――都会から冒険者になる為にやってきた翡翠毛の少女、アスフィアは憂き目を見る。
冒険者としての才覚はあるものの、事ある毎に見舞われる不幸によって失敗を重ね、ゴブリンによって装備を持っていかれ、あわやそのまま自分ごと持ち帰られそうになったのが12歳の時のこと。 14歳にしてようやく目ぼしい戦果を重ねてくるものの、不幸とドジによってパーティメンバーへの迷惑と被害が大きいせいで誰とも組むことが出来ず孤立、 それでも冒険者として日々の研鑽を重ねていったことで、15歳のとき、巨竜グラウンドドラゴンの単独討伐に成功。
一躍有名となるも、 ……それ以上の大きな戦果もなく、過去の栄光は日々に曇っていく。
ドジは治らないし、装備はあまり変えないで居る。適応力が低く、なかなか新しい防具に乗り換えられないでいるからだ。 見た目だけは綺麗だが、やや硬い性格と「40台以降のおっさんに焦がれる」というちょっとニッチな性癖が災いし、出会いもこれと言ったものがなく、体目当ての変態からの被害に対して、手痛い反撃を食らわせる技術が上がってきている。 ――そんな彼女は最近、とある冒険者の集団に誘われるという一つの節目を得た。
見た目に似合わないゴツメな鉄甲爪「ジャンガル・アーク」による必殺の斬撃と、黒魔法の氷系魔法によって魔物を冷酷に衰弱させ、怒り狂うように殴り刻む様を、 「憤怒の冷嵐(アングリュータ)」と二つ名で認められている。
今日もどこかで、鈍い殴打音と血しぶき、冷たい靄に包まれて切り刻まれる魔物の断末魔が聞こえてくるそうだ。
彼女の美貌の大きな部分を占めるのは水色の飾り無いロングヘア、蒼色の清らかな細い切れ長の眼。 普段から冒険者としての装備である、結晶の飾りがついた白色の軽鎧は彼女が冒険者になりたての頃に奮発して買った防具を修繕を繰り返して使っているものだ。 ワンポイントに猫耳のようなデザインで頭につけた髪飾りはその昔、自分の不幸によって怪我をしてしまい冒険者を引退した人からの選別品。付けているとちょっぴり幸運になれるらしいが、それっぽい効果はあんまり見込めていない。 得物である鉄甲爪「ジャンガル・アーク」は本来獣人の爪を更に武装によって保護するためのものだが、中に金属を流し固めたことで鉄甲と鉄爪を兼ねた武装となっており、結構エゲツない威力を発揮する。 |
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