2017/03/29 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城 オーギュストの執務室」にオーギュストさんが現れました。
■オーギュスト > 「……へぇ」
王城内、オーギュストは私室で報告書を読んでいた。
あのフェルザの小娘、随分と困った事になっているらしい。
どうやら権力闘争がさらに激しくなりそうだ。
「――にしても」
王族、そして第零師団。
また面倒な連中がしゃしゃり出てきた。
こちらは遠征準備で忙しいというのに。
「まぁいい、放っておけ、好きなだけ潰しあわせろ」
■オーギュスト > オーギュストは権力闘争に興味など無い。
彼が信じるのは力、そう魔族すらねじ伏せる純然たる力だけだ。
権力などというものは、それを効率的に使う為の道具に過ぎない。
必要とあらば力を用いて奪うか、誰かに使わせればいい。
「どうせ王族の私兵と徴税貴族の争いだ。国外対処で忙しいとでも言っておけ」
嘘ではない。嘘では。
「――サロメの調子は?」
副官はまた負傷したらしい。
まったく、はねっかえりな所は治らない。
一度厳しく言っておく事も考えた、が。
「俺が言えたギリでもねぇよな」
■オーギュスト > 報告によれば、かなりの力を持った魔物があの城の中に居たらしい。
このままでは、師団が全滅しかねないと。
オーギュストは書類を睨み考え込む。
「――純粋に強い魔物を城の中に大量に飼ってる、ってのはちと厄介だな」
なんでも次元をずらして存在する魔物だったらしい。
オーギュストが居れば対処は出来るのだが、城の魔物全てをオーギュスト自身で倒すわけにもいかない。
師団の実力、対処能力そのものをあげる必要がある。
「――ってぇなると、師団の装備更新、それに規模をでかくするしかないんだが」
■オーギュスト > そんな予算があれば苦労しない。
そもそもこの遠征費用を搾り出すのにも苦労しているのだ。
さらにはいくつもの新兵器の実験、そして運用部隊の編成。
ここらで一発、金山でも掘り当てたい気分だ。
「予算なぁ……」
面倒な事になってる以上、フェルザ家に媚びるという手は使えない。
ドラゴンフィートの連中に用立ててもらうのも却下。
どこか別の場所から資金を調達しなくては。
■オーギュスト > そんな予算があれば苦労しない。
そもそもこの遠征費用を搾り出すのにも苦労しているのだ。
さらにはいくつもの新兵器の実験、そして運用部隊の編成。
ここらで一発、金山でも掘り当てたい気分だ。
「予算なぁ……」
面倒な事になってる以上、フェルザ家に媚びるという手は使えない。
ドラゴンフィートの連中に用立ててもらうのも却下。
どこか別の場所から資金を調達しなくては。
ご案内:「王都マグメール 王城 オーギュストの執務室」にホウセンさんが現れました。
■ホウセン > 執務室の端。室内照明で照らされていても、ほんの僅かな翳りは駆逐しきれずに残っている。
この妖仙が現れたのは、そんな部屋の隅。まるで事の最初から、其処に置物として鎮座していたのではないかという程に、違和感の薄い不整合の極み。
「呵々!何時の世も、世の中の困り事の八割方は金絡みじゃのぅ。」
ぼやきに呼応して、甲高い笑い声を吐き出す。一度現れれば、二度も三度も同じ事と、扉を潜らずに室内に現れる不調法具合を詫びる殊勝さは持ち合わせていないらしい。
「久しいのぅ。また何ぞ悩み事を抱えて、胃袋と毛根を磨り減らしておるのようじゃな?」
件の幻術破りの納品を終えた商人が、小さな背丈を踏ん反り返らせて部屋の中央へ歩み進む。
■オーギュスト > 「――俺の胃袋は鉄製だ。あとハゲてねぇ」
不機嫌そうに言いながら、立ち上がり戸棚を漁る。
彼の目薬は予定通り納品され、既に効果をあげていた。
ためしに配備した部隊がダンジョンで見えないモンスターの討伐に成功したのだ。
と、なれば、彼は上客。不本意だがもてなさないわけにもいかない。
「まったく、軍隊なんざ運用してると、金はいくらあっても足りねぇよ。
――なんだ、今日は金貸しにでも来たのか?」
グラスを二つ。注ぐのは蒸留酒。
この前シェンヤンの大使が土産にくれたものだ。毒が入っていない事は確認済み。
あの大使はオーギュストの引き抜きを狙っているようで、よく良い品を持ってくる。
■ホウセン > 饗応の気配を嗅ぎ取ると、図々しくも促される前に応接用のソファへと腰を落ち着ける。
狭い意味での故郷の物ではないが、広義では出身地となる国の酒を見て、にんまりと口元を緩める。
トクトクと器に注がれ、揮発する酒精に付随する香気に小さく鼻を鳴らす。
「善い善い。己がそう信じておる内は大過ない。故に、努々己自身に信じ込ませる労を厭うでないぞ。」
度数の高い酒とて、躊躇せず口を付ける。グラスを持ち上げるのに両手で抱えるようにしているちんまり感の癖に。
酒豪具合を誇示する必要は認められず、小さくクピリと。
「端から金貸しとして売込みをしようとは思うておらんかったがのぅ。所謂アレじゃな。顧客の様子伺い。そんなところじゃ。
とはいえ、爪に火を点してまで金を掻き集めねばならぬというのなら、貸してやることも吝かではないが…」
酔狂な妖仙のこと。多少の無茶は、気分一つで叶えもするのだけれど。
「生憎、お主が欲するような額じゃと、生憎と出世払いは利かぬぞ?」
軍隊を動かす、または維持する。そんな大金は、流石に担保がなければ貸せぬと。
■オーギュスト > 「流石に金は借りれん。俺は変な借りを作るのは嫌いなんでな」
金を握られるのは首根っこを掴まれるのと同じ。
だからあのシャーロットとかいうクソ生意気な女もそのままで放置しているのだ。
会ったばかりのこの商人に借りを作るつもりもない。
「金、というよりかは師団の能力の底上げが課題でな。
今度遠征する場所にゃ、強力な魔物がうじゃうじゃ居てな……」
ため息を吐きながら漏らす。
魔物相手は通常の軍隊の装備とは勝手が違う。
あまり正規品ばかり集めても仕方が無い。
グラスを掴み、ゆっくり傾ける。
美味い。やはり良いモノのようだ。
■ホウセン > おおよそ予想していた通りの回答に、さもありなんと小さな首肯を一つ。
北方帝国の帝都付近の飲食文化は、中々に混迷している。
料理においては幾百幾千のレパートリーが跋扈しているというのに、不思議と酒の品種は多くない。
無論、少ない品種に多数の酒造所が作り出す銘柄が競合している訳で、出来はピンきり。
どうやら、舌を愉しませているのはピンの方。
「一騎当千の人外を、千と一の凡人で刈り取るのがお主らの立ち回り方じゃ。
なるほど、一人一人の戦力増強は、あるに越した事はなかろうが、本質的には使い捨ての物量で押し切るものぞ。」
指揮官としては、如何に味方を効率よく死なせるかという理屈は理解していようが、面と向って言い放つデリカシーのない言動。
「ま、下衆なやり方で構わぬのなら、自軍に”恐怖”を忘却させるという手があるがのぅ。
恐慌状態に陥った味方は、敵よりも性質が悪い故。
人外の益荒男ぶりを目にして、凡夫に震え上がるなと言う方が酷じゃろうし。」
サラリと物騒な事を口にするけれども、それを押し付ける気配はない。
どちらかといえば、問答自体を愉しんでいる節がある。
■オーギュスト > 「平時は赤子の如く、戦場では塵芥の如く、か。
俺の軍は、死ぬ事を前提に敵に向かっていく、一山いくらのクズどもの集まりだ。
――が、無駄に遣い捨てるのも趣味じゃない」
流石にシェンヤンの酒造事情までは知らないが、良い酒というのは分かる。
満足そうに頷き、舌で味わう。今度礼でも言っておくか。
「恐怖、な――
魔法に狂化の呪文はあるが、場合によりけりだな。
あれは判断力を失うから、長期的に見ると兵の能力が落ちる」
判断力を持ったまま、恐怖を忘れる良い方法があればいいのだが。
そんな都合の良いものもなし。
■ホウセン > 酒は温めると香りが立つ。度数が高く蒸発し易い蒸留酒の方がより顕著なようで、目下、子供子供した造形に見合った体温高めの掌で包まれている液体は、グラスを鼻先に持ってこずとも、意識を向けると香りが楽しめる程度に。
「多対一が前提じゃ。指揮系統が機能せぬ狂化等はせぬよ。
何といえばお主にも理解し易いかのぅ。…強いて言うなら局部麻酔じゃな。
興奮も昂揚も削ぎ落とす代わりに、恐怖も緊張も置き去りにする類の。」
尤も、個々の持っているポテンシャル以上の成果は期待できないというデメリットはあるけれど。
兵を数字として管理するのなら諸々の計算はし易くなるが、その辺りはトレードオフだ。
「それ以外となると、経験を積むというのもあろう。
お主らの場合、本物の魔族相手の場合は全てが実戦故、初陣が最後の戦などという輩は少なくあるまい。
故に、経験を蓄積出来る者が少なく、補充される新兵共は命を糧に一から学ぶということになっておりゃせんか?」
グラスをテーブルに戻し、薄っぺらい己の胸をドンっと叩く。
”何なら、安全且つ心身共にギリギリまで追い込む訓練をしてやっても良い”とでも言いたげに。
■オーギュスト > 「指揮系統を残したまま、狂化ねぇ……
それが出来るなら、文句はねぇんだが」
管理するのは大変そうだが、それが出来れば一段階強力な軍が出来る。
サロメあたりは嫌がりそうだが。
「――お前が、新兵どもの訓練を?」
きょとんとしながら見つめる。
――あまり荒くれどもの相手が出来るようには見えない
■ホウセン > 如何にも腑に落ちないという感想を抱かれても不思議はあるまい。
王国とは異なる術体系に源流があることと、妖仙自身の性質を併せてようやく形になるぐらいなのだから。
「斯様な仕組みは、可能か不可能かで言えば…十分に可能じゃ。それがお主にとって居心地が良いかは別にしてのぅ。
…何じゃ、儂では不満か?」
客人の興味は、部屋の主の物言いの後段部分へ。
己の見てくれを鑑みれば当然の反応だと”理解”は出来る。
”納得”出来るかは別にして。
「訓練という程、込み入った事はせぬ。
少しばかり遊んでやって、凡夫では真正面から挑むのが馬鹿らしくなる相手が存在するのだと骨身に染み入らせる程度じゃよ。
尤も、儂に商人以外の振る舞いをさせるのじゃ。少しばかり高うつくがのぅ。」
渦中の本人は、気負った風もなくサラリと。
■オーギュスト > 「――正直、それで兵が強くなるなら安い買い物だな」
頷き、承諾する。
確かに、仙術の系統の術の事は考えていなかった。
ならば、試してみる価値はあるだろう。
「きつくやって構わん。死んじまったら、それまでだ。
戦場に出ても結果は同じ、はやくなるだけだ」
オーギュストは頷き、依頼する。
これで多少でも能力が上がるなら、と。
■ホウセン > ほぅと、酒精の働きで熱を帯びた息を肺腑から吐き出す。
その癖、まだ燃料が足りぬと、もう満杯の一割になろうかというグラスに手を伸ばし、コクリと残りの全てを飲み干す酒好きっぷり。
「良い成果へ結実するかは、お主の用兵次第となろう。
何しろ、不確定要素が減るのじゃからな。しくじったのなら、お主の技量不足以外の何物でもないと。」
コロコロと喉の奥の方で忍び笑いを漏らしつつ、請け負ったと小さく頷きを返す。
後日、試供品として、二ダース程の呪符が送られるだろう。
「して、訓練の方もか。何じゃ、師団の戦力補強に余程執心と見ゆる。
善哉善哉、時が空いたら相手してやろう。
何なら、お主ら主力級とも遊んでやっても良いぞ?」
良い酒でもてなされやや上機嫌のようで、そんなことさえも口走る。
だが、一言たりとも”無料で”とは言っていないのが、この妖仙の妖仙たる所だろう。
■オーギュスト > 「生憎だが、師団幹部は俺を含めて大忙しだ。
新兵だけ頼むぜ」
コツんと飲み干したグラスを机に置く。
まったく、全て飲んでしまった。今度また大使に無心するとしよう。
「――期待してるぜ」
それだけ言うと、部屋を出て会議室へと向かう。
定例の会議の時間だ。
後日、呪符を受け取ると代金の高さに頭を抱える事になるだろうが。
それでも師団の戦力増強は急務だった。
■ホウセン > 「左様か。なら、精々儂の雄姿を網膜に焼き付けるが良い。」
冗談口にしては飾り気が無く、誇張というには装飾過少。
事実にしては突拍子が無く、本心というには底が浅い。
そんな戯言と共に、ソファから立ち上がる。
「一服する暇も無いとは世知辛いのぅ。馳走になった故、口煩くは言わぬが花じゃが。」
寛容と見せかけて、我侭を言う辺り俗物である。
部屋の主の退室と前後して、客人も厚みのない闇の中に姿を消す。
費用対効果はさて置き、一応の効果がある品々は兎も角。
妖仙のストレス発散の場となる新兵訓練が、如何な結末を迎えるかは、現時点ですら甚だ不穏で――
ご案内:「王都マグメール 王城 オーギュストの執務室」からオーギュストさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城 オーギュストの執務室」からホウセンさんが去りました。
ご案内:「ルミナスの森 城」にテイアさんが現れました。
■テイア > 冬の寒々とした空から、春の空気へと変化して木々の芽は次第に膨らみ、蕾がほころび始めている。
窓辺に座れば、暖かな日差しが差し込んで午睡への誘惑をする。
日差しが降り注げば、ガラス細工のような城の中は非常に明るい。
窓辺に座って、10歳に記憶の退行を起こしている女は籠編みをしていた。
ツル性の植物を縦と横に交互に編んで、籠の形を整えていく。
過日、城の前にとまっていた馬車に興味を示して乗り込んだところ、そのまま馬車が出てしまいドラゴンフィートまで行ってしまった。
突然城からいなくなってしまったのに、大騒ぎとなったがドラゴンフィートの代表に送り届けられて帰ってきた。
「おとうさんも、おかあさんもいつになったら帰ってくるんだろ…。」
籠を編む手を止めると、はぁっとため息をこぼして窓の外へと視線を投じる。
テイア、とドラゴンフィートの代表の彼が名を呼ぶ声は、父の声によく似ていた。
城には、シルキーがいて『おにーさん』がいて、よくしてくれるがそれでも10歳の少女は両親の不在に寂しさを覚える。
父に似たその声を聞いたことで、さみしさは助長されてため息がこぼれてくる。
「――っ……。」
窓の外に視線を投じたことで、そこに写る自分の顔が視界に入ると一瞬頭の中で白い光が弾けるような感覚に襲われる。
最近、時々起こるそれはめまいにも似ている違和感。
10歳の記憶の中の顔と、窓のガラスに映るその顔は違う。
幼さは全くなく、けれどどこか面影の残るその顔。
記憶の中に違和感を覚える。
見慣れないはずの、成長したその顔も姿も違和感なく受け入れる違和感。
神代にほど近い時代の感覚からすれば、森の中でも神々の息吹の気配も、空気に漂うマナの濃度も薄い。
息苦しささえ感じてもおかしくないのに、疑問にも思わないほどに体は馴染んでいる。
籠を編むのをやめた手は、顔へと行き着き視界を覆うようにあてられる。
実際に視界が揺れているわけではない、けれど記憶の違和感に視界をふさがずにはいられなかった。
ご案内:「ルミナスの森 城」にイーヴィアさんが現れました。
■イーヴィア > (――店から、城へと顔を出す。
本来の寝床は店側だが、此処暫くの間は出来得る限り、城にて過ごして居た。
広く長い廊下を歩みながら、ふと、窓の外に視線を投げれば、もう春の気配を感じられる
時の流れは、意識しなければこんなにも速い物かと、思わず双眸細めては
小さく、吐息を零しながら、再び廊下を歩き出した。
其々の部屋の中へと視線を投げながら、城内の管理をしているシルキーへと挨拶を交わし
そうして、其の内に辿り着く一室の前にて歩みを止めれば、其の扉を、こんこん、とノックして。)
――――テイア。
(響かせる、声。
今は『少女』たる彼女の中では、「おにーさん」として認識されているだろう、声。
開けるよ、と一言断ってから、ゆっくりと扉を開いては、窓から差し込む光に僅か目を細め
それから――きっと、少女へと視線を向ける、か。)
―――――……テイア? ……如何した?
■テイア > 掌に覆われ、瞼ごしの光すら遮られる暗闇の中でチカリチカリとよぎるように光が走る。
それが何なのか、女にはわからない。
像を結ぶでもなく、暗闇の中で不規則に感じる光。
――テイア…テイア…
次第に、耳に自分の名を呼ぶ声が聞こえてくる。
これは、そうおとうさんの声。
これは、そうおかあさんの声。
『――テイア!!!』
悲鳴のようなおかあさんの声とともに、不規則な光が一瞬像を結び必死の形相をした母の顔が映る。
視界が――真っ赤に染る。
そこで、現実の音が耳へと届きびくりっと大きく体を戦慄かせると弾かれるように女は視線を上げた。
体が大きく戦慄いたことで、足においていた作りかけの籠が床へと落ちて転がる。
視線を忙しなく彷徨わせ、そしてドアの方へと向ければドアを開きそこに立っている男を認識するか。
「――っ……あ、れ?おにーさん…?」
一瞬向けられた少女の表情は、恐怖に歪んでいた。
女は、そのことに自覚はなかったが男を認識すると現実に引き戻されたように『おにーさん』と認識している男が問いかけるのに首をかしげた。
■イーヴィア > (――何時だか、城に姿が見えないと思ったら、ドラゴンフィートにまで冒険していた時は
流石の己も、冗談抜きで肝が冷えたという物だ。
ちゃんとドラゴンフィートまで辿り着いていたから、ついでに向こうの人間が
ちゃんと此処まで送り届けてくれたから幸いだったけれど、恐らくあれほど焦った事は近年無い。
だから、こうしてちゃんと、彼女の姿を目にすることが出来れば、ほうと安心するのだけれど
――何処か、様子がおかしい。 少女の膝から作りかけの籠が落ち、其の瞳が幾度も瞬いて己を見る
まるで、己が声を掛けた事に気付いていなかったかのようで。)
………、……大丈夫か? ……何か、怖い事でも在ったのか…?
(――そして、其の瞳も表情も、恐怖に歪んでいる。
不安、だけではない、明確な怯えの色を帯びて。
ゆっくりと部屋の中へと歩みを進め、後ろ手に扉を閉めたなら、彼女の傍へと歩み寄り
そっと、足元に落ちた籠を拾い上げては、窓辺へと置いてから、少女の隣へと腰掛けて。)
………おいで、テイア。
(そっと、伸ばす両腕。
彼女の肩を、そっと抱き寄せては、腕の中へと抱き締めようとした。
――何故、そんな表情をしていたのか判らない。 何を恐れたのか判らない。
けれど、そんな不安そうな顔をしていたなら――放っては、置けないから)。
■テイア > 幸運はいくつも重なった。
少女が興味を示した馬車が、ドラゴンフィート行きであったこと、ドラゴンフィートの代表と女が顔見知りであったことなど、いくつもの幸運が重なり外の世界を知らない10歳の少女は無事に森へと帰ってきた。
ドアから女の姿を認めて、安心をする男に顔を掌で覆い視界を塞いでいた女は気付かなかった。
「……なんだろ、何か…見えたような気がしたんだけど…。」
恐怖に染る瞳も、歪む表情も一瞬のことですぐにいつものけれど、女とは違う幼い表情へと戻っていた。
怖い事でも、と歩み寄りながら問いかけられるのに視線を少し動かして考えてみるが、思い当たらない。
けれど、暗闇の中での白い光の中に何かを見たような気がして歯切れの悪い答えが返る。
「おにーさん?………。」
籠を拾い上げて、隣へと腰掛けた男が両手を広げて女の体を抱き寄せる。
その意味を問いかけるような呼び声が、女の唇から零れるが抱き寄せられれば体の力が抜けていく。
恐怖した記憶も理由も、分からないけれど体は緊張に強ばっていた。
ほぅっと小さな吐息が溢れる。
馴染む体温が、触れる肌が抱きしめる腕が酷く安心する。