2018/07/10 のログ
ご案内:「王都 繁華街」にルークさんが現れました。
ご案内:「王都 繁華街」からルークさんが去りました。
ご案内:「王都 大通り」にルークさんが現れました。
ルーク > 太陽の光が日に日に強くなって大地に降り注ぐ。
芽吹きの春から、成長の夏へと季節は巡る。
日中の熱さに、労働者の男たちは上半身裸になりながら汗を流して、子供たちは水遊びに興じている。
暑さの中にあっても、城へと続く大通りに面した店舗では賑わいを見せていた。
平民地区の方では、盛んに呼び込みの声が響いて日用品や食材を買い求める人々が行きかい、城に近くなればなるほどに店の様相は変化して落ち着いた雰囲気の高級店と富裕層の客と変わっていく。
ちょうど、富裕地区と平民地区の合間に当たる場所を白い日傘をさしてルークは歩いていた。
照りつける太陽の光に肌を焼かれることなど、こういった生活を送るようになるまでは気にすることもなかったが、立場が変われば気遣う場所も変わる。
貴婦人の嗜み、というものらしい。

(確かに、日傘で日陰を作ると暑さが和らぐ…。)

以前の立場から見て、隠密性や機動性というものを考えると邪魔の一言で片付けられるものだが、こうやって歩くだけなら暑さを和らげてくれるアイテムであり、優雅さのような雰囲気を作り出してくれる。
暑さや日焼け対策であると同時に、富裕層の女性にとってのお洒落のひとつなのだろう。
そんなとりとめもないことを考えながら、通りを歩けば同じように日傘をさす女性たちが目にはいる。
そんな女性たちを横目に、更に通りを歩いていくとショーウィンドに色とりどりのお菓子が視界に入り、足を止めた。
情報通り、通りのこのあたりには菓子職人たちがいくつか店を出しており、女子に人気のスポットだった。

「………。」

じっとショーウィンドの中の宝石のような砂糖菓子や、焼き菓子を眺めて、視線を少しだけ動かしては考えるように沈黙する。
此処に来るのが目的で足を運んだわけだが…。
いざこうやって、様々なお菓子を目にするとどうしたものかと、考え込んでしまった。
――種類が多すぎる。

ご案内:「王都 大通り」にアーヴァインさんが現れました。
アーヴァイン > 集落での仕事を終えて戻ると、執務室にも私室にも姿がない。
丁度通りかかった乳母に問いかけると、街へでかけたという。
珍しいと思いながらも、普段にない行動に興味が湧けば、祟り神と悟られないように、私服に着替えて城をでた。
鳥達とのネットワークに使う念話で問いかければ直ぐに位置はわかるだろうけれど、それでは面白みがないと虱潰しに辺りを歩き回る。
すると、甘い香りが漂う一角に揺れる影の一つに、目が止まった。
普段は使うこともなさそうな日傘の下から覗ける横顔は、忘れるはずもない。

(「ルークが……菓子屋に?」)

普段の彼女の様子から、わざわざそんなところにやってくる様なものは感じられず、訝しむように軽く首を傾げていく。
通りかかっただけだろうかと思いながらも、遠目にその様子を見ていると、明らかに足を止めていた。
少し気になった…というよりは、何かを検分するように視線はショーウィンドウの向こうへ。
そんな後ろ姿を数分ほど見つめていたが、薄っすらと笑みを浮かべると、彼女の方へと近づいていき、隣へ立つように並ぶだろう。

「誰かに贈るのか?」

挨拶代わりに、問いかけながら普段と変わらぬ笑みを見せる。
ガラスの向こうには、綺麗に形が整えられた焼き菓子や、ガラス細工のように象られた砂糖菓子やらが並ぶ。
それほど甘党だったという記憶はないが、送る相手も浮かばなかった。

ルーク > (…焼いてあるもの、の方が…傷みにくい…とは、思うけれど…焼いてあるものだけでも、たくさんある…)

城での食事の時に、デザートで出されるブリュレや生クリームを使ったものの方が、特に暑い季節なだけに口当たりはよさそうだが、そういったものは日持ちしないのだろう。
ショーウィンドウに並んでいないことから、察するものの焼き菓子と一口にいっても、クッキーのような硬いものからフィナンシェのような柔らかいものまで多岐にわたる。
城での生活を送るようになってから、口にする機会ができたものの積極的に摂取しているわけでなければ、知らないお菓子も多い。
もっと調べてからくるべきだっただろうか、と悶々とショーウィンドウの前で考え込んでいれば、日傘の影から誰かが隣に立った。

「――ア…ヴァイン、さま…。あ、の…どうして…。」

慣れ親しんだ気配だからこそだったのか、反応が遅れた。
声をかけられて、はっとしたように視線をお菓子から隣の人物へと向ければ、そこには笑みを浮かべたアーヴァインの姿があった。
数度琥珀の瞳を大きく瞬かせて、問いを口にしていた。
予定では、彼はまだ集落にいる時間だったように記憶していたからで。
内緒事…というわけではなかったが、馴染みのないこんな場所に足を向けた理由に、少し気恥ずかしくなって日傘を少しだけ傾けると彼から顔を隠すようにして。

「…その…情勢が不安定になって、集落の少女たちや秘書のレナーテさんなど、忙しくされている、ので…何か、できたら、と……。」

日傘で彼から顔を隠すようにすれば、小さめの声がそんな風に彼の問いに答える。

アーヴァイン > 隣に並ぶまで、全く気づく様子がなかったのを見るに、かなりショーウィンドウの向こうへ意識を向けていたのが伺える。
そんなに熱心に見ていたのは何かと確かめても、それほど珍しい菓子が並んでいる様子もなく。
問いかける言葉に視線を戻していけば、瞳を瞬かせる様子にクスッと柔らかに微笑みを浮かべていった。

「仕事が思ったより早く終わってな、城の中に姿がないから乳母に聞いたら街に出たといっていた。それで、散歩がてら探し回ってみたわけだが……」

と、ここまでやってきた経緯を語ると、視線は再びショーウィンドウの方へ。
見つけた彼女は、何故かここにご執心だったと言うように目配せして、言葉なく答えていった。
ふと視線を遮るように日傘が傾けば、頭から疑問符が浮かびそうな心地でそちらへと視線を向け続ける。

「……差し入れというところか、ルークの心も成長したものだ」

今までの彼女なら、そんな気遣いまではしなかっただろう。
その成長具合に嬉しそうに目を細めると、顔を隠させる代わりに、日傘の下から手を滑り込ませていく。
白い頬へ掌を重ねていけば、優しくそこを撫でていき、その気遣いを確りと褒めていった。
ならば尚の事、一番いいものを送らせてやりたいが、自分が全て助言してしまうのも良くない。
撫でながらショーウィンドウの向こうを見やりつつ、暫し考え込み……すっとその奥を指さした。

「日持ちするのは焼き菓子なんだが……夏場だと甘みと水気を吸うのは、結構喉にキツイ時がある。生菓子だと、口当たりがいいので食べやすいが、直ぐに持っていっても、氷室にいれて数日保つぐらいだな」

大体は彼女が思っていたことと重なるだろう。
しかし、見ていた場所と少し異なるところに陳列された菓子へと指先を向けていく。
そこには、半透明の小山に色とりどりなベリーを閉じ込めた一品が並ぶ。
白く濁りが掛かっているのも、そこにライチの果汁が混じり、その色味が光を遮るからだろう。

「ああいうゼリーも食べやすいと思う。あれも冷やしても、それほど日持ちしないが、生菓子よりは少し保つだろう。後は……ソルベも取り扱ってるみたいだな、すぐに持っていけば溶け切らないとは思うが、数があるかだな」

流石に日差しの当たるショーウィンドウに出せなかった品に、果汁を混ぜ込んだソルベもあるようだ。
ガラスの端に貼り付けられた紙には、葡萄のソルベが描かれている。
色んな種類から一つ一つ選ぶよりは、大まかな分類から選ばせるほうが決めやすいだろう。
幾つか説明を加えていき、どうすると言いたげに視線を彼女へと戻していった。