2016/10/01 のログ
■イグナス > 結局いつまで一人で飲んでたんだろうか。
少なくともしばらくは、男の姿が一人、大きな姿がひとつだけ、そこにいて――。
ご案内:「平民地区の酒場」からイグナスさんが去りました。
ご案内:「ドラゴンフィート」にテイアさんが現れました。
■テイア > 九頭龍山脈の麓、第9師団の副将の私有地に設けられた集落ドラゴンフィート。
ミレー族の希望の地であり、様々な人々が生活するその集落の門の前に脚で地を駆ける鳥が引く馬車が四台到着する。
馬車を引くのとは違う鳥に跨った護衛の者たちは、ミレー族であったりエルフであったりと種族は様々だが全てが人外の種族であった。
過日、オルカモントが馬車を引くための試験走行のために訪れた事があったため見張りの者達に見咎められることはなかった。
「――と、いうわけだ。よろしく頼む。」
今回訪れた目的と、馬車の中の荷物について軽く見張り役の男に説明をするのは、白銀のプレートアーマーを身にまとった銀髪のエルフだった。
男が頷き、入門の許可を出すと礼を言って、片手をあげ後方の一団に合図を送る。
ゆっくりとした足取りで鳥達が動き出して馬車はドラゴンフィートの中へと入っていった。
「…さて、うまい具合に面会できるといいのだが。」
観光地区の入り口付近、往来の邪魔にならない脇の方に寄せて並んで馬車が停車する。
オルカモントから、エルフの女が降り立ち、護衛の者達も同様に降りて水などを飲み始める。
治安のいいこの場所で、そこまで厳重な警戒が必要ないことはもう分かっている。
パチンと指をならして魔力を操作すると、身にまとっていたアーマーが糸が解れるように解け、左胸のブローチの宝石に吸い込まれていく。
完全に武装をとけば、落ち着いた紺の詰襟の服へと変わって。
「少し離れる。見張りを交代しつつ暫くは各自自由行動。」
一団の者達に声をかけると、一人観光地区へと歩みを進めて。
■テイア > 「面会できなければ、荷だけを置いて帰るか…。」
もしかしたら、アポをとるために送った書簡より早く着いてしまった可能性もある。
それならそれで、言伝でも残して荷をおいて変えればいいなどと考えながら道を歩く。
「なかなかの活気だな。…後ほど商業地区のほうにもいってみるか。」
露天や店の呼び込み、食堂や酒場から聞こえてくる笑い声。
ミレー族が虐げられることなく当たり前に笑い、ミレー族だけでなく、この集落にいる人々皆明るい笑顔を浮かべている。
――まるで昔に戻ったような気分にさせてくれる。
一度目は、職務の際緊急の補給のために、二度目は試験走行のために訪れたが、どちらもとんぼ返りだったため、ゆっくりと見たのはこれが初めてだった。
微かに目を細めて、なんでもない日常の風景を眺めた。
ご案内:「ドラゴンフィート」にレイカさんが現れました。
■レイカ > このあたりの警備に当たるのは、ずいぶん久しぶりになってしまった気がする。
近頃はマグメールのほうへ足を運んだり、湖で新しい力をなじませるためにと、離れていることが多かった。
仕事がたまっていた、というわけじゃない。
何しろ、最近はあまり何か物騒なことなど、何も起こっていなかった。
それでも、見回りは大事だ。
いつ何時、襲われるかと思うと気が気でならない。
この楽園を護るためなら、どんな労力もいとわないつもりだ。
「まあ、平和なものなんですけどね…。」
誰にも聞こえないように、私は一人苦笑した。
実際、このドラゴンフィートを襲おうと計画しているものは、今のところ一人としていない。
見回りも必要かな、などとたるんでしまうほど、平和だった。
散歩という名前の見回りをしながら、私は―――とあるエルフの女性とすれ違った。
■テイア > 夫である男はここに来たことがあるのだろうか、子供が大きくなったら連れてきたい所だ、などととりとめもないことを考える。
そんな思考の端々に浮かぶ家族の姿に、思わず唇が綻んでしまう。
以前なら、もっと職務に直結することばかり考えていただろうことを思えば随分な変化だ。
「いい変化、なのだろうな…。」
考えるだけで胸の内に生まれる、暖かなものに小さなつぶやきが溢れた。
観光地区の様子を見ながら歩いていたため、普段の歩調よりはわりとゆったりとした歩調で歩みを進め、ふと視界の端に紫の髪が入る。
なんとなく瞳を動かしてそちらへと視線をやれば、見慣れた長い特徴的な耳。
珍しいことに、エルフもいるらしい。どちらかといえば、閉鎖的な森とは違い、ここは開放的だから珍しいことではないのかもしれないな、と考え直したりして。
■レイカ > 今日も、集落は平和だった。
ミレー族が姿を偽ることなく笑って生活し、その中には人間も混じっている。
奴隷だった名残が少しだけ残っているけれども、それはもう、消えない傷なのだろう…。
心の傷は、どんなに時間をかけたところで早々癒えるものではない。
だから、時間をかけてじっくりと直っていくのを待つしかない。
わかっていても――歯がゆい気持ちになることだってある。
「………平和、なのはいいことですね…。」
戦もなくて、誰も襲われなくて。
そんな場所が好きだから、私もここにいるのかもしれない。
かつて、ルミナスの森の主に預けた耳飾を指で遊び、私はそっとなくなった母様に報告した。
平和なときが、こんなにも尊いものなのだと。
その、すれ違った女性に耳飾が目に入れば――――鳥の羽を模した、不思議な光沢を放つそれが、目に入ったかもしれない。
■テイア > 「……レイカリオか?」
流し見たそのエルフの耳に、羽の耳飾りを見つける。
それは、精霊の声を聞けぬ者の耳にもその声を届ける特別なもの。
そうそう見かけるものではない。
かつて、預かっていたそれを見間違えるはずもなくその髪色も持ち主のもののそれだ。
足を止め、半分ほど体を後ろに向けて通り過ぎようとする女性へと声をかけた。
■レイカ > 「………え?」
――――聞き間違いだろうか。
今、私を略名ではなく、本名で呼んだ声がした。
ずっと聞いていない、いや私ですらその名前で名乗ることなんか、ここ最近ずっとなかった。
レイカリオ、私の本当の名前…。
「……………テイア様…?」
振り返ったその先に、彼女はいた。
私の名前を知っているのは、騎士団に所属していたもの。
そして、私と親しくしていた…彼女しかいない。
「…テイア様!?」
階級は、私よりも階級は上だった。
ただの一師団隊長だった私、だが彼女は騎士団総括長だった。
そのころの呼び名が、今も私に染み付いていた。
■テイア > 「やはりそうか。こういったところにエルフがいるのは珍しいとおもったが、そなただったか。」
振り返ったその顔は、間違いなく呼んだ名の者だった。
どこか納得したように言葉を紡ぎ。
「その耳飾りを取りに来て以来か…。息災そうで何よりだ。」
ふと、親しい者にだけ分かる表情の変化で雰囲気が柔らかなものに変わる。
騎士団にいたころの名残で、”様”をつけられるのに少し苦笑を滲ませて。