2018/06/27 のログ
ご案内:「魔族の国:タナール防衛線付近」にアザリーさんが現れました。
■アザリー > 「あらあら~。皆さん殺気だってますねぇ~。」
魔族の国と王国の領地が接する防衛線の近辺。
砦からは殺気だった視線が無数に注がれ、遠方にいる魔族からは困惑の視線が送られる。
風にうっかりと髪の毛が流されてしまい、身体のバランスを崩すように蹈鞴を踏んでしまう。
伏せられた瞳、聴こえる息遣い。鼓動。
すべてが久しく感じられなかった愉悦の鼓動を自分に刻んで来る。
あぁ、愉しい。楽しい。自分の計算を遥かに越えて人が動き出す。その蠢動も放浪している間は与太話なのだろうかと諦めてもいた。
然し――実際はどうか。魔王を相手に砦は崩されなかった人間の奮闘。
嗅ぎ分ける同胞の血と人間の血。そして――何よりもここ数十年は感じられなかった自分に向けられる敵意と言う新鮮な、久方振りとも言える感動。
「でもでも~主役は私ではない様ですから~。いいですか~?人間さん達が通り抜けようとしても~。あんまり邪魔しちゃだめですよ~?」
人が人を超えた、魔族すら凌駕しうる何かを手に入れたなら喜ばしい事。思わず綻ぶ口元に、下級の魔族には釘を刺す。
自分の事など最近の魔族は知るまい。そもそも放浪癖にも理由はあるのだから。自分を知っていて、それでも文句を言う魔族がいたら思わず抱きしめるだろう。
その位、今の自分は飢えていた。何に?計算すら出来ない出来事に。
■アザリー > 「う~ん……でも空を飛んで偵察は確かに視野が広がりますが~。それだと他の魔族さんにも、簡単に見つかったり、撃ち落されちゃいそうですよね~。」
それでは困る。勇猛果敢な人間の動きは偵察兵が倒れたくらいでは鈍らないと信じたい。
ほんの少しの手伝い位なら良いだろう。足元に転がっている石ころ。
魔族の国にある、存分に瘴気を。怨念を。魔力を。血液を吸い込んだ呪の要素としてはそれなりの媒介になりうる小石。
それを一つ、二つ。
拾い、そして指先でぺきり、と簡単に押し潰した。
枯れ枝が折れる時のような音と共に生み出される黒い霧と、人間にとっての毒となりえる呪詛を取り払った純粋な魔力だけを残した砂塵を自分の魔力で生み出していく。
ここまでやる義理も無いが、楽しみは存分に。
そしてこの魔族もまた、どこかが歪み、ずれていた。
「えぇっと~。4番思考回路から11番までを砂塵の制御に~。28番の魔力炉で砂塵の強化を~。」
穏やかに間延びさせた、甘い声音。それらに載せたのは紛れもなく人間側への肩入れとも取れる文言だ。
生み出された砂塵は偵察兵の視界を遮らない様に周囲を巡回する。
遠距離からの魔術砲や呪詛の類。精神的な防御さえ同時に行なってくれる、それなりの障壁と魔力による探査へのジャミング効果も発揮する。
回した魔力炉は1つ。思考回路を多数回すのはまず偵察兵を探さなくてはならない為であり。
自分はこれから人間の国に入り込む準備がある。思考回路を幾つか切り離しておくのは、本体の自分に万が一があってもバックアップから再度結合し直す事が容易となる事もある。
■アザリー > 「大丈夫ですよ~。偵察兵さんだけ、ちょっとだけその勇気にお姉さんからのサービスですから~。」
実際偵察兵はいの一番に使い潰される事も多い。
それでも彼らの使命感や勇気は、恐怖をねじ伏せたのだろう。或いは。
恐怖を抱いて尚信を寄せられる良き指揮官にめぐり合えているのか。
周囲の魔族は困惑から徐々に敵意を向け始めている。瞳に殺意の輝きが宿り、獣人の魔族だろうか?
その指先には死の呪詛を浸み込ませた様な死神の爪を露にする存在さえいた。
文句をいう子供をあやすかのように、諭すかのようにゆっくりと囁きかけ――。ちょん、と。
指先で死神の爪とやらに触れ――分解をしてしまう。
呪詛そのものには本人への反転効果もあったのかもしれないが、それさえ分解してしまう。
再度結合すると、死神の爪だったものは。
人の爪の様にネイルアクセサリーを盛り込んだ、戦闘ではなく化粧の一環の様な爪となっている。
「う~ん、やっぱり闇狼族の方の爪って綺麗ですよねぇ~。マニキュアでもう少し~可愛らしさを増してあげたいのですが~」
そんな事を呟いているうちに。闇狼族と呼ばれた狼の獣人は姿を消していた。
涙を流しているようだったが、きっと感動の涙なのだろう。なんでもマグメール王国ではこれが最先端のファッションなのだと放浪先で耳にしていたのだから、きっと間違いはない。
■アザリー > 「さて~お姉さんはちょっと遊びにいってきますね~。いいですね~?頑張る子達をあんまりいじめちゃ駄目ですからね~。」
そんなのんびりした声を残し。
次の瞬間には、パン、と何か乾いた爆ぜた音が響いた。
靴の裏の空気と少量の水を結合、そして分解と崩壊を同時に行なうことで水蒸気の霧が漂う。手早く自らの肉体を分解。
残された思考回路を動員して、魔族ではなく一旦人間として肉体を再構築して――不慣れではあるが空間跳躍の準備をし始めた。
ゆっくりと黒霧が生み出され、空間が歪み風向きが変わる。
ゆがめられた空間へと周囲の空気が吸い込まれ――そして黒い霧の向こう側に広がる空間は魔族ではない人が住む世界だった。
とん、と軽い気分で一歩を踏み――そして直ぐに黒い霧の歪みは消え去っていく。
残されたのは呆気に取られた魔族と、遠方から殺気を贈り続けている人間の守備兵による視線だけだった。
ご案内:「魔族の国:タナール防衛線付近」からアザリーさんが去りました。
ご案内:「魔族の国付近」にゼロさんが現れました。
■ゼロ > 師団長からの任務を受けて偵察に出た少年。
任務の為にタナール砦に到着し、現地指揮官に報告と辞令を伝え、そしてすぐタナール砦から出た。
自分が出立してからすぐに第七師団も出立したらしいことを噂に聞いた。
早く任務をこなす必要があると、彼らが到着するまでに少しでも情報を手に入れないと。
少年ははやる気持ちを抑えながら、魔族の国付近にまで足を伸ばす。
魔族の師団があるというのなら、魔族の国に近いほうが情報が集まりやすいはず。
むしろ襲って来るなら襲ってきてもいいだろう、それも情報になるのだから。
久しぶりに、旅の道具に、槍に、フル装備の少年は、ざく、ざくと、魔族の国の方面に歩く。
仮面のチカラで闇を見通し、魔力を感知し、油断なく周囲を見回して。
■ゼロ > 「……この槍も久方ぶりだな……。」
偵察には大仰になるとは思ったが、昔の武器である鉄の塊……否、てつのやりを持ってきている。
理由は簡単で、一対一ならともかく、軍団にぶち当たるかも知れない。
そのときは、攻撃範囲の大きい槍の方が便利だということもあるのだ。
……放置しきっていたから、魔法の付与をしてもらうのを忘れていたのは少しどころではなく痛いがないよりはましだし。
イザとなれば、捨てていけるのもいいだろう、さらば戦友的な感じで。
背中に背負った槍、腰に挿した一対のナイフ。
あとはその時になったときに考えよう、少年は思考を切り替える。
ざく、ざくと魔族の国に向けて進む。
もし到着したらその時は、魔族の国で情報収集をすればいいだろう。
すんなりと喋ってくれないときは殴ったりしてもいいだろう、魔族だし。
ふぅ、と息を吐き出して、歩みの速度を早める。
「――――」
警戒を強める。
視線を感じるような気もする、気のせいかも、しれないのだけれども。
■ゼロ > 周囲を見回すが、怪しげな影は見えないし、魔力の反応もない。
仮面は有能だが万能ではないので、仮面の索敵範囲外からの視線などは、見つけることができない。
仮面の索敵範囲といえば……500m位だ、こう言う広い場所では心もとないが、ダンジョンや城などの閉鎖空間には十分であるのだ。
頼りきってはいけないと自戒し、周囲をもう一度見回してから道の脇の草むらへと移動し、道に沿って歩くことにする。
堂々と道を行くよりは見つかりにくいだろうし、何かあった場合でも、木々を盾にすることができる。
状況によってはその場で息を潜めて隠れる事もできるだろう。
忍びとかそういう訓練を受けているならさらに足音を隠したりして進めるのだろうけれど、自分はそうでもない。
足音がしてしまうのは致し方ないことであろう。
警戒を強くしながら少年は、先へと進む