2015/10/09 のログ
ご案内:「王都鍛錬場」にアノーさんが現れました。
アノー > やっとこさ、王都で手に入れた仕事は『兵士の教育』という名の仕事だった。
臨時雇いではあるが、そこそこ実入りは良い。三食共に寝所までついてきて、雇用期間は一週間だ。

「どうした。それで終わりか? ルーキー」

そういって木刀を手元で弄ぶ傭兵はミレー族の奴隷兵士を挑発した。
対してミレー族の奴隷兵士は疲労困憊といった様子だ。それも当然で、子供のちゃんばらぐらいにしか技術がない相手に兵士としての訓練と鍛錬を行ってきたアノーと比べて月とすっぽんほどの実力差があるのだ。

「それ以上戦えないなら広場を10週して来い!」

なんて、昔自分も教官にやらされたなぁ、なんて思いつつ奴隷兵士のケツに木刀を叩き込み走らせる。

アノー > 正直、今相手している兵士たちは奴隷から奴隷兵士に雇い主を変えられたばかりの者たちだ。
戦闘技術なんて知らなくて当然だが、

「お前たちはクズ同然だ!」

決してミレー族に対して強い差別意識があっての発言ではない。

「お前たちは奴隷だ! 死ぬまで前線で消耗される部品だ! いいか! それは一般兵士も同じだが、お前らに人権だ捕虜交換だなんて道があるとは思うな!」

突きつけるのは現実。
事実と言う名の剣だ。

「敵に捕まれば終わり! 殺されればもちろん終わりだ! 降参なんてしたところで命が助かるなど思うな!」

戦時条約なんてものは奴隷に適用されないことがほとんどだ。
場所によっては剣よりも安く扱われる。

「だから生き残れ! いいか! お前らは戦争が終わるまで勝ち続けて生き残らなきゃならない! 今ここで体力作って殴られて覚えたことを戦場で活かすことが全てだ! わかったら全員走れ!」

体力づくりの基礎は走りこみ。
そして、一番楽な訓練官の仕事は走りこみを眺めていることだ。

アノー > 奴隷兵士以外の鍛錬は未だに任されてはいないが、時折声が掛かることもあるらしい。
手ぬぐいで額の汗を拭いながらアノーは奴隷兵士に怒鳴る。

「黒いの! 遅れてるぞ!」

走らせて、走らせて、走らせ続ける。
無駄なことを考えるから体力を消耗するのだ。走ることだけを考えさせる。
もっとも、兵士の訓練でまず行わなければならない『自己価値の破壊』は奴隷の場合は既に終わっているから体力づくりと剣の振り方さえ教えれば問題ないだろう。

「だが、あっちの騎士様はどうなんかね」

その為、兵士だったアノーにとって騎士だなんだっていう奴らは自分の価値をどこまでも信じている。下手すると戦場で死なないとか思っている奴だっている。理由は明白。先ほど述べたように「人権と捕虜交換が適用されるから」と思っているからだ。

「しらない、気づかなかった、で何でもまかり通るっていうのによ」

騎士達の鍛錬を見ながら苦笑交じりに呟いた。

アノー > やがて、奴隷兵士の走りこみも終わったところでアノーは訓練の終了を告げた。

「終了!」

奴隷兵士達がふらふらになりながら寄宿舎に戻っていく中、アノーは煙草を一本取り出し口に咥えて一服。
ふー、と一息。とりあえず、今日の仕事はこれで終了だ。明日のことは明日考えればいい。奴隷兵士達が戻ったのを確認した後、アノーもまた寄宿舎へと戻っていった。

ご案内:「王都鍛錬場」からアノーさんが去りました。