2016/02/20 のログ
ご案内:「とある城塞付近の山道」にハダルさんが現れました。
■ハダル > 『お頭、どうです?』
山道を外れたところで男の一人がそう問うと、斜面に茂る木々の間で上半身を前のめらせた女が少し頭を動かした。
まくれあがった青い羽織から覗く、黒に覆われた臀部が更に突き出される。
「お頭と呼ぶなと言っているはずだが。まあ待て……ふん?
見張りは配置されているようだな。こちらの斜面からでは難しいか」
己の言葉に頷く女の視線の先には、石造りの城塞がそびえ立っている。
王国に点在するある種何の変哲もない城。治安と統治の要でもある建造物。
■ハダル > 女の言葉通り、遠目に見える城には見張りの兵が何人もその定位置についていた。
それらの目が見張るのは魔族、他国の軍、山賊の類、だけではない。
女らも賊の類ではない。少なくとも今は。
『田舎貴族のハゲ野郎が無茶をいうもんだが、おか…マスターの眼にかかりゃぁ偵察なんて楽勝すね』
話す男の脇で女は見張りの兵を見ている。その表情まではっきりと見える。女の瞳の奥で焦点が切り替わる。
「……そうだな。『出来』が違うのでな」
『どうでしょうかマスター。”入り込め”そうですか?』
苦笑いで返す女に、もう一人の男が囁いた。
暫く考える。女らは斥候だ。しかし魔族でもなければ、外国でもない。
彼女らを雇っているのはすぐそばの別の地方領主……男の一人がハゲ野郎と呼んだ相手だ。
ご案内:「とある城塞付近の山道」にロイナさんが現れました。
■ロイナ > 山間の城塞に気づいたのは、ふらっとこの辺りに立ち寄ったから。
別段用事もないのでさっさと立ち去ろうとした所、何やら其方を様子見する影が一つ、二つ――三つ。
「――――ほほう」
興味を惹かれた。というのもうち一人は女性だったから、という邪なわけではあるのだが。
三人の背後から緩々と、ゆっくりと。距離を詰めていく。
襲うわけではない。危害を加えるつもりも――今のところはないのだが。
どこか悪戯心が湧いてしまった。
■ハダル > ん、と力を入れてそれぞれ木を掴んでいた両手を離し、体を起こす。
「向こうの斜面からなら…近づくのに私と3、4人か。
内部構造も“だいたい読めた”。悪い収穫ではない」
『ハゲの部隊が表に出たところで裏から入り込む…つってもハゲがビビったらお頭は敵陣どまんなかじゃねえすか?』
「だが私達だけで略奪をするよりは遥かに安全だ。そうだな?」
『ま、そりゃそうすけど』
ティルヒアもまだ新しい今、国内の乱れに傭兵仕事は需要過多だった。山賊の習いは必要ない。
「ならばこれも“人の世の習い”ではないか?」
中央が暗闘を繰り返す今、統制の緩んだ地方は地方で各自が独走を始めている。
だからこれもまた国内各地で起きかけていることの、よくある一つで――――
『誰か来ます』
「む」
周囲を警戒していた物静かな方の男が囁いた。
■ロイナ > 気づかれた。
周囲を警戒していた男に苦笑い返し、会話の内容からして頭領らしき女に視線を向ける。
「―――向こうのおカタイ建物に何か用でも? 近づくのなら面倒そうだよ」
先んじて窺ったところの、率直な感想。
挨拶も無しに開口一番そんなことを言ってのけ、瞬いた。
「アンタら何?兵士じゃなさそうだし……賊?いや、どっかの兵隊さんかな」
■ハダル > 先程まで饒舌だったほうが押し黙っているのは、指示あらばすぐさま始末に入る態勢に入っているからだ。
妙に薄着の女だ。山あいで見るのはやや奇妙。
付近の者であればあまり嬉しくないかもしれない。
そういうことはもう一人の男も、ハダルも共有している。
「私達か、ただの流れの傭兵だ。賊ならこんな“お堅い”城を狙うと思うか?」
ハダルが応じる間も寡黙な男が怪訝そうにしているのは、自分から近づいてきた女に得体のしれなさを感じているからだろう。
「あそこはどうも随分ピリピリしているからな。近くに立ち寄りやすい他の村落があるなら教えてほしいものだが」
■ロイナ > 押し黙っている男を笑いながら一瞥し、再び女へと視線を戻す。
薄着、かつ武器も身につけていないが、その態度には余裕がある。
「……ふぅん。傭兵さんね。また物騒なお仕事だ」
腰に手をあてながら応対。そして問われれば小気味良い笑みを浮かべてみせた。
「ここらに大して良い村は無いみたいだ。よしんばあっても物騒だろうね」
「そういう――まぁ場合によっちゃ野宿とか、そんな用意はしてこなかったのかい?」
■ハダル > すぐ向こうの領地の本隊まで戻る用意がある。
だから野営準備は必要ない。
つまり嘘をついている。そこに簡単に踏み込んでくる。
『(やっぱ“ココ”の奴じゃ? 殺らねえとまずい)』
『(意図が読めませんね……)』
男二人が囁く。
「ふむ、その通りだ、無くて困っていると言ったら?」
中央の女は相変わらず自然に構えている。やや大仰な調子がなくもないが……。
■ロイナ > 「……無い、と。そんな用意も出来ないようじゃ、悪いけどお粗末という他ないなぁ」
大仰に肩を竦めてみせた。男二人が囁きを、こっそりと会話を交わしているというのに、素知らぬ顔だ。
それとも、と瞳が光る。
「……野宿の用意をする必要がなかったのかな?…ふふ、さてどうだろうねぇ」
ニヤリ。意地悪い笑みが忽ち口元に浮かんだ。
■ハダル > 口の軽い方が舌を打つ。
『(挑発だ。のるなクレース)』
『(どう考えてもおかしいだろうが、殺ったほうが早ぇ)』
静かな山あいだ。悲鳴の一つ、剣戟の音一つあればずいぶん響くだろう。
相手の笑みにハダルは黙っている。
『そういうおめぇこそ一体なんなんだ?あん?』
因縁をつけるような調子で前に出たのはクレースと呼ばれた口の軽い方だった。
もちろんそれは態度通りの意図ではない――――
■ロイナ > 静かな山間は、舌打ちの音ですらよく響く。
軽妙な口を持つ男が前に出るのを、笑いながら見上げて―――
「私は単なる旅の者だよ。アンタらみたいに物騒な仕事柄じゃない」
「多弁は銀、沈黙は金にて。あまり多くは言わないけどね」
すっ、と唇に立てた人差し指を押し当てた。
まるで男が次にどのような行動に出るか、待ちかねている様子。
■ハダル > 近づけば、扇情的な肢体の女だ。
クレースがその淫気に一瞬唾を飲んだ。とはいえもはや行動は決まっている。
だから最後の警告。
『ぐっ…じゃあもう行けよ。それとも一緒に来る気か? あん?』
男のダガーを持つ手は半ばまで振り上げられている。
傭兵といえば山賊と裏表。人さらいなど大して珍しくもない。
■ロイナ > 一瞬、揺らいだ気は見逃さない。
女の瞳が妖しく光った、次の瞬間。
「……一緒に?私がアンタらと一緒に行って何か得があるかな?」
等と言いながら片手を翳す。
ダガーを振りかざしたその手は止まり、身体が崩れ落ちるだろう。
溜め込んだ淫気を注ぎ込み眠気を誘発した。
己が意図しない限り、男はもう目を覚まさないだろう。
「……ま、私がアンタらに声をかけた理由はちょいと他にあってだね」
■ハダル > 部下が一瞬で崩れ落ちれば、さすがにハダルも腰の喧嘩剣を抜いた。
もう一人の男は既に大小二剣を構えている。
『貴様……っ』
「ほう、理由だと……?」
ほぼ明確にも思えて、そう問い返した。
切れ長の緑の瞳が細められて向かいの女を見る。
■ロイナ > 「なに、そんな大したことじゃないよ」
言うと、二人の武器をそれぞれ見遣る。
未だ表情からは余裕が消えず。
少しずつ歩み寄って、行って―――
「アンタがちょいと気になったもんでね、美人さん」
■ハダル > 「私にか。褒められたことに悪い気はせんと応えておくとしよう」
横では二剣を構えた男が無造作に歩み寄ってくる女にじりじりと構えている。
クレースとてここに同道している以上ただの素人ではなかった。
それが割りとどうでもいいかのように緑色の玉が瞬く。
「どうも“ここ”の者というわけではないな。
ならば問うが、何故我々…いや私に構う?」
■ロイナ > 緊張を増しているかのような、男の挙動を尻目に。
視線は女へと一点に注がれている。
「素直に喜べばいいのにね。……まぁいいや」
距離を詰めると同時、周囲に淫気を纏わせた。
近づけば近づく程、種族問わずその「気」が察知できるように。
「それはもう、気になったとくればこういうコトじゃない?」
「あ、そうそう。アンタの部下は殺してないよ。ちょいと眠らせただけだから安心すると良い」
■ハダル > 『ぐぐ、こ、これは……』
ロイナが気を解放したことで、男が腰を折った。
直接ではないから即座に意識を刈り取られたりはしないが、立っている事ができずふらりとよろめけば、
足場がいいわけでもない山道だ。足を滑らせ倒れこむ。
淫気によって股間は怒張しているだろうが、それ以上に抵抗力も低い普通の人間では重度の酩酊状態に近い。
「淫魔――――か。このような僻地では制限も薄い、というわけだな」
その言葉とともに男が意識を失った。
ハダルも男ほど劇的な影響は受けていないとはいえ、やや表情を歪め、口元を片手で覆うようにしている。
■ロイナ > 「おや、だらしないね。まぁ仕方ないか」
意識を失った男の姿を見て一言。
とはいえ、目の前の女はさして強い影響を受けた様子は無い。
人間――というわけではなさそうだ。
更に距離を詰める。
「―――さて。アンタはどうする?どうせ誰も来ない場所だし。少しくらい愉しんでいったって罰は当たらないんじゃない?」
手を伸ばす。特に止められなければ彼女の腕を、胸元を撫で上げようとするが――
■ハダル > 「そう、か。そこの城にも関係がないということであれば私が事を荒立てる必要は……ん……ないな」
腕、胸と相手の指先が移動する間も、手にした剣が振られる事はなかった。
相手がわかった以上は無理に争いに持ち込む理由はなかったし、
何より『あまり反抗しないほうがいい』という判断が妙に強くなった。
動きやすさを重視したタイトで薄手の革の向こうで塊が柔らかく弾む。
「しかし、誰もこないと言っても……こんな斜面の傍では場所が悪い、のではないか」
■ロイナ > 彼女の判断がどうかとは関係なしに、触れた手はゆっくりと撫で擦るように動く。
革の向こう、確かな弾力を感じればますますと笑みが深まった。
「……なら、場所を変えようか。あっちに確か―――」
言って彼女を誘導するように。男達は放っておいても恐らく平気であろう。
■ハダル > 「……致し方あるまい」
半ば呆れたような言い振りだが、妙な従順さで淫魔の女に続く。
既に剣は鞘ヘ戻されていた。
ご案内:「とある城塞付近の山道」からハダルさんが去りました。
ご案内:「とある城塞付近の山道」からロイナさんが去りました。