2016/08/24 のログ
ロージィ > ―――そうして、幾度目かの欠伸に小さな口をはく、とあけた頃。
『おじさん』がぱちりと指を鳴らし、控えていた痩せぎすの『おばさん』が、
己の入った檻の扉を開けてくれる。

「ぁ、……もぉ、寝て良い…の…?」

もぞ、と檻から這い出ようとすれば、伸びてきた『おばさん』の腕に、
小さな身体は素早く抱き取られてしまう。
―――それも、昨日までと変わらぬこと。

甘い、甘い香りを纏いつかせた子供の披露目は、今宵はここまで。
寝室へ運ばれ、己の立場も境遇も、待ち受ける未来も、
何ひとつ分からないまま眠りに落ちる己の枕元で―――

痩せた女が今宵も、怪しげな呪を唱え始めた―――。

ご案内:「奴隷市場都市バフートの一角」からロージィさんが去りました。
ご案内:「街道の魔法店」にイルミさんが現れました。
イルミ > 「今度こそ……」

机の上に置かれた一振りの剣を前に、本を片手に気合いを入れる。剣そのものは安物もいいところで何も特別なところはないのだが、だからこそ意味がある。これに魔力を与えて少し頑丈に、少し切れ味をよくするだけで、自分としては大成功。辛うじて売り物にもなる。古典的な呪文を唱え、諸事情で体内に溜め込めている魔力の全てを込めるつもりで、放つ!

「よしっ!─────あれ?」

成功した!確かに剣に魔力が付与されたはず!…………なのだが。台の上には、いつも使っている水晶玉や、いくつかの本や、薬を入れる試験管等々といったものを除いて、何もなかった。

イルミ > 「…………えっ?えっ?ええっ?」

消し飛んだ?いや、そんな莫大な威力の破壊呪文なんて逆立ちしたって使えやしないし、それなら部屋の中はもっと大惨事になってるはずだ。無くなっているのは剣だけ。はて?首を傾げて手を机の上に付こうとすると……

「.…………なんでこうなるかなぁ」

何もない場所に、何かがある。固くて、握りやすくて、まるで剣の柄のような。……透明な剣。全く目に見えない剣それが今回の成果物らしかった。それを手にとって、ため息をつく。

イルミ > 「こんなもの売れるわけ……ないよね……」

透明な剣なんて何に使う?誰が使う?構えても敵からバカにされそうで格好悪いったらない。それに、自分でも見えないのだから、振り回してるうちに自分を切ってしまいそうで危なっかしい。

「はいはい、今日も失敗。わかってましたよー」

不貞腐れるように言うが、聞いているのは黒猫だけ……いや、その黒猫も奥の籠の中で目を閉じていて、聞いていないかもしれない。……一部の戦士や、暗殺者からすれば垂涎ものかもしれない一品は、見失わないよう柄に布を巻き付け、鞘にしまった上で『がらくた』として倉庫の肥やしになることに。魔女はいつも通り滅多に来ない客を待ちながら本を読むことにした。

ご案内:「街道の魔法店」にソル・グラディウスさんが現れました。
ソル・グラディウス > 「……おい、誰かいるか?」

店のベルを鳴らしながら扉を開け中に入る。
薄暗い店内を見渡しそのように声を出す。

静かな店内にその声が響き、渡る。

しかし薄暗い。しかも窓等々が無いために息苦しく、物もごちゃごちゃしてて汚い。
こんなところに本当に人がいるのだろう。

そう考えつつ声の返答がないか待機する。

イルミ > 「あっ……はい!い、いらっしゃいませ」

店内に入ってきた男性の声に返事をする。元々夜目が利き、しかもこの暗さに慣れている自分は特に不自由しないが、向こうからは黒い装束もあって見えにくいらしい。もう少しいい照明でも用意できたらな、と思いつつ、

「えっと……その、何をお求めで、しょうか?」

続く言葉に詰まったのは、相手が大柄な男性だからというのもあるが、彼の金色の瞳のせいでもあった。金色の瞳なんて珍しい。もしかして魔眼の類いかもしれない、と警戒したのは、ついこの間魔眼に魅了されてあれやこれやということがあったからで。

ソル・グラディウス > 「あぁ…」

目を凝らし、そこにいたかといった風に少女を視認する。
三角帽子にマントなど、何ともまぁ典型的な…

「マナポーション買いに来たんだけど…」

言葉に詰まった少女の意図など露知らず、金色の瞳で少女を見据える。
魔眼というわけではないがこの瞳も後天的に獲得したものだ。
瞳を見てどうこうなどは無いが、瞳を持っている物は多くの恩恵が得られる。

イルミ > 「…………あっ、そ、そう、ですか」

彼はなんだか呆れている…ようにも見えたけれど、それは自分の被害妄想かもしれないと言い聞かせてなんとか落ち着こうとする。それでも舌はもつれてスムーズに言葉を出すことは出来なかったけれど。

「まな、ポーションですね。えと……これ、です。ただその……えっと。魔力は回復しますけど、次に魔力を使うとき…すごく、制御が利きにくくなるかも…いえ、たぶんなります」

言いながら棚から手に取った瓶に入っているのは、自分の作った微妙ポーションの中でも割合マシなものだ。これの実験のせいで、せっかく蓄えた魔力を残らず吐き出した上、壁に穴を空けたことがあるけど。