2017/12/20 のログ
ご案内:「洞窟」にレナルドさんが現れました。
ご案内:「洞窟」にアリステラさんが現れました。
レナルド > ――遣ること自体はそう珍しいものではない。

越冬の為に食物を食い荒らし、時に山一つを根こそぎ丸裸にする魔物を掃討して欲しいという依頼だ。
この時期を鑑みれば珍しいことではあるまい。如何に人間と比べて頑丈かつ獰猛な生き物でも、ただ備えもなく眠ることはない。
事前に出来る限り食い溜めをして、長きに渡る眠りに備える。
王都から離れたそこそこ栄えた村を中継し、赴くは所々禿げ上がった箇所も目に入る山。その洞窟に踏み入る。

「“路照らす星明りよ――宿れ”」

最初にやることは抜き放つ剣の刃に、魔法の光を与えることだ。
腰に付けたカンテラもあるのだが、体温を感知して動く類の魔物等が居ることを考えると、これも時と場合に寄る。
火種もかねて最低限火は灯したまま、明かり窓を閉じた上で前に進む。剣を松明代わりとして前に進み、慎重に周囲を見る。

足元も確かめる。二足歩行と考えるには足が多く、連れ添って歩くには足跡の配置がおかしい。
依頼書の内容を思い出せば道理ではある。何故この時期にと思うが、所詮は魔物だ。人の都合通りには動くまい。
やれやれ、と黒い長衣に覆われた肩を揺らして、前を見よう。奥に蟠る闇の向こうに用がある。

アリステラ > 森や山には慣れているし、もちろん洞窟に入ったことも珍しくない。
獣や魔物の足跡を追うこともあった身として、今回の依頼に同行することになったのは、先日酒場で顔を合わせた娘だ。
教えてもらったギルドに行き、彼の名を出せば、すぐに通じて…仕事も紹介してもらった。

ほのかな灯の下、闇に馴らした目で洞窟の床を見れば。
確かにここを住処にしているのだろう、出入りする足跡がいくつもついている。
その重なり具合をみれば、一番新しいものは…奥へ、と向かうものか。

「いまは…足跡からすると、奥にいるようですね」
小さな声で囁いて、そちらを指さす。

「どういう魔物か、わかってましたっけ?」

依頼人が一般人だと、魔物の判別がついていないことも多い。
よく似た魔物を取り違えていたりすることもあるので、念のためと尋ねて。

レナルド > かつての騎士としての武勲によるものではないが、属するギルドではそこそこの実力者として扱ってくれている。
だから、か。折よくギルドに詰めていた己に来客があると告げれば、危険とは引き換えに多少は実入りのあるこの依頼を示してくれた。
自分一人でどうにかし得る可能性はあるが、さて、問題は一つ。この相手の実力の程である。

「ああ、そうみたいだ。……一番堅実なのは毒炎でも焚いて燻り出すことなんだか、まぁ、一番愚直な手立てで行こうか」

同行者に応えつつ、足元に遣った目を戻して前を向く。
この経路を行き来した痕跡はしっかりある。なら、奥に居ることだろう。今のうちに事を為すべきである。

「嗚呼、一言で言うとな。蟲だよ。アリの類に近い手合いだ。
 個体数が少ないとなると巣から出された折に、運悪く冬を迎えたらしい」

如何わしい触手の類ではないが、これもまた面倒な類である。何よりも単純明快な力と強度こそが其の侭、人間と同じサイズで襲ってくるのである。
駆け出し程度のものでは歯が立つまい。個体数が極めて少ない今のうちに、速やかに討たねば冬が開けた後が大変だ。
大きくなれば、増えれば増える程、食物として浪費される植物類が根こそぎ失せる。貴重な草木の区別なしに、だ。

慎重に進みつつ、低い声で答える中、奥から聞こえるだろうか。キチ、キチキチキチ、と軋むような音が。

アリステラ > 「洞窟の構造がわかれば、いぶりだすのもいいですが…アリ、ですか」

巨大アリ、というやつだろう。
ほぼ人間大なうえに力も強いし、体表も固めだ。足跡からして、まださほど数はなさそうなのが救いか。

「冬眠前の食物荒しとなると…冷気には弱そうですね。あるいは、炎で焼くか――」

きしむような音はたぶん、アリもどきが顎を鳴らす音だ。
数匹はいるだろうと見当をつけながら、対策を練る。

固い体表では、弓では貫けないかもしれない。
ただ、限られた空間で使う魔法となれば…炎はこちらにも危険がある。
となれば、冷気の魔法のほうがいいかと検討しながら、奥のほうを見て。

「入口のほうは、私のタカ。ラピスが見張っていますから、帰ってくるような個体がいれば知らせてくれるでしょう。
奥にまとまっているうちに…やりますか?」

レナルド > 「ああ、そうだ。翅があるから、翅アリだな。冗談でも何でもなく、面倒だぞ」

女王候補となり得る個体だ。その護衛も兼ねて出てきた2~3体程の個体も、同じように翅アリだったらしい。
放っておけば巣を作り、増殖をする。その後に待ち受けている光景とはより厄介かつ面倒この上ないものだ。

「魔法は使うなら、炎以外で頼む。
 それと魔法で片付けられると思わん方が良い。狭い中で使われる半端な術の方が怖い」

使ってもらうならば、補助系の類の方がいい。
下手に大威力の魔法を使われた場合近接戦を挑む味方、つまりは自分に被害が出かねない。
或いは矢に対して魔力を重ね、貫通性を上げる方が一番間違いがないことだろう。今はまだ、そこまでの助言や教導はしない。
お手並み拝見ということだ。今を生きるためにその実力を試し、欲する先をかなえうる力の有無を見る。

「いいだろう。俺もそう考えていた。……突っ込むぞ」

この状況だと、別の個体の帰還或いは乱入の可能性は少ないだろう。
最低限の用心程度として、と頼みながらやがて進む先に広がる開けた空間に目を細める。
思ったよりも天井の高い空間がある。さながら、古代の墳墓にも似た有様だ。否、実際そうだったのかもしれないが。
円形の空間に都合、3体の黒い巨大な蟲が積み重ねた動物の死骸や草木を咀嚼し、顎を鳴らす。

気づいたか? 見知らぬ匂いに頭を巡らせ、威嚇するように啼いては翅を震わせる。
――風が起こる。羽音に含まれる唸りが鼓膜どころか脳髄を叩くように響く。
その有様に顔を歪めながら剣を突き出して、突っ切る。前に進む。狙うは右手側、護衛を務める巨大なアリだ。

アリステラ > 「つまり、…飛ぶんですね」

羽有か、と頷きながら軽くうなる。
巣分けのときにでてくるのは、小さなアリと同じらしいが。

「承知しました。それなら冷気を込めて、羽と足をまずたたきます」

確かに、彼の言うとおり。
大威力の魔法を洞窟のような閉ざされた空間で使うのは、いろいろな意味で危ない。
騎士の剣が振るわれるのを考えるなら、まず相手の機動力をそぐべきだろう。

その身がどれくらい固いかにもよるが、アリの羽には、さほど強度はないはずだ。
開けた空間を前に大きくうなづくと、弓をかまえ、矢をつがえる――

相手は、3体。
羽を震わせる音波に奥歯をかみしめながら、彼の援護も兼ね、まずは…右手側の巨大アリの羽を狙う。

*冷気よ集え*

短い詠唱だけで、弓につがえた矢を包むのは、明らかな氷の冷気…真冬の極寒の温度のゆらめき。
それをまず右手のアリの羽へと放ち、すぐさまもう一度、もう一匹の護衛役らしいアリの羽へと冷気の宿す矢を放つ――

レナルド > 「この中で戦うに当たっては、限界はあるのが救いだな」

飛んで逃げられるという最悪の結果は防せぐことが出来る代わりに、相互の真正面からのぶつかり合いを余儀なくされる。
望むところである。飛ばれた場合、愛馬を以て追いすがることができるか否か、というレベルになってしまう。
冷気の使い方にはそれでいい、と。小さな頷きを以て応えよう。

「――まずは右手側から潰す!」

さて、まずは、だ。
羽音に籠る可聴域外の鳴動が為す阻害に微かに口の中で呪文を紡ぎ、身体に魔力を流すことで抵抗と為す。
その上で突っ込めば、先行して氷による支援が向かう。
いずれも命中すれば翅を凍らせ、その動きを阻害する。つまりは立体的な機動や翅音による害を抑えることが出来る。

「しゃ、ッ!!」

その上で剣を奮おう。縦一文字の剣線が向かい来るアリの頭を断ち割り、切り裂く。
刃の軌道を彩るのは魔力の輝きだ。剣に施した明かりとは別のもの。不浄を斬り、清める威である。
一撃を以て屠れば、そのままもう一体の護衛の方に駆ける。時間を掛けてはいられない。