2019/08/05 のログ
ご案内:「或る酒場にて」にアスフィアさんが現れました。
■アスフィア > 「――――はぁああぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁ……」
それはそれは、とても世知辛い世の中を嘆きに嘆き倒し、ハンカチでも食いしばってたほうがまだましそうな、長い長い嘆息であった。
酒場のカウンター席、蜂蜜種の入ったジョッキ片手に、何やらそれはもう見てられない位の悲惨な顔付で、少女は呟く。
「……なんで、なんでなんですかぁ……」
涙声。小さく零した声は。
「――なんでゴブリン討伐の任務なんかでッ、苦労して手に入れたレアポーションをぜぇんぶ盗まれるんですかぁ!!しかも瓶だけご丁寧に返却とか、いやがらせかぁ畜生っ!!不幸極まれり!!世の中なんてこの蜂蜜酒にひれ伏してればいいのにぃっ!!」
なんでよーーーー!!と、ジョッキでしこたまカウンターを殴りつけ、一気飲み。
酷い酔っ払い状態である。
ご案内:「或る酒場にて」にイルゥさんが現れました。
■イルゥ > 「これはまた大きな溜め息だこと。幸運も裸足で逃げ出す……ってものだわ」
カウンター席の横に、ちょこんと座っている少女――イルゥは、目の前のミルクが入ったグラスの淵を、指でつつ、となぞりながらそんな風に呟いた。
二人は、偶々同席しただけの関係である。ただ隣で飲んでいただけで、愚痴を並べている少女に、イルゥが言葉を発したのもこれが初めてであった。
「奪われたのがポーションなのは幸い。生まれてから今までの努力が全て水の泡にならなくて良かったじゃないの。ね、冒険者さん?」
自然と、横に流す目でちらりとアスフィアの方を見るイルゥ。
その口元は悪戯っぽく緩んでいて、そこだけを見れば年相応の表情と見てとることができた。
しかし、彼女の纏う雰囲気は明らかに少女のそれではない。
表情、仕草、声色。そのどれをとっても、外見相応の少女には似つかわしくない蠱惑的な魅力が備わっていたのである。
■アスフィア > 「ッ幸運なんてもー生まれっつきには逃げ出しきっちゃって、もーどーこにも居たもんじゃありませんってのぉ!!」
ぐわっとジョッキ片手に振り返った、麗しの貌を台無しにひしゃげさせた顔が。
目の前にちょこんと座った少女は、それはそれはまぁ自分より幸運値が高そうな相手だこと。ゆえにこの酔っ払い少女は眉間にふっかく皺を作りながらも、その年相応な顔表情、不相応な魅力の前に、アルコールとは別のもので顔が熱くなる感覚を覚えていた。
「……努力なんてどんだけつみかさねても、不幸がかっぱらってくんですもん、水の泡になんて何度なったことかっ!生まれつきですよ生まれつき!四歳の頃には不幸の兆しが見えてたんですってーのにぃ!!」
んにゃああああっとジョッキ片手に地団駄。周囲の客、美貌よりもその丁稚な仕草にちょっとずつ、一席ずつ離れていっている。
例えその顔が、"ほんの少し前までは名の知れた若き冒険者の星として著名であろうが"。
酒に酔っ払い、周囲の迷惑も気づかず、存分に自分の不幸を愚痴たれて蜂蜜酒を呷り倒すこの女には、近寄らないほうがいいと直感が訴えてくる有様だ。
「んでぇっ、この不幸ランク最強のアスフィア・アルスナータの前にいるっ、幸運値高そうな女の子は誰れすかぁっ!!マスタぁ!!お酒!!あとこの子未成年だからミルフぅ!!」
酷い悪酔いだ。呂律が回ってない。しかも見た目で年の判断するにしても雑だ。そして思い込みも強い。きっとノーベルクソ酔っ払い賞の金賞受賞は違いない。
どうやら酒場の主人らしき年増の女性ははいはいと苦笑いで済ましながら、二人の前に飲み物を置いていく。
「……はあああぁぁぁぁぁぁーーーー……」
■イルゥ > 「この荒れ狂ったご時世に、こうして元気いっぱいに愚痴を並べて、ジョッキを振り回せるだけの身分にあるのなら……それは幸せというものじゃないかしら、冒険者さん」
イルゥはそう口にしながら淵を滑らせる指を止めて、とんとん、と小さく指先で叩く。
中に入ったミルクがちゃぽん、と小さく波立った。
それが静かに収まるのを見届けた後。
細い両手をカウンターの上で組んで、自らの小さな頭をそこにぽん、と乗せながら、イルゥは再び返す言葉を紡ぐ。
「あらあら、せっかくの可愛い顔が台無しだわ。良い男も名声も遠ざかっていってしまうわよ」
優しく笑うイルゥ。地団駄を踏む彼女の隣に居ても嫌悪感はないらしく、全く距離をとる気配がない。寧ろ、興味深そうに顔を近づける素振りすら見せる。
「へぇ、アスフィア……巨竜グラウンドドラゴンを倒したのは貴女だったわね、確か。名前は聞いたことがあるわ」
少しばかり驚いた表情を見せた後、再びすぐに穏やかな笑みを浮かべるイルゥ。
「幸運かどうかは知らないけれど……私はイルゥ。イルゥ・ヤ=サートゥヴァール。こう見えて酒場の店主なのよ。別のお店だけれど、ね」
■アスフィア > 「荒れ狂ってたって、日は登んですよぉ。どーせ明日の依頼だって、きっと"不幸"なせいでなーんかやらかすんですよぉーだっ!!へっ、ばーかばーか!!ゴブリンのばーかっ!!」
〇ン〇ンもげろ緑餓鬼!!と、吐き捨てながら二杯目を盛大に呷る。
なんておくちのきたないおんな。
「……どーせ可愛くたって出会いなんてありませんよ私はぁ。不幸ですから、不幸ですからっ!!男なんて興味あるにはありますけど、年上じゃなきゃあダメなんですよ!!おっさん!!おっさんです!!それこそ聖職者だのにやつれたような雰囲気漂わせてっ、バカみたいに下ネタ煩くて、けれど決めるところは決めるようなそういうおっさんじゃあなきゃあダメッダメ!!ダメなんですっ!!」
この少女、難儀な理想を抱いているようだ。
凄い限定的範囲なのもあるが、当分出会えるような気配はない。
どん底のような不幸オーラも相まって、果たしてこの少女は三十路を超えるまでに出会えたもんなんだろうかと。
「……あああー、その話しないでください、絶対5132回は聞いてます。数えてますもん、嘘です数えて無いですっ!!ばーか!!」
うるさい。周囲の客、マイナス四名。代を置いてひそひそ言いながら出ていった。
このお店、どんどんこの賑わいが減っていく。
「……いるぅ、ちゃん?いるぅちゃんですねー、はー酒場の主人、主人かぁ。こんなに小さいのに、お酒とか売ってれるんれすかぁ。良いなぁ、才女だなぁ。成長するより先に出逢いがあるんだろうなぁ、良いなぁ、うぇえー……」
酒場の主人、そしてこのませませMAXドキドキプリティ。
自分なんかよりよっぽど魅力があると嘆き倒し、テーブルにばんっと額を打つ。
「どーせ私なんて、私なんてぇ……うぅ……」