2016/09/07 のログ
■デリア > 少々やり過ぎてしまったかと心配をしたのも、ほんの数秒の間。
次の瞬間には少年の異様さに気が付き、思わず手合わせとしてではなく、「自分の身を守るため」に身構える。
それは立ち上がった少年の様子が故。
まるで、いや幽霊や死霊のようにゆっくりとした身動きで立ち上がるその不気味さ。
「なッ……この少年は、いったい……」
魔術や気の心得はあいにく無いものの、少年が地面を殴るモーションに入った時には、その行動が此方への攻撃だと悟る。それも、おそらくは中距離程度のもの。
体勢を低くし、両腕をクロスさせて顔や喉を守ろうとはしたものの、次の瞬間に弾けた地面から飛んで来た石の破片が脚や腕、に深くはないにしても突き刺さり、思わず表情を歪めて声を漏らし。
■レン・レイト > 「ガァァァッ!!」
気の爆発を使ってからは一転、獣のような咆哮とともに、一気に相手めがけ駆け出す。
右、左と、一見大振りながら隙の少ない拳での連打。
相手が隙を見せようものなら、すぐにでも槍を拾うだろう。
戦いの興奮。
痛烈な痛み。
新しき師と呼べる彼女との間に未だに完全な信頼関係ができていなかったこと。
様々な要因が重なり、かつての…すべてを恐れ憎み、戦闘ではそれをぶつける、餓鬼のような彼が呼び起されてしまった。
乱打する彼の眼を見ればわかるだろう。
その目に宿るのは怒り、憎しみ。そして何よりも強いのは…怯えであること。
■デリア > 最初の一撃とは全く違う、あまりにも直線的な攻撃。
相変わらずの身体能力故に、一気に距離を詰められる。そしてくりだされる拳での連打。
人よりも、彼女が森で暮らしていた故に良く知っている猛獣のようなそれが、少年の瞳にはしっかりと映し出されていた。
直情的過ぎるが故に、その感情までもがしっかりと。
「ッ!ふっ、これでは……私が鍛えてやる必要は無かったのかもしれないな……!」
次々に打ち付けられる拳を、なんとかガードして致命打を避け続ける。
しかし、そんな中でも不意に笑みを浮かべる彼女。
そして、少年の拳が彼女の腹へと打ち付けられようとした時、スッと、その手を拡げた。
ドゴォッ!!
と、肉を打ちつけ、めり込む鈍い音。
両手を広げた彼女の腹へ、守るものが何も無いその腹へと少年の拳が突き刺さる。
しかし、それでも表情を崩すことなく、拡げた両手でそっと少年の体を抱きしめ、その頭を撫でる。
「……落ち着け、私はお前の敵では無い。恐れるな……大丈夫」
と、まるで幼い子供に言い聞かせるように、そう優しく囁き。
■レン・レイト > まだ未熟な少年では、乱打の最中に気を纏うことはできない。
それでも、重い拳が彼女の腹にめり込めば、確かな感触に一瞬攻撃ゆるむ。
しかし、次の瞬間包み込むように抱擁されて。一瞬もがき、抜け出そうとするも、力強いそれと、優しく頭に触れる手先の感触に、少年の強張った身体からそこしづつ力が抜けていって。
小さく震えながらぎゅっと、自然にこちらからも抱き付く様に手を伸ばして。
少しすれば、漸く少年の瞳に光が戻ってくるだろう。
そして彼女を見上げれば、小さくぽろぽろと涙を零し始めた。
「…ごめんなさい、…ごめんなさい……!」
絶望の中。他者から受けた二度目の…温もりに。
そして善意から自分の稽古を申し出てくれた相手に自分がしてしまった仕打ちに。
喜びと開墾が入り混じった複雑な目で相手を見上げていた。
■デリア > 幸い、正気を取り戻してくれた少年に小さく安堵の息をつく。
と同時に、地面を砕く程の力で殴られた腹へのダメージは強く、「ゲホッ!?ガッ……」と地面に崩れ落ちて大量の血を吐き出してしまう。
意識こそまだハッキリしているが、だいぶ重症であることに代わりは無かった。
「いや、お前のせいではない……。お前が恐れていたのはコレだったんだな。気が付けなかった私の落ち度さ……」
ゆっくりとだが体を起こし、笑みを浮かべながらそっと少年の頬を撫でる。
最初は、少年が戦闘を恐れていると思っていたのだが、実際は違ったらしい。
それを見抜けなかった自分の過ちと、少年を責めることもなく。
近くの木の根元に、体重を預けるように腰を下ろし、呼吸を整え。
■レン・レイト > 「………ッ!?」
抱きしめられている背中に彼女の吐血を浴びて。
自分の練気未熟でなければ取り返しのつかないことになっていたかもしれない。
地面を蹴るように急ぎ、彼の荷物から衣料品を取り出せば急いで駆け戻って。
「…違う!…僕がよわいから…!弱いから……貴女を…手を差し伸べてくれた貴女を傷つけてしまった…!」
自分を責めず、優しく頬に触れて気遣ってくれる相手の言葉を必死で否定する。
…改めて自分の弱さを自覚した。
自分に激しい怒りと悔恨の感情が湧き上がる。
自分を絶望から救い出してくれたのに、自分を救い出してくれた姉にも、人の欲望が渦巻く闘技場で優しく手を差し伸べてくれた彼女にも申し訳が立たない。
こんなにも優しくしてくれる人々がいるのに。
姉に救われたのに戦闘で巻き戻ってしまった事。
こんなにも優しい相手を、たったあれだけの痛みで恐れてしまった事。
そんな自分が許せなかった。
「手当を…させてください。」
木の根元に腰を下ろす彼女の腹にポーションをかけると、少年は静かに集中し、手のひらの先に気を練りそれを彼女の腹に当てる。
魔術ほどの回復力もなければ、少年は回復への応用も苦手だ。
それでもやらなければならない。
全力で集中し絶えず台地や大気のマナを感じ、それを気として彼女に送る。
ポーションをお腹にかけたのは、飲むよりも、このように回復の気を当て、直接内部に浸透させるためだ。
薬も合わさり、ただ気を当てるだけよりはだいぶましになるはずだが。
■デリア > すっかり正気は取り戻した様子の少年。
必至に手当てをしてくれるその様子からは悲しみや焦りが痛いほどに伝わってくる。
体力がある状態ならば、多少の怪我程度ならば手当てなど不要だと振り払っていただろう。
しかし、あいにく今は体を動かすことさえ辛い。
それでも、少年をこれ以上不安にさせまいと、表情をゆがめることもなくゆっくりと口を開く。
「弱いというのは、悪ではない……。悪と感じてしまえば、恐れ、嘆き、目を背けたくなる。弱さは悪ではない、そう信じる勇気を持て。自分の弱さを認める勇気を……」
必至に腕を持ち上げ、懸命に手当てをしてくれている少年の頭を優しく撫でる。
弱いと自分を責める少年を、自分の弱さを憎み恨む少年に、語りかけるようにして。
そうしているうちに、ある程度は少年の手当ても効いてきたのか、先ほどよりも彼女の呼吸はだいぶ落ち着いたものになり。
■レン・レイト > 普通の戦闘であったならば、最初の一撃でもわかる通り、少年に勝ち目はなかった。あのまま負の感情をぶつける攻めを続けても、それは変わらなかっただろう。
それなのに、彼女はわざと一撃を受けたのだ。
…自分のために
「……はい…!」
…その優しさに、その教えに。少年の眼からは再び大粒の涙がぽろぽろと溢れてくる。
上げることもつらいであろう腕を上げ、自分を撫でてくれる優しさを、
しっかりとより強くなれる様に、諭すように伝えてくれるその教えを。
しっかりと噛みしめながら、なおも手当を続ける。
そしてその終盤に、師に教えられた独自の薬草を煎じた薬を取り出し。
気の効果を高めるそれを清潔な布に塗って彼女の腹に当てて、包帯をその上からまかせてもらう。
そして再びその上から気を送れば…不思議と、痛みはだいぶ和らぐだろう。
■デリア > 彼女には気や魔術の心得はおろか、それがどういう原理なのかも理解していない。
それゆえに、今まで怪我という怪我は薬品か気合で治すことがほとんどだった。
慣れない術に抵抗があったことも確かだが、少年の施術は、身体的にも、かなり心地よかった。
痛みが和らいでいくのが、確かに解る。
「お前は、技術面では相当強い。きっと、私では適わぬ程にな……。だから、その恐れも、怒りも、力も、全部受け止めるんだ。感情にのまれるな……」
痛みがだいぶ和らいだおかげで、少年の頭を撫でるのにも抵抗がなくなってきた。
少なくとも、もう数日程安静にしていれば問題は無いだろう。
ただ、今の体ではこれ以上稽古をつけてやるのは難しい、それだけが少々心苦しい。
「すまないな、だいぶ楽になった。……お互い、泥だらけだな。共に風呂でも入ろうか」
此方は土砂を浴びせられ、少年は地面を転がりまわって、お互いにすっかり汚れている姿に思わずクスッと笑みを浮かべ。
怪我を癒す湯治にもなればと、少年にも風呂を誘い。
■レン・レイト > 「……はい。必ず……自分にも打ち勝ってみせます」
教えのような相手の言葉をしっかりと受け止める。
自分の弱さを、しっかりと認めるために。
そして、彼女にまだまだいろいろなことを教えてほしいと思った。
変に頑固な少年は相手が言うように技術面だけでも相手に勝ってるとは思えなかったが…たとえ、技術面では勝っていても、戦闘の総合力で見れば圧倒的に劣る。
だから…まだまだたくさん、彼女からいろいろな技術を身に着けたいと思った。
…ただ。
「デリアさん。…僕には師がいました。…だから、僕の中で師匠と呼ぶのはあの人だけです」
…そう師について短く発するが…師というたったそれだけの言葉に、深い愛憎が入り混じった複雑な感情が込められていたことが分かるか。
「…だけど、一人の武人として、人として…貴女を尊敬しました。…人を信じれぬ弱い自分だけど…貴女を信じたいと……貴女からまだまだ教わりたいと思いました。……だから…『先生』と…そう呼ばせていただいてもいいでしょうか?」
…たった一度の会合で優しさと、強さと、気高さを見せてくれた相手に。
人を信じるを恐れる身である自分なれど、信を置きたいと思わせてくれた相手に。
信じることを許してくれるかと許可を請う。
「…いえ。僕のせいですから。って、ええ!?いや…ちょっと…」
頭を撫でる、優しく心地よい手先を簡易ながら漸く、相手にも柔らかい笑みをこぼすことができた。
そして風呂に誘われれば驚き顔を真っ赤にするも…ふと冷静になればそもそも服を着ていないのだから今更な気もしてきて。
誘いを受けることにした。
■デリア > 師匠がいた、という少年の言葉に、それならあの技量も納得だと小さく頷き。
もちろん、師匠と呼ばせるつもりは無い、それに自分は弟子をとれるほどの実力者では無いと解っている。
そして、自分の師匠のことを心から慕っていると解る少年の言葉に思わず笑みを浮かべた時のこと、不意に言われた「先生」との言葉に思わず苦笑いを浮かべ。
「そこまで大そうなモノではないんだがな……、全部、自然の中で生きていく心構えだよ」
と、自分が何か特別なことをしたというつもりは無いことを告げた上で、少年の気持ちを無下にするのも悪いと感じ「好きに呼ぶといい」と再び頭を優しく撫で。
「ダイラスの街なら、良い温泉宿もあるだろう。行くぞ」
と、普通に動く分には問題無く立ち上がり、自分の荷物を持って歩き出し。
■レン・レイト > かつて師を愛し、それは崇拝にも近かった。
そして後に憎悪することになった。
…しかし、それでも、感謝と敬愛までが消えたわけではなく…少年にとってそれはそれは複雑なものなのだろう。
「…はい!先生!」
特別なことをしたつもりはなくても…受け取る方にとっては特別だったのだ。
好きに読んでもいいといわれればぱぁっと花が咲く様に表情は明るくなり、もう一度頭を撫でられれば、年相応、否もう少し幼いく見えるような、目を細めた少年らしい嬉しそうな表情。
そして彼女がいくぞといえば、元気よく返事をして。
病み上がりの彼女に荷物は持たせられないと自分が肩代わりするだろう。
■デリア > もともと、そこまで街から距離も無かったため、歩くこと数分、街の入り口へと到着した。
相変わらず、全裸の彼女は周囲から注目の的だが、当の本人はそれを気にする様子も無く。
ふと目を止めた、「温泉」との看板が書かれた宿を指差し。
「あそこにしよう、悪い宿では無さそうだ」
彼女が指差したのはダイラスで言えば中の下程度の宿だが、街の規模が規模だけに全室個室、しかも各部屋に風呂が付いているとのこと。
■レン・レイト > やはり全裸の美女が歩いていれば当然注目の的だ。
本人は気にしていなくても、一緒りいる少年はやはり気にしてしまう。
少年自身、あまり目立ちたくない理由があるのだが、しかしよく考えれば彼女が目立ちすぎているために、少年に周りの目が行くことはないだろう。
「はい」
彼女がそう言えば、少年もうなづいて、彼女に続いて宿に入るだろう。
身内には、今日はおそらく戻らないとも伝えているために問題もない。
■デリア > 受付を済ませ、いざ部屋へと向かえば、広くはないものの充分なスペース、そして空を伺える風呂。
想像していたよりもずっと良い部屋に満足そうに小さく頷き。
「ほら、さっそく入るぞ。服なんて早く脱げ」
彼女はこのまま風呂に入るだけだが、対して少年は当たり前だが衣服を着ている。
笑みを浮かべ、急かすように少年の服を掴んで優しくではあるものの無理矢理に脱がせようとして。
■レン・レイト > 姉と会うまでは基本的に野宿か廃墟生活だった少年からすれば、ベッドがあるだけでも上等すぎるものだ。
「…ちょ!?まって、まってください!」
失念していた。風呂ということは自分も脱ぐのだ。
それは流石に恥ずかしいし、別に順番に入ればいい灯っていた矢先、服を脱がされそうになれば必死で抵抗して。
「分かりました!脱ぎますから!…無理やり早めてください」
無理やり脱がされる経験は凄惨な過去の中にもあったから、あまりいい思い出はない。
故に自分から観念し、服を脱いでいくだろう。
以外にも傷一つなく、ネコ科の動物の様に薄いがしなやかな筋肉のついた身体。
こうして裸同士でいるのは落ち着かないが、これも少年からも歩み寄ろうと頑張っている証拠で。
もちろん股間はひっそりと隠している。
■デリア > 旅をするようになってからは宿の経験こそあるが、彼女もそこまで上等なベッドに慣れているわけではない。
今でも彼女が一番寝やすいのは枯葉や藁で作った寝床だ。
「では先に入っているぞ」
本当に無理矢理脱がすつもりは無く、素直に服を脱ぐ少年の服から自らは手を離し。
先に扉を開け、風呂場へと足を踏み入れ。ゆっくりと浴槽に足をつけるとお湯の気持ちよさに小さく吐息を漏らし。
ご案内:「ダイラス近郊-森林地帯-」からデリアさんが去りました。
■レン・レイト > (もちこし)
ご案内:「ダイラス近郊-森林地帯-」からレン・レイトさんが去りました。