2017/10/26 のログ
リス > 「色々と、常識が違うみたいね………。」

 まあ、彼女はこの町の子ではないのは確かである。ミレー族だとは思うのだけど、どこの部族なのか。
 少なくとも、商会で飼っているミレー族の仲間ではないのは確かだ。
 同じ種族がいるなら直ぐに同種がいろいろ教えて食えるだろうし。
 ミニマムなボディを眺めて、しばらくして考えるのをやめた。
 あれこれ考えすぎても、失礼だろうかと。

「ええ、まだあるわよ。」

 お茶菓子は基本多めに用意しておく。
 残っている分を思い出して、湿気る前になくして新しいものを用意したほうがいいか、と考える。
 だから、残りの分を持ってくることにする。

「お茶のおかわりは、欲しい?」

 多分嫌がるだろうな、と思いながらも、問いかけてみよう。
 挑戦する心はあるのだろうか、と。

ヴェオフラム > 「わうぅぅううっ!」

茶菓子のストックがまだあるという答えに、獣少女の顔がぱぁっと花開いた。
一旦は落ち着いていた尻尾が、再びわさわさと揺れ始める。
しかし、お茶について言及されれば、尻尾の動きがぴたりと止まり

「…………………。」

苦虫を噛み潰した顔とはこれの事かと非常に納得の行く表情を浮かべてテーブル隅に押しやったティーカップをみる。

――――しかし、たしかにいい匂いはしていたのだ。
先程はあまりの熱に味を確かめる余裕もなかった事だし……なんてあれこれ難しそうな顔で考え込み

「………いただく。」

雄々しきチャレンジャーの表情で一つ頷いた。
が、これだけは言っておかねばなるまい。命に関わる案件だ。

「あついのは、いけない。」

神妙な顔をぷるぷると横に振って、そこだけは気をつけてほしいと願う。

リス > 「嬉しそうね、もう。
 でも、今回だけ、よ?
 ここはお店なんだから、毎回はあげられないんだから。」

 彼女の嬉しそうな笑顔に、ひとつ釘を刺しておこう。
 ここに来ればいつでもタダで、色々貰えると思われても困るのだ。
 コレでも商人である、どの過ぎた施しはできないのよと。
 人道的なレベルであれば、友人との楽しみのためのお茶菓子であればまだいいのだけれども。

「―――あら。」

 意外なチャレンジ精神に、目を少しだけ見開いて。
 そう、と楽しそうに笑ってから、新しくお茶を作ろう。

 今度は、別のグラスに、氷を入れて、濃い目に作ったお茶を入れてアイスティ。
 今の時期にはちょっと時期はずれかしらね、と思いながらも持ってこよう。

「今度は、すごく冷たいからね?
 気をつけて飲みなさいな?」

 気をつけてという相手に、こちらからも注意を一つしながら、グラスと、砂糖。
 クッキーをおいた。

ヴェオフラム > 目ざとく刺された釘に対して、獣娘が返すのは、やはりわかっているのかわかっていないのかよくわからない繰り返しの首肯。
大丈夫、皆まで言うな。的な顔をしているが、次に来たときもきっと口にするだろう。「くきぃ、ない?もぉ、ない?」と。

ともあれ、彼女が新たに入れた紅茶とたっぷりのクッキーを持ってきてくれたのならば、ごくり……。
立ち会い中の剣士の如き真剣な表情で紅茶を見つめ、恐る恐る鼻先を近づけくんくんすんすん……。

匂いはいいのだ。
蜜をたっぷりと含んだ花の様に芳香な……。

「わぅ………?」

何かに気付いた様な顔が、紅茶と傍らで微笑む彼女の胸元を見比べる。
不意に椅子から立ち上がり、挨拶でもするかの様な気軽さ―――このおっぱいは自分の物だと勝手に決めつけているような所作―――にて胸の谷間に鼻先を埋めて匂いを嗅いで、再びテーブルに戻って紅茶の香りを嗅ぐ。
なんとなく似ている様な気がしなくもない。
どちらもいい匂いである。
もしかしたらすごく美味しいのかも知れない。
そんな期待感に淡い胸の膨らみを高鳴らせ、それでもやはり恐々とグラスを持ち上げ、ぷるぷると獣尻尾を震わせて、ぢるる……っ。
小量の紅茶を口に含む。

リス > いやぁな予感がする、彼女のこの返答を信じて良いのだろうかと、感が告げる。
 しかし、それに関しては確証も何もないものであり、信じていいものでもない。
 なぜなら、この感を信じることは、彼女を疑うということでもあるのだし、彼女は人を騙すような子ではないことは短い付き合いではあるが判る。
 それくらいの人を見る目は持っているつもりだ。

「?」

 急に真剣になった彼女が近づいてきて、胸元を嗅ぐ。
 そして、紅茶を嗅ぐ。
 紅茶は芳香のある飲み物だし、匂いがついたのだろうかとも思う。
 よくわからないので、ただきょとんと眺めているだけしかできなかった。
 しばしの間の、彼女の行動を眺めていたら、紅茶を口に含み始める。
 紅茶には飲みやすいように砂糖を入れてある。
 高級品だからたっぷりとは入れられないが、甘味は感じるはずだ。
 彼女でも飲みやすいはずだろうと思いながら、じっと眺める。
 どんな反応だろう、ドキドキしている自分が居る。

ヴェオフラム > 口に出さない彼女の信頼が重い。
次に出会った時ひどくがっかりした顔をされそうで恐ろしいが、今の獣娘にそんな未来の事なんて分かろうはずもないのだ。
まぁ、お金の持ち合わせも無いわけではなく、フラムとしてもリスの事を餌をくれる都合のいい女だなどと考えているわけでもないので、次に来る時には手土産の一つも持参するかもしれない。
ちゃんと覚えていたらだけども。

ともあれ今は、紅茶初体験の時。

「………………………。」

一口含んでテイスティング。
無言のままに嚥下して、グラスをぐいっと傾けた。
んごっくんごっく!
瞬く間に空になったグラスを置いて、獣娘は誇らしげに宣言した。

「おかわりをしょもうする!」

きっちりと砂糖の入れられた紅茶は美味しかった。
傍らに砂糖を置いたのだから、わざわざ入れておくこともないだろうなんて考えて無糖の紅茶を出していたなら、結果はまるで違ったものとなっただろう。

可愛い顔をしていても、さすがは商人。
客の好みを見抜く目は鋭いと言うことか。

ともあれ、舌先への不意打ちというトラウマも忘れ去り、紅茶はフラムにとってクッキー同様のお気に入りと化したのだった。
伸ばした手指で2枚3枚まとめてクッキーを放り込み、まん丸に頬を膨らませて幸せそうにもっちゃもっちゃと咀嚼して、最後に冷たい紅茶でごくごくする。
震える尻尾が獣少女の喜びをそのまま表に表していた。

リス > にこにこ微笑みを零す少女。
 無言のプレッシャーを無自覚に送り込んでいるとは本人は露にも思わず。
 少女だって失望するかどうか、そんな未来のことはわからないのだ。
 お土産が欲しいわけではない、ただただ、忘れないでいて欲しいだけなのだ。

 すごく、長い時間にも感じられるフラムが紅茶を堪能する時間。
 先程ものすごいトラウマレベルで悶えていたが故に、心配する感情もある。
 これで美味しくないと言われたら、きっとこの先彼女は紅茶を飲まないのだろうとも思える。

 まずは、一口……そこから、グラスを煽るフラム。
 一気に嚥下していく、喉が見える喉が見える。

「わあ、おめでとう!」

 嬉しそうにおかわりを求める彼女に、ぱちぱちと拍手。
 なぜか?わからないけどなんとなく。
 砂糖をあらかじめ入れた理由は、先程砂糖壺に一切反応してなかったから、わからないのだろうな、と思ったから。
 今回もやっぱりわかってなかったのだろう、入れておいて良かった。

 それだけの、事である。
 紅茶と、クッキー、これらは両方揃うととても美味しい。
 片方だけでも美味しいが、相乗効果というやつだ。
 クッキーでぱさついた口を紅茶の香りと甘みが流してくれる。
 こう、楽しそうに頬を膨らませつつ食べる彼女に、おかわりの紅茶を注いでみせる。
 嬉しそうな顔は見ていて幸せでもある。

 落ち着いた様子なのを確認して、自分も覚めてしまった紅茶を一口。
 はふ、と長い吐息を。

ヴェオフラム > 品のいい優しげな笑顔をは変わらぬのに、背筋に感じる冷気はどうした事か。
ぶるりと尻尾を震わせつつ、頻繁に彼女に集るという愚を犯さないようにしようと獣娘は本能に刻み込む。
残念ながらおつむの出来はよろしくないので、あっさりと忘れてしまう可能性もなくはないけれども……。

そんな一幕をはさみつつ、一気に飲み干すアイスティは美味しかった。

「…………っ? ―――わ、わふぅ~~っ!」

出された紅茶を飲んだだけ、しかも美味しかったから飲み干して、おかわりを願い出ただけなのに何故か送られる可愛らしい拍手。
そんなよくわからないノリに獣娘も胸を張る。
なんだか大人になったような気分である。

その後は幸せなお茶会の態を見せたはずだ。
上位者認定したはずのリスの分まで全部平らげる勢いでクッキーを食らい、丁度いいタイミングで注いでもらった紅茶でぱさついた口腔を上品に潤す。
紅茶のほのかな苦味がクッキーの甘さを際立たせて、ただでさえ美味しいクッキーがますます美味しく感じられた。
そんな初体験を終えた獣少女は、餌付けをされた小動物の如くごろにゃんと彼女に擦り寄って、今度はたっぷり甘えるのである。

彼女が仕事の続きをするのなら、耳朶を甘噛みしたり、机の下に潜り込んでスカートの中に顔を突っ込んだりといったちょっかいを掛ける。
彼女が自室に戻って眠る準備をするのなら、獣娘も当たり前みたいな顔をしてついていき、服を脱ぎ捨て彼女の隣に潜り込み、ぬくぬくと幸せな暖かさに包まれて眠りにつく。
忙しそうな女店主が甘えたがりの犬少女の相手をどれくらいしてくれるかわからぬけれど、なんだかんだと優しい彼女の事である。
きっと犬少女は幸せなひと時を過ごさせてもらえた事だろう。

リス > 大丈夫、余りにもひどいのならば。
 首にエンゲージリングをはめられて、ご主人様限定のえっちなお仕事に従事させられてしまうということは、間違いはない。
 そうなるかどうかは、まあ……きっと今後次第だと思われる。

「おめでとー!!!」

 なんか嬉しそうだ、胸を張っている。
 ならもっと褒める、うん、何も間違ってない、ノリに乗っているとも言える。
 砂糖を抜けばきっともう一歩というところであろう。

 少しだけ、マナーを忘れたお茶会。
 楽しければいいのだと、会話して、お茶を飲んで、クッキーをほおばる姿を眺める。
 そんなお茶会が終われば、お仕事のお時間。

 とはいえ、お仕事自体はだいたい終わってるので、フラム連れてオウチに帰って。
 彼女を風呂に入れて自分も風呂に入って。
 寝るのについてくるなら、一緒に寝るのだろう。
 多分寝るまで頭を撫でて、朝まで眠りこけるのだと思われる。

 そんな、日常の一幕。

ご案内:「トゥルネソル商会 王都・マグメール店」からヴェオフラムさんが去りました。
ご案内:「トゥルネソル商会 王都・マグメール店」からリスさんが去りました。