2018/09/23 のログ
■レナーテ > 砂を詰め終えると、木製の柱に括り付けられた肋骨の様な籠へと収めていき、頭代わりの小さい袋を重ねていく。
それが10個もあれば、一人で運び終えるまでには少々時間がかかる。
ちょうどいい休憩時間が終わると、少女達の前に立ち、的の方へと振り返っていく。
「次は移動しつつの射撃を練習します。まずは前後移動から」
簡単な説明を挟むと、愛用の魔法銃を構えて手本を見せる。
少しだけ前傾姿勢になり、肘を内側に寄せる構え方は縮こまるかの様。
構えを取るだけで、自然と照準が瞳に映り込むと、早速前へと歩き出す。
歩幅は何時もより小さめに、そして上半身が静止したかのようにブレを殺しながら進むと、銃口に青白い魔法陣が灯る。
トリガーを絞れば、パシュッ! と独特な射出音を響かせ、青白い光弾が放たれ、まっすぐに的の胸元に叩きつけられていく。
すぐさま次の陣を浮かべ、発射、浮かべては発射を繰り返すと、今度は後退。
テープを巻き戻すように崩れぬ移動射撃の手本を見せ終えると、ゆっくりと息を吐き出しながら構えを解いていった。
「こんな感じです。基本は足を止めて、ちゃんと狙って撃つのですが…下がる時や、囲い込む時に使う動きです。膝を確り曲げてくださいね?」
何で膝? といった様子でぽかんとする少女達だったが、早速と立ち上がれば一列に並んでいく。
始めの合図と同時に銃口が並んでいき、青白い閃光が不規則に的へと放たれていった。
一発目は綺麗に胴体や頭部へ、クリーンヒットしていくのが殆なのだが、問題はこの先。
先程に比べれば楽だと思った緩みが、遠慮なく彼女達にプレッシャーを与える。
『えへへ、これなら……ぁ、あれっ!?』
『こ、このっ、このっ!』
しかし、二発目、三発目となっていくと、まるで的に吸い込まれなくなる。
歩くだけでも人間の体は上体が揺れ、それに釣られるように銃の銃口も上下を繰り返す。
照準もぶれていき、瞬間的に的に重なるところで撃とうとするも、一瞬の出来事にタイミング良く引き金を引けずにいる。
何でと困惑する姿も、若かりし頃の……といっても数年前だが、そんな頃の自分が重なり、クスッと微笑みが溢れていく。
「膝です! ちゃんと膝を曲げて、前に身体を倒して、振動を吸収してくださいっ」
歩くだけで発生するブレを沈めるため、膝を曲げて前に身体を倒すのは重要な事。
膝が上半身を支えるサスペンションとなり、ブレを小さくしていき、前に身体を倒すことでほんの僅かに発生する発射時の衝撃を身体で受け止めて殺す。
言われるがまま、記憶にある光景をなぞりながら少女達は射撃を繰り返すと、徐々に的に黒い焦げを刻み始める。
そして、折り返し地点、後退の動作へ。
『……にゃっ!?』
『わ、わわっ!?』
前傾姿勢という格好で後ろに下がると、爪先を地面に擦るようにして歩を進めるが、足元は踏みしめられた土で凹凸が多く、グラリと足元が揺れる。
更にバランスをとるのが難しくなり、そこらで尻もちを突きそうになりながらも、踏みとどまる少女達。
下がるのはもっと難しいと体感しながらも、前へ進み、後ろへ下がりと往復を繰り返し続ける。
■レナーテ > 先に巣立っていた少女達と肩を並べるまではまだまだ時間がかかる。
そんな彼女達の訓練指導は続いていき……。
ご案内:「ドラゴンフィート・組合敷地内」からレナーテさんが去りました。