、ずっとココで座っているだけだった
だが、男がそれを説明しきるまでの時間は目の前の女性との関りの間には無かった。
背中を叩かれると変わらない若さの無い表情のまま、首振り人形のようにビヨヨンと
上半身を揺らすと、やはり表情は変わらないままパトロールキャップから出ている自分の白い髪を
撫でつつ。静かに手を揺らしている
「いや、腹は…減ってない……」
「自分は………この場所が気に入っていた、だけだ」
■ホアジャオ > 男が上半身を揺らす様子に更に女はけらっと笑い、ごめん、と全く悪びれない様子で後頭部を掻く。
「あ、静かな方が好きなンだ?
でも此処が良いってェのは変わってンね!墓場よりもナマものが居るぶんちょいと悪趣味だと思うケド。
…まーヒトそれぞれだモンね」
気に入った、と言葉を聞くと細い目を目いっぱい見開くが、またフーンと鼻息を漏らしながら改めて周りを見渡す。
もう一度見てみれば、まあ、墓場よりも彩がある、と言えなくもない、かな?
―――なんて思ったりしながら
再度老人の雰囲気を醸し出す男を見遣って
「そッか、まァ無理にとは言わないよ。
気が変わったらいつでも言ってよ。美味しい点心屋さん教えたげるからサ」
邪魔したね!とまた全く悪びれずににまーと笑いながら男に声を掛けると、女は踵を返す。
迷子でもなく只此処の時間を楽しみたいというのなら、自分は去るのが良いだろう。
…なにより、喧嘩もしてくれなさそうだし。
女はざしざしと、来た時よりも幾分慣れた足取りで地上へと続く階段の方へと歩いていく。
時折うひょぉ、とか声を上げるのは、変わったミイラか何かを見付けたからだろう。
「…帰り道、迷子になンないようにね!」
階段を昇り際、そう余計な一言をかけて
女は軽い足取りで地上へと駆け上がって、その姿は揺れる三つ編みを最後に遠ざかっていく。
ご案内:「娼館の廃墟」からホアジャオさんが去りました。
■チマキア > 随分とハツラツとした女性であった。自分も含めて全く静かなその光景の中。
華やぐ存在なのは間違いなかったが、彼女たち、この死体達と自分には少し眩しい存在であった。
だがこんな特に目立つ事も無い老骨、そしてココの住人達に目を向けられたのは久しい事で
何年かぶりの来客を迎えたような気分は決して悪い物ではなかった。
男は再び足元のホムンクルスの死体、その瑞々しい肌を手の甲で撫でると
再び男と死体達の時間が流れていた。
ご案内:「娼館の廃墟」からチマキアさんが去りました。