2016/03/10 のログ
ご案内:「北方帝国シェンヤン「八卦山」」に荊藍さんが現れました。
■荊藍 > 「……フン、今日は収穫なしか?」
八卦山。危険の伴うその場所を、平然と歩く一人の男。
収穫、という言葉を使っているように、仕事としてここにきているわけではない。
彼の目的は……狩り、である。
ご案内:「北方帝国シェンヤン「八卦山」」に竅さんが現れました。
■竅 > ぱきり、と枯れ枝を踏み折る音が背後から響く。
振り返れば、曇った薄灰の空に溶けこむような白い仮面と漆黒の服。
その姿は、まるで背景に溶け込んでしまいそうなほど雰囲気が柔らかかった。
「瞳術師、荊藍殿とお見受けする。」
その声は、あまり起伏がない平坦なもの。
しかし、意思はしっかりと感じ取れる、奇妙な声色だった。
■荊藍 > 彼は、たまにこの山で狩りを行う。
狙いは、雌の妖怪。それを、彼の『目』で捕え、奴隷とするのだ。
上まで登れば太刀打ちできないレベルの妖怪が出てくるだろうが、下の方であればそこまで上等な妖怪はあまり出てこない。
のんき気に歩いていれば、カモと思って襲ってくる……それを返り討ちにし、屋敷に囲っているのだ。
彼の屋敷の地下には、大量の雌奴隷が囲ってあり、毎夜適当に見繕い『使う』のが彼の趣味であった。
「……つまらん。もしや俺の趣味がここの雑魚に広まったか?」
だが、瞳術使いとしての噂が立てば避けられるかもしれない。
そう思って狩りの頻度は高くはしていなかったのだが……もしや、広まってしまったのかもしれない。
そんな事を思案していると、後ろから声を掛けられる。
「如何にも、俺が荊藍だが。貴様は?」
振り返り、じ、と見つめる。
瞳術の、更に幻術にハメるには、相手の目を見る必要がある。
なので、まず相手の目を見るのは、瞳術師としての癖のようなものだ。
■竅 > 「そう警戒なさらずとも、危害を加える気も貴方の狩場を荒らすつもりもありませんよ。」
そう言って、かつかつと靴を鳴らしながらその場を回り始める。
そして時折空を見上げたり、地に顔を伏せたりしていた。
「単刀直入に言わせていただきましょう。貴方と提携を結びたい。」
ふい、とその顔を荊藍の目に向ける。視線……仮面はつるんとしていて穴がなく、視線も何もないのだが、もし穴が空いていれば……を合わせ、正面に立つ。
瞳術は、効いている様子がない。
■荊藍 > 「あ……?提携?」
怪訝そうな顔をし、オウム返しに聞き返してしまう。
何せあまりにも唐突だ。さらに……
「(こいつ、目を……!)」
じろじろと顔の付近を見るが、仮面で目を見る事が出来ない。
目を合わせないと全ての瞳術が使えない、というわけではないが、彼が最も頼みとする幻術は目を見る必要がある。
それが使えない……つまりは、少なくとも両儀眼・陰の特性を理解してここに来た、と言う事だろうか。
更に、視界を自分で封じているはずなのに、それで何かが障っている様子がない。
「(目を使わずとも問題がない……何かしらの感知能力持ちか?厄介な)」
内心舌打ちしながら、提携の意味を考え込む。
■竅 > 「ええ、提携。簡単に言えば、お互いがお互いのために協力するという契約を結ばないか、という話です。
私にはある目的があるのですが、そのためには力が欠かせない……ですが、私一人の力ではあまりに不足ですし、話術もそんなに自信がありませんから。」
そう言って、空を見上げてくつくつと笑う。
笑い方は癖なのだろうか、仕草こそ不自然なものの動き自体は自然体そのものだった。
「貴方にも、無論利点は提供しましょう。一部、重要人物を除いて……手に入れた女性は、好きにして構いません。
そして何より、私が貴方の敵に回ることがありません。」
そこまでいうと言葉を切り……髪をかき上げ、仮面を取った。
何もなかった。目も、鼻も、口も、耳も。
そこにあるべき、そこにあってしかるべきものが、どこを見ても存在しなかった。
そこにあったのは、暗黒の中に星が光る、悍ましくも美しい小さな宇宙。
「私は貴方にとって、天敵ですから。」
■荊藍 > 「……俺を使う、と言う事か。目が高いとでも言ってやればいいのかな」
腕を組み、考え込む。
単に手を貸せというのならば、断るだけだ。女を好きにしていいというのも、そもそもこの目があれば大抵の女は無様な顔で股を開き、腰を振る。
それだけだと大したメリットではないが……
「貴様、妖(あやかし)か。しかも無貌とはな。成程確かに、貴様には俺の幻術は通じないようだ……よく調べている。
加えて、俺の目があれば大抵の人間は意のままだ。話術に自信がないというのならば、俺を使おうと考えるのは道理だろう」
頷き、納得する。
成程、この相手が自分に目を付けた理由がよくわかる。
言っていることが本当ならの話だが、自身の弱点を補いつつ、相手の弱点を突ける。ある種最適の人選かもしれない。
が。
「で……まるで貴様が俺の雇い主になるかの如き物言いだが、貴様は提携と言ったな。ならば俺と貴様は対等のはず。
しからば、貴様は俺の力になれるのか?」
そう、それはあくまで上から目線で雇い入れる側の理屈。
荊藍自身からすれば、利益が大して勝たない交渉。軽々に乗ってやる道理もない。
せいぜい自身の価値は釣り上げねば。
ご案内:「北方帝国シェンヤン「八卦山」」に竅さんが現れました。
■竅 > 「ま、その認識でも構いませんが。
……ああ、言い忘れました。私の能力は『軟化』。……話術に乗せて人の心を融和させ、幻術への抵抗を薄れさせることも可能です。
今は使っておりませんがね。」
それに、と少し言葉を続けようとする態度を見せるが、すぐに俯く。
そして、うつむいたまま話を切って歩き出した。どうやらはぐらかそうとしているようだ。
「ええその通り。私は軟弱でひ弱ですから、貴方のような力を持っているお方は喉から手が出るほどでしてね。
……無論、貴方にも利を提供する、というのは先程から申し上げましたとおり。」
ぴ、と指を立てる。
「まず一に…私が貴方に敵対することはほぼありません。貴方が私に敵対しないかぎりね。
二に……貴方の術が仮に効かぬ相手が出てきたとしても、貴方の身の安全は守ると宣言しましょう。」
そう言って、近くの木に手を触れる。
そして幹を掴むと、めしゃり、と指先だけの力で抉り取ってみせた。
「そういう技術は、修めておりますので。
そして3に……貴方が望むものは可能なかぎり提供させていただきましょう。酒も女も金も、いくらでも。」
■荊藍 > 「フン、成程。俺の弱点は貴様が補い、貴様の弱点は俺が補う、と」
荊藍は、主に近距離での戦闘は得手ではない。
一応最低限の体術は出来るが、それも鍛えている相手には使い物にならないだろう。
そういう相手と相対する羽目になった時の保険にもなるし……そういった、気の強く腕の立つ女を堕とす場合には有用だろう。
何より……
「(こいつめ、俺の相性が確かに悪い。天敵というのは間違いないな)」
まさに天敵、相性最悪なのだ。
軟化の能力があれば、五行の術もある程度躱されてしまうだろう。そして、その間に接近されて、あの力で組み敷かれればそのまま死を待つのみだ。
味方にする利以上に、敵に回すことの危険が強い。
ならば……
「……いいだろう、その提案、乗ってやる。
貴様の名と、目的は?」
■竅 > 「その通り。利を与え合い、不利を分け合う。いい関係でしょう?」
荊藍の心を読んだかのように、天を見上げくつくつと笑う。
時折、長い袖から見える手が、まるで溶けたかのようにズルリと形を変えては元に戻る。
…どうやら、自らの身体さえも軟化させられるようだ。
「おっと、そうでした。最初から名乗るべきでしたね、いや失礼。」
そう言って、仮面を付け直し、髪を元の位置に戻す。
なるほど、改めて見れば7つの穴全てが陰に隠れ、仮面を付けた只の人間と見分けがつかない。
「私の名は『竅』。とある事情により、かのマグメール王国に潜入しております。
目的は…【世に混沌を齎すこと】、とでも言いましょうか。下克上、革命、侵略、支配……ま、なんでも良いのですが…
世に混沌のあらんことを、世に騒乱のあらんことを。それが私の目的です。」
■荊藍 > 「竅、か。混沌ねぇ……」
思案顔になる。
名前はまあ、実は割とどうでもいいが、目的が『混沌を、騒乱を』とは。
「……まあ、別に混沌や騒乱に興味はないが。そういう世の方が、俺の目も活きるだろうな」
そもそも、幻術で相手を狂死させるのを好む荊藍である。
戦乱の世でその機会が増えるのなら、それはそれでアリだ。女を食う機会も増えるだろう。
「いいだろう。俺の目を貴様に貸してやる。その代わり、貴様の体を借りるとしよう」
■竅 > 「ええ、混沌と騒乱。興味がなくても良いのですよ、私の周りに目的の一致は必要ありません。手段が一致していれば良いのです。
手段のためなら目的を選ばない。とても混沌としているでしょう?」
そう言い、周りを回る足を止め、再び荊藍の前に立つ。
笑うように首を傾げ、ぴしりと姿勢を正した。
「ええ、貴方の瞳は確かに借り受けました。今後とも宜しく、荊藍殿。
……直に仲間も増えますよ、直に。」
そういうと、かこんと地面を靴の踵で鳴らす。
奇妙なことに、その音を伝えるかのように地面がゆらりと波打った。
■荊藍 > 「直に、ねぇ……俺が言うのもなんだが、信用できるのか?」
腕を組みつつ問いかける。
問いかけつつ、足元を見る……。
「(軟化の術……か?なぜここで使う?)」
提携を結んだが、まだまだ信じるわけにはいかない。
その一挙手一投足を、自慢の目で観察する。
■竅 > 「フッフッ…さぁね?ですが、信用なんて必要ありませんよ。それでこそ混沌、ですから。」
そして、傾げていた首を元に戻す。
「それでは、私はこれで失礼致します。
マグメールの様子が、少し気になるものでしてね。……着いて来るなら、送りますよ?」
その下の地面が、ずるずると軟化していく。
否、これはもはや軟化ではない。液化だ。完全に、水そのものと化している。
そして程無く、その体が地面へと沈み始める。これが移動手段のようだ。
■荊藍 > 「いや、いい。一人で帰るさ」
能力に興味はあったが、それ以上に自身の屋敷を教えることを警戒していた。
ここで別れてしまった方が、自分にとっては都合がいいだろう。
「(……大規模なテロでもやるのだろうかな。まあ、俺は適当に女と金をむさぼれればそれでいいが)」
成程、そういう意味では信用も必要ない。利用するだけ、である。
妙な納得を覚えながら、背を向けて歩き始めた。