2018/11/17 のログ
ご案内:「王都から少し外れた平原 或いはクレス道場」にクレス・ローベルクさんが現れました。
クレス・ローベルク > 王都から少し外れた平原で、男が一人、持ってきたのであろう木箱に座っている。その近くには、看板があり、そこに大きな文字で『クレス道場』とある。

「さて、人が来るかなこれ……」

突然だが、最近、恋人ができた。
のは良いのだが、冷静になって思い至ってみると、彼女と二人で暮らすには、今の家は手狭すぎる。
勿論引っ越しの費用は彼女にも少しは出して貰おうとは思うが、それでも甲斐性を見せたいと思うのが男の性。
そんな訳で、副業として始めようと思ったのが――

「道場、か」

実家で、コーチングの技術は一応習っているし、何より男にはアケローン闘技場の剣闘士という解りやすいネームバリューがある。
ならば、それを使わない手はないという事で、取り敢えず青空教室ならぬ青空道場という形で、王都の近くの平原で定期的に有料の武術指南をしようと考えたのだ。

『剣闘士クレス・ローベルクが剣、短剣、剣と盾教えます。運動不足解消から、冒険者、剣闘士になる為の実践的な指南まで。幅広く対応いたします』というのが、街のあちこちに張ったチラシの内容。

「まあ、今は殆ど投資してないから、これで儲からなかったら別の手考えるか……」

そう思いつつ、客を待つ。

クレス・ローベルク > 「……来ないかな?」

来なければ、来ないでも。とも思うが。
しかし、来るにこした事はない。
看板を作るための材木や、チラシの紙代。それにチラシに一枚一枚文字を書いた労力などを、出来れば取り戻したいというのは当然の欲求だ。

「やっぱり、ケチケチせずに建物借りるべきだったかなあ。でも流石にそこまですると借金までしないといけないし……」

甲斐性を増やすつもりが、甲斐性どころか借金を増やしては、いよいよ本末転倒。
男とて、金持ちという訳でもないのだ。

ご案内:「王都から少し外れた平原 或いはクレス道場」にクレス・ローベルクさんが現れました。
クレス・ローベルク > 「一応、素振りとかしておこうか……来た人にいい印象を与えるって意味で」

ぶんぶんと、素振りを始める。
基本的ではあるが、きちんと腰が入った、綺麗な型。
それを何度も何度も繰り返す。

クレス・ローベルク > 何時しか素振りは、完全な演舞となっていた。
一歩進んで、斬る。斬った相手のその後ろに居る相手の一撃を避ける様に、右斜め前へとくるりと回って首を断つ。
後ろから脳天を叩き割ろうとする別の相手の剣を、十字状の柄を使って受けてからの、剣を捨てて、腕を掴んで背負投げ。

「ふぅ、実家に伝わる演舞型だけど、久々にやると疲れるな」

動作としてはそれほどでもないが、全く違う技を連続で行うため、正しく行うと精神的な疲労が強い。
こうした型を繰り返すことで、本番でも複雑な動作が出来る訳だが、

「お客さんにはもう少し簡単な型を教えないとなあ……こんなん習得に何年かかるんだよって話だよ」

クレス・ローベルク > 「……来ないかあ」

この商売は失敗かなあと思いつつ、看板を片付ける。

ご案内:「王都から少し外れた平原 或いはクレス道場」からクレス・ローベルクさんが去りました。