2017/04/03 のログ
ご案内:「ルミナスの森 城」にテイアさんが現れました。
ご案内:「ルミナスの森 城」にイーヴィアさんが現れました。
イーヴィア > ――――……其れでも、諦めなかった。 自分の歩むべき道と努力を信じた…だろ?

(人よりも時間が掛かる事は、必ずしも悪ではない。
たゆまぬ努力の果てに、騎士として叙任された、其の結果こそが尊く
そして、其の後に歩んだ道程こそが、何よりも誇るべきなのだから
再び逢うと誓い、其れを成し遂げた彼女の記憶は、其れでもまだ、ずっと昔に在るのだろう
少しづつ、其れでも、再び其の記憶を手繰り寄せては、自らの歩んできた道を進み行くのなら
――己が出来る事は、其れを、誰よりも傍に居て、見守る事だ。)

―――……御前は騎士になった…騎士として、国を護った。
――焦らなくて良い…御前が歩んできた道だ、真っ直ぐに前を向きな。
まだ…其の先に、御前は居るんだろ?

(――こつり、と、互いの額を、重ねる様にして彼女と触れ合わせた。
互いの瞳を間近に重ねて、穏やかに紡ぐ言葉。
己が彼女の記憶を、予測と偏見だけで無為に形作る事はしない
自らを、正しく思い出せる様に、静かに、静かに、笑いかける。)

……御前も、俺を知ってる。 ……おにーさんじゃない、俺を知ってる。
……其の先に、何が在る? ……何が見える? ―――……思い出せよ、テイア。

テイア > 「諦めてしまうには、王も、師も、ほかの騎士たちもあまりにも眩しすぎた。」

悲しみとは別に、強く強く抱いた憧れの感情は喪失に折れてしまいそうになる心を支え、強く強く焼きついていた。
その憧れが、あの時見た光が女に諦めることを許さなかった。当時のことを見ている視界に、ノイズが混じる。
まるで混成するかのように、過去と未来が行き来して前後がわからなくなってしまう。
歩む記憶の道は、過去と未来にいくつも枝分かれしてどの道に進めばいいのか分からなくなってしまう。
記憶を必死に手繰り寄せようと頭を振る女の頬に男の手が添えられる。
上げた視線の先に、落ち着いた色の紫の瞳があり揺れる二色の瞳を見つめている。
――ああ…記憶にはまだない。
けれど、この色を知っているような気がする。
鏡で見た自身の片方の瞳よりも、どこか柔らかさを含むその色を。
コツリと額同士が重なり、瞳が重なり合う。

「…そう、騎士になって…。異民族との戦いの際に、隊長格の騎士たちが次々に戦死して…この左耳の先も失った。
 私がとった初めての指揮…、そこでの褒章としてルミナスの森からとった姓を授かった。テイア・ルア・ルミナスと…。そして、ルミナスの森を人間の仕組みで区切った領地として賜った…。」

『恐るな、剣をもて声を上げろ。死者の魂すら、この場へ導き勝利を誓ってみせる』

ぼろぼろになりながらも、旗を掲げ味方を鼓舞して戦った記憶が蘇る。
劣勢だった国の軍勢は勢いを取り戻し、勝利を収めたその戦いの功績により貴族の称号、姓と領地を授かったんだった。
そのときについた異名が『ヴァルキュリア』

今から考えれば、領地として授かったといえども、人間に従う気のない森の民と血に染まったあの日から森に出現した結界に、人間たちは持て余していたのだろう。
また場所的にもそれほど価値は高くなかった故に、自分のようなものに賜ることの出来た領地。
けれど、今から考えれば僥倖であったと言える。

前を見ろと、枝分かれした記憶の流れに迷っていた足はまたゆっくりと記憶をたどり出す。
それでも今よりも随分と過去の戦いの記憶の一つを取り戻せば、自身の名の意味を思い出す。
輝ける森から授かったその名の意味を。
女の表情は、記憶が進むにつれて少女のような幼さが消え、騎士としての凛としたけれど現在男に向けるような柔らかさのない表情へと変化していく。


「…私も、そなたを知っている…?おにーさん、じゃない…。おにーさんは、おとうさんとおかあさんに頼まれて、わたしを預かってくれた人で…。
 いや、いや…違う。そんな人物は最初からいなかった…。」

男の言葉に、幼い言葉が再び戻ってくる。
記憶の海の中をいったりきたりと繰り返しながら、少しずつ前へと進む。
現在へと近づく。
そこで、おにーさんという存在が過去にいなかったことに気づく。
では、目の前にいるこの男は誰だ。
何故こんなにも心が安らぐのか
何故こんなにも真摯に見つめてくるのか。
記憶の中に浮かぶ、一時的にでも関係をもった男の姿も浮かぶが目の前の男に噛み合わない。

「――っ……っ…」

また一気に記憶が溢れ出してくる。
記憶の波に意識が押し流されてしまいそうなほどの情報量に、ぐっと女の眉間に皺がよる。

イーヴィア > (――今、自分は女の生き抜いて来た時代を、女の歩んで来た道其の物に触れている
其の瞳は、未だ己に出会った其の頃の瞳ではないのだろう、けれど
少なくとも、己が触れる事は叶わなかっただろう、過去の彼女に逢えているのは
……彼女がまた、元の様に笑ってくれるなら。 己が名を呼んでくれるなら
何よりも得がたい財産となるのだろうと、そう思う。
物語は、英雄の栄光に満ちた側面を高らかに語るけれど、現実が其れだけではない事は判っている
戦いとは、幾多の屍を踏み越えた先に成り立つ物、女が今を生きているのは
其れこそ屍を越えが故に。 其の背に騎士達の魂を背負って居るが故に。
騎士として、名を賜るという勲功を為す事が出来たのは
例え其れがどんな理由や事情があったにしても、栄光である事に変わりはない
其の輝きが、色褪せる理由にはなりやしないのだから。)

………取り戻したのさ…故郷を、自分の力で、な。 ……俺も知ってる。 この森に対する、御前の想いは、な。

(表情は、何処かあどけなさを含んだ少女のそれから、次第に大人びた雰囲気を纏って行く。
彼女は、果たして其の長く広大な記憶の森の、何処を歩んで居るのだろう。
おにーさん、と言う幼き彼女に与えた、偽りの呼び名はもう必要ない
思い出して欲しいのは、唯一つだけ。 本当の、己が名を。
頬に添えた掌が、苦痛めいて歪む彼女を、癒し、あやすかに穏やかに撫ぜる。
もう少し、もう少しだと、自らの心をも落ち着かせながら)

……くだらない所で、出会ったよな。 …けど、御前と会えたから、あんなトコでも楽しかったよ。
……俺にとっちゃ、俺の全てが、あの日に変わったんだ。
だから…、……思い出せない、なんて…、……絶対に、言わせてやらないからな。

(――囁く、戻って来い、と。
こんなにも、御前を待っている。 己だけじゃない、皆だ。
シルキーも、ドワーフも、領民も――そして、子供達も。
皆が、彼女を待っている。
だから――思い出せと、そう、囁く。)

……まだ…幸せになんて、してやれてないぜ…?
……もっと…もっとだ…。 ……御前は、過去で留まるな…!
――……今を…、……取り戻せよ、テイア。

(――顔を、寄せる。
軽く鼻先を触れ合わせ、そして、最後の囁きを、其の唇へと触れさせては
――淡く、淡く。 口付けを重ねようとする、か)。

テイア > 「取り戻したと、いえるのか…?人の世界に染まった私は完全に森にとっては異物だ…。森の民たちが拒絶するのも分かる。」

まだ過去にいる記憶は、自問を繰り返す。
領主、領地といった人間的な区切りも森を捨てて人の世界に出て行った女自身も受け入れられなかった記憶が蘇る。
そこからも、また長い長い年月をかけて今にいたるわけだが結果を見ている男のほうがそのことはよく見えるだろう。

記憶が洪水のように流れ込み、自身が押し流されてしまい壊れてしまいそうになる。
あまりに多い情報と感情は、苦痛さえも伴いぐっと眉間に刻まれる皺は深く表情を歪ませれば、頬を包む大きな手のひらが包み込む頬を穏やかに撫でる。

「――…ああ…そう、か…。何もかもどうでもよくなって、それでも意地を捨てられなくて…。
 祝賀会などと、くだらない宴が開かれて、そこにいたんだったな…。
 貴族の栄光を庶民に知らしめるために呼ばれた、生贄のようなもの、だったか…。」

記憶の洪水の中で拾う音から、ぼんやりとその時の光景が浮かび上がってくる。
壁に寄りかかり、目つき悪く宴を見回していた視線を動かした先にいた男の姿。
目があった瞬間、どうにもバツの悪そうな表情をされたのを覚えている。
酒を酌み交わし、二人で死者を悼み…そして――

「――ん……」

男の部屋で交わしたときのように、鼻がふれあいそして柔らかな唇どうしが触れ合う感触が訪れてそっと女は瞳を閉じた。

「―――…まったく、こんな女を選んだせいで、しなくてもいい苦労までしなければならなくなったんだぞ…イーヴィア…。」

唇が離れ、瞳をひらけばそこには男がよく知る、どこか少し困ったように笑みを浮かべる女の顔があった。
しっかりと紫を二色の瞳は見据えて、男の名を呼び、男だけに見せる微笑みを浮かべた女がそこにはいた。

イーヴィア > ……結論は、急ぐ物じゃないぜ。 ……直ぐには判らないさ、でも、時間が経てば判る。
お前がやってきたことが、間違いじゃなかったって事が、な。

(森に渦巻いていた、負の側面が。 女が森を取り戻したという其の事実だけでは
必ずしも払拭されたと言えないのは、きっと確かだろう。 けれど、時代は変わる。
時は流れ、暗い歴史を乗り越えて再び、森は命を芽吹かせる。
女が長く治め、そして守ってきたこの森は、今は間違い無く、彼女の居るべき場所だ
だから…恐れる必要なんて、何も無い。 前に、まえに進めば良いのだと、そう、囁いては
抱き締める其の腕に、僅か、力を込める。)

……正直最初は厄介だと思ったぜ。 …あんなトコに居る連中なんて碌なモンじゃない。
…でも、御前は違った。 主賓だってのに、ちっとも嬉しくなさそうな顔してたぜ?
だから…つい、構いたくなっちまったのさ。

(――己は、鮮明に覚えている。 忘れる筈も無い、忘れられる筈も無い
あの淀んだ空気の中で、彼女が一声発した瞬間に感じられた、其の凛々しさを、其の清廉さを
庶民へと見せ付ける為だけに催された其の淀んだ空気なぞ如何でも良くなった
宴をやり直し、本当に唯、美味い酒を酌み交わして、そして――)

……幸せにするっつったろーが。 ……其れに、俺ァ覚悟出来てんだって言ったよなァ?
……少しは其の言葉、信じられたかよ。

(口付けが、解かれた刹那。 再び、重なり合った其の二色の瞳は…己の、良く知る彩だった。
困った様な表情の女に、口元へと、大きな弧を描いて見せたなら――こんにゃろ、と、其の後頭部を、ぽむりと叩いて)

――――……お帰り、テイア。

テイア > 領主といっても、森にとっては人間に対する窓口のようなもの。
そういう関係性を築いていくのにも随分と時間がかかった。
溢れる記憶は、まだ混沌としている部分も多くけれど男の言葉にそうだな、と頷いたのは一部なりとも森と築いてきた関係性を思い出したからだろう。

「まあ、碌でもない連中ばかりだな。だからこそ、私もそなたに目がいったのかもしれない。そんな変な気を起こさなければもっといい女と出会うこともあっただろうに。」

全く、とそう囁きつつも祝賀会の後の事を女も思い出しているのか目を細めて、その口調は穏やかで。

「ああ…私のような女に、よく合わせてくれているものだ。
 感謝してもしたりないほどに…。」

ふふ…と、男にしか見せない微笑みを浮かべると微かに笑い声をこぼして頷いて。
幸せにする、と――男は言葉通りにこの上ないほどの幸福を女に与えてくれている。
もし、男が嫌気がさして自分のもとを離れるその時が来たら、素直に男を解放する心構えはもっているが、きっと考えている以上に割り切ることはできない自分がいるのもわかっていて。
それほどまでに、自分の中で大きな存在になっている。

「……ただいま、イーヴィア。待たせてすまなかったな。」

ぽむりと後頭部を叩く手に、くすっとまた笑みを浮かべる。
それは、男と出会った中で変化した女の表情で夫である男にだける表情。
おかえり、と大きな弧を描く唇に、再び自らの唇を押し付けて女からも口づけを送り、体温を溶け合わせる。

イーヴィア > (――もう、気を張る事も無いのだろう。 ……無い、と絶対は言い切れないが、其れでも
今、この腕の中に、この瞳に、女が戻ってきたのは、確かだから。
其れまで、ぴんと張るばかりだった緊張の糸が、一気に緩んで行くかの様な心地を覚えては
―――ふしゅぅ...と、盛大に一度だけ、吐息を零しただろう。)

……クク、そんな可能性の話なんて如何でも良いね。
俺ァ、御前と逢えた事を後悔しないし、これからもしない。 絶対にな。
それに――そもそも、だ。 ……御前だって、もうちょっと粘ったら、俺よりもっと良い男が現れたかも知れないぜ?
だのに、こんな奴を旦那に据えた訳だ。 ……お互い、物好きも良い所、だろ?

(――こんな冗句を、口から紡いだのは何時振りだろうか。
店でも、白でも、どうにも雰囲気が硬くなりがちだった此処最近
少女の頃に戻っていたときの記憶を、彼女が未だ保っているのかは判らないが
もしも覚えていたなら、やはり、普段の彼女が目にするのと違う、男の様子が思い出せるやも知れぬ

――だから、だから。 ……こんなにも、嬉しくて仕方がないのだ。)

……全くだ…でも、無事に戻って来たから良しとするかね。
――……まったく…、……後で、シルキーにも謝って置けよ?

(笑いながら、この城の管理を一手に引き受けていた彼女への労いも忘れずに
そうして、ゆるり、女からの口付けを受け止めたなら、己からも、唇を押し付け、深めて
間違い無く、この腕の中に居るのだと。 そう実感する彼女の温もりを堪能しながら
――ちろりと、唇を柔く、舌先で擽ろうか)。

テイア > 吐息とともに、男の腕からも緊張の力が抜けていく。
それに、ぽんぽんとまわした手で男の背中を軽く叩いて。

「…どうだろうな。男と長続きした経験などなかったんだがな。…もの好き同士、気が合うのかもしれないな。」

この男に会うまでは、去っていく男の背中を見送るだけだった。
そして、その背中を呼び止めようとも、すがりつこうとも思うこともなく…。
もしも、この男の背中を見送らねばならなくなった時に、静かに見送ることができるかどうか…分からない。
もの好き同士といいつつ、二人で笑い合う。
男の表情からは、どこか張り詰めた空気が消えていつもの女に対する柔らかなそれだ。
けれど、最近の記憶…まだすこし混線する記憶の中に浮かぶおにーさんとしての男の顔は、優しいけれどどこか緊張に張り詰めていた。

「10歳の子供の面倒お疲れ様だな、おにーさん?
 ああ、シルキーにも、礼と侘びをいれておこう。…それに子供たちも思い切り抱きしめてやらないとな。」

からかうように、おにーさんと呼ぶその言葉に10歳に退行していた記憶が少なからず残っていることが知れるか。
少女に戻っている自分に、戻っている女自身と、それが分からない子供達を混乱させないようにと会っていなかった。
だから、愛子たちを思い切り抱きしめてやりたいとそう思って。
触れ合う唇同士、何度も角度を変えながら啄み合い体温を溶け合わせる。
男の濡れた舌先の感触が、唇の輪郭を描けば薄く開いて舌を招き入れ、お互いに絡め合い。