2018/06/20 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区/路地裏」にカインさんが現れました。
カイン > 「……さて、これで一丁上りと来たもんだ」

貧民地区の路地。複雑に入り組んだ路地の中でも繁華街に程近い路地の一つで、
大きな音を立て昏倒した男が地面に転がる音が響き渡る。
それに重ねるようにして軽い調子で声を上げるもう一人の男の姿があった。
パンパンと手を払いながら、今しがた自分が張り倒した男を見下ろし腰に手を当てる。

「全く、用心棒のいる所で女に乱暴しようとは度胸があるやら無謀なのやら」

抜かれた形跡のない剣の鈴口を鳴らしながら、
手馴れた様子で男の指と手首足首を縛り上げていく。
この男が自分の護衛する娼婦に手を出して路地に引きずりこもうとした所を、
カインに見咎められて逃げたのを追いかけたのが事の顛末だ。
見ればそれなりに身なりのいい風体である。
大方、平民地区辺りでよく遊んでいる手合いなのかもしれない。

カイン > 「こっちじゃ問答無用で張り倒されることの方が多いんだがな、っと。
 おう、連れていけ連れていけ」

平民地区辺りならばもう少しこの男も穏便な方法を考える所だが、
何せ場所が場所である。この当たりで乱暴して身分で穏便な対応を取ってもらえる事はまずない。
むしろ、下手に身分があるのならば面倒な事すらあるのだ。
それを体現するかのように表れた迷惑をかけた店の店員が男の引き渡しを要求してくるのを、
二つ返事で引き渡して引きずって行かれる姿を見送ると軽く呆れた様子で嘆息を漏らし。

「ありゃ相当吹っ掛けられるな、高い授業料と諦めてもらうしかないが」

散々脅された挙句に慰謝料と称して金をふんだくられるのは想像に難くない。
自業自得だけに肩を竦めるだけに留めつつ通りの方に視線を向ければ、
絡まれていた娼婦が手を振るってる所が見える。
応じて見せればすぐ笑顔で次の客を探しに行く様子に頬を引っ掻き。

「何というか逞しいモンだな」

そんな曖昧な感想が口をついた。

カイン > 「今回は後に引く様な面倒事にはならないようで何よりだけどな、っと」

近場に放置されていた木箱の上に腰かけながら繁華街の方を伺えば、
護衛対象として依頼を受けている女性の数も随分と少ない。
むしろ先程挨拶を交わした女性が最後の一人であった様子で、
それも目の前で客を捕まえて宿の中に入っていくのを眺めれば肩を揺らし。

「これでお役御免、だな。酒でも飲みに行くかねえ」

馴染みの店はちと遠い。かといってこの当たりの酒場となると、
初見への対応は知れたものである。どうしたものかと顎に手を当て考えあぐね。

カイン > 「ん…そろそろ戻らなきゃ仕事に差し支えるか」

しばらくぼんやりと時間を過ごしていたものの、
気が付けばいい時間になっている。
あまりにのんびりし過ぎたかと硬くなった体を伸ばして音を鳴らしがてら、
繁華街の方へと足を向けて去っていくのだった。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区/路地裏」からカインさんが去りました。