2022/04/04 のログ
ご案内:「魔族の国」にラファルさんが現れました。
ご案内:「魔族の国」に影時さんが現れました。
ラファル > 「守ってくれる法の外にいるのだから、法は守ってくれないし、ね。」

 殺してしまえばいいなんて、暗殺者でさえ、しない事だ。
 目標を殺すのに対し、そのほかを殺してはいけない、等はまま在る話しでもある。
 守るべき法を犯すことが殆どの裏社会、法が護ってくれるなんて、それこそ、甘すぎる考えだと言わざるを得ない。
 裏社会は、本来手を出すべきことでは、無いのだ。

 そんな、師匠の悩みを知らぬ幼女の弟子は、頭をコスコス、と撫でてくれる大きく暖かな掌に擦りつける。
 忍びの技以外にも、師匠からは大事な事を教えてくださる、だからこそ、幼女は学びに、集中できるのである。

「―――あ。
 だから、あれ、なのか……。」

 目を瞬き、ゴーレムを眺める幼女、魔族の死体。魔族というのは、人間に比べて魔術や魔力に対して、敏感である。
 白骨化したとしても、それは変わる事はないはずだ。恐らく、魔力を感じる為の器官があるのやもしれない。
 それを組み込んでしまえば、あの部分が、ゴーレムの感覚器官となるのやもしれない。
 ゴーレムに組み込んだのは、魔力の供給源というだけではなく、その感覚器官を触覚として使われているのかも知れない。
 そんな風に、幼女は、師匠に自分の考えを伝えた。

「さて、と。」

 追加が来るのが判った所で、さて、今現状目の前にいるゴーレムに向き直る。
 今でもパッシブで、反響する音から、距離を計算しつつ、だ。
 師匠だけに任せるのは、正直、退屈なのである。
 退屈、と言う事であるので、参加する必要が無いのであった。

 師匠は既に、二体目に向かっている。大きな音を立てている。
 もし、音を感知しているなら、視線とか意識が師匠に向くのかも知れないが、良く判らない。
 良く判らないのなら、警戒しておこう。
 三体目に向かう幼女は、まず、身を低くする。
 大きなゴーレムだ、足元が疎かになりやすい、ただでさえ小さな幼女、振り下ろしの攻撃をしようとしても、足元すれすれに来るのであれば、時間がかかるのだ。
 だから、スライディングで、地面すれすれになりつつ。
 爪に氣を練り込んで、両足を、裁断する。竜の爪は、並の魔法剣よりも、強く切れ味が良い。
 魔力を吸収すると言えども、魔力もなく、硬度と鋭さと、膂力で切り裂いた。
 ゴーレムが倒れる前に、ゴーレムの両手も又、裁断する。

影時 > 「いやぁ、全くな。
 少し考えれば、そのあたりの下りは思い至る筈なんだが……なんだろうなァ。心得違いが多いのは」

裏社会が自由だと、好き勝手にしていいのだと勘違いする手合いは何かと絶えない。
王侯貴族の類でさえ、心得違いが多い気さえするのは気のせいだろうか。それとも、色々と啓蒙が足りないのか。
流れ者、余所者である己が異邦の地で糧を得ようとするなら、それに足るだけの信用を様々な方法で得る必要があった。
裏社会への接触も、そうして得た信用の経路の一端から得たものだ。

知れば確かな実感を以て、誰かに伝えることができる。
教えることに於いて、手抜かりはしない。それがこの仕事を請けた際に決めたことだ。

(――……感づくよなぁ。ふれっしゅごーれむ、やら云うモノもあったか?確か)

ゴーレムは巷においては岩や泥人形のような印象があるらしいが、屍などのような死肉の類を素材にしたものがそう呼ばれると聞く。
無生物に命を吹き込む術法で躯体を動かすならば、死体に残存する肉体的な機能を応用することもできるだろう。
そんな霊的、魔的な繋がりを感覚器官として転化することもまた然り。
すべての答え合わせは専門の術者に尋ねてみたい処だが、おおよそのあたりをつけることができるなら、どうすればいいのか。
そもそも“壊しても死なない”のがゴーレムだ。そうとなれば……。

「そうそう、そうやって動けなくなるように壊すのも正解だ。
 ……壊れた躰を立て直すことは、できなさそうだからなぁこいつら」

幼女の爪は竜の爪である。であるがゆえに、しかるべき力を込めて振るえば岩肌とてあえなく切り裂かれよう。
己が後方で上がる破壊音の正体、風景を肩越しに見やって「善し」と頷き、笑う。
そんな衛士たちを抜けて進むさきに、分厚い鉄扉めいた門が見えてくる。半端に閉じられきらない隙間からは、音がしない。
ちょうど己一人くらいが抜けられる隙間に滑りいるように、踏み込んでゆく。

その奥には岩をくり抜いたドームめいた空間が広がっている。
大きな部屋ではなく、ホールのように見える処はいわば陳列場であり資料置き場であるらしい。
据えられた円卓に置かれた様々な書物や、壁の棚に並べられたガラス瓶などなどが目を引く中――、気づくかもしれない。
先ほどまでいた場所で感じていた、魔力が吸い出されるような感覚が失せていると。

ラファル > 「悪党にも、悪党のルールもあるしね。
 其れすら、思い至らないのは、判って居て行う害悪、若しくは、お馬鹿、と言う事なんだろーね。」
 
 裏社会には、裏社会のルールという物がある好き勝手にすれば、制裁が行われる。
 法に基づいたものではないから、一般的なそれよりも激しく、酷い物になるのだ。
 子供でも、判るような道理を―――というのは、やや可哀想か。
 裏社会などは表に出ないからか、ルールは秘匿されているような物だ。
 だが、知らなかったから、という物で許されるものではないから、裏社会は、手を触れる前に、ルールを知る必要がある。

「……?どうしたの?師匠?」

 何か、微妙な表情をしている師匠を見て、ラファルは首をかしげて覗き込む。
 気になる事があるのだろうか、それとも、何かを伝えたいのだろうか、自分が何かしらをミスしたのだろうか。
 動けなくなった、ゴーレムを足元になって、幼女は、師匠と足元の動けなくなったゴーレムを眺める。
 これは、持って帰って、研究に回すことにすればお金になるだろう。

「とりあえず、之を、其のまま、研究機関に売ると良さそうだね?」

 全部のパーツ自体は揃っているから、そのまま持って行って渡すのもいいのだろうか、と。
 他のは、もっとひどく師匠が壊している。
 体の部分を分化して売るのもまた、良いだろう、レアな鉱石のボディだし。
 
 そんな事を考えて居ると、師匠は先行していった。
 幼女はどうするか、と考えてから、その場に残る事にした。
 先程、予測した二体が来るのだ。

 師匠の探索の安全を確保するために、残りの二体も片付けておく必要がある。
 探索には、その後参加すればいいし。
 必要があれば、師匠からお呼びがかかるはずだから。

影時 > 「知らぬは至らぬが故、か。
 その至らなさが招く取返しのつかなさが、真っ当に生きるよりも大き過ぎる。嗤えんな、全く」

少なくとも見た目は子供と大人のする会話――ではないなと思えば、余計に嗤えない。
応報の際限のなさが限りないのもまた、表社会の道理が通じぬ箇所故か。
故にこそ盗賊ギルドなど、裏社会に通じるものたちは相応の作法や礼儀の類を重んじているのかもしれない。
知らぬが故の無用なトラブルを持ち込まず、起こさせない。いわば水際で防ぐがために。

「いンや、何でもない。冒険者ギルドで講釈する資料で読んだ魔物の類に、これらに重なるのがあったなと思い出したのさ。
 ふれっしゅごーれむ……だったか?白骨化してるとはいえ、肉も岩も混ぜこぜでというのはよくやるモンだ。

 ……思うに、最初は普通に生きてるハズの奴らを素体にしているうえでだぞ?」

横文字の発音が変になる癖は、どうにも以前から抜けない。そこは大目に見てほしい。
が、衛士がわりの魔物の作り方は真面目に考えなくとも合理的ではあると同時に、悪辣が過ぎる。
いうことを聞かない炭鉱夫兼奴隷に対しての“見せしめ”だったのか、どうなのか。
やがて体内の魔力を枯渇しきって死ぬにしても、残存する骸を見せながらも、駆動回路や感覚器官として活用し続けられるのは、作成者のセンスが光る――といえば光っているのか。

「……持って帰る余裕があるかどうかにもよるが、やめとけ。変な風に使われかねん。
 残るやつらの始末は任せンぞ。吹っ飛ばしてもいいし、手足をもいで転がしても構わん」

このドーム状の空間から先は、どうやら「工房区」といえるエリアらしい。
天井や壁をよくよく注視すると、要所要所と云える箇所に奇妙な紋様や彫り込みが見える。一種の結界、対抗術式の類らしい。
この土地が含有する特殊な鉱石と呼ぶべき何かが生む、魔力を収奪する作用を遮断し、安全圏を作ることで精錬や鍛錬用のエリアを作っている。

壁に並べられているガラス瓶の中を見ると、採鉱後、破砕された鉱石らしいものが断面できらきらとした光を散らしている。
サンプル、なのだろう。作業過程で精錬される過程別に几帳面に並んだ瓶には、少しずつ加工されたものが見えている。
最終的な加工、精錬後にあるものを示す瓶の中には、白銀に輝く金属とも水晶ともつかぬ結晶体が転がっている。
そうとなれば、加工が終わった後の現物などが保管されていないだろうか。探索にかかりながら、弟子に声を投げる。

残り二体――迫るものは、少し毛色が違う。洞窟内の活動に適した大蛇と、大蜥蜴めいたものが岩肌をくねらせてくる。
頭部に埋め込まれている白骨体は、ああ。やはり魔族の骸か。
人間の髑髏と歪に形状が違うのは、ヒトの形をしていても獣めいた形質をもった種だったからかもしれない。