2016/10/07 のログ
■ユウキ > 城で暮らしていたが故に、一層女性に対する免疫は全くといって良いほどに無かった。
それが、ほとんど裸に近い女性の姿を見てしまうことになるとは。
思わず、真っ赤に染まった顔を片手で覆う。
このまま立ち去った方が良いのだろうが、自らの足が動くよりも先に背後から先ほどの女性であろう声が聞こえてくる。
透き通ったような、綺麗な声……。
「ぇ、ぁ、はいッ……わかり、ました……」
水浴びを目撃されて、怒るわけでもなく、悲鳴をあげるわけでもなく。
ただ、「そのままで」との指示に、まるで蛇に睨まれたカエルかのように素直に硬直してしまい。
傍らに彼女の衣服があることすら気が付かず、徐々に背後に近づいてくる女性の気配を感じ。
■アニエス > こども、だとは思ったけれども、それでも異性だ。
下手に動かれればやはり警戒してしまうし、背を向けてくれているなら、
そのままでいてくれるうちに、此方が身支度を整えてしまえば良い。
「有難う、御座います……、直ぐ、身支度をしてしまいます、から」
未だ震えの残る声ではあるものの、そこには確かに安堵の色も混じる。
濡れた薄絹が肌に纏いつき、身体の線がくっきりと浮き出ているばかりか、
つんと尖った胸の先端や、無毛の恥部の淡い色さえ透けて見える有り様。
ひたり、ひたり、濡れた足音を刻んで岸辺へ上がると、彼の直ぐ傍ら、
濡れた白い腕を伸ばし、着衣と一緒に畳んでおいたタオルを拾おうとする。
片腕は身体の前面へ、胸元を庇うように回されていたけれど、
彼が視線を向けてしまえば、隠せている部分など、ごく僅かだろう。
■ユウキ > 一歩、また一歩と背後の気配が迫ってくるだけで、心臓はバクバクと脈打つ。
彼女の姿を水面に見たのはほんの一瞬の出来事だったが、本当に綺麗だと思った。
わずかな時間ではあったものの、目を奪われてしまっていた。
いけないと分かっていても、そんな彼女の姿を、もう一度見たいと思う気持ちも、芽生えてしまう。
いけないと解っている罪悪感に、再び真っ赤な顔を片手で覆い。
「ぁ、あの……貴女の様なお綺麗な女性が、その、なぜこんな時間にお1人で……?」
そっと、顔を手で覆ったまま、視線だけを背後へと向け。
何故女性が夜にひとりでこんな場所にいるのかと問いかけつつ、欲求には逆らえず、指の隙間から女性の体へと視線を向けてしまい。
わかりやすく、動揺を浮かべながら女性の姿に再び見とれてしまい。
■アニエス > 近づけば、彼が思ったよりしっかりした身体つきをしており、
とくん、とひとつ鼓動が跳ねれば、身体の奥深いところでまた、
じわりと蕩けるような熱感を覚える。
「―――――ぁ、………」
思わず零れてしまった、か細い掠れ声。
咄嗟に口許を空いた手で押さえ、彼の方を窺い見たけれど、
彼の視界は彼自身の手で覆われている、ようにみえる。
果たして彼に、先刻の声を聞かれたかどうか解らないまま、
濡れそぼった薄絹を足許へ脱ぎ落としながら。
「……ここへは、穢れを清めにきたのです」
信仰に生きる者が心身を清めるべく、この泉へ身を浸すのは、
何も珍しいことでは無いのだ、と訥々と応えつつ、
強かに濡れた裸身をタオルで拭い、少し逡巡する間を空ける。
あまり彼を待たせても申し訳が無い、下着を省略して、
直接、修道衣を着込んでしまおうか、と。
■ユウキ > 穢れを清める、その言葉に彼女は修道女か何かなのだろうと察し、
聖職者に対して抱いてはいけない感情を抱いている自分を再び恥じる。
それでも、一度瞳に映ってしまった彼女の姿はあまりにも魅力的で、
自然を装うのも忘れて、彼女の着替える姿を眺めてしまい。
彼女の上げた小さな声にも、その欲望が途切れることは無く。
「穢れを……?聖職者の方も、穢れるのですか……?」
自分のいた国では、聖職者というのはとにかく綺麗な存在として扱われていた。
透明な、穢れのない水のように。
穢れが無いのが当たり前だと思っていたが故に、彼女の着替えを眺めながら、聖職者も穢れるのかと少々失礼にもあたるような質問をしてしまい。
■アニエス > ――――彼がこれまでの人生を、何処で、どのように送ってきたかは知れない。
けれど、ただひとつ、今、向けられたその問いかけに。
つきりと痛んだ胸の奥で、朧に理解したことがある。
「………ひとは、皆。
穢れを、孕んでいるものですわ」
彼に、というより、己に言い聞かせるように。
己だけが特別、穢れているのではないと、言い訳をするように。
けれど、同時に。
身も心も清らかな聖職者しか知らないのだろう彼に、
己はこれ以上、近づいてはならないと思えた。
手早く着衣を整え、濡れたものを纏めて抱えると、深く頭を垂れる。
「お待たせ、致しました。
この泉は、誰のものでも御座いません…、
私はもう、失礼致しますから。どうぞ、ごゆっくりなさいませ」
水を浴びて旅の埃を落とすなり、水辺の清浄な空気に癒しを求めるなり。
全ては彼の自由に、と告げて、己はこの場を歩み去る。
身の疼きを誤魔化す術は、今宵、ほかに見出すより無さそう、だった。
ご案内:「沐浴の泉」からアニエスさんが去りました。
■ユウキ > 「ひとはみな……。そうかもしれませんね……」
何も知らない問いかけに対しても、答えをくれた女性。
去っていったその後姿を見つめながら、自らも小さく言葉を吐いた。
清くあるべきはずの王族である自分でさえ、人を殺める罪をおかしてしまった。
今は、その穢れを清めることもできず、逃げるように旅を続けている。
女性が去った後を、自分もわずかでも穢れを清めることができればと靴を脱いで冷たい泉へと足をつけ。
心を落ち着かせたのち、同じ様に泉を去り。
ご案内:「沐浴の泉」からユウキさんが去りました。