2022/04/30 のログ
ラファル > 使う事が出来るかどうか、という意味であれば、既に使う事が出来ると思う。
 しかし、だ。ラファルは慎重に、機をうかがう事にしていた、何故なら、竜の咆哮は、広範囲に効果が広がる。
 特に、ラファルのブレスは、風の属性のブレスであり、威力よりも範囲と速度、そして、防御不可に特化しているブレスなのだ。
 威力をあげる方法は二種類ある、声を大きく……詰まりブレスの量を増やすのと、魔力を熨せる事。
 声を大きくするなら、喉への負担が大きくなるから、怪我している今は使いづらいが、槌で減衰されにくい。
 ただ、此方は純粋な音波になるので、威力がそこまで上がり切らない、何か一つ、手が欲しくなるのだ。

 魔力を熨せる方法ならば、直ぐに使えるし、本来であれば十分な威力があるのだが、槌で防がれて威力が堕ちる。
 今回に関しては、悪手でしかないと、学習している。

 だから、ラファルは、魔力のなるべく使わない、発声によるブレスを敢行する為に、溜めていた。
 地面を踏みしめ、足を取らせる師匠。
 魔力など無くても、体術と、氣を上手く使い、自分よりも大きな存在を上手くかく乱する。
 攪乱だけではなく、更にダメージも細かく与えてくれるのが判る。
 それでも、未だ、もう一つ。
 そんな時に、先程の術を、思い出した。
 回復しながら、思考を回し、いける、と感じる。

 大きく、大きく、息を吸い始める。
 しゅううううう、と、槌による魔力吸収の時の様に、空気が流れ始め、ラファルの中に入り込んでいく。

「師匠!土遁・金剛砂輪剣!」

 先程、槌に使っていた忍術。幼女は師匠にそれを希う。

 魔力の無い、ソニックヴォイスの、もうひと手間。
 これで行くのがいいのだ、と、確信を持った。

「――――――――――!!!!!」

 最後の呼吸を吸い込んでいく。
 口がかぱぁ、と開いて、ドラゴンブレスの準備を。
 超音速の、音波砲である、ブレスを。

影時 > この場で一番最適解と思われる手段は――魔力に寄らない攻撃手段である。

鍛造過程で魔力を籠めて鍛造された、文字通りの入魂の出来と呼べる魔法の武具の類なら兎も角、
ただ対策も工夫もなく武器に魔力を付与した場合、おそらく一合しただけで付与した魔力は剥がされる。

魔術、魔法の防御という意味においても、あの槌は強力の一言だ。術式そのものをぺろりと飲み込んで収められるのではないかとも思うくらいに。
槌を握る仮初の使い手は魔力仕掛けの木偶人形であり、自身の駆動力以外に魔力を運用している素振りがない。
魔術を使って見せるのであれば、この場の戦いはより一層至難なものになっただろう。
故に、弟子が使うであろう反撃に魔力が介在しないのであれば、“防がれる”という心配はしなくてもいい。

(どっちかと云や、俺の方が身を守らねえといけねぇのは明白だろうが)

ささやかな防護手段とすれば、それは勿論敵を応用することが最良であろう。それでもなお、守りに専念すべきなのが竜の吐息という奴だ。
風が、動く。流れ、揺らめいてやがて一方向に吸い寄せられてゆく。この兆候を己はよく知る。

「来るか……――!」

故に手にした刃を羽織の下、腰裏の雑嚢の裏に設えた鞘に納める。両手を自由にしなければ印を結ぶことができない。
加えてそれで足りぬと思えば、取り出す札を足元の石床に張り付ける。氣を流せば数秒を経て、石を屹立させて壁にすることができる。
その術が成立するより前に、声がする。弟子にこういう術を編み出したぞ、と教えてまだ間もない術だが、ちゃんとよく覚えているものだ。

「応!!」

再び氣を練り、廻らせて印を結ぶ。気合を込めて奥義とも呼べる忍術の一つを再び解き放つ。
己が広げた両手の幅よりも、さらに大きい高速回転する砂塵のリングを間合いを取ったリビングスタチューの顔面に向かって手裏剣の如く打ち放つ。
だが、それも先ほど同様掲げられた槌が防ぐ。甲高い金属の叫びと火花、そして生じる膨大な熱が陽炎を生む。
一見すると無意味。だが、それでいい。小粒すぎるとも、鋼玉などが混じった砂塵だ。それらは、次の決め手の布石となる。

ラファル > 魔力を使わない攻撃に関しては、幼女の直接パワー攻撃が一番手っ取り早いのである。
 しかし、最初に攻撃を受けて、ダメージを受けてぶっ倒れてしまったのが、今の形でもある。

 魔力殺し、魔術殺しと言うべきかの槌の製で、思った以上に酷い事になって居た。
 木偶人形でさえ、こんな風に熟練の忍者と、ドラゴンが死にはぐるような槌。
 これで魔法を使える、戦術を考えられる人間が使うとなると、想像だに恐ろしいことになるのだろう。
 ラファルが魔力に依存するだけの竜ではないのが、運命の分かれ道と言えるのだろう。
 
「ぁぁぁぁぁぁぁ。」

 ダメージは抜けてきている、しかし、完調ではない。
 それでも、ブレスが吐けるようになっていて、威力も、溜まって来ている。
 声が、吐息が、呼吸が、溜まり切ってくるのが判ってくる、上手く、ブレスが吹けるように、為って来ている。
 いける、と、幼女が思って。

 師匠も、良いタイミングで防御の術を発動する。
 石壁が屹立し、師匠の姿を隠していくので、之で直撃はなくなる。
 今からの攻撃に、耐える事ができると、理解する。

 師匠の術が、発動する。
 師匠の周囲に回る円陣のような、術。
 物凄い音を響かせて、切り裂こうとする石が、防がれていた。
 そこに、ラファルのブレスが直撃する。
 音の波が、勢いよく浴びせかけられていく。
 石が吹き飛ばされてリビングスタチューに襲い掛かる。
 小刻みに、小石がリビングスタチューに食い込んでいくのが見える。
 じゃぁ、という音がして、リビングスタチューが刻まれていくのだ。
 ラファルのブレスが、術が、魔力という物を介さずに、リビングスタチューを刻み、砕いていく。

影時 > 返す返すも、初手が文字通りの初見殺しとして働いてしまったのが何よりも今回の反省点だろう。
肝心の使い手自体が手数はあっても凡庸、しかしながら、得物が特上過ぎて事態が厄介すぎることとなる。

自分達二人が魔術師、魔法使いだった場合、この状況は間違いなく詰みに近かった。
しかし、魔力の運用にただ依存する、頼るのみではないからこそ打つ手がある。

「善ぉし!」

竜の吐息が解き放たれる――刹那。忍術を描き込んだ札が発動し、堅固な岩盤を屹立させて防壁と成してゆく。
もとより敵を竜の吐息の射線上に挟んでいる以上、その敵影は槌もろとも遮蔽物とすることができる。
だが、それではまだ守りに不安がある。さらなる防護壁を用意しておけば、己が被るダメージは可能な限り軽減することができるだろう。

NPC > 音がする――凄まじい、音がする。

その音は白銀の戦槌を構え持つ3本の腕と、骨格だけの翼を持つ動く石像の前後から挟むように響く。
灼熱した巨大な円盤めいた高速回転する砂塵の刃が、充填した魔力にまだ余裕のある槌と競り合うことで生じる切削音がまず一つ。
いわば微細な砥石の粒となる硬度が極めて高い塵が、生じた熱に炙られながら舞い散る。
高速回転の遠心力で放たれた塵が、石像の表層を削り、そこかしこに食い込んでゆく。

それを先ほど打ち倒したはずのもう一つの敵が、音を超えた何かの圧を発して、さらにその塵を震わせ、共振させて一層の破壊力を生んでゆく。

【――!!!】

そうした破壊の力が、槌の持ち主を微塵に破砕して崩壊させてゆく。
そのあとに残るのは、高々と舞い上がって石床に突き刺さる白銀の戦槌だ。
ごぅん、と。重く、重く。突き立っては、内包していた魔力を波濤の如く吐き出して、白銀の輝きを減じさせてゆく。
奪った相手に返すのではなく、この大地に、地の底に埋もれているものたちに分け与えるかのように。

ラファル > 「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………。」

 咆哮。雄叫び。
 竜のそれは、物理的な力を持ち、師匠の術と重なり、別の力となっていく。
 熱と振動とが、それを砕き、切り刻み、砕いていく。
 その二つの力を受けつつも、槌は、一切の歪みも、ダメージもなく、地面に落ちるだけ。
 なまはかなものではないというのは判るが、とんでもない物だと言う事は、ラファルは感じる。
 竜から見て、巣に持ち帰って、一番大事な所に置きたいぐらいの宝物だ。
 マジックアイテムなんて言うレベルで語っていい物ではない気がする。
 ただ、上手に表現するほどの語彙を持っていないし。

「ぷしゅぅ………」

 傷は治したが、先程のブレスでまたぶり返した。
 命に別状はないが、色々使い切った幼女は。
 ぺとーんと、地面に力なく倒れる。

「じめんがつめたい……。」

 とろーん、と蕩けた様子で、地面に摺り摺り体を擦りつけていく。
 起きる気力ももう、少なくなっていた。

「ししょー。」

 いったん帰ろう、そう見上げるのと同時に。
 仰向けになって、だっこ、と両手を突き出すのだった。

影時 > (アレだけぶちかましても、……ろくな損壊も糞もなしか。恐ろしいな)

おそらくは、という前置きも何もいらない。
あの槌は己が全力の氣を受け止めても、なお余力を見せうるであろうモノだ。
今回、鞘に納めたままの太刀とその点においては同質。
破壊する手段であれば、若しかすると同じものを同じ力でぶつけ合わせて壊す以外にないかもしれない位の特級。

使いこなせるものを選ぶこと疑いなしだが、地の底に通じる道程を開いた以上、いずれ自分たち以外の誰かが持ち去りかねない。
槌頭を先端に地面に突き立ち、柄を天井に向けて屹立するものを確かめる。

柄に触れれば、先ほどの一合も含め、生じた熱がまだまだ強く残っている。
氣を込めてみれば、嫌でもわかる。このあたりの地脈に氣を流した際、反発もなく吸い寄せる感覚とまったく同一だ。
掴んで、引き上げようとすれば長さと大きさの割に思ったよりも軽い。

「……大地はあらゆるものを受け止めるとは云うが、無茶をしやがって。すまねぇな」

おっと、そうだ。放ってはいけないものが先にある。
ぺとーんと地面に倒れ、ベッドが恋しいとまどろむようなそぶりで身を擦り付ける姿に歩み寄り、両手を突き出す姿を抱き起こす。
慣れた素振りで軽い体躯を引き上げ、左手で支えながら、槌を引き抜いた瞬間に。異変が起きる。


   地が

    ふるえ  揺れるのだ。

「!? さっき漏れた魔力のせいか? ……ぼやぼやとしていられンな。とにかく捕まっていろ!」    

まさか。足元。さらに深く、深く。脈動する気配がある。力がある。そこかしこから湧き出て震える。戦慄く。
放散された強い魔力が、いわば大量の荷物を背負った駱駝を潰す最後の決め手の一毛の如く、反応を起こす。
その反応は、この場所を崩落させるのではないかと思わせるのに足りうる位だ。
抱えた弟子に言葉をかけて、少なからず怪我と消耗を負った躰を鞭打つように、走り出す。踏み込む前に荷造りをしておいて正解だったかと。内心で思いながら。

ラファル > 「きゅーん。」

 甘えた声をあげて、師匠に抱きかかえられる。
 小さなころから、実の父親とは離れて、姉妹で暮らしているのもあり、年上の男性に甘えるのが好きなのである。
 パパんが居れば、泣いているだろうけれど、今ここには居ないので。
 ぎゅぅー。と抱き着いて甘えて頭をすりすりと擦りつけていて。
 師匠が、槌を手にしたところで、起きる異変。

「大地の怒り?」

 地面が揺れる、パラパラと天井が砕けて堕ちてくる。
 ただ事ではないことは、ラファルにも判る。

「あーい。」

 ひしっ、と、両手両足を使ってしがみ付く幼女。
 引っ付き虫と化したら、槌を持って走り始める師匠に、揺られて移動する。
 そのまま二人は洞窟を脱出して。
 撤退準備を行っていた、分身の1号2号V3と一緒に。
 沈んでいく洞窟から離れていくのだ。

 今回の冒険は、そんな感じ、なのだろう―――

影時 > 遠くの空で泣いてそうな実父殿はさておき、己が失策で怪我する羽目になったのだ。
こういう場所であったとしても、甘える仕草を駄目と止める気にはなれない。
外に出たら、安全を確認したうえで怪我の具合を改めて見直しておこう。問題は……、

「……――いや、この槌とかの原材料の産地の筈だぞ、ここは。
 溢れた魔力を受け止め切れていない、否、飽食が過ぎて腹壊したとか云うンじゃねぇだろうなこりゃ」

――この有様だ。

この土地、この場所の特性は何の備えもなければ、魔力を奪い去られることにある。
地脈からも吸い上げたエネルギーが蓄えられ、閾値寸前となっていた処に先ほど放散された魔力が駄目押しとなってしまったところか。
しっかりとしがみついてくれれば、己の両手も使えるようになる。
使い手に感応する特性でも持っているのか。槌は思っていたよりも軽く、持ち運べる感覚があった。
それを良いことに走り出す動きで引っこ抜き、先ほどまでの場所に戻ろう。

「悪い。浅いところまででいいから、分身の一人か二人を寄こしてくれ」

安全をはかられた作りの場所でも、地盤崩落を伺わせるこの地の鳴動には長く持つまい。
先に見つけ、纏めておいたインゴット類と関連する書籍類の包みを引っ掴んで、重みに呻きながらも全力疾走を再開する。
だが、金塊ほどではないとはいえ、金属の塊と書の束というのは重い。

支援を頼みつつも地上に出て、地に沈んでゆく洞窟から脱出を図れば、念には念と進入路を爆砕して――帰途につく。

ご案内:「魔族の国」からラファルさんが去りました。
ご案内:「魔族の国」から影時さんが去りました。