2018/12/11 のログ
ご案内:「魔族の国」にラボラスさんが現れました。
ラボラス > (砦からの撤退――
正確に表現するならば、タナール制圧の後、魔族の別軍勢に防衛を任せての退去を終え
今は再び、数か月ぶりと為る魔族の領地へと足を踏み入れた。
とは言え、常に居場所を変える軍勢の本拠、其の性質を考えれば
此処が部下其々の故郷であるかと言えば、全くそんな事は無い。
そもそも土地に対する執着が薄い連中どもだ
帰郷にしても、『比較的』安全な土地まで戻って来た、程度の感覚しか無いだろうが。)

―――――………数日は自由にさせろ、後の動きは再び集った時に行う。

(其れは、軍団に休暇を与えると言う指示。
必ずしもそれが喜ばれるかと言えば、戦場を求める血気に流行った連中には
寧ろ暇を持て余すだのと嘯く者も居る始末なのだが。
戦場を駆け回り続け、次第に無視出来ぬ程に傷を負った者も増えて来た
己が指示に十全な動きで以て応えられぬのならば、意味が無い。

背後に従っていた側近が、指示を受け引き返して行く気配を見送れば
森の中、久方ぶりに己は完全に「単独」と為る。
そうして漸く、軍団長、と言う肩書より自由を得るのだ)。

ご案内:「魔族の国」にゼロさんが現れました。
ゼロ > ――――それを見つけたのは、偶然であった。
 魔族が集まっているだけならともかく其れが、ある程度の規律を持って動く姿。
 あれが自分の求めているものなのだろうか――――偵察任務として、今は亡き第七師団の長、オーギュスト・ゴダンに命令をされた翼ある獣なのだろうか。
 確信が持てないが、これの公算が高い、と少年は息を潜め、鳴りを潜め、彼らの動向を観察していた。
 それに関しては、仮面が特に役に立った。
 魔力を認識する上に、距離も遠くを見渡すことができる故に、それなりに離れた場所から監視をしていた。

 会話は聞こえる範囲には少年はいかないが軍と言っていい規律の取れた行動。
 そして、中央の一際強い存在に従う動き。
 おそらくは、これなのだろう。

 だから、砦を攻撃している時さえ、味方に加勢せず少年は彼らを観察した。
 人数に、誰が中央にいるのか、どんな攻撃をするのか。
 只管付きまとい、遠くから観察していた。

 そして、今。
 急に中央の恐らく「それ」が長なのだろう、将軍と言っていい。
 彼が一人だけになり、ほかの部下が去っていく。
 どちらを優先するべきだろうか、悩んだ結果。
 一番危険だと思われる将軍の行動を見張ることにした。
 森の中、少年は息を潜め、魔族の将軍を―――観察するのだ。

ラボラス > (此処、古き遺跡が乱立する森は
今は昔、魔族の中でも其れなりの力を有した個体が治めて居た土地でも在った
運が悪かったのは、其の土地が人間の土地との境界線に近く、度々戦場となった事だ
領地を護る為に率先して戦火に立ち向かった其の魔族は、何時しか長き闘争の果て
守るべき民を失い、自らもまた、「英雄」と称される人間によって討ち取られた。

残って居るのは、そんな過去の残骸だ。 二度と未来に進む事の無い、停滞した歴史。
そんな場所に、一時的とは言え本拠を構えて居る己達は、果たして、同じ道を辿って居るのだろうか。)

――――……この俺に、護るべき民など居ないがな。

(其れが、唯一の違い、だろう。
双眸を細め、独り呟きを零した後、ゆっくりと歩みを進めれば
森の中、其の先に僅か開けた場所へと。 ――泉の傍へと。
風の無い森の中、波紋を残さぬ其の泉には、自らの姿が良く映る。)

――――……、………。

(刹那、動きを止めた。
瞼を閉じ、呼吸すらも鎮めて、静寂へと身を委ねる。
傍から見れば其の光景は、一種の瞑想、とも捉えられるだろう

――だが、「観察者」には。 次第に其の身体から広がる魔力が。
膜を広げる様に周囲へと拡散して行くのが、見て取れるやも知れぬ。
そして、その膜が、其の内に、「観察者」の居場所にまで、届くだろうと言う事も)

ゼロ > 「――――っ」

 少年は息を呑む。
 薄い魔力の膜のようなものが、それから広がっていく。
 自分の存在がバレたのだろうか―――それとも、別の何かの要因なのだろうか。
 少年は認識する。
 どちらにしろ広がるその魔力の膜は自分が撤退するよりも早く広がっていく。
 そして―――隠密に長けた存在であればまだこの膜の中で隠れる術があるのだろう。
 しかし、少年の本来は、闘争。
 体もそういうふうに造られているのだ。
 全身を走る魔力の回路は回復するために、強化するために、自分では止められぬもの。
 故に、少年は心を決める。
 逃げ切れぬならば、隠れきれないならば、と。

 だが、一縷の望みを抱きつつ、その場で待機する。


 そして、魔力の波動が少年を通り抜ける。

ラボラス > ――――――――…………。

(薄膜は、魔力を視覚として捉えているが故に確認出来た物だろう
普通の人間で在れば、微風としてすらも認識出来ぬ程に繊細な物。
けれど、其れが一陣の風めいて広がるなら、森の多くを通過して行くまで時間は然程掛からない。

そうして、其の薄膜が霧散する様に消える頃、再びゆっくりと瞳を開く
再び湖面を見つめ、そして、其処に映し出される月の光を眺めれば、ゆっくりと顔を上げて。)

――――――…………何時からだ。

(視線を、彼方へと向けた。
其の先に居る、誰とも判らぬ「観察者」へと。
距離は決して近いとは言えぬ上に森の中、けれど其れ故に
彼にとっては紛う事無く、「見られた」と言う感覚を強く与えるだろう。

――次の瞬間、仮面の力を得た其の視界から
湖面へと僅かな波紋だけを残し、観察対象の姿は掻き消える
其の事実を、「観察者」がどう判断するか次第、だ。
もしも、危機を感じて即時撤退を行うならば、最も賢い選択と為り得るだろう
けれど、観察と言う職務に囚われ、僅かでも、相手の姿を探して仕舞うなら
次に、少年が気付くのは。 もう、余りにも近くまで迫って居る、己が姿で在る、筈で)。

ゼロ > 此方を、見た。
 やはり、先程の薄膜は……魔力は周囲を探索するものなのだろう。
 そして、逃走の機会を逸した少年は、発見されたのを知った、遥か遠くにあるその将軍がこちらを見たのだから。
 自分を認識すると同時に消える魔力の波動、広がりきって役割を果たしたのであろう。

 仮面でさえ、認識できないぐらいの加速。
 姿が消えたとわかった次の瞬間に少年は動いた。
 腰に挿しているナイフを両の手に握りながら振り返る。
 少年が周囲を認識するのは、仮面だけではない。
 仮面はあくまで補助装置、視界を広げ、周囲を見やすくするためのもの。
 その耳も、その鼻も、その肌も。
 獣のように強化されているのだ。

 だから、その動きは反射といっていいだろう。
 ナイフを構え、大きく後ろに跳躍し大きな木を背にする。
 見えてないのは、反応しないというわけではないのだから。

ラボラス > ――――……後をつけて来たか、ネズミ。

(声が、姿よりも先に観察者へと届くだろう。
次の刹那、其の視界の奥、丁度彼が背にし、構えた大木の裏より
踏みしめる音、そして、先まで彼が追いかけて居た魔力の元凶が、姿を現す
獣の如くに高められた其の感覚と、戦いを通して得た本能が
明確に警鐘を鳴らすだろうか――背後を、取られたと。
物理的な加速、移動だけでは無い、其れは彼が戦場で観察したやも知れぬ
翼在る獣と言う軍団を、最も象徴する情報でも在る――突然消え、突然現れると言う報告

それ、其の物でも在るのだから。)

―――――此処まで良く付いて来た物だ。 ネズミにしては賢い様だが…。
……騎士団か、其れともただの首狙いか。 ―――答えろ。

(貴様は、何者だ。
問う声音を、冷徹な、冷え切った色を帯びて、少年へと突き付けた)。

ゼロ >  ―――速い。
 翼のある獣というのは軍団ではなく、彼を指すのであろうか。
 音を超える速度を発揮し自分の耳に届く。
 声は前から聴こえてくるのに、気配は既に自分の後ろだ。
 それこそ、瞬間移動としか考えられない移動。

 それの秘密は先ほどの波動―――が関係しているのだろうか、少年は考える。
 広がる魔力、そしてこちらを認識、その後の移動。
 これらは、一つのつながりにあるのではないだろうか、と。
 何度も見ていたが、ここまでしっかりと把握できたのは、今が初めてだ。

「王国軍第七師団。ゼロ。
 お前が、翼ある獣の将軍……だな。」

 問いかけてくる。
 答える義理も、義務もないが……向こうは、攻撃をしてこない。
 ならば、少しでも情報は多いほうがいいだろう。
 近くに来て感じる、ビリビリするほどの気配に、闘志
 間違いなく、この存在が、翼ある獣の将軍で、あの舞台が、翼ある獣なのだろう、と。

 少年は、一つ、二つ、と息を吐き出し、心を落ち着けて冷静に、平静に落としていく。
 目的は、生存。
 思考を回し、全力で少年は模索する。

ラボラス > (攻撃の、其の隙や機会は幾度か在っただろう。
けれど、己から仕掛ける事は無く、返答を待ったのには幾つかの理由が在った。
応えねば、斬り伏せれば良い。 唯其れだけの事だ。
だが、程無くして返って来た答え、聞き覚えの在る単語に
表情こそ変わらぬまま、僅かに黙して。)

――――七師団。 ……そうか、奴の。

(――王国第七師団。 魔族の側で、其れを知らぬ者の方が少ないだろう。
最も苛烈で、最も手段を選ばずに攻め込んで来た、人間達の切り札――で在った、部隊。

そんな部隊の者が、此処に居て、己を見て居た理由など多い筈も無い。
其れだけで大凡を理解した様に双眸を細めては、大木の影より進み出で、少年の眼前へと向き直り。)

―――――………ラボラス。 ……貴様達人間の前で名乗った数も、増えて来たな。

(少年の言葉には、正確に肯定を向けた訳では無い、が
否定もせず、まるで騎士道の如くに自らの名を名乗り返せば

――ただ、其の姿を山の如くに見下ろし。)

偵察か、其れとも暗殺か。
偶に気概の在る者を見かけたと思えば、奴の部下か、或いは部下の部下か。
――奴と同じで、碌な死に方はせん急ぎ方だ。

(――まるで、挑発めいた言葉を掛けては、歯を剥いて口元に弧を描く。
冷静を、平静を装おうとする少年の、上辺を剥がさんとする様に)。

ゼロ > 「奴……?」

 知っているのだろうか、第七の前の将軍である彼を。
 彼は魔族の国で死に、そして、今は彼の副官である人が将軍になっている。
 目の前の存在がそのどちらを言っているのだか、独白なのであろうが思わず問い返す。

 そして、この少年はオーギュスト・ゴダンが此方に進軍し生きている間に最後に言葉を交わした生き残りでもある。
 偵察任務で離れたからこそ、生き残った、とも言えるが。

「ラボラス……。」

 彼の名前なのだろう、そして、彼の部隊なのだろう。
 名乗る言葉に、その名前を口の中で軽く転がし、見上げる。
 自分を見下ろす偉丈夫の視線を受け止めるように。

「―――偵察兵は、僕だけだ。
 兵士は満足に死ねるような、存在じゃない。」

 自分の知る限り第七師団に偵察兵という兵科はなかった。
 それで任命されたのは、自分だけである。
 そして、ここで死ぬつもりはない、少年は息を吐き出す。

 少年は見る。
 その笑みに釣られることなく、周囲全体に警戒をするように。
 碌な死に方、という言葉、そもそも、兵士とは駒である。
 駒が碌な死に方なんぞ、考えるだけ無駄だと言わんばかり。

 ただただ、笑みを浮かべる男を、少年は見据える。
 動きに合わせて、行動を決めるために。

ラボラス > ――――……傲慢な男だった。 だが、強き男だった。
奴も奴ならば、其の部下は揃いも揃って豪傑ばかりだった様だがな。

(――直接、彼の者に出会った事は無い。
然し、その勇名は常に聞き及んだものだ。 ――彼の者が死した後も。
副団長の女には手を焼いた、と、付け足す様に伝えて笑みを深くし
其方とは邂逅した事が在ると教えれば、己が視線を前にして、真直ぐに受け止める其の瞳を静かに見下ろし。)

―――――……貴様も根性が座って居るか。 ……フン、七師団は粒揃いだな。
幸運だったな、此処に軍団は居ない。 他に隠れて居なければ、貴様と俺だけだ。

偵察は、魔族領全体か。 其れとも、俺の軍団に対してか。
――そも、あの男不在の今、貴様の師団は死地に赴けるのか?

(無論、この問いに答えるか否かは、全て少年の意思次第。
だが、其の選択が、次の行動を左右するのは間違いないだろう。
――ただ、七師団と言う言葉を聞いた辺りから、何処か愉快そうな物を見る目であったやも知れぬ)。

ゼロ > 「そう。」

 彼の、将軍への評価には、少年は淡々とした返答である。
 少年は、将軍とともに戦ったことはない、ただ、傭兵であった自分を拾ってくれた恩義。
 それと、最後に出会った時は戦場で、別の任務を受けたときの姿。
 それが記憶として胸にあるだけである。
 魔族の将軍に、強い男だったというその返答に対して、そうなんだな、と客観的に判断しただけのこと。
 
「魔族と戦うためのみに、作り上げられた師団、僕のような末端でも、それなりの練度は持つ。
 先に言ったけど、第七で偵察兵は僕以外にはいない。
 ほかに隠れてるということがあれば―――先ほどのあれで見つけているはずだと思うが。

 ――――――。
 
 判らない。
 オーギュスト将軍の時であれば、死地にでも赴くだろう。
 今の師団にはその意気があるのかどうかは。
 任務を受けたあと、ずっと僕は此処にいる。
 原隊に戻ってないからどのように再編されたいかも知らない。」

 これは、紛れもない真実である。
 オーギュストが生きている時に任務を受けて、ずっと魔族の国で、翼ある獣を探っていた。
 戻るとしても砦に補給にというぐらい。
 新たな命令もなくずっと国を彷徨っていたから、どのように再編されているのかがわからないのだ。
 だから、死地に赴けるかどうかの返答が、できない。

 そして、偵察の内容に関しては、黙した。

ラボラス > ――…偵察兵で無くとも。
此方の領地まで、早駆けして去って行く程度の芸当は行うのが貴様らだ。
サロメとか言った、あの女と逢ったのも此方側だからな。

(故に、そう言う印象を持つのだろう。
必要が在れば躊躇無く死地に飛び込むのが、七師団だと。
偵察兵、と言う部分に対しての矜持か否か
偵察内容については口を割る様子が無いのを見れば、寧ろ納得が強い
本当の意味で、軍人で在るのだ、と。)

…………ならば、戻れ。
貴様が調べた俺と、俺の軍団の事を人間に伝えるが良い。
其れが、貴様や人間にとって有意義なモノになるかは知らんがな。
こう着した戦線に一石を投じ、再び闘争を巻き起こせるのは、貴様ら意外に知らんのでな。

(彼の者から命令を受けたのだとすれば。
己の推測よりも遥かに長い期間、偵察を続けたと言う事を知れば
ほう、と、僅かに口端を吊り上げた。

そして――見逃す、と、明確に少年へと告げようか。
己が情報も、戦場での動きも、様々なモノを持ち帰られる可能性が在ると言えど、だ)。

ゼロ > 「サロメ将軍」

 今、現在の自分の上司は彼女になる。
 副将軍の時に、一度であっただけの彼女だ、少年は彼女のことを思い出しすぐに、思考を目の前の男に戻す。
 敵を前に、敵を見失うべきではないのだから。

 少年は軍人である、只々、頑迷なまでに軍人でしかないのだった。
 兵器として作られて、傭兵となり、兵士……軍人となった。
 形はともかく、戦の中でしか、生きることができず、軍人でしかありえなかった。

「―――――………?」

 行け、という。
 その言葉の意味を把握しかね、しかし、少年の動き、判断はひとつ。
 彼に警戒の意志を向けながらも、大きく跳躍。
 
 そして、走り始める。

「――――」

 口の中で呟くのは誰にも聞こえることのない何か。
 次の瞬間、少年の姿が、消える。
 魔軍の長ならばわかるだろう。
 彼に施された封印を解き放ったということ。
 そして、少年が走り去ったあとには血の匂い。
 己の限界を超えて、生きるために逃げを全力で行ったということ――――

ラボラス > ―――……そうか、今は、あの女が将軍か。

(――唯一、其れは、己がこの邂逅によって知る事の叶った情報。
彼の男亡き今、七師団を支える人間の存在が、居る、と言う事実。
無論、副団長と名乗って居た彼の女が、長の亡き跡を継ぐのは予想出来る事ではあったが。

――其の女に、情報を持ち帰るなら。
再び、戦火の火種が燃え広がるのではと言う期待を込めた。
其れは、恐らくは魔族にとっても、人間にとっても決して喜ばしい事では無い筈だ。
だが――戦いを、闘争を求める、己が軍団にとっては最も望むべき状況だ

――逃走が叶うと知った瞬間、先ずで脱兎の如くに消える、少年を見る。
唯の闘争では無い、決して捕獲されぬ様に、追撃を受けぬ様に
帰還すると言う事に、自らの全てを賭したと言う、事を。
僅かに広がった血の香りに、読み取る事が出来たなら。)

――――……次に逢う時は、俺の首を獲りに来い。
奴が叩き込んだ、戦士としての片鱗を、俺に感じさせろ。 ……もっと、な。

(――追撃はすまい。 他の者に伝えるつもりも無い。
もし、己以外の何者かにつかまり死んだとて、其の時は其の時だ、が

久方ぶりに、愉しそうに笑みを浮かべて――)。

ご案内:「魔族の国」からゼロさんが去りました。
ご案内:「魔族の国」からラボラスさんが去りました。