2019/01/19 のログ
ご案内:「北方帝国シェンヤン「八卦山」」にムウィンダジさんが現れました。
■ムウィンダジ > 絵巻草子、何処か非現実的で、人が立ち入るのを躊躇わせる幽玄の如き仙境。
八峰連なるこの区域の深い闇と霧は、自然のそれというよりは邪気、瘴気、この山の何処かに住まうと言われる邪仙達の仕業であるともまことしやかに囁かれている。
魔物とも異なる生まれ、妖仙、妖怪と呼ばれる陰の気より生じし面妖なる怪が跋扈せし魔境は人が容易に立入る事も叶わぬならば、迷い込んだならば生きて帰るのはより困難なまさいく異界と呼ぶに相応しい様相を呈していた。
そして、此処にもまた、何の因果か迷い込んだ者がいた。
されど、見る者によってはどちらが恐ろしい妖か。そもそも同類と思われるかもしれない。
全身が燃えるような赤い剛毛に覆われ、鋼の矢はへし折れ剣も皮膚を裂くのも敵わぬ天性の野生で育まれし肉体を持ち合わせた巨体。
人型であれど、人では断じて有り得ない。
額が厚く、鼻が低く、分厚い唇。鋭い眼光。
猿。巨躯の猿人。
故郷を焼払った憎き者共を探しだし、報いを受けさせる為に。
また、故郷と共に喪った数多の妻や子の代わりに新たな子孫を作る為に遠い異国へとやってきた復讐者であったが、王国、帝国、魔族の国、何処に居るか分からぬ敵を探す内にこの山に迷い込んだらしい。
常人なら一日も生きてはいられないであろう場所だが、この猿人にとっては人工の建築物が連なる都よりも余程快適な場所だ。
たまに、彼我の差も測れぬ弱き命が襲ってきてはいたが鎧袖一触、己が歩みを止めるには程遠く蹴散らしながらも険しい山を庭のような感覚で駆け、時には跳んで探索。
奇妙な厭な空気や奇怪な命、妙な区域、岩窟に泉と様々な妙なる場所が見つかったが当然というべきか此処には己が探す復讐を遂げるべき者達はいないらしい。
猿人は重々しい溜息を一つ吐き、この八卦山と呼ばれる仙峯を脱出する術を探す為に――人が畏れている妖怪の住処の一つ。数ある精窟の内の一つへと踏み入り、突然の襲撃に戸惑う妖怪を雄叫びをあげ威嚇してからどちらが妖か、どちらが畏れられる者か、慌てながらも抵抗しようとした妖怪の群れを、妖怪さえも命なら無意味には殺すまいと力の差を見せつける形で打ちのめして精窟から追い出して。
それから目的である奥にあった食糧の山へ悠然と剛腕と下肢で岩の床を歩み寄ってはどかりと腰を下ろしてみるみるうちに食料を平らげて栄養をつけ。
げふり、と満足げに息を吐いてからごろりと横になって睡眠。
まだ具体的な解決策が見いだせない以上はまず、長期戦に備える為の拠点、食糧が必要と判断しての獣ながらの暴力と知性を併せ持つ猿人の判断の結果がこれであった。
英気を養う事にした猿人だが、仮に熟睡していても何者か気配がすればすぐに目覚められるからこそ堂々とすぐにごうごうと地鳴りの如きいびきを掻いて。
■ムウィンダジ > Message body
休息を取った後に目覚めたのは次の日の早朝。
英気は十分に養った。
幸い追い出した妖怪達が報復に戻ってくるという事も無く、お陰で快適な睡眠がとれた。
むくりと上半身を起き上がらせ、くあ、と大きな欠伸を漏らして酸素を取込んでは洞窟の外へ。
朝露の滴る木々の枝へと飛び移り、高みより何か迷い込んだ時同様不自然な場所は無いかと眺め回してから猿人は再び外の世界に通じる出口を求めて山を駆け巡る事に。