2016/09/02 のログ
ご案内:「ドラゴンフィート 居住区」からレン・レイトさんが去りました。
レン・レイト > 昨日今日この新しい新天地にたどり着いた少年。
集落というから小さな村のようなものを予想していたが、実際はしっかりとした町、というか街に近く、驚きつつも、大きな不安を募らせる。
しかし実際、まだ多くに触れあってはいないが、話してみた集落の人々は、人間不信のために上手くしゃべれず、しどろもどろになってしまう自分の言葉をゆっくりと、しっかり言葉に出せるまで暖かく見守ってくれたり、小さく微笑んでくれたりと、今までに少年が触れ合ってきた人々とは確かに違っていて。
正直、戸惑いが多く困っている。
だが、嫌だとは決して思っていない。

「…お姉ちゃん?」

ただ、知らない場所で独りでいるのは落ち着かないのか、姉がいるという建物に、彼女の姿を探しに来た。

今までは知らない場所、一人でいることなんて当たり前だったのに。
それを落ち着かないと感じることに…理由はわかるのだけど少し不思議に思って。

レイカ > ここに到着したのは、予定よりも1日遅れてのことだった。
昨日の雨が原因なのはいうまでもないが、不思議と焦りはなかった。
以前のような大所帯ではなかった、というのもあるのだけれども…彼が。
私の新しい弟が、ここに馴染むという確信めいたものがあったからかもしれない。

実際、町の人とは上手く…やれているのだろうか。
マグメールの王都よりは確かに小さいけれども、既に立派な街。
多種多様な人物が住んでいるこの街も、決して悪意がない、とは言えないだろう。
けれども、少なくとも――――あの子に、危害を加える人間はいない、と信じている。
だって、ここは”楽園”なのだから。

出来上がったペペロンチーノが乗った皿を持ち、私は食器棚をあさっていた。
確か、ここにフォークがあったはず…と。
私の姿は見えないけれども、彼を呼ぶ私の声は、しかと届ける。

「………ん?嗚呼、レンでしたか。どうしましたか?」

…弟を呼び捨てにするのは慣れた。
けれども、どうしてもこの敬語で離すクセだけは抜けなかった。
私は、大盛りにしたペペロンチーノをテーブルの上に置くと、彼を手招きして呼び寄せた。

しかし…私服姿の私を見るのは初めてかもしれない。
マグメールでは、いつも黒いフードつきの外套姿だったために。

レン・レイト > まだ、到着して間もなく、出会った人々も少ないが…なんというか、彼らが僕を見る目が違った。
上手く言葉に出来ないが、すれ違う人々は、ねっとりと値踏するような目、邪な意志の宿る眼、害意を宿した目。
そういった目は一切なく、かといって姉が連れる自分を無関心に見るわけでもなかった。
…やさしい、とまではいかなかったが、確かに温もりのある目立った。
それに、頑張って話した店の人は確かに優しく僕が喋るのを見守ってくれた。
いきなり人間不信が治ることはないけど…少なくとも個々の人たちは今までの人たちと違うとわかった。
今はきっと少年は無理せず、少しづつ他者に心を開けるように、ここで心のリハビリをする時期なのだろう。
ここにいる人たちならばきっと、少しづつ、彼の心の蟠りを削り取ってくれるだろう。

「……なんか、落ち着かなくって」

というよりも正直に話すと、まだ一人は怖い。まだこの地になれたわけでもないのだから。
ただ、そういって彼女を困らせたくないから言葉を濁す。
彼女にだって仕事や生活があるから。
折角落ち着ける場所に彼女は戻ってこれたのに、自分につきっきりにさせていいものではないと少年なりに思って。

姉の言葉を頼りに近づけば、すぐに見つけて。
安堵に顔を綻ばせれば、手招きに答えて彼女の方へ。
外套でない私服姿の彼女がなんというか、今までと違ってとても柔らかい雰囲気で。
なんとなく新鮮で嬉しく感じる。

レイカ > 堂々としていればいい、といったものの、いままでの生活が生活だ。
いきなり人間不信が治るわけがない、と私も思っている。
しかし、ここならば徐々に彼の心に負った傷も癒えていくはずだ…。
ここの人々は皆、マグメールで虐げられてきた経験を持つものばかりだ。
彼も見たはず…、ここでは、ミレー族が普通に話し、街で暮らしていることを。

「…そうですか、来たばかりですから仕方がありませんね。」

まだ慣れていない場所なのだから、挙動不審になるのは仕方がないことだ。
仮に、すぐに慣れてしまっても私は構わないのだが…難しいだろう。
今まで一人で過ごし、そしてそれが当たり前になっていたのだから。
本来ならば、付きっ切りで世話をするべきなのだろうけど…さすがに仕事を放っておくわけにもいかず。
今度、ここに託児所のようなものを設置してもらえないか、掛け合ってみよう。

外套を着ていたときは…どうしても警戒してしまっているときだ。
マグメールには、私もあまりいい思い出はない上に、顔を知られるわけには行かないという事もある。
元・騎士団に所属し、ミレー族を匿っていた私だ、貴族たちに因縁を付けられたら…。
ゆえに、彼が感じるそのやわらかさは、決して勘違いではないだろう。

「でも…ここでは怯える必要なんかありません。
もうレンを傷つけたり、苛めようとする人はいませんから…自分でしたいことをしていいんです。」

私は、ペペロンチーノをおいたテーブルの前にある椅子に、彼を座らせた。

「…だから、お腹一杯食べてもいいんですよ。
さあ、約束していた晩御飯です。全部食べてくださいね?」

レン・レイト > 「……ごめんなさい」

以前あれだけ前向きに言葉を発したのに、実際は思うようにいかなくって不甲斐なく思う。
やはり外で独りで歩いているときに、こちらを見られたリ、近づかれたりすればいまだに怖いのだ。
それでも、守衛など姉が挨拶した人達には友好的な挨拶を少年からもしようと心がけている。
ただ挨拶をするだけなのにほとんど言葉が出なかった時も、ミレー族の守衛さんは笑って言葉が出てくれるまで待ってくれたのを思い出す。

「…うん。今日会った人たちは…いい人なんだって分かるよ。…でも頭ではわかるんだけど……ごめんなさい」

そういって少し影が差す少年。頭では彼らがよい人だとわかるのだが、彼の経験が、過去が、彼らを信じることを邪魔をするのだ。
それでも、少年は少しづつ心を開こうと努力もしている。

「……は、はい!いただきます!」

姉が約束してくれた得意料理。
誰かの手料理を食べたのは親を失って以来で…まだ食べ始める前から嬉しそうに…この上なくうれしそうにして。
このまま食べてしまうのがもったいないように思えてしまってしばらくはまじまじと、目に焼き付けるようにしてみているけど。
意を決してフォークでそのペペロンチーノを一口くるんで口へ運ぶ。

「…ぃしい…。おいしい…!」
目をキラキラと輝かせ、破顔してそういった。

レイカ > 前もって、守衛や組織の皆には彼もことを話しておいた。
勿論、彼が受けた”百死の呪い”のことは伏せてある。
…そんな、彼の一番の傷を掘り下げるようなことは、姉として…彼を保護したものとして、してはいけない。

まだまだ、彼が街の人間と完全に打ち解けるようになるには、長い時間が必要だろう。
私も、それは理解しているつもりだ…。
彼が味わってきた地獄は、私が思っている以上に深く…傷をつけているだろうから。

「いいんですよ、少しずつ…無理をせずに話をしていきましょう。
逸れに、レンも頑張っているじゃないですか…。
聴きましたよ、お店の人に自分から話し掛けに行ったそうじゃないですか。」

姉として、これほどうれしいことはなかった。
人間不信で、以前は話しかけることすら躊躇い、襲い掛かられると怯え、武器を構えていた。
それが、ちゃんと話をしようとしているのだから…彼なりの努力が伺える。
だから、私はそれをちゃんと褒めるのだ。

「…それはよかった……。
美味しく出来たかわからなかったんですけど…口に合ったようで、何よりです。」

料理は、人並みに出来る自信はある。
だけど、こうしてちゃんと誰かに食べさせる、というのはなかなかない経験だった。
それを美味しいと、にこやかに行ってくれると、私も嬉しくなる…。
でも、料理に関しては…正直、マスターの作るものの法が美味しいとは思うけれど…。

「……少しでも近付きたいですけど………。」

ぼそり、と私は一人呟いた。

レン・レイト > 「うん…ありがとう。…それは、そのぉ。……レイカお姉ちゃんに頑張るって約束したから」

姉と約束したからこそ…辛いことでも怖いことでも頑張れる。
それにこれがただ怖いことではないことも分かるから。
誰かと打ち解けられれば、その人と味方になれれば、それはきっと得難い財産になるのは知ってるから。

「でも、ちょっと不思議です。今までだって普通に会話ぐらいできたのに…改めて誰かと話そうとすると…怖くて、緊張して…まるで自分でなくなったみたい」

今までだって冒険者崩れのような仕事をしてきたし、そのお金で普通に店も利用した。
その時は普通に話せたし、なめられないような態度も取れた。
なのに何故だろうと少年は思う。
彼は気づいていないのだ。
友好を気づこうと努力することは、相手に自分を嫌いにならないでほしいと思っていること。
相手に何も期待しなければ、何も苦しくはない。
相手が自分を害するものならば力で応対すればいい。
そういった荒んだ時の人間関係とは全く違う。
相手と友好を結びたいのであれば自分は丸腰…物理的な意味でなくても、そうでなくてはならない。
すると相手が自分を害するものであるのではと考えるとたまらなく怖い。
そして、頑張っても自分を嫌いになられたらと無意識に思っていて…それもまた恐怖に繋がっている。
人を信じることというのは、少年にとっては新たなる戦いなのだろう。

「ううん、美味しいよ!すごく!すごく…」

がつがつとがっつく様に、本当においしそうに食べる少年。
彼女が自分のために作ってくれたのに、それが美味しくないわけなかった。そして味だけではなかった。
やっぱり、暖かかったのだ。
不特定のために作られたものではなく、自分のために作ってもらえた料理。
そのようなものは彼方の記憶で…嬉しくて、嬉しくて。
ここまで来ればもう予想できたか、…やはり涙を零し始めてしまう少年。

ぼそり姉がとつぶやいた言葉。
それが何を指すかわからなかったけど。
それは自分が姉のような人になりたいと思う気持ちと同じだろうか

レイカ > 「ふふっ……そうですね、頑張ってください。」

彼が頑張ろうとすればするほど、応援したくなってしまう。
きっと、いままでならば怖いと逃げてしまっていたことも、ちゃんと向き合おうとしている。
そのことが、とても微笑ましかった。

「……それが、友達を作ろうとしているレンだからですよ。」

私には、その感覚がとてもよくわかる…。
私は、彼の隣に座り……ついに話し始めた。

私は、元々王国の騎士だった。
国を変えようと、ミレーも人間も仲良くなれる国を作り、そして皆が笑える世界を作りたい。
そう思い、私は騎士団で必死に努力して…部隊長という地位にまで上り詰めた。
しかし…私はそこで見てしまったのだ。
腐りきった人間の社会、ミレー族を虐げる人間――――貴族の姿。
それを、ミレー族を見捨てるしかなかった自分の弱さ。
それを思い知り…私は、逃げた。

その際に、私もレンと同じような状況に陥り、1年間ほど…誰とも喋ることはなかったのだ、と。

「…レン、自分の心に負けてはいけませんよ…?
レンがしていることは、決して間違っていることではありません。
姉の私が保証します、レンがしている行動は、とても正しいことですから…。」

だから、決して負けないでと私は弟に強く言い放った。
決して、自分の心に負けずに…きっとそれが、レンが欲している強さに結びつくはずだから、と。

でも、この泣き虫のクセは…しばらくは治らないかもしれない。
優しさに触れることがなかった少年にとって…私は、優しくしすぎているのだろうか…。
いや、そんなはずはない。この子に必要なのは力でもなんでもない。
人とのつながり――即ち、”愛情”だとおもうから。

レン・レイト > 「…友達を作ろうとしている僕」

…友達を作るということはこんなにも難しいのかと、苦しいのかと思う。
でもそれは彼が人の恐ろしさを知り、痛みを知っているからこそ。
きっと他者を信じられるようにさえなれば、今より見違えて変わるだろう。

「……レイカお姉ちゃん…」

初めて聞かされた姉の過去。
清く正しい志を抱きながら、それを圧し折られ、そして誰よりも優しい彼女が、虐げられるものを見捨てなければならなかったというのはどれほどの苦痛だったのだろう。
その重圧はきっと誰にも推し量れぬほど重いものに違いない。
彼女はそれでも…一度折れて尚立ち上がったのかもしれない。
自分を助けてくれたように、再び前を向いたのだろう。
それでも、姉の悲痛な話に表情を悲しみに曇らせる少年。
たとえそれが過去の話でも、自分には今何ができようか。
そう思った瞬間、自然と横に座ってくれた姉を抱きしめていた。
自分辛く、苦しかったあの時してくれたように。
自分がそれを思い出した時にもしてくれるように。
拙いけれど、その小さな手で優しく、そして力強く自分の温もりを伝えるように。
彼女がくれた温もりを、お返しするように。

「自分に…まけないこと。…はい。分かりました。まだ…どういうことか実感を持って言えませんが。その時が来ても、絶対に負けません」

自分にまけないこととはどういうときか少年はまだ分からなかった。
ただ、姉が今その言葉を伝えてくれたから、少年はきっとその時が来ても、踏ん張り、最後まで抗い、そして勝つだろう。
何度も何度もその時が来ても、必ず最後には一段強い自分に。

幸せそのものを噛みしめるようにしっかりとパスタを味わいながら、小さく涙を零す。
優しさは、今の彼には劇薬だけど。
それは間違いなく必要で、正しい薬なのだ。

レイカ > 私はこう思う、人の痛みを知っている人間だからこそ、誰かを傷つけることをためらうのだと。
それはきっとレンも一緒…、傷つけられる痛みや苦しさを知っているから、誰かにそれをしたりはしない。
傷つける者へ…彼は刃を向ける。

「……私は、レンが思っているほど優しくはないかもしれません…。
自分の身を護るために、私は多くの人間を見捨ててきました……。」

悔しかった、苦しかった。
そしてなにより――――申し訳なかった。
助けられるはずだった彼らを助けず、私は身の保身を選んでしまっていた。
だからこそ、私はただの偽善者。
ただ、自分の罪滅ぼしのために、誰かを助けているだけに過ぎない。
レンを助けたのも、きっと――。

だけど、彼は私を抱きしめてくれた。
まるで、自分がここにいると伝えてくれるかのように。
私は、そっと微笑むと彼の頭を撫でてあげた。

「……ええ。負けないでください…いえ、レンならばきっと勝てます。」

戦おうとしていることは、私にはよくわかる。
今までの自分を見つめ、そしてその先へと行こうとしている弟の姿が、はっきりと見える。
きっと、この先もっともっと辛いことがあるはずだけど…どこか、大丈夫だと確信を持って思えた。

「…嗚呼、そうだ。夕方に、組織に頼んでレンの槍を手配してもらいました。
明後日には、新しいものが届くはずなので受け取ってくださいね」

でも、やっぱり彼には戦う力も必要なのだと思う。
その槍で、この楽園を滅ぼそうとするものを戒める槍として。

レン・レイト > 「優しくない人は…自分が見捨てた人を顧みない。……後悔なんてしないし、…それで心を壊してしまったりもしない」

実際はまだ少ししか一緒に過ごしていない姉。
それでも姉のことは少し理解したつもりだし…それに、今の話も聞いたから。
彼女は苦しんだ。自分が虐げられたことではなく、誰かを救えなかったことに。
それは恐れからか、保身からかはわからない。
心を壊すほど苦しみぬ生き…申し訳なさでいっぱいだった。
しかし普通の人ならば諦める。そうそうに仕方がなかったと頭を切り替える。
すくなくとも…彼女に会うまでの自分はそうだった。
他人が虐げられても、自分でなければとみて見ぬふりをした。

なのに彼女はあきらめきれなかった。
ずっと、ずっと誰かを救いたいと思い続けてきて…今は実際に助けているのだ。
少なくともそれは…少年には間違いなく大きな優しさに思えた。
それに最初は確かに弱かったかもしれないけど、その過去が許せなくて今を戒めに生きているのなら。
それは過去と向き合える強さなのではないのかと少年は思う。
罪滅ぼしすらせずに引きずる者…そしてそもそも罪を感じぬものを少年は知っているから。

「…でも、僕を救ってくれたよ」

だから、今は甘えるためではなく、彼女を思い抱きしめる。
彼女が救った存在が確かにいることを伝えるため。
そして彼女の辛さを…苦しみを癒したい。
もし姉が許しが欲しいのなら、否、もし許しすら拒んでも、
少なくとも絶対に姉を許すと…そう伝えて。

「……うん。お姉ちゃんがいるから…そういってくれるから。絶対に勝つよ」

頭を撫でられながら見上げる彼の眼は、また確かな火をともしていた。
灯なれど、熱き火を。

「…あ、ありがとうございます。…嬉しいです」

今までの何の変哲もない鉄槍は最早ボロボロで。…しからもらった槍はもう一つあるが、それは自分にはまだ使いこなせない。
だから新しい槍は嬉しかった。
それにそれは、自分がこの集落で、この集落のために槍を振るう誓いとなる者でもあるから。
自ずと、武者震いが湧き上がる

レイカ > 「…………。ふふっ…一本取られてしまいましたね…。」

体を壊してまで護りとおした皆が、いまはここで笑って過ごしてくれている。
彼もきっと、そのうち笑って、この集落に溶け込むのだろう。
そうなったとき――彼は私を姉とよび、慕い続けてくれるだろうか。
…だが、そうならないことを、私はどこか臨んでもいた。
いつか、彼が私すら必要とせず、彼自身の足で歩いていくようになれば…。

「……私は、ただきっかけを上げただけですよ…。
助かりたいと足掻いたのは、間違いなくレンです。」

だけど……私は確かに、彼を救ったのかもしれない。
かつて見捨てて、そして私自身を壊してしまった罪悪感が、また一つ消えた気がした。
抱きしめてくれる弟のその体を、私はそっと撫でると…空になった皿を持ち、その場から立ち上がる。

「さて…レン、私は今からお皿を片付けてしまいますね。
先に帰ってもいいですけど……どうしますか?」

半分くらい、愚問だというのはわかっているつもりだ。
彼はきっと、私が片づけを終えるまで待っているのだろう。

…私は、少しだけゆっくりと片づけをしてから……手をつないで、彼と一緒に帰路に着いた。
ほんの少しだけ、昔なくした誇らしさを胸に秘めて。

ご案内:「ドラゴンフィート 居住区」からレイカさんが去りました。
レン・レイト > 「助かりたいと願っても…お姉ちゃんが、助けてくれる人がいなかったら…きっと僕は助からなかった」

姉は嫌がるかもしれないが…姉が自分を救ってくれたこと。
そして自分が姉のことを気高い人だと思う事を認めてほしい。

何時か少年が見違えるように強く立派に育つ未来が来るかもしれない。
自立し、彼自身の道を見つけ…彼自身の足で歩き、人々に温もりを与える戦士となる未来がいつか。

ただ、それでも彼は姉を慕い続けるだろう。
血の繋がりどころか、何の繋がりもない彼女が少年の姉となってくれたこと。
愛情をくれたこと。
その恩を、愛情を決して忘れることはなく。
そしてその絆こそが、彼自身の道を見つけるきっかけとなるのだろうから。
きっとそう遠くはない未来の話。

「…もちろん、手伝います」

自分が食べたものを洗ってもらえるのは幸せな事。
でも…やはり今はまだ、姉とはすべてを分かち合いたいから。
ゆっくりと談笑しながら手伝え終えれば、しっかりと姉の手を握って帰路に就く。
少しづつ、だが確か少年も未来に歩んでゆく。

ご案内:「ドラゴンフィート 居住区」からレン・レイトさんが去りました。