2016/08/25 のログ
ソル・グラディウス > 「……?」

何故だかぎこちない少女に疑問符を浮かべつつ、ともかく目的の物が出るのを待つ。
明らかに怪しい。警戒をしておいても損はないだろう。

「はぁ?どういうことだよ。普通のマナポーションじゃねぇのか?」

少女の手に持っている瓶を見て、そう聞く。
何だその失敗作は、と言った風に怪訝な表情をする。

イルミ > 「ごっ……ごめんなさいっ……!」

怒られる、と思って反射的に身体を縮こめてしまうが、そういう態度が却って相手を怒らせたり嗜虐心を煽ったりしてしまうことがあるのは知っていたので、なるべく素早く体勢を立て直すものの、

「こっ、ここは、ちょっと……変なものしか、置いてなくて……そのっ……」

言い訳めいたことを言いつつ彼の顔を直視することはできなくて、しかもところどころ涙声になってしまっている。

ソル・グラディウス > 「…あーいい、いい」

身体を縮めている少女を見てめんどくさそうにそう返す。
頭を抱え、呆れたように息を吐く。

街道にポツンとあるもんで都合がよいから来てみたらこれか。
こういうところって大概、呪われた武器とか禁断の道具があるもんだが…逆パターンか。

「だろうな。まずてめぇが変だし」

涙目になっている彼女に少し悪いことをしただろうかと考えるが
元々こちらは買い物に来た客だ。泣かれる理由がない。

イルミ > 「うっ……ううっ、ごめんなさい……」

なんとか目元に浮いた涙をぬぐうと、とりあえず出来る限りのまともな応対はしなくては、という義務感が湧いてきた。彼は怒ってはいない……はず。たぶん。少なくとも今は。しかしここで泣いてしまったらますます苛立たせるだけで誰も得をしない。

「えっと……その、他の商品、ごらんになりますか?それとも、えっと、占いとか。こっちはまともです…はい」

なるべく商人らしく。なるべく自然に。無理矢理にでも気持ちを切り替えると、言葉も多少滑らかになった。……自分が変だという彼の言葉は否定しないし否定しようもない。自分が変じゃなければ誰が変なのか、というくらい変わり者なのは自覚している。

ソル・グラディウス > 「……」

弱弱しい声を出し、涙を拭う彼女を呆れた様子で見る。
いや、別に謝罪を求めている訳じゃないのだが…ともかく、なんだかこの少女が惨めになってきた。

「へぇ~占いも出来るのか…少し楽しそうだな。お願いできるか?」

他の商品には期待はしてないが占いと聞くとそう声を出す。
今後の自分の人生が気になっていたところだ。とは言っても何で何を占うかわかっていない。

ともかく占いをしてもらおうと少女に申し出た。

イルミ > 「はっ……はい、がんばります!」

向こうが自分の提案に乗ってくれた。それは彼が(そんなには)怒っていないということの証左でもあって、こちらとしては二重に嬉しいことだった。無駄に気合いを入れつつ机の奥側に座り、水晶玉に手を添えたが、

「……うーん……なんだろう」

眩しい。浮かんできたビジョンを見て、まずそう思った。それは眩しいほどに明るい未来というわけではない。

「……傷つかず、死なず、何かに常に照らされて……でも、平穏や安堵からは遠くにいる……?そう、まるで、光が安らかな眠りを遠ざけるような」

そんな、抽象的な言葉ばかりが浮かぶ。それが何かの暗示なのか、それとも彼そのものなのか、それすらわからない。

ソル・グラディウス > 「おうよ。頑張れ頑張れ。」

少女に軽い口調でエールを送る。
席に座った少女の向かい側に来るように座り、その水晶玉と少女の様子を見る。

「……」

黙って少女の言葉を聞く。

(傷つかず、死なず。されど何かに照らされてはいる。しかして平穏や安堵からは遠くにいる…か。)

少し驚いた様子でその言葉を心の中で復唱する。
確かに道具はクソだが占いは普通らしい。

「…当たっている。流石だな。」

そのように呟くと彼女を素直に賞賛する。

イルミ > 「あっ……ありがとうございます」

誉めてくれた!それだけで嬉しくなって頬が緩むが、それで満足してはいけない。『当たっている』と言ってくれたということは、それはつまり彼の知っている情報しか与えられていないということだ。

「えっと……他になにか、具体的に占って欲しいこととか、ありますか?例えば……なくしてしまったものとか、探してるものなんか」

彼の役に立ちたいと思ったのは、さっき見苦しい姿を見せた謝罪の気持ちからか、それとも彼の人生のほんの一部を垣間見たせいか。いつの間にか、恐怖や畏怖はなくなっていた。

ソル・グラディウス > 頬が緩み嬉しそうな彼女を見てこちらも微笑む。
しかし、次の瞬間気を取り直しこちらを見る彼女にこちらも気を引き締める。

「他、か。……東洋の刀剣を無くした。カタナってのだ。見つけられるか?」

顎に手を添え、少し考える素振りをした後にそのように答える。
正確には自分のなくしものではないが多分見つけられるだろう。

そう踏んで、とりあえず探してもらおうと頼む。

イルミ > 「カタナ?えっと……はい、わかりました」

たしか、細いというか薄い刀身の、片刃の剣のはず。いまいちイメージしきれなくて軽く冷や汗をかいたが、ここまできてカッコ悪いところを見せるわけにはいかない。頑張るから見てて!と子供が言うように軽く気合いを入れはする。

「……近い?いや、遠く……家の中とか、倉庫じゃなくて……たぶん、外です。でも屋根があるから……洞窟?何かの、ダンジョン?……えっと……心当たりは、ありますか?」

やっぱりというか、イメージがブレて掴みきれなかった。特に、いつもならすぐわかるはずの大まかな距離が計れない。

ソル・グラディウス > 少女の子供っぽい仕草を見て、少し期待するように腕を組んで待つ。

健気に頑張る姿に少し前までの自分を鑑みて少し言い過ぎたかなと反省する。
そして少女の回答が気になり黙って聞く。

「…洞窟?ダンジョンか…いや、すまんが無いな」

ここら辺の洞窟となると九頭龍山脈のどこかだろうか。
言っても洞窟なんざ何百もある。しかも近い、遠いなど正確な距離が測れてない。
まぁ、こんなもんだろう。
寧ろ洞窟の中にあるとわかっただけでも及第点だ。

イルミ > 「すみません……ちょっと、よく見えませんでした」

声が小さくなってしまうが、それはさっきまでのように縮こまってしまったからではなく、役に立てなかったという落胆と罪悪感のせいだった。

「あ、あの……お代は、いりません。お詫びだと、思ってください」

自分にはもう彼のために出来ることはなさそうだと思って、そう口にする。せめて彼が『来るだけ損だった』と思わないように。

ソル・グラディウス > 「いや、別に…」

頭を抱え、しょうがないと付け加える。
落ち込んでいる様子の彼女を見て、慰めるように頭を撫でる。
その掌は温かく、自然と心が安らかな気持ちへとなるだろう。

「……そうさせて貰う。アンタ名前は?」

代金が無料になると聞き、それに甘えつつ名前を問う。
その表情は怒りや不快感などはなかった。

イルミ > 「んっ………」

彼の手が伸びてきて、頭を撫でようとしているのだと気づくと、三角帽子を脱いでそれを受け入れた。自分が……欲情していない自分が男性からのスキンシップを受け入れていることにやや驚きを覚えたが、表情に出すほどでもなかった。

「い、イルミです。その、ありがとうございます」

彼の質問には手短に答えようとして、余分なものがくっついた。何故礼を言ったのか自分でもよくわからなかったけれど、言いたい気分だった。

ソル・グラディウス > 彼女の頭から手を離すと、一つ伸びをする。
少女の表情に変化がないのを見ると、余計なことをしてしまったかと頬をかく。

「あぁ、俺はソル・グラディウス。…太陽の剣を持つ男だ」

何故礼を言われたのか疑問ではあったがこちらも自己紹介し、そのように付け加える。
太陽。先ほどの占いと関係のありそうなことを言い放つ。

イルミ > 「ソル……さん、ですか……」

口に出したのはたった今名乗ってもらった彼の名前だが、視線が向くのは彼の背の剣(見えるのは柄の部分だけだが)の方で、それが彼の言う太陽の剣らしい。武器についての知識はあまりないけれど、それがそれなり以上の価値があるものらしいことと、さっきの占いで見えたビジョンと関係があるらしいことは察しがついた。

「……大事になさってくださいね、その剣」

剣が本当に彼の平穏や安堵を奪っているかはわからないけれど、剣が彼を守っているのは確からしい。そして、彼がそれを疎ましく思ってはいないことも。

ソル・グラディウス > 「…言われなくても」

剣を大切にしろと言われ、そのように返す。
平穏や安堵などとうに忘れてしまった。
剣を持つ代償。それは軽い条件であると同時に最も過酷な条件であった。

「アンタもしっかりしろよ。ほら、ポーションの代金だ」

イルミを心配した様子でそう言い、ポーションの代金を机の上に置く。

イルミ > 「あ……」

反射的に金を受け取ってしまったが、それを渡された意味が一瞬わからなかった。しかし、ポーションの代金という言葉を自分の中で反復してようやく理解すると、

「……はい!ありがとうございました!」

受け取れないと突き返すよりも、笑顔で言いながら頭を下げることを選んだ。彼がわざわざ心配しなくていいように、少しだけの虚勢も合わせて、なるべくハキハキと元気のいい声で。

ソル・グラディウス > 「……ふん」

ハキハキと元気のいい声で答える彼女に満足そうに笑う。
ポーションの瓶を持つとそのまま店の出入り口へと向かう。

「じゃあなイルミ。また来る」

扉を開けて、後光が差している背中を彼女に見せるとそう言って店を出る。
中々面白そうな店だ。そう考え、街道を歩き出す。

イルミ > 「はい、よろしくお願いします」

彼がまた来てくれる、というのは商売人としてもありがたいことだ。もしそれが社交辞令でないなら、それまでにもう少しマシなマナポーションを用意しよう、と思い、

「ええっと、魔法薬の本は……」

彼を見送ったあと、再び勉強と研究を始めることにした。……それが実際、どれくらいの成果を出すかはさておき。

ご案内:「街道の魔法店」からイルミさんが去りました。
ご案内:「街道の魔法店」からソル・グラディウスさんが去りました。