2017/09/08 のログ
■エアルナ > 「ありがとう!じゃ、おいでよ、旅人さん」
交渉成立。銅貨と水晶を受け取れば、にっこり笑い、子供が袖を引いて自分の姉弟のほうへと連れていく。
もう話が付いてたのだろう、そばまで行けば、すんなりと子供たちが順番を譲ってくれて…3人そろってお辞儀を一つ。
お小遣いと水晶に、はしゃぎながら去っていくのを見送れば、あっというまに行列の前のほうへと収まれる。
「いいことしましたね、なんだか」
水晶の効果を知っているだけに、思わず笑みも浮かんで。
もう少しで入れる店のほうからも、なんだか甘いかおりがしてくる。
■マティアス > 「助かるよ」
実にいいことをした、と。そう笑いながら子供たちの案内に預かろう。
手持ちの資材と言えば資材には違いないが、大損ではなく、加工の手間を除けば必要経費として割り切ることが出来る。
如何に急ぐような旅ではないのだが、此の侭当てもなく順番を待ち続けるよりはずっといい。
ローブの裾を揺らしつつ、順番を譲ってくれる子供たちに笑いかけて、この人の列に混じろう。
周囲から向け遣られる、ズルイ、とかアリなの?という視線はあえて、笑顔の仮面を被って受け流して。
「ちょっとばかり、ね。……功徳があったのかな、そろそろのようだよ?」
いいことをすれば、相応の見返りはあるということらしい。
どうやら、相当の時間あの子供たちは列に並んで待っていたのだろうか? 先を見れば、順番はかなり近い。
程なくすれば、順番が来ることだろう。あとはこの香る風味に物珍しさを覚えつつ待つだけだ。
■エアルナ > 周囲の視線はちょっと気になるが、旅人なのは事実だし、この街にずっといるわけでもない。
貴重な機会は、ありがたく活用しようーーちゃんと対価も支払いずみなのだから。
まもなく順番が来て、店の中へ入れば、もう人目も気にならない。
氷菓を作っているせいか、店の中は外より涼しく、心地いい。
そして、その肝心の氷菓は…ほんのりオレンジっぽい色合い。
小さな果肉がいくつか乗せられ、なんというか、本来の果肉も甘いのだろうな、というどこか上品な香り。
「これは…あれ、ですね?」
わかった、とばかりに。答え合わせのように、師匠でもある青年を振り仰いで、にっこり笑う。
■マティアス > 既に商談は成立しているのだ。
今後、あの子どもたちがどんな風にするかは分からないが、恐らく小遣い稼ぎにもなるのではないか?
そう思う程の手際の良さであった。だから、余計に他から何か言われる筋合いも何もない。
店となっているのは小さな商家と思しい建物の前に日除け、雨除けとなる天幕を張った場所である。
風通しの良さがこの季節だと、余計に涼しく感じられて悪くない。そして、物はという――と。
「……ん、ここまで来ればピンと来るね。甘い瓜の、確か、メロンとかいう果物だったと思う」
しかも、其れも香りのいい品種である。生育させるために非常に手間暇がかかるとも聞いているが、成る程、納得も出来る。
何せ、貴族などに卸すような品物である。
大きく成長させるために複数出来た果実を間引くようなこともあるが、それでも規格に漏れたものはある。
急速冷凍させて、削り出したものがその正体だ。適度な椅子に座り、寄ってくる店員に代価を渡そう。
提示される額は中々お高いが、運ばれてくる品を見れば、納得も出来る。
硝子の器に盛られたオレンジ色の果肉を削り出したものと、それと生果肉が一切れ添えられたという風情のものだ。
■エアルナ > 「ええ。メロン、を凍らせて氷菓にしたものですね。」
元のメロン自体、高級な果実。当然のように美味。
たぶん皮に傷がついたとか、形がよくないとかで、そのまま売るにはちょっと…な、もの。
それの果実の有効活用としては、実に、いい案だろう。
安くはないけれど、今運ばれてきた品をみれば、異論はあるまい。
二人掛けのテーブルに座り、氷菓の香りと見た目を楽しみながら、代金をすませて。
「じゃ、…いただきましょうか。」
あーん、もつけましょうか?
なんて冗談ぽくセリフもつけながら…まずは、さくり。
一口口に運べば、甘い味わいと冷たさが広がる…美味。
■マティアス > 「旨そう、だね。……原価を考えるといや、まあ、無粋か」
もはや、考えるまい。美味しいものを前にしてぐだぐだと考えることこそ、何よりも馬鹿らしい。
美味いものは美味いのだ。それでいいではないか。貴重な物を前にして何を悩む理由があろう。
そして、これを使って食べるということなのだろう。
紙ナプキンに包まれて、自分達にそれぞれ1本ずつ銀色の細長いスプーンが運ばれてくる。
「――ははは、いや、それもそれでいいんだけど、まずはちゃんと味わおうか。」
頂きます、と。簡単に略式の祈りの所作を済ませて、匙を取る。
とても悩ましいとばかりに笑って、まずは一口、そして二口。
味わえば、広がる甘味におぉ、と唸る。普段から食べつけるようなものではないという物珍しさと、何より糖度が違う。
甘い、だが、単に甘いだけではなく、旨味がある。
果汁を果肉ごと凍らせて削ったにもかかわらず、こうも違うのか。この食し方を思いついた人間は、きっと天才に相違ない。
■エアルナ > 「果物も、こういう食べ方だと味が増しますね…夏だとよけい、美味しさがマシマシな気が」
イチゴとか。サクランボとか、割と小さな果物ならそのまま凍らせて食べる…という、魔法使い万歳な方法は覚えがあるが。
それを削って氷菓にするとは、実に斬新で。
削り方にもコツのようなものがあるのか、隅々まで果実の味がいきわたっていて、甘くて美味しい。
サクッとさじですくえる、軽さもまた心地いい。
「これ、…きっと国中に広まりますよ。」
いい案というのは、そういうものだ。
真似をされるし、それで、広まる。
■マティアス > 「面白いね。ただ冷やすだけに飽き足らず、こういう工夫は特にこの季節だといいものだ」
そう、小さな果実程度ならば魔法で凍らせるというのはよく、見習の頃にやったものだ。
芯まで凍らせ過ぎて、泣く泣く水につけて解凍してから食べたという失敗までワンセットであるが。
削り出すための道具もまた、相当工夫したことだろう。
薄く、そしてふんわりと。さながら粉雪の如く氷を削る道具というのは、これも難しい。
きっと熟練した職人に依頼したに違いない、と。舌上で氷が解ける様を味わいながら、思う。
「……――だと、いいね。けど、広まり過ぎると逆に、かなあ」
何せ、この街の名品めいた扱いでもある様子だ。其れが広まるとかえって、稼ぎが落ちるのではないか?
先ほどの子供たちの様子を思う。身なりが悪いという訳ではないが、裕福ではない可能性がある。
ほら、あーん、と。自分の分を一すくいして、相手の方に差し出してみようか。
■エアルナ > 「ええ。芯まで凍らせすぎると、歯が立たなくなりますもんね、果物の場合いくら小さくても。
…いまはちゃんと調整できますよ?」
念のため、言い添えておこう。
イチゴというよりイチゴ型の氷にしてしまったことは、見習のころの思い出でもある。
ただ、凍らせた果実を削りだしているこれは…きっと熟練の職人技だろう。
「…それなりのいい腕がないと、真似はできないとは思いますが」
たぶん、街で一店。できるかできないか。
行列のできる店になれば、あの子供たちのような、小遣い稼ぎの場所にもなるかもしれないが…
「…いただきます。………じゃ、こちらの番ですね」
あーん。ぱく。
目の前の氷菓は同じはずだけれど、こうすると、さらに美味しい気がするから不思議だ。
ひとさじもらったなら、その美味しさにとろけそうになりながら、ご機嫌な笑顔で。
お返しのひとさじを、あーん、と。
にっこり、師匠のほうへとさしだしてみよう。
■マティアス > 「……本当に? とは、言わないよ。けど、良い塩梅だね。ただただ凍らせればいいという短絡さがない」
今はどうだろうか?ちょっとばかり、意地悪げな眼差しを眼鏡の下より送って、口元を綻ばせる。
冗談である。向こうの力量は知っている。今更ながらに、仕損じるようなこともあるまい。
少なくともそう信じている。予想以上に品質管理等、何かと徹底した甘味を味わいながら思う。
「そうだねぇ。ここまでしっかりしていると、同じかそれ以上の格の店じゃないと。
――……ん、頼めるかな?」
逆に王都ではなく、ここだからこそ、でいいに違いない。
王都だと機微の分からぬ貴族や金持ち等が、幅を利かせてかえって駄目にしかねない。
そんな予感を抱きつつ、自分が差し出した匙に乗った一口を食べて、お返しとばかりに出してくる匙に笑う。
其れを前にどうするかなんて、考えるまでもないのだ。
ぱくり、と。喰らい付いて見せよう。傍目からすればいかにもなことを愉しんでやりながら、十分に味わってゆこう。
夏がまだ残る時期だからこそ、頼んで食べられるものを――。
ご案内:「設定自由部屋」からエアルナさんが去りました。
ご案内:「設定自由部屋」からマティアスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 裏通り」にジードさんが現れました。
■ジード > 貧民地区の路地裏の一つ。普段はあまり人が寄り付かない用事のある人間や迷い込んだ人間がふと訪れるその場所で、
ふらりと一人の男が無造作に姿を現す。路地の中でも少し広くなった場所を探し当て陣取り、
手にしたカバンを地面に置く。すると機械仕掛けの玩具の様に
パタンパタンとカバンが開いて大小二つの陳列棚を持つ小さな露店が姿を現した。
棚の上に薬瓶やアクセサリーなど商品を陳列し店としての体裁を整えれば胡坐をかいて店の奥に座り込む。
「よし、それじゃあ開店だ。場所の選択が間違って無きゃいいが」
露天の常として場所選びが悪ければ商品以前に目に留まらないのはよくある事だ。
そうでないことを祈りながら正面の路地を静かに見据えるのだった。