2016/07/13 のログ
ご案内:「魔族の国 辺境の村」にセイン=ディバンさんが現れました。
■セイン=ディバン > 「……なんで俺、こんなことしとんのやろ」
魔族の国の小さな村で、割烹着姿の男は小さくぼやく。
目の前にはこの村の住人たち。並ぶ並ぶ、ずら~っと並ぶ。
男がしているのは、いわゆる『炊き出し』というアレであった。
「はいはい。ちゃんと人数分あるから、慌てず並んでねー」
男の声に、住人たちは素直に従い、男の作った料理を受け取っては礼を言う。
名前もない小さな村。魔族の国を含め、世界中を旅している男はこの村へと立ち寄り、その惨状を知った。
村などは名ばかり。実態は、魔族間の争いで難民になった種族が集まって作った避難キャンプのような物。
見渡せば、ダークエルフ、リザードマン、淫魔、悪魔、ゴブリン、その他諸々。
戦火に追われ、疲れ果てた人外の集まりに、男は何故か無意識に食事を振舞っていた。
「……人も魔族も。戦争で泣くのはいつも力なき存在よなぁ」
ぼそり、と呟きながら男は次々に料理を配る。
■セイン=ディバン > 「ふぅ」
一通り住人たちに食料を配り終え、男は一息つく。目の前では、住人たちが食事をし、僅かながら笑顔が見える。
「……」
そんな風景を見ながら、男は何かを思案する。すると近くにダークエルフの子供が近寄ってきた。
「……ほれ、チョコレートやるよ」
おっかなびっくり男を見上げていた子供にチョコレートをプレゼントすれば、子供はそれを受け取り、走り去ってしまう。
「……子供は異種族でもかわいい、よな」
ご案内:「魔族の国 辺境の村」に魔王ベルゼブルさんが現れました。
■魔王ベルゼブル > お椀とトレー、そして食器を持参し炊き出しをしているという場所へやって来たのは一人の小柄な娘。
「あのーすみません、炊き出しはここであってますか?」
とりあえず、給仕っぽいことをしてそうな男性を見かければ声をかけて近づいてくる。
「とりあえず、なんでも良いから出してください、ハリー、プリーズ、ふぁいやー!!」
■セイン=ディバン > 「あぁ、ここであってるよ。ちょいと待ってな」
声した方向を振り向かずに返事をし、余所見をしたまま皿を受け取り、盛り付ける。シチュー、パン、サラダ。最低限の食事だが、これでも戦火を逃れた者たちには嬉しいのだろう。
周りではもくもくと食事が進んでいた。
「ほら、慌てずにゆっくり食えよ」
トレーを差し出してきた少女にそのまま食器を渡し。
そこで男の動きは止まった。咥えていた細巻きもぽろり、と落ちる。
「……どちら様?」
目の前の少女に問う。目の前にいるのは一見地味な娘。
だが。その中身が違う。良くない。
魔力量のケタが違う。
生命力のケタが違う。
存在の濃さが、段違い。
そう、目の前の少女は人間どころか、そこらにいる魔物とすら格の違う相手だと、男は気づいた。
■魔王ベルゼブル > 「はーい」
言われるがままに大人しく待っていますと、男が食器に料理を盛った次の瞬間に、食器から料理は消えている。
まるで洗ったかのようにぴっかぴかの状態で、空のトレーと食器が残っています。
もちろんトリックではありません、一瞬でいただいただけです
「はい、いただきました」
料理の味付けはなかなかだったようで、ニコニコと笑みを浮かべています。
空のトレーを受け取りながら
「はい? 通り過ぎの魔王ですがなにか?」
そう言って笑顔を浮かべトレーを再び差し出し
「おかわりあります? できればシチューをもう一杯いただけると嬉しいのですが」
魔族の国なので、人間の国と違って、魔力などはごまかす必要はありません。
ちゃんと出していないと舐められちゃいますからね。
■セイン=ディバン > 「……!?」
よそった筈の食事が、一瞬で消失した。男は驚き、瞬きを繰り返す。
魔術か。あるいは手品なのか? 何も判らないが、とりあえず足元に落ちた細巻きを踏み消す。
「……お、おそまつさまです」
ニコニコ笑顔のままの相手を見ながら、返礼。
そのまま持っていかれたトレー、再度提出される。
「!?!?!? ま、魔王!? なんで魔王がこんなところに!!
い、いや。でも初めて会えた他の魔王様だ。えっと、はじめまして」
相手の宣言に再度驚きながらも、そのトレーを受け取り。もう一度同じメニューをよそいなおす。
ちらちらと横目で窺う相手からは、魔王に相応しい力の気配が易々と感じ取れた。
「どうぞ、魔王様。お口に合えば幸いなのですが。なにぶん材料も調味料も足りなくて。
えっと、人間で、冒険者兼シーフ兼、魔王ベルフェゴールの夫。セイン=ディバンです。以後よろしく」
一応、自分は魔族に敵意のある人間ではない。そして、魔王の夫であると自己紹介。
しておかないと何が起こるかわからないからであった。
■魔王ベルゼブル > 「ん、ありあわせにしてはちゃんと味付けになってますね、上等な部類ですよ、
料理経験とかはありますか?」
次に差し出される食器も、すぐ空になっちゃいます。
シチューの一滴たりともお残ししませんのよ
「はい、それはここは魔族の国ですし、魔王がいてもおかしくないでしょ?
それに私は停戦協定の準備をしに来たのですから」
さすがにもう一度おかわりをするのは遠慮しましょう、
あくまでも今回は炊き出し、私より他にお腹の空いている方はいらっしゃいますから。
まあ、私はしょっちゅうお腹をすかせていますけどね
「……へ?」
相手の自己紹介を受ければじっと顔を見つめる、そういえばベルフェちゃん言ってたよね
夫ができたって、あのチョロインを真面目に口説いたのこの子?
へーーーーー!
ほーーーーーーーーー!!
「じゃあ私も、大罪は『暴食』の魔王ベルゼブル……貴方の小姑です!」
そう、それはもうニコニコと自己紹介しておきます、ニコニコと。
■セイン=ディバン > 「あ~、えぇまぁ。冒険者もやってるんで。ありあわせの材料で料理したりしますよ。
魔物の肉を食えるようにしたり。そうしないと飢えるんで」
経験を語っている間にも目の前の皿は再度空になっていた。
どうやっているのか不思議に思うが、あえて追求はしない。魔王だし、まぁ何が起きてもおかしくはないのである。
「そうですけどね。いきなりこんな辺境に魔王は、普通いません。
……停戦、ってことは、この辺りの争いも一度は収まるんですか」
相手の言葉にツッコミを入れつつ、停戦の言葉に安堵する。
普通の人間なら、魔族同士の争いなど気にも留めないだろうが。
この男にとっては魔族も人も、同じ命。無駄に血が流れないのはいい事だ、と素直に思う。
「……? なにか?」
相手が自分を見る目が変わったようで、ふい、と質問を投げかける。
もしかしたら、相手は妻の知り合いなのかもしれないな。そんなことを考えていれば……。
「……うえええええ!? え、つまり大罪の魔王の一人!?
ってことは、ベルフェが唯一作った料理を食べる、お姉さま!?」
相手の自己紹介に驚き、妻の言葉を思い出す。
あのぐーたら魔王様が、自分以外に唯一食事を食べる相手。
小姑、なのかは知れないが。目の前の魔王様は何が楽しいのか満面の笑顔だ。男の頬を汗が伝う。緊張。恐怖。
■魔王ベルゼブル > 「料理の基本ができているなら、あとは応用ですからね、
なら停戦協定の宴は貴方も手伝ってもらおうかしら義弟くん」
そう言いながら、先ほどのシチューの味を反芻します、
人側に香辛料が自由に出まわるようになったのはここ数年、
それをちゃんと使い、臭み抜きもできていることは、とりあえずは合格点ですね。
「基本的に戦争は消費行動ですもの、ある程度の技術革新のできそうもない戦争は、無駄な消耗をするだけですからね」
そう、単なる小競り合いでなく戦争になったら、止めなくてはいけない。
魔王は己の領地を護るのも仕事ですけど、大きな視点で魔族の国を平定しなければいけません。
それが大罪の役割。
「一応ベルフェちゃんからは話を聞いていたのね、最初話を聞いた時
知り合いのロリコン王子かとおもったけど、ちゃんと別人だったのね」
うん、やっぱりこの子は面白そうである、人間が魔王と夫婦になる
そんな茨の道を選んだ子だ、面白くないわけがない。
だけど、彼もまた進化の可能性は秘めている、悲観する必要はない
ただそこへ到れるかどうかは彼自身の努力だろうから。
ほんと、そういう可能性を持つ子を見るのは楽しいですわ。
■セイン=ディバン > 「基本、って。そんな大層なもんでもないですよ。
食えるようにするのが目的なんで、料理というよりは調理ですし。
……って、えぇ!? そ、そんな大層な場に出すメシなんざ作れねぇっすよ!!」
相手のぽん、という軽い提案に思いっきりビビりあがる男。
なにせ、豪華な食事など作った経験は無い。
精々、妻に一度振舞ったような、フルコースモドキが関の山だ。
「……あぁ、ベルフェの城の書庫にもあったなぁ。
戦争特需、だとか。戦争による利益、っすか」
メリットあれば、戦争も否定される謂れはない。
学のない男なりに、勉強だけはしているようで。
「……いや、ロリコンではないっすけど。ベルベルには一目ぼれしただけですし。はぁ。いやぁ、その……。
……でも、あれっすね。お姉さんもお若くてお綺麗でいらっしゃる」
なにか観察されまくっている気配を感じるも。敵意というよりは興味の方が強いらしいのでおとなしくしておく。
が、魔王様、しかも明るくポジティブな魔王様である。なかなかに不思議な言葉だが。
その魔王様と平然と会話など出来る筈はなく、どうにも緊張はしてしまう。
■魔王ベルゼブル > 「大丈夫、その辺りはちゃんと私が教えてあげますよ
最終的にはベルフェの大好きな、食材の持ち味を極限まで引き出し
通常の人間が一口食べればその味に廃人になってしまうような料理を作れるようになってもらいますから」
というわけで、彼には料理人修行をしてもらいましょう。
味覚のオーバーロードは、人外化の第一歩ですしね!
「そうそう、無駄な戦争はしないに越したことはないのですよ
なので、美味しいご飯の供給を持続するか、もしくは供給をたった上で私のご飯になるか、今回の戦争の当事者に決めてもらうのですよ」
一応怠惰の魔王軍だけあって、彼女の知識を吸収しているようにも見える。
あと戦闘技術の底上げ、は色欲か、憤怒に頼んだほうがいいでしょうか。
「えーベルフェのあの、犯罪級な可憐な容姿にひと目ぼれしたんだから、十分ロリコンだと思うなーお姉さん
んー一応愛と豊穣の女神でもありますからね」
と軽く腕組みをします、胸を強調するような感じになりますがキニシナーイ
とりあえず宴の準備をしませんと、うちから料理人何人か連れてこないといけませんでしょうか。
■セイン=ディバン > 「あぁ、教われるんならまぁ……。
むむっ。ベルベル好みの味付け……。
わ、判りました。よろしくお願いします」
相手のなだめるような言葉に、むむむ、と口ごもるも。
せっかくの料理スキルアップの機会を逃すのももったいない、と相手の提案を受け入れる。
「はぁ。傭兵の仕事をしていたときには考えられないことですなぁ。
……なるほど。兵站、特に食料の補給線は交渉材料にもなるのか」
後半、何か怖いことを言っていたような気もするがスルーしておく。
目の前の魔王様がなにやら企み事をしているような気もするが、それもスルー。というか、突っ込んだら痛い目を見そうだな、と思い。
「あ~。いやちんまくて可愛いですけど、我が妻は。
一目ぼれしたのは、存在の強さっていうか、心の強さの部分っていうか。
……あぁ、ベルやんも古い書物に神だった、って書いてありましたけど。ベルゼブル様もそうなんでしたね」
いいわけじみたことを言いながらも、相手が腕組みすれば見事に豊満なバストに視線が釘付けになる。
無意識に唾を飲み込み、喉が鳴ってしまうが、頭を振りガマンガマン、と小声で呟く。
さすがに姉という存在に手を出してしまえば、妻の怒りが爆発しかねない。
■魔王ベルゼブル > 「うん、あと身体に良い食材も色々教えてあげますね
義弟くんが、人間の領域を超えることを願うのならですけどね」
彼が魔王の旦那になったということは、普通の人間であれば
それに吊り合う存在になろうとするのはある意味必然。
彼がそれを求めるかどうか、少し揺さぶりをかけてみます……悪いお姉ちゃんですね
「『暴食』の役割は、魔族の国の食料供給、まあ断られた時は断られた時で楽しみはありますね」
魔族喰らい、悪食、それもまた暴食の魔王の粛清方法。
あんまり使いたくはないですが、カニ型の魔族だと、ちょっと心惹かれますの。
「なるほどね……強さへの憧れね……」
義弟くんの言葉に、ふと頭にいろいろと思い浮かぶものがある。
伊達に愛の女神を語っているわけではない、様々な悲恋の物語を
自分の妹が、その悲恋のヒロインにならないためには、お姉ちゃんどうしたらいいのか考えちゃうのですよ。
「うーん、まあ魔王っていっても、人間からの信仰がある子もいますからね
他にも神格を持つ魔王はいっぱいいますわよ」
よいしょと胸を持ち上げるようにします、実はこの姿勢ちょっと楽。
義弟くんが胸をじっと見てる、どうやら膨らみかけスキーというわけではないらしい。
■セイン=ディバン > 「あっ、それは普通に知りたいかも……。
人間の、領域。ですか……」
相手の言葉に俯き、自分の両手を見る。
妻が人間になってもいいよと提案したときのことを思い返す。
力は……未だに、欲している。前以上に。強くなりたい。
「……役割、ってことは、ベルゼブル様や、ベルフェみたいに、大罪としての力を持つ魔王様ってのは他にもいるんですよね?」
大罪。言葉はなんとなく知っていた男だが。その本当の意味は知らず。
7つあるその大罪自体は、妻から教わったような気もしたがはてさて。どうだったか。
「まぁ、そりゃ憧れますよ。ベルゼブル様もそうですけど。
その本人という個だけで完結しきった存在。羨ましくないわけがない」
人間では到達できぬ高み。超越者。その階位への、憧憬の念。
護るため。それだけでもないが、強さとは常に人を惹きつける物だ。
なまじ人間が脆弱な種族だからなおさらなのだろう。
「へぇ……。神格、ですか。ってことは、神なのに魔王として見られる、みたいな。
お二人とかと逆の存在もいるんすかね」
頭の上には割りと大量のハテナマーク。難しいことは理解は出来ないが。
それでも本質を見抜く能力は少しはあるようで。
そうして持ち上げられ、揺れる胸を見ていれば。
なぜか少しずつ前かがみになり、不自然に見えないようにポーズを変えてみたりする。
なんのことはない。単純に勃起してしまっただけである。
■魔王ベルゼブル > 人間の領域を超える、その言葉に己の手を見る義弟くん
やはりそういう願望はあるようなのね
「興味、あるようね……」
不敵な笑みを浮かべちゃいます。
そう、この子は強い興味がある、ならそれを与えるのもいいかもしれない。
「基本的に、大罪の魔王はそれぞれの得意分野があって、それの相互協力を行うための互助会みたいなものですね
まあ、13柱全員揃ったことないですけど」
そう、結局前回の賭けの結果、宴の開催もまだ先送りになっているのです
「義弟くんは、完成された存在になれたら何をしたい?
それで何を願う?」
そこに興味が出てきたので聞いてみる、彼の本質、彼の願いを。
「んー?? 姉妹丼とか興味あったりするの?」
すんと鼻につくオスの香り、『色欲』にさんざん仕込まれたので
そういった男性の体の変化にも目ざとかったりするのです。
■セイン=ディバン > 無言で掌を見て、握り、開きを繰り返す。
そうしていれば声をかけられ
「……えぇ、まぁ。一応男ですし。
その、候補というか、一つの可能性としては」
興味がないといえば、嘘になる。が、今のところは進んでヒトを辞めるつもりもない。
だが。一応そういったことを知っていてもバチは当たらないとも思い、正直に答える。
「はぁ。さしずめ魔王ギルド、ですか。
……全員揃ったら壮観、かつ大変なことになりそうですね」
少なくとも。人類滅亡までカウントダウンしていそうな状況である。
その場に居合わせるようなことにならないよう、気をつけようと男は内心だけで決意する。
「あ~……。いや、考えてなかったっすわ。
とりあえずは、妻とノンビリ暮らしたいですね。で、邪魔するようなヤツがいたら。
神でも人でも魔王でも殺す。
とか? まぁ、今のオレじゃ無理無理も無理ですけど」
苦笑いしながら言う。が、一瞬男の言葉に余裕やおふざけが無くなったことを。
おそらく、魔王たる目の前の女性には気づかれていることだろう。
「……し、姉妹丼!?
そ、それはなんて素敵な……!!
い、いやぁそんな恐れ多い!! いや、でもベルゼブル様はまぁ、その。魅力的であらせられることですなぁ、ハイ」
相手の言葉に、鼻息荒くなりつつも前傾姿勢は維持。
息子はとうに元気溌剌だが、我慢の子である。
まぁ、こっちもまた気づかれてはいるのだが。流石に周りには魔族の皆さんもいるので、元気なズボンのテントは隠しておきたい。
■魔王ベルゼブル > そんな様子を見ていると、やはりこの事は耳に入れておきたい。
「いいこと教えてあげよっか?大罪の『色欲』には人間の養子がいるの
でも彼、家出しちゃったのよ……魔王の家から家でよ
しかもその方法が、『色欲』をガチレイプしたの、
つまりそういう存在にも鍛え方次第にはなれるってこと」
魔王を屈服させた元人間がいる、その情報は彼にとって希望になるかどうか
いたずら心も含めて、ちょっと話をしてみました。
「まあギルドは近いかな? 時々親族連れてくる人もいるし、
義弟くんも会議の予定があれば来てみたら?」
基本ベルフェはそういう面倒くさいことは出てこないのですけど
あとで書類に目を通すだけだったりします。
でも、ちょっとこの子を見てるといじわるしたくなるのです。
「そっか……でも可能性は無いわけではないわよ、
魔王を倒すのは勇者の役割だし、人間が勇者に変わるわけだし」
くすくす思わず楽しげに笑ってしまいます。
そして勇者を生むのもまた魔王であることは黙っておいて。
「ま、機会があれば二人の味比べとかもする?」
そう言って小首を傾げながら近づき、義弟くんのモノをズボンの上からこっそりツンとつついちゃいます。
「さて、宴の準備をしましょうか」
そのまま空間が歪み、様々な食材が現れ、調理道具が現れます。
今まで粗末だった調理場は、立派なキッチンに置きかわっていくのです。
■セイン=ディバン > 「人間の、養子?
……えぇ!? しかも、いわゆる親代わりを、レイプゥ!?」
ひそっ、と耳打ちされた言葉に大声が出るが、すぐに声を殺す。
想像もできない話ではあるが。魔王の養子。興味が、ある。
どんなヤツなんだ? 強いのか? 興味は一秒ごとに増していく。
「はぁ。親族……。ホントにギルドか寄り合い所っすね。
……まぁ。いずれは、ってことで勘弁を」
今は魔王の夫とはいえ、まだ人間。あまりそういう場には顔を見せたくはなく。
しかし、このまま順調に夫婦生活していけば、いずれはそういう場にも姿を出す必要もあるのだろうか。
「別に、そこまで強くなりたいわけでもないんですけどね。
救世主とか勇者、なんてガラでもねぇし、興味もねぇし。
ただ、ベルフェを護れりゃいいっすよ。あと、食い扶持を稼げるくらいに強ければ」
半分本当。半分嘘。強くなれるなら、どこまでも強くなりたい。
愛する妻もそうだが、どうせ男に生まれたならなにか大業を成したいという思い。そう、例えばハレムの王様とかである。
「……それも、まぁ、また今度、ということで。
正直興味もありますけど……」
小声でぶつぶつ言っていれば、股間を触れられてしまい、間抜けな声を上げながら後ろに飛ぶ。
しかし、目の前の女性が力を行使すれば、驚きの声上げ、瞳をきらきらと輝かせることになるだろう。
「すっ、っげぇ……。やっぱ魔王ってすげぇ……。
よっしゃ!! ベルゼブル様、料理特訓、お願いします!!」
■魔王ベルゼブル > 「ちょっと興味持った?」
少し炊きつけると面白いように反応を起こす、
そう人間は面白いのだ、時々魔王の予想しないことまでやってしまう。
「えーその時のコックも頼もうと思ったのに」
そう、私も義弟くんをこき使う気満々なのです、
たぶん一緒に生活する間に色々と影響でてくるかもしれないけどがんばれ
「そう? でもお姉さんはやっぱり妹の事は心配なの
あの子を守れるほどの力、まあ、勇者は柄でないのなら、暗黒騎士とかどう?」
そう言いながら食材の吟味を始め、キッチンの使い方も説明します
「では、はじめましょう、覚えることは多いけど、判らない時はメモをとってね」
そして宴の準備が始まるのです、義弟くんに手伝ってもらった停戦の宴会は
成功したかどうかはまた別のお話で。
■セイン=ディバン > 「ちょっとどころか。どんなヤツなのか興味津々っすよ」
会ってみたい。話してみたい。そんな思いは強くなる一方だ。
いずれ出会えるだろうか?
「あ~。裏方ならいいっすよ」
目立ちたくはないが。妻の姉貴分の願いとあっては断りにくい。
厨房で仕事するくらいなら大丈夫ですが、と言っておく。
「……ま、そりゃそうですよね。
……騎士道も興味無いっす。ほんと、普通に暮らせりゃ委員ですって」
無論、嘘。強く慣れるなら騎士道でも畜生道でもいい。
だがそう口にすることはしない。焦っても仕方ないし。
なにより、今はノンビリ世界を旅して回っているのだから、そういうのはまた別のときに、である。
「ウッス!! 至らぬ点ばかりですが、よろしくお願いします!!」
気合を入れ、厨房と言う名の戦場へと足を踏み入れる。
正直、覚えることだらけな上に不慣れな料理。目も回る忙しさだったが……。
不思議と、男的には楽しかったという思いもあり……。
ご案内:「魔族の国 辺境の村」から魔王ベルゼブルさんが去りました。
ご案内:「魔族の国 辺境の村」からセイン=ディバンさんが去りました。