2016/12/03 のログ
ご案内:「とある貴族の私室」にハイドリアさんが現れました。
ハイドリア > 「ええ、ではまた後日楽しみにしております」

とある館の一室、幾人かの王侯貴族夫人を部屋から送り出す声が響く。
優雅な晩餐後、この部屋にてゆっくりとお茶会を楽しんでいた。
日も暮れ、そろそろ帰宅する時間。
それぞれの従者に連れられて帰路につく女達を美しい笑顔で見送る女が一人。
そのいずれもが見えなくなるまで見送り、一つため息をつくと館の中、室内へと戻っていった。
そこで椅子の一つに腰掛けると虚空へと声をかける。

「さっき屋敷の敷地内に入ってきた侵入者はぁ?
ああそう、もちろん痕跡なんて残していないでしょうねぇ?
…よろしい、哀れ神隠しからは二度と帰ってこられないでしょうねぇ…かわいそぉにねぇ…」

くすくすと一人笑い声を響かせる。
幾つか餌をばら撒いておいたけれど、既に餌は目標に食いつかれた跡。
今更やってくる不作法物に用意してあげるえさなどないというもの。

「しかし例の子、やはり食いつきがよかったわねぇ」

愚かにも騙された貴族の名前を思い出し嘲笑う。
あの子は随分と多くの人間の恨みを買っていたようだ。
今頃どんな目にあっているやら。

ハイドリア > 「あらぁ…もう釣り針に引っかかったの?存外に優秀ねぇ」

ゆっくりと報告を聞きながらカップを傾ける。
…あの娘を回収後、この館では傷が治るまでゆっくりと治療だけを施していた。
その間快楽は一切与えない。食事と治療のみ。
まぁ…スプーンでも人はイけるものだと参考にはなった。
傷が癒えた後、時折健康のためと称して人目に付きにくいよう、けれど確かに幾人かの目につくように散歩に連れ出していた。

「ええ、勿論。今のところ想定通りよぉ。
時間の問題だったものぉ。懸賞金がかかるなんてねぇ?」

くすくすと笑う。実に良いタイミングで懸賞金が出てくれたおかげで彼女を欲しがる貴族の元へ速やかに情報が届いてくれた。
あとはわざとあの子を散歩させるときに警備を緩くしてやれば…

「勝手に食いついて誘拐してくれるのだからぁ…実にわかりやすいわぁ」

嘲笑う。それを指示した貴族は随分とご満悦だったらしい。
まさかそれが撒き餌で警戒用の魔物が何匹も周りを取り巻いていたなんて知りもせず。

ハイドリア > 片手でカップを傾けながらもう片方を空へとかざす。
瞬間その掌に紫色の炎が沸き上がり…

「あららぁ…ずいぶんと楽しんでいるみたいねぇ」

焦点が合うように映像が映し出される。
そこには彼女のもとにいた娘と…釣り針にかかった男、そして周囲を取り巻く蒙昧共の姿が揺らめくように映し出されていた。
例の貴族の取り巻きの何人かはすでに喰らい、その皮を被った使い魔を何匹か紛れ込ませている。
もしも彼女の気に障るような動きをすれば…

「首が胴体から今生の別れをすることになるわねぇ…?」

くつくつと含み笑いながら剣呑極まりない言葉を放つ。
あの娘を殺させるつもりはない。
今殺されて死体を完全に処理されては都合が悪いからだ。
けれど同時に殺されないのであればどんな責め苦も容認した。
既にあの子の心は現世に無い。
嬌声を上げ淫らに腰を振るだけの人形がどんな目に合おうとそれはもう不幸とも言えないだろうから。

「よかったわねぇ…いつまでその体が持つか分からないけれどぉ…幸せな人生じゃなぁぃ」

浮かぶ笑みはまさに毒を含む竜の笑み。

ハイドリア > 「あらぁ…なんで言葉を奪わなかったか…ですってぇ?
確かに獣に言葉なんて必要ないわねぇ」

使い魔に投げられた質問に笑みをこぼす。
今日の彼女は上機嫌だった。ゆえにその咎めるような問いかけにゆっくりと問いを返す。

「あの子からこちらを辿るのはまず不可能よぉ。
辿ったところで私は”保護”しただけだしねぇ?
感謝こそされ非難を受けるいわれはないわぁ?」

のんびりと説明していく。

「それにねぇ…人に一番効く毒は…人自身の言葉、なのよぉ。
最も人を傷つけ、壊し、殺すもの…それは人の言葉そのものよぉ
だから…ね?」

楽しそうに笑い声を響かせる。

「毒を残しておいてあげたのよぉ。
あの子を見てどう思うかしらぁ?
ただ喘ぎ声だけを並べる物よりもっともっと
言葉をしゃべる壊れたもののほうが不気味に映るはずだわぁ?」

悦を漂わせながら怪物は紡ぐ。
まだ見えない相手に嚙みつく蛇のような切っ先を
幾重も幾重も配置して。

「人は全く理解できないものを前にすると恐怖を感じないのよぉ。
脳内で都合の良い想像でショックを和らげてしまうの。
それじゃ駄目よぉ…目の前の現実を受け入れざるを得ないようにするには…
少しだけでも理解できる所を残してあげないとねぇ?」

とても楽しそうにその駒の痴態を目を細め…嗤った。

ハイドリア > 「さてさて…そろそろすこぉし遊んであげるかしらぁ」

なかなか素敵なナイト様の様ね。
ならしっかり生き残って…彼にそれを伝えてもらわないと。
口には出すことなく胸中でささやく。

「死んだら死んだで…役不足よぉ。
その程度のおバカさん達なら何人斬られてもかまわないわぁ」

ゆっくりと指示を出していく。
どう転ぼうと彼女にとってはこれは盤上が変わるだけのこと。

「夢(幻覚)は…いつまでも続かないわよぉ?」

くすくすと笑みを零しながら…呟いた

「さぁ…人の形代を持つものよ…。
その輝きを証明し見事逃げ切ってごらんなさぁぃ」

ハイドリア > 「…あら、私が直接指示しないのか…ですって?」

再び投げかけられる問い。
それに目を細めながら茶菓子に手を伸ばす。

「やぁねぇ…そんな足の着くことするわけないじゃなぁい。
それにそんなことしたら直ぐに刈り取ってしまうわぁ?
相手にも勝ち筋を残すこと…これがゲームを楽しむ秘訣よぉ
つまらないカードだとしてもまだ手札を切る時間ではないわぁ?」

焼き菓子を上品に、けれど乱暴にかみ砕く。
その嚙み口を眺め、くすくすと笑みをこぼす。
それはさながら無邪気な悪戯が誰かにばれてしまったような…
そんな表情。

ハイドリア > 「それにねぇ?私は使えないカードを温存するつもりはないわぁ」

その表情のまま言葉を紡いでいく。

「もしこれで貴族側が余りに無能ならぁ…
そうねぇ…どんなコトしようかしらぁ?
これはあの子たちにとってもだけれど…あのおバカさん達のテストでもあるのよぉ。
余りに無様ならそのまま退場してもらうわぁ」

そんな者たちの命などどうでも良い。
手駒にすらならないものに慈悲も容赦も持ち合わせてはいない。

「強いて言うならその旨だけは伝えてもいいかもしれないわねぇ」

ハイドリア > 「へぇ…」

笑いながら目を細める。
随分と手の込んだこけ脅しじゃない。
ここであの子を連れ出すあたり…なかなか豪胆だけれど

「良いのかしらねぇ…全く
どうなってもぉ…知らないわよぉ?」

命知らずは嫌いではない。
生き残る命知らずなら猶更だけれど…

「良いわねぇ…このまま感動のご対面かしらね?
それとも治療師に見せての休養かしらぁ…
まぁすぐに見せられる状況では…無いものねぇ」

少し思考を巡らせる。概ね想定通りの結末になったけれど…

「…間に合うといいわねぇ?”復讐の時”に」

くつくつと笑い声を一人部屋に響かせ、立ち上がる。
そうして結い上げた髪をほどき片腕で空に開放する。
それは一瞬さながら歪な翼のように浮かび上がり…ゆっくりと静まっていく。

「行くわよぉ。予定通りに事は進んでいるもの
なら次の盤を用意してあげないとねぇ…?
…また次の盤上で待っているわぁ?」

そう呟くと部屋の明かりを吹き消し…ゆっくりと闇に紛れていく。
灯の熱さえ闇に溶ければ…そこに誰かがいたような痕跡すら残ってはいないだろう。

ご案内:「とある貴族の私室」からハイドリアさんが去りました。