2018/11/13 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯 夜の森」にぼたんさんが現れました。
ぼたん > (ううン…もう病気かもねえ…)

月夜の深夜、森の中。落ち葉を踏みながら、ゆっくり歩く人影がひとつ。その耳は黒い獣の耳で、墨色の瞳の奥からはちらちらと黄緑色の光が零れ落ちる。
時折下生えの草をかき分ける音だけが響く、静かな夜。

「…虫も、寝ちまったのかねえ…」

小声でこぼせば、それが更に静けさを際立たせてしまって、思わず肩を竦める…

ぼたん > こちらへ来てから、月夜の晩ほんのたまに、気付けば森に居ることがある。その時は大体、いつもは隠している本性たる獣の耳と尻尾が出しっぱなし。

(自分の事だけど…何やってンだろ)

気付いたって直ぐに帰ったりしない自分が居る。大概月明りが落ちる場所を探してうろうろして、漸くぼおっとしてから帰るのだ。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯 夜の森」にクレス・ローベルクさんが現れました。
クレス・ローベルク > 偶には、訓練もしよう。
そんな感じで素振りや型等を日がな一日中森のなかでやって、ようやく帰る所だった。

「……あれは?」

森の中、知り合いの女性が一人、何かうろうろしている。
何か居酒屋でも使う食材でも探しているのだろうか?こんな深夜に?
いくら考えても、訳が解らなかったので、取り敢えず声だけかけてみる。

「こんばんは。ぼたんさん。どうしたの?こんな所で」

ぼたん > 「わーッ!?」
物思いにふけっていた所で、まさかの人の声。大声を出して飛び上がってから、恐る恐る首を声の方に向ける。

「あァ…にィさん、ひさしぶり…」

人影を認めれば、緑の光を湛えたままの瞳が何度か瞬きを繰り返す。すっかり下を向いている獣の耳が、出しっぱなしなのもすっかり忘れている。

「こんばんは、久しぶり…えと…何やってンだろね」
人に見付かったのは初めてだ。あははッと誤魔化し笑いを

クレス・ローベルク > 「うわああっ!?」

声をかけた途端に突如として大声を出され、こちらも反射的に大声を出してしまった。流石に腰が抜けはしないまでも、つい仰け反ってしまったが、挨拶されると安心したように笑って、

「どうも。中々、縁が無くてそちらのお店にお邪魔できなかったけど……まさか、こんな所で会うなんて」

いやはや、縁って不思議な物だねと感嘆した様に言って。

「何やってんだろって俺に言われても……。所で、その耳どうしたの?付け耳じゃあないよね。ミレー族かとも思ったけど、それにしては瞳がなあ……」

不思議そうに首を捻る男。
元々、この程度の異形には慣れている。
出自も人外に詳しい家だ。ミレー族とそれ以外の獣人の区別は直ぐに付く。

「ま、何でも良いや。取り敢えず、夜の森は危ないよ。用が済むまで待っててあげるから、一緒に帰ろう?ついでに、お店の場所も知りたいしね」

ぼたん > 瞳と耳を指摘されて、目を丸くしてから慌ててフードを深く被る。
(しまッた…)
ミレー族ではない、と看破されると、ふっと肩の力が抜ける。恐る恐る、フードの下からいつもの墨色の瞳を覗かせて

「…用ってェか…夜の散歩してた、みたい…」

何とも歯切れの悪い答え。帰ろう、と言われると、帰らない理由もないのだが…

「ええと…大丈夫。アタシ、もうちょいと、散歩して帰るから…」
いつもの気だるげな笑みを浮かべて、一歩下がる。

クレス・ローベルク > 「あ、もしかしてその耳、隠したかった所なのか」

こりゃ失敗したなあ、と頭を掻いて。

「みたいって他人事……いや、寧ろ無自覚なのか。もしかして種族的な習性みたいな物かな。一部の人狼は丸い物を見ると興奮するって言うし、それと同じで」

つまり、周期的に、外に出たくなるのだろう、と男は結論づけた。
とはいえ、そうなると彼女を一人にしておくのも考えものだ。
今の彼女は正気ではない、というと言い過ぎだが、何処か不安定な様でもある。

「散歩って言うなら付き合うよ。
っていうか、昼間の街の中でさえ迷子になる人を夜の森の中に置いていけないって」

例え嫌だって言われてもついていくからね、と下がった一歩分を埋めるように一歩踏み出す。
本人としては親切のつもりなのだが、彼女にとってはどうなのか。

ぼたん > 何だか彼が色々言っているようだが、よく聞き取れない…獣の耳は、いつもなら鋭いはずなのに。聞こえてるのに、なぜか、意味が解らない…

「本当に、大丈夫…いつも、ちゃんと、帰ってるから…」

埋められた一歩を更に引いて。
我ながら、自分のことが訳が分からなくて泣きたくなる…フードを被ったまま俯いて

「お店は、こンどちゃんと案内するから…」

踵を返すと走り出そうとして…

「ぎゃん!」

盛大にすっころぶ。

クレス・ローベルク > 「い、いや、ちょっと待って。何も涙目にならんでも」

それこそ、幾ら嫌だと言っても、といっても、マジの拒絶反応を向けられるとは思っていなかった。
これは嫌われてもしょうがないかなあと思うし、いつもちゃんと帰れているというのなら、踏み込み過ぎかも知れないとも思う。
だから、踵を返して走り出そうとした彼女を送り出そうとも一瞬思ったのだが……

「うわっ」

盛大にすっ転んだ彼女を見て、そんな気持ちは毛頭失せた。
冗談ではない。
こんな彼女を一人にするなど、例え彼女が本当に一人で帰れるとしても、後味が悪すぎるではないか。
断固として一緒に帰ろうと、そう決意を固め、

「大丈夫かい?森の中の傷は擦り傷でも割と洒落にならないんだけど……」

取り敢えずポケットからハンカチや包帯を出して、傷の手当をしようと彼女の方に駆け足。

「大丈夫?立てる?」

ぼたん > 「…うぅ~…」
木の根っこにでも躓いたらしい。べしゃっとほぼ全身殴打で情けないったらない…

木の葉だらけで身を起こして座り込んで、駆け寄った相手に向ける顔がない。大丈夫、と蚊の鳴くような声。
「…もォ、放ッといて…」
これは只の不貞腐れた声。

クレス・ローベルク > 「木の根っこにつまずいただけか。傷や骨折は……ないようだね」

ほっと安堵の息をつく。
擦り傷でもあれば、流石にぼたん自ら教えてくれるだろうと思う。
ともあれ、座り込んでしまった彼女の頭や背中を、やや強めに擦って土を落としてやり、

「はいはい、放っておいてほしかったら、ちゃんと落ち着こうね。
いきなり走り出すから驚いたし、流石にちょっと傷ついたんだよ?」

そう言いつつ、ハンカチで顔についた土も拭いてやろうとする。
何だか子供みたいだなあ、と割と失礼なことを思いつつ。

ぼたん > まだぼんやりする思考のまま土を落とされ、傷ついた、と言われればちょっとはっとして息をのむ。
「…ごめんよ」
小さく零しながら大人しく顔の土を拭われる。焦点があまり定まらない瞳に時折、緑色の光をちらつかせながら彼を見て

「ホント、落ち着いてるよ…だからだいじょォぶ…」
ゆらぁと立ち上がって、森の奥へと一歩

クレス・ローベルク > 「いや、別に謝って欲しいわけでもないんだけど……」

とはいえ、このままでは意見は平行線であろう事も確かだ。
何やらこの人は一人で森の奥に行きたがってるし、かといって自分は絶対にこの人を一人で森の奥に行かせたくはない。
となれば、折衷案を出すのが一番良かろうと思う。

「成程。わかった。でも、本当に落ち着いてるか心配だから……そうだな」

と、ポケットから取り出した懐中時計を見せる。

「この時計で三十分、一緒に歩こう。それで、ぼたんさんが一度も転んだりドジしたりしなかったら、心配ないってことで、一人で帰るよ。でも、一度でも転んだりしたら、今度こそずっと付きまとうからね」

これが精一杯だろうと思う。
これ以上無理についていくと、尚更生傷を作りそうだし。
何より、この三十分でもとに戻ってくれれば、それが一番いいのだ。

ぼたん > 懐中時計をぼおっと眺めてから、すいと顔をまた森の奥へと向ける。
彼の提案が聞こえたのか聞こえてないのか、頷くでもなくそのまままた森の奥へと一歩、また一歩。
踏み出す度に、少しずつ、速度が上がっていく…

クレス・ローベルク > 「無視!?ってえ、ちょっと待てい!」

おかしい。
これは絶対におかしい。
短い付き合いだが、彼女はそんな、人の提案にうんともすんとも言わないような、そんな無礼をする人間ではない。
明らかに正気を失っているが、深く考えている余裕はない。

「ええいっ!」

咄嗟に取った行動は、芸も考えもない、後ろからの抱き締めだった。
全身で彼女を抱いて、それ以上前に進ませまいとする。

ぼたん > 抱き止められてしまえば前に進むこともできず、少しもがいて…
「………」
引き留めている彼をまた焦点の合わない瞳が眺め
…思いっきり彼の足を踏みつけようと

クレス・ローベルク > 「止まっ……」

彼にとって幸いなのか、不幸なのか。
ぼたんの力は、もがいてもこちらを振り解ける程ではなかった。
とはいえ、次に取った行動は、彼にも予想外のもの。

「うおおお!?」

戒めを解くつもりはないが、かといって、踏みつけられるのは流石に怖い。本来なら女性に踏みつけられようが蹴りつけられようが問題ないが、明らかにこれは彼女の"攻撃"である。

彼女を動かしているものがわからない以上、素直に受けてやる義理はない。

「だが、それがチャンス……!」

踏みつけようと足を上げた瞬間に、全体重を載せて彼女を押し倒そうとする。そして、相手の体勢を崩しつつ、

「(頼むから舌を噛んでくれるなよ……!)」

正気でないのなら、精神にショックを与えて立ち直させるのが常道。
そして、今の状態で出来る最大のショックとして彼が選んだ行動。
それは、接吻だった。強引に、ぼたんの唇を奪いにかかる。

ぼたん > 踏みつけようとした空を切る…というより身体全体が傾いていく。
流石に『落ちていく』感覚には瞬いて、気付けば彼の顔が迫っており―――――

「―――ッ」

一瞬唇が掠った後、頭突きを繰り出す!
「何すンの…!」

クレス・ローベルク > 「おぐあっ!」

キスしようとした顔面に頭突きを食らうが、それでも反射的に右手で彼女を抱きとめる。
とはいえ、痛いものは痛いので、左手で鼻を押さえ

「ごめんて。でも、もとに戻ったのか、良かった……」

ほっと溜息をついた後、彼女の体制がもとに戻ったなら、さっさと離れる。
恐らく、もう完全に元に戻ったのだろうと、そう判断して。

ぼたん > まだ足元がふらついているが、何となく身体のコントロールは効くようになったようで、フードの奥の瞳からは若干の意思が伺える。
―とはいえ、思考は霞むようで、何度も頭を振って…

「ここ…どこだい…?」

森の中に来ていたのは覚えているが、記憶が混濁している。
あれ、何で目の前にひとが居るんだっけ…?

「にィさん、いつからいるの…」

言葉を発していないと、またコントロールが奪われそうだ…

クレス・ローベルク > 「は?ここは……ってえ、まさか」

意識がまだ完全に戻っていないのか。
だとすれば、まずい。
下手をすればさっきの二の舞だ。

「此処は、森の中だよ。君も何回か此処に来てるって言ってた。俺はつい五分前ぐらいに君と会って、一緒に散歩してたんだよ。覚えてないかな?」

嘘をつくのは心苦しいが、強引にでも一緒にいる理由付けをする。
流石にもう、先程の一緒に行く行かない議論をしている余裕はない。

「それよりほら、折角会ったんだし、歩きがてら、一緒にお話しないかい?俺東洋のお酒あんまり詳しくないんだよ。シェンヤンで一度飲んだっきりでさ」

取り敢えず、話題を振って、彼女に喋らせつつ、彼女が歩いていた方向に歩みを進める。もし、これで再び正気を失うようなら、最早手段を選ばず気絶させてでも、森から引き離そうと決めて。

ぼたん > 「…そうだっけ?…」

一緒に散歩していた?…覚えてない、というより考えられない。
―――――森の奥から呼ぶ声が聞こえる――
ああ、駄目だ…
「はなし…?」

彼の問いかけに答えながら、視線が森の奥へと泳ぎ始める。
今夜は何か、しつこいなあ――心の奥で、知らない記憶を持った自分がそう言っている…

「…ごめん、にィさん…帰った方が良いよ…」

そう、はっきり口にして、また森の奥へ引きずられるように、一歩、二歩。

クレス・ローベルク > 「そうだったのですよ」

また、表情がぼんやりして、視線が森の奥へと行く。
一体、何が彼女をそうさせるのか。
自分の知識では解らないが、これでは全く同じ事ではないか。

「いやあ、悪いけどそれはさっきもやったやり取りでね。
流石に二度も同じ事をするつもりは……ないかなっ!」

そう言うと、ぼたんを羽交い締めにして、森の外へと引きずり始める。
それが出来ずとも、最悪一晩中でも、彼女をこの場に留めておくことが出来ればそれでいい。
彼女の口ぶりから、この夜の徘徊は、生活に支障が出るほどではないらしい。
ならば、朝起きる時間には、彼女は正気に戻っているはずなのだ。

「それまでの我慢……えぇ、マジでそれまでやるのぉ……?」

自分が考えたアイディアに凄まじく嫌気がさしつつ、しかし彼女をほうっておくわけにも行かないと、脚に力を込める。
そもそも生活に支障が出ていないなら問題ない気もするが、何かもう、此処まで来たら半分はただの意地でもあった。

ぼたん > 「――ちょッと…はなして…」
引きずられ始めると、すこし意識を持った声でもがいて抵抗する。

―――ああ、あんなに自分を呼んでいるのに――心を無くして、森に帰って来いって――森の一部になってしまえって――

森の奥から遠ざかるにつれ、抵抗する力と共に、身体からも力が抜けてゆく。ずしりと彼の腕には重みが掛かってゆく…

クレス・ローベルク > 「離すもんですかい。こんな美人さん、見捨てて置いてったら一生のしこり……お?」

抵抗がやんだ。
眠ったのか、気絶したのか……解らないが。
取り敢えず、彼女が今日、森のなかで怪我をする心配はなくなった様だ。

しかし、重い。さっきのアイディアの穴をいきなり露呈するが、実際は人一人を引きずって運ぶのは、中々骨が折れる作業だ。

「……まあ、こんだけ頑張ったんだし、少しぐらいの役得、あってもいいよね?」

そう言うと、背中にぼたんをしょって、森の外へと目指していく。

ぼたん > 身体を動かせるだけの意識はもうない。遠ざかっていく声が、自分を呼び続けているのがわかる。

自分は行きたかったのだろうか?止められてほっとしているのだろうか?…

どの道意識はもう闇に飲まれて、朝にはぼんやりとした記憶だけになるだろう。
――――彼に大迷惑を掛けたことも含めて。

背負われて、森の外へ出るころには、女はごく普通の寝息を立てて、呑気に眠っていた

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯 夜の森」からクレス・ローベルクさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯 夜の森」からぼたんさんが去りました。