2022/02/21 のログ
ご案内:「魔族の国」にラファルさんが現れました。
ご案内:「魔族の国」に影時さんが現れました。
■影時 > ――古人曰く。もとい、古人でも何でもないが兎に角、まことしやかに語られることがある。
魔族の国には奇怪な風景の土地がある、と。
マグメール王国とは険しく長い山脈で隔たれている筈の土地、領域に赴き、どのようにしてそれを見て、そして情報を持ち帰って来たのか。
それとも、恣意的に王国に入り込んでいる魔族達が情報をばらまいたのだろうか。情報の出元は全く定かではない。
だが、一例として“風帝の亡骸”と呼ばれる遺構が確かにあった。
そこは伝え聞くところを紐解くと、風の司るとも云える強大な力を持った魔王が治めていたと思しい領域だった。
何らかの戦いを経て魔王が死したことで、その領地が強すぎる風の力故に空に飛び去っていた。
そうやって直に赴いて、確かめてみたくなるというのが冒険者だ。そうでなければ、冒険することを生業としていられない。
今もまた、かの国に足を運んだのもそういった物見遊山の一環でもある。
冒険者ギルドを経て請けた依頼ではないが、珍しいもの、希少なものが見つかったとすれば、処分を委託できる宛てがある。
「……――かなり値が張ったが、便利なもんだなァ。目安程度でも地脈の具合を測れるというのは」
魔族の国の一角の広く、広く。草木もまばらな荒れ地。時刻であれば昼間は過ぎた頃の筈。だが、あるはずの太陽は灰色の雲のヴェールに隠れて窺うことはできない。
そんな遮蔽物も何もない荒野にて、二本足で立って歩く姿がある。
一人は柿渋色の羽織を纏い、黒い布の覆面で鼻と口元を覆った背の高い忍装束姿の男だ。
その男は羽織の袖口から伸びる手に、懐中時計とも方位磁針ともつかぬ手のひらサイズの器具を持っていた。
開閉式の蓋がついた器具の造りは、懐中時計のそれとよく似る。だが、蓋を開けば見えるガラスで覆われた文字盤は、先端を赤く塗られた針が揺れている。
ガラスの下の文字盤の切り欠き部分からには、ムーブメントらしい歯車や発条の動きが覗き見えるが、針は今のところ或る方角を指し示している。
説明書曰く、”地中の魔力流の有無と流れる方向、勢いを測れる”のだと。実際のところ、その売り文句は間違いではない。故郷では地脈とも呼ぶ力の流れと、同様のものを探知しているらしい。
都度、地面に手を当てて氣を流し、その反発と抵抗の有無から当たりを付ける必要がないのはいい。
だが、なぜわざわざそんな道具を買い求めたのか。目的地は地上にはない。地面の中に隠れている、あるいは埋没しているであろうからだ。
■ラファル > 今回も、弟子は師匠に付いていく。前回の冒険もそうだけれども、今回も、マグメール国から出ている場所だった。
この場所は魔族の国と呼ばれる場所、此方に何かがあるらしいのだけども、何があるのだろうか。
良くは判らないから、基本は師匠の行く先をついて歩き、周囲を確認するように眺める。
今は、師匠の頭の上にラファルは居る。
上空から、周囲の地形を眺めて覚えている最中。物を探すなら、場所を探すなら、二次元よりも三次元。
平面で見るよりも、上から見下ろした方が、色々と見えるのである。
ある程度見まわして、周囲の事を眺めてから、人の姿に戻る。
全裸の姿から自由落下からの、回転、着衣、そして……地面に着地。
彼よりも二回り、三回り小さな幼女は、其れこそ、彼の腰位までの慎重しかない子供。
似通った服装、柿渋色の忍び装束を身に纏う幼女は、懐から、一枚の羊皮紙を取り出した。
王城の中に、魔族の国の地図があるので、こっそり拝見して写してきた其れだ。
悪戯で良く王城の中に潜り込んで書類を見たりいたずら書きする幼女だから、ここに来ると知って、必要な情報として。
多分バレてないだろうしバレたら怒られるけどそれはその時。
何故か一般兵士の部屋に合った奴だから、正確性も怪しい物のはずだ。
だから、幼女は空を飛んで、地図と内容の統合性を取って、師匠に現在地を知らせる役割を担う。
出来る事を出来る範囲で。
それが、冒険者という物のはずだ。
荷物なども、基本的に、ラファルが持っている、物理的な筋力的な意味合いも多いので。
■影時 > この手の旅は、独り旅よりも道連れがあるに限る。
それこそ軍勢のような多くを引き連れることこそ問題外だが、帯同するものの存在を善しとするのは理由がある。
かの地の全てを巡り歩いたわけではないが、この土地は奇妙に人間や或いは魔族と呼ばれているものを寄せ付けないものが多くあるように感じる。
それが「何故か」と疑問するならば、危難の地であるかもしれない場所に確実に行き着くための準備が居る。
そういう準備の手始めは、道連れがあるということで叶う。
第二に、得た発見を誰彼構わず流布するつもりは欠片もないが、まだ見ぬ驚嘆や納得を分かち合いたいのだ。
そうでなければ旅の意味がない。鏖殺に飽き足り、飼い殺されて鈍することを忌避して抜け忍となった甲斐がない。
「……まさかここらの地図を持っているたァ思わなかったが、確かめる機会の意味でも間違いはなかったみてぇだな。
地勢は合っているとするなら、あとは見えぬところ、目に出来る箇所にこそ目的の場所は潜んでいそうか」
さて、そんな道連れである弟子は竜の類である。翼ある竜故に高き視点を得ることができる。
そんな翼の持ち主が人の姿に変じ、流れるような動きで真っ裸から装束を纏ってゆく一連の光景を日常のそれとして、覆面の下で口元を緩める。
見分の旅を思い立ったのは、弟子が拝借していた物の存在も大きい。
瘴気除けを兼ねた覆面の下より言葉を紡ぎつつ、手にしたものを前に差し出すようにして動かし、針の動きを見る。
大きな方位磁針めいた針とは別に、小さくぐるぐると動く文字盤がひとつある。強い魔力を察知すると、針の回転する勢いで強弱を示すものである。
その小さな文字盤の針の勢いが特に強まる方向と、大きな磁針めいた針の向きはおおよそ一致する。だが、遠くを見ても進行方向には何もない。「地上には」何もない。
「火山帯みてぇに、処によっては地脈が表出しているようなトコはあるが、目に出来る範囲でそんな異常は見当たらん。
やっぱり、あるとすれば地面か。派手に発破かけられそうな場所は……この辺りかね」
きょろきょろと目を巡らせれば、奇妙な奇岩めいたものが地表に露出しているのが見える。
地盤同士がぶつかり合い、地表ににゅいと出ていれば斯様な具合にもなるだろう。
しゃがみ込み、地面に手を当てて氣を流す。流した氣が反発めいた抵抗を返すのではなく、何故か吸い込まれるように失せてゆく。
その反応を感じる方角は奇岩めいたものの位置と合致する。ぱちんと手にした器具の蓋を閉じ、装束の隠しに納めれば岩の方に歩いてゆく。
その途中で、弟子に頼もうか。持参してきた荷物に詰め込んだ火薬のうち、半分を出してくれと。
■ラファル > 師匠の感覚と、幼女の感覚は、残念ながら同じでは無かった。
ラファルは、竜という存在であり、その中でも、風を司り、空を舞う竜種なのだ。
だからこそ、日常的にこの辺りを飛んだりしているし、移動距離も、桁が違うのだ。
其れこそ、気が向けば、師匠の故郷へと飛んでいき、戻ってくるのを一日で行う位の存在で。
だから、この旅程を冒険や、旅行、という物ではなく、近場への散歩という認識に近くなってしまうのだ。
ただ、そんなラファルに、驚きを与えてくれるからこそ、幼女は懐いてついていく。
近場に、こんな場所があるのか、という驚きを、くれるから、と。
「ふっふー。
って、国の兵士の部屋に無造作に沢山置いてあるとは思わなかったよー。
警戒とかも無かったし、偽物なのかなーと思ったけど、基礎あれば、後見ればいいやって思ったの。」
思わぬお褒めの言葉に、無い胸を張って、どやぁ、と笑って見せるモノの。
なんであんなに無造作に会ったのかと心配になるレベル、地図なんて、其れこそ正確なほどに、正確でなくてもそれなりの
価値があるはずなので、腑に落ちないのだ。
偽物でも、無いよりはまし、見て書きなおせば、と思ったのだが―――
何とも、とても性格なのだ、何これ、なんで、と地図を矯めつ眇めつしてしまったレベルなのだ。
因みに幼女の方は、瘴気に侵されるような体ではないので、マスク自体はしていない。
覆面をするときはそれこそ、顔を隠す時だけというものだ。
服を着るのさえ、ホントは好まないが、それはそれで、各方面から怒られるので、仕方なく着る。
今回は、忍びとしての格好を師匠がしているので、そういう事なのだろうと、忍び装束。
「んー……地下かぁ……。」
地下、という言葉に、ダンジョンか何かなのだろうか、と幼女は考える。
得意かどうかで言えば、あまり得意ではない。
空が飛べないので閉塞感が半端ない、という程度であり、この姿であれば、問題はない。
取り合えず、地図を眺め、師匠の腕にある魔道具を眺め、前方に何もない事を、再度確認する。
そんな先で、師匠は岩のある方に歩いていく。
■ラファル分身1 > 「はーい!発破いっちょー」
幼女が荷物持ちをしている理由は、これなのである。
分身体が本体とは別に大きな荷物を持っていて。
背中に背負っている魔法で、容量を拡大しているバックパックから、ゴソゴソと火薬を取り出す。
火薬を取り出して、包みに入っているそれを、半分取り出して。そっと渡す。
■影時 > 師と弟子の感覚のずれは元より弁えているし、承知している。
人間ならざるものの活動半径、行動範囲が人間のそれと全く同じであるわけがあるものか。
まして、弟子は竜種の類でも風竜とも呼ばれるものであるという。
飛翔できるものであれば、必然と行動範囲もまた大きく広がってゆくものとなる。
覚えていないとしても、この辺りの空域まで足を延ばしているということだってあり得るだろう。
――では、高きより低きを広く俯瞰していても。
大地を仔細に見詰め、潜み隠れる何かを事細かに見てゆくという機会はきっとそう多くはあるまい。
「その手の奴はもう少し秘されているような気がしなくも無ぇンだが、あの国自体の地図じゃねぇなら、……か?
まあ、大まかな地形や地勢、目印の辺りを付けられるならそれだけで十分が過ぎるか」
己が記憶している、感じる感覚としては、地図は基本的に厳重に管理されるものであるというものだ。
特に細部にわたって精度高く編纂され、城や砦の位置なども網羅されたレベルとなれば、他所には出せない機密となるだろう。
だが、そうではないというのは、自国ではなく他所の土地に対してのものであるから、かもしれない。
得てしまった以上、見分した限りのものは責任をもって書き足す必要があるが、誰かに見せるなよと、厳命するように念押しして。
「……聞いた噂に曰く、だ。かの場所は地下深くにあると云う。
王国じゃ採れない、採れても在るが無きかの如き鉱物が産する場所を押さえた魔貴族、あるいは魔王は直轄地として、其処に工房を作った――らしい」
諳んじた内容を呟きつつ、岩の方に歩いてゆく。その途中で左手を横手に出せば、元気よく渡されるものを受け取ろう。
荷物持ちで顕現している弟子の分身体だ。大の大人ではなく、小さな幼女めいた姿が荷物持ちというのは奇異が過ぎるが、身軽で済むのは有難い。
事前に渡しておいた火薬類は、以前より作り貯めておいた火薬の備蓄全てである。全部を使わないのは、帰り際に「封印」し直す必要があるかもしれないと見越してのこと。
「その鉱物を呼ぶ言葉は、人間の言葉にはない。だが、その鉱物は魔力を蓄える性質があるとされる。
故に地脈溜まりめいて大地で凝っている金行の気配があらば、其れは恐らく――当たりだろうさ」
噂とするには、妙に詳細。されども、見ずにはいられない。見物せずにはいられない。
奇岩を見回って亀裂を見つければ、張り子の紙筒に封入した火薬を一本ずつ差し込み、導火線を伸ばしてゆく。
荷物から出した火薬を全て仕掛け終え、繋いだ導火線の束の先に火打ち石を構える。かちん、かちん――……しゅぼっ。
「さぁ、走れぇぇぇラファルぅぅぅ……!」
その後、一目散に元来た方角に向いて走り出す。その背後で丁度十を数えたタイミングの後、噴火めいた爆炎が吹き上がるのだ。