2020/04/26 のログ
ご案内:「九頭竜の水浴び場 マッサージ室」にエレイさんが現れました。
エレイ > ──温泉旅籠内の、主に宿泊客向けに用意されたサービスの一つが、このマッサージ室である。

その施術室はいくつかの個室に分かれており、客は専用のカウンターで受付を済ませた後、各個室で待機しているスタッフと
一対一でマッサージを受けることになる。

なお、客にどのような施術を行うかは、スタッフの判断にすべて委ねる、というあたりはこの旅籠らしいといった所。
ついでに、各個室内には客に安心感を与え、施術への抵抗感を知らず知らずのうちに薄れさせてゆく効果を持った、
ほのかな香りのアロマが炊かれていたりもする。効果がどれほど出るかはその客次第なのだが。

「──はーいお疲れチャン。また来てくれたまへ」

そんな中の一室から、満足げに出ていく宿泊客を笑顔で見送る、スタッフ用の作務衣姿の金髪の男が一人。
今日も今日とて知り合いからの依頼で、臨時のマッサージ師として仕事に精を出しているのだった。

「ふぃー……こういう普通のマッサージも悪くはないのだが、そろそろ一発エロマッサージでもしたいところであるなぁ」

個室内に戻り、施術用のベッド脇の椅子に腰掛けながらそんな詮無い独り言を漏らす。
今日は現状、立て続けに男の『標的』にならない客の来訪が続いたため、男はごく普通のマッサージ師として
仕事をこなすばかりであった。
男としてはそれもそれでやりがいを感じなくはないのだが、やはり役得の一つぐらいは欲しいところであった。

「まああそれも時の運というヤツなのだが……──おっとと一息つく暇もなさそうだったな」

ボヤキを続けようとしたところで、閉じたばかりのカーテンが開く。
さて、やってきたのは男の『標的』になりうる客か、それとも……。

エレイ > ともかく、男は客を招き入れ……カーテンは再び、閉じられて──
ご案内:「九頭竜の水浴び場 マッサージ室」からエレイさんが去りました。
ご案内:「設定自由部屋」にジェイクさんが現れました。
ご案内:「設定自由部屋」からジェイクさんが去りました。
ご案内:「街道」にジェイクさんが現れました。
ジェイク > 王都から離れる事、半日。昼下がりの近隣の村落に通じる街道。
普段から人の往来が多い、その道を遮るように柵が設けられ、
道の脇には幾つかの天幕が建てられ、簡易的な陣営の趣きを為していた。
街路に立ち、通行する馬車や通行人を差し止め、積み荷や身分の検査を行なっているのは、王都の兵士達。
曰く、此処最近、山賊や盗賊の類が近隣に出没するために検問を敷いているという名目であるが、
実際の所は隊商からは通行税をせしめ、見目の良い女がいれば取り調べの名を借りて、
天幕でしっぽりとお楽しみという不良兵士達の憂さ晴らしと私腹を凝らすための手段に他ならなかった。

「――――よし。次の奴、こっちに来い。」

でっぷりと肥った商人から受け取った賄賂を懐に入れて、彼の率いる隊商を通せば、
列をなしている次の通行人に声を掛けて近寄るように告げるのは一人の兵士。
何よりも厄介なのは、彼らが紛れもない王国の兵士であり、市井の民が逆らえない事だ。
その事を理解している兵士達も、御国の為ではなく、利己的に国民を食い物にしている最低最悪な屑であった。

ご案内:「街道」からジェイクさんが去りました。
ご案内:「平民地区」にマルティナさんが現れました。
ご案内:「平民地区」からマルティナさんが去りました。
ご案内:「平民地区」にキサラ・イザナミさんが現れました。
ご案内:「平民地区」からキサラ・イザナミさんが去りました。
ご案内:「九頭竜山脈の湧き湯」にアルヴィンさんが現れました。
アルヴィン > 闇の中にたゆたうのは、湧き湯から上る白い湯気。
そして、その白い湯気の傍らにて、騎士は剣を手に立っていた。
その上半身は、肌身も露だ。

無駄なものの一切が削ぎ落された後に残ったもの…。それを、ただひたすらに練り上げ、鍛え上げた身体が、山中の夜気に晒されている。

騎士は、左の腰間に佩いた剣の鞘を払い、一言、何やらの呪言を唱えた。
すると、見る間に掌の中の剣が重さを増してゆく…。
ちょっとした穀物の袋一袋…大の大人が肩に担いでようやく運べるような、そんな重さにまで、剣はその重量を増してゆく…。

それを騎士は…正眼に据える。

切っ先を、目線の高さに。
そして、おもむろに。何の前触れもなく騎士は、その剣を振りかぶり、斬り下ろした。

振りかぶられた剣は、頭上、決められた位置にてぴたりと止められ…。
そして、斬り下ろされれば、これも決められた位置にてぴたりと切っ先が据えられる。

惰性というものが、微塵も介在しない。
それは、地味であるがゆえにひどく過酷な鍛錬だった。

振りかぶり、斬り下ろす。
その単純で愚直な挙動は風を生み、風を巻き、そして風をすら断ってゆく…。

山中の城塞都市からも、さほどは離れていないこの湧き湯に騎士は夜を迎え…湯にて身体を労ったあと、こうして鍛錬の時を過ごしていた…。

アルヴィン > 鍛錬というものは、愚直で、単純なものほど、過酷なものだ。
ただただ黙々と。騎士は振りかぶり、斬り下ろす、重さを増した剣の素振りを続けてゆく。

迅く。
鋭く。
重く。

撃剣に、太刀ゆきに、ただその三つのみを求めて剣を振るう。
騎士の全身はもう、汗を玉と散らしている。
そして、春とはいえ夜の、しかも山中の冷気に身体は白く湯気を放つ…。
いつしかそれは、湧き湯のもののように、白く騎士の身体から揺蕩い上り始めていた…。

それでも、太刀ゆきの鋭さに惰性は無い。
鋭く、重く、そして迅く。
剣が、冷たい山の空気を斬り裂く物凄まじい音だけが、神韻として静謐な山の空気を乱してゆく…。