2022/11/06 のログ
ご案内:「タナール砦」にラボラスさんが現れました。
ご案内:「タナール砦」にエリーシャさんが現れました。
■ラボラス > (砦の内部は、存外大きく、広い
身体の大きなオークやオーガなどが闊歩出来るように
恐らくは、魔族が駐留している間に、改築して言った結果なのだろう
人間側としても、砦が広い事による戦の短所は余り無い
態々砦を小さく改修する、何て面倒をする余裕もあるまい
――故に、見過ごされがちだ。
ひとつの戦いが収束した後、砦内に残された数多の虜囚が
砦へと問題無く入れるが故に、巨躯の魔族によって蹂躙され得ると言う、短所は。)
「―――駐留の部隊が来るまで、どの位だ。」
(余りにも早過ぎた。 魔族側の予測では、もう少し奪還に掛かると踏んだ時間を
大幅に短縮し、半日も掛らずに終わらせて見せた事で
駐留部隊の到着までに、時間が空いて仕舞った
普段であればあ、砦の奪還を終えた後は、防衛戦をする事無く帰還し
後の事は、別の防衛部隊へと任せると言うのが恒例だったが
今回は、引き継ぐまでの間、此方が居座る事になろう
そして、其れは今回虜囚になった者たちにとって、運が悪かったと言う事にもなる
褒賞として、戦果として、砦内に囚われ、嬲られる時間が悪戯に長くなるのだから
だが、其れも偏に――負けた方が悪い、其れこそが戦争なのだと、一蹴すべき事だが。)
「設備と堀の確認をしろ。 治療兵は交代で治療に当たる様指示しろ
落ち着き次第、休ませて良い。」
(此方の被害は少ない、が、決してゼロでは無い。
急ぐ必要は無いが、早急に万全な戦力へと戻せる様に
医療班は、まだ、もう少しの間、励んで貰う事と為ろう
――指揮官作戦室から出て、正面扉から、外に向かう
多少なりと片付いた砦周辺の、されど未だ垣間見える戦の爪痕を眺めながら
戦場の空気を浴びに、姿を見せるのだ)。
■エリーシャ > その日―――――娘はたまたま、戦場を離れていた。
威勢ばかり良い新米騎士を、そも、戦力と数えていない者も多く、
軍属として位の高い者に頼まれたなら、雑用であれ出向かねばならない。
愛馬が部隊随一の駿馬であることも、また、娘には災いしていた。
そのために戦死も捕縛もまぬかれたのだ、本来ならば、
『幸い』と呼ぶべきだったのかも知れない。
いち早く砦を見舞った災禍を感知したのならば、
愛馬を駆って出向くべきは王都であり、援軍を頼むべきであり、
――――――けれども娘をのせた葦毛の馬は、一路、砦を目指す。
近づくにつれ強くなる、禍々しき者どもの気配。
生々しい血の匂いが、砦のすがたを視認するより早く、鼻腔を鋭く衝くようだ。
手綱を握る手に力を籠め、駆ける愛馬に鞭をくれ、
一心に、ただひたすらに、砦を目指す娘の顔は蒼白く、
引き結んだ唇はかわき強張っている。
心臓が、煩いほどに高鳴って――――――
間違い無く、そこに在る。
己がしろがねを突きつけるべき相手が、切り裂くべき、敵が。
逸るこころのままに、早駆ける漆黒の娘の姿は、あるいは。
砦を占拠する敵の側からすれば、格好の標的としか見えぬ、やも知れず。
■ラボラス > (――其れは、直ぐに見えた。
砦へと向かい来る騎兵が一人、明らかに――魔族では無い
始めは、或いは何らかの伝令、もしくは交渉役なのかとも思えた
だが、違う。 あれは、そんな物では無い。
蛮勇か、或いは何らかの意思故の事なのやも知れぬ
少なくとも"其れ"は、間違い無く何かを為す為に此処に来たのだろう
遠方から、戯れに確かめた其の顔の、死地へ赴くが如き余裕の無さは
己でなくても、誰しもが読み取れるほど、隠せても居ない
無謀であろう其の単騎突撃なぞ、砦からの矢で、或いは魔法で
辿り着く事無く処理されて然るべき愚行に他ならぬ
だが――其の愚かさがいっそ、気まぐれを誘った。
手を出しかけていた部下達を、片手を掲げて押し留めれば
其の一人の兵の、本懐とやらを、見届けようとした。)
「―――――手出し無用だ。 だが、念の為周囲には気を付けろ。」
(――砦の正面門、其処に居る数人の強大な魔族の姿は
何も遮る物が無い戦場に置いて、騎兵の目には良く映るだろう
感じている禍々しさが、染み付いたような血の匂いが
戦場に散らされた数多の鮮血よりも余程強く、其の数人から
――何よりもその先頭に居る、金眼の男から、漂うのだと。
感じ取れる筈だ。 そして何よりも、騎兵は見た筈だ
まだ、決して至近距離とは言えぬ、其の距離にて確かに
金眼が、駆ける女の眼を、見据えた、と)。
■エリーシャ > ――――――ぞくり、と不意に、背筋が波立つ。
『それ』を識る時の感覚を、他人に説明するのは難しい。
ときに蟀谷辺りへちりつく痛みが走ることもあり、
血の沸き立つような感覚が、先んじて襲うこともあり、
―――――とにかく『わかる』のだ、と言うしかない、それが娘の道標である。
けれど、――――――――『これ』は。
「―――――――― っ、っ……!」
半ば反射めいて、手綱を強く引いた。
白い前肢がぐしゃ、ぐしゃりと、湿った土塊を蹴り散らして。
踏鞴を踏んで止まった愛馬の背を、労るように二度ほど叩き撫ぜ、
『彼女』の耳に小さく、何事か囁きかけてから。
馬上から身を翻し、娘は焦土に降り立った。
見るべきものは決まっている。
紫電の瞳が向かうのは、砦の正門を固める魔族の姿。
そのなかでもただ、ひとり――――――真っ直ぐこちらを射竦める、金色の一対。
それこそが『敵』であると、本能が告げていた。
腰に刷いていた白銀が、母の形見であるつるぎが、『それ』を求めて震えている。
『それ』が流す血に塗れ、輝きを取り戻したい、と。
そんな『声』に導かれるまま、佇む愛馬の傍らから、一歩。
踏み出して、他の者など目に入らぬよう、ただ、金色の男だけを見据え、
「――――――“これ”は、貴様のしわざ か?」
恐らくは同胞の血に濡れて、泥濘んだ大地を踏みしめ。
しろがねの柄を利き手にかたく握り、しずかに、問うた。
■ラボラス > (――騎兵よりも先に、馬が慄いた。
否、その一瞬娘が、手綱を引いてしまったのを確かに見た
立ち止まった馬を其の場に、自らの脚で、己が前まで歩む姿
勇敢では在ろう、凛々しくも在ろう。 だが――まだ、余りにも"若い"剣士
金眼の表情に変化は無い、無感情にも似た無表情が其処に在るだけ
己に向き合い、ただ、一言を投げ掛けた其の姿を、静かに見据えたなら
唇が動いたのは、穏やかな風が通り過ぎてから、暫し後に。)
「――――……そうだ。 そして、貴様達が負けた結果だ。」
(――問答へ、言葉遊びなぞせぬ。
肯定し、そして、其の上で其の責は己だけの物では無い、と
偏に――御前達が、弱かった事が原因だ、と。
言外に、そう告げながら。
片手を掲げ、傍らに控えていた側近の二人を、後ろへと下がらせる
此処から、何が起こるにせよ、応じるのは己であると
そう、指示する事は、無い事では無いとは言え、珍しかろう
有数の実力者、隠れた強者、英雄たる戦士
そう言った者と相対した時ならば不思議も無い、が――)
「――――……俺を殺しにきたのか。」
(――今度は、此方が問う。
己が前まで、護衛すらなく、只一人駈け込んで来た
その目的を、問い掛ければ。 ――刹那、周囲に漂う空気が
まるで鉛のようにゆっくりと、重みを増して行く感覚を覚えるやも知れぬ
魔力だ。 重々しい魔力が、禍々しさとなって空気を淀ませる
まるで沼地の如くに、踏み出す足を絡め取らんとするのだ
あくまで――其れが、感覚でしか無い、としても)。
■エリーシャ > ゆるりと吹き抜けた秋風すら、微かに血の匂いを運んでくる。
獣の如き咆哮、怨嗟の声を聴いたのも、恐らく幻聴ではないだろう。
それでも、娘の紫電が映すのは、識ろうとするのは、ただ、正面に立つただ一人。
そのくちびるが動くのを、その声が届くのを、待つ、暫しの間。
「――――――――――、………」
返ることばは無慈悲に響く、けれどもそれは紛れもない、真理でもある。
強い者が勝ち、弱い者が敗ける。
勝った者は、敗けた者を、蹴散らし、踏み躙る。
それは人であれ、魔であれ、ほかの何ものであれ、変わりなく―――――、
娘の表情が、眼差しが、それで歪み、揺らぐことは無かった。
ほんのひととき、薄い瞼を閉ざし、開く、ただ一度の瞬きを挟み。
瞳の奥に、ひと筋だけ、幻のように、微かな金色を閃かせて、
鉛の塊のように重く、纏いつくように粘こく、空気のいろが変わるのを感じる。
それはきっと娘のような『感覚』を持たぬ者であっても、即座に気づけそうなほど。
鮮烈に、いのちある者すべての、本能を揺さぶるような『変化』。
けれど娘は、その重みが細い双肩に、ずしりと圧し掛かるのを感じながら、
かわいたくちびるをはっきりと、薄笑みの形に綻ばせて、
「―――――――― そうだ。
わたしは、貴様を、……この手で、殺しにきた」
ざわ、と、またしても強く、背筋が慄く。
『彼』が従える者たちから放たれる、それは殺気の為かもしれない。
だが、此度のざわめきは娘にとって、いっそ、心地良い刺激であった。
―――――しろがねを握り締めた掌が、じわりと、熱い。
■ラボラス > 「――――そうか。」
(其れが、この女の答え。
己を殺す為に、自らの命を無に帰すとしても、この場へと駆け付けた
魔族、では無い。 他でもない、この己を。
携えた剣を握り、明確な敵意を乗せて、放たれる言葉に嘘はあるまい
だが――自らの将を、殺す、とまで言い放った側近から放たれる
全身を刺し貫くような殺意とは裏腹、金眼からは、何の殺意も垣間見えぬ
重く、重く、空気だけが淀み、女を絡め取らんとしながらも
――冷徹な瞳が、女の瞳を、静かに見下ろし。)
「―――――無理だ、貴様では弱過ぎる。」
(―――そう、言い切った。
己が右腕に、黒き闇が収束し、次第に剣を形どる
女の携える、美しき白銀の刃とは真逆の、漆黒の刀身
其の切っ先を、ただ、足元へ向けたまま、構える事もせず
何よりも、其の場から一歩も動く気配を見せぬ儘で。)
「だが…、……単身で此処まで辿り着こうとした、其の気概だけは買ってやろう。
……暇潰しだ、遊んでやる。 貴様の殺意――届かせてみろ。」
(――来い、と。
女の殺意を煽る様に、まるで子供とでも戯れるかの如くに
剣を持たぬ片掌で、手招く。 最初の一太刀すら、相手へと与えて。
――自らの剣先で、応じて遣ろう。
自然体、特定の型と言う物を持たぬ剣の構えは
隙だらけにも見えて其の実、相対すれば、隙と言う隙なぞ介在しないと知れよう
何処から、如何撃ち込んだとしても。 きっと、相手に与えた最初の一太刀は
僅かでも生半可であれば容易に、受け止められてしまうやも知れぬ程に)。
■エリーシャ > ―――――きっと少しでも気を抜けば、この場に膝をついてしまう。
『そう』したくなくとも、どれだけ抗う意志が強くとも、
僅かでも目の前の『敵』以外のものに気を逸らせば、瞬く間に絡め取られ、
呑み込まれて、意識すら刈り取られてしまうかも知れない。
だから、娘は目を逸らすわけにゆかなかった。
己の足でこの場に立ち、真っ直ぐに『彼』だけを見据えて、ことばの刃を振り抜いて。
敵意も、憎悪も、どんな攻撃にも揺るがぬほど凪いだ金色に、魅入られぬよう、踏み止まれるよう、
しろがねの柄に、縋りつく強さで指を絡ませ。
「―――――弱いと、思うなら、殺せ。
その程度の、覚悟も無しに……ここまで、来るものか」
くろがねの剣が、男の右腕のさきに。
密度の濃い闇を縒り合わせ、紡ぎあげて創り出された、それは『彼』のちからの象徴。
近づくだけで肌を裂かれ、触れたなら身の裡まで穢れが及ぶ、
そんな、禍々しい予感に身震いするほどの、圧を感じるけれど。
手のうちのしろがねが、もう、耐えがたいほどに熱くなっている。
もしも今、背を向け退くことが赦されたとしても、このつるぎが赦さないだろう。
握り締めて、鞘を脱ぎ棄てて―――――奔れ、と、叫ぶ声がきこえる、から。
からだを裡から縛る封じのちからが、軋み、歪み、藻掻くのがわかる。
強きものにめぐり逢い、正面から相対し、挑む機会を得た歓喜に、狂おしく身悶える『ちから』を、
けれど今の娘は、自ら解き放つ術を知らず―――――ただ、煽られるままに。
紫電の瞳をあやしく、煌めかせて。
「―――――――――― 参る、」
ザク、と軍靴の底が、金臭い泥濘を踏みしめる音。
やや斜め後ろへ左足を引き、踏み出す右足で地を蹴る。
小柄な躰は瞬く間に、男との距離を詰めにゆくだろう。
男の懐へ、足許へ、滑り込むようにして――――
腰だめに構えたつるぎを、掬い上げるように、男の左腰脇から、右の肩を斜めに、薙ぎにゆきたい。
動作の全ては、華奢な小娘のものにしては、予想外に早く、鋭い。
けれど粗削りで、致命的なまでに、未熟な―――――。
■ラボラス > (覚悟なら在る、と、そう言った女は
己が前に立つ最低限の条件を備えたに過ぎぬ
其れは、きっと女自身も良く判って居るのだろう
蛮勇では在る、だが、ただ考えが足りぬと言う訳では無い
ならば――止まれぬのだろう。 退く事など出来ぬのだろう。
そんな相手を追い返すほど、"無情"な事はせぬ
されど、何か思う所は在ったのだろう
弱い、ただ蹂躙されるしか無い程に力の差が在る、女の力量の底に
――何か、が。)
「―――――……御行儀の良い事だ。」
(戦いに、号令など必要無い、と
剣を振るぞと申し合わせて、剣を振る阿呆は居ない、と
煽る言葉は、所詮女の冷静さを、精神面を刺す為の其れだ
だが、其れに惑わされる事無く踏み込んで来た女の、決死の一太刀は
確かに、覚悟、と言う物を感じさせる物で在った
――だが、覚悟だけで勝てるならば、戦いとは容易い
斜めに斬り上げる白銀の剣閃を、自ら構えた剣の刀身で、真正面から受け止める
澄んだ、刃の衝突する音が響く。 女の、渾身の一撃を受け止める片腕
決して、筋が悪いとは言わぬ女の剣はされど、未だ、磨かれざる物なら
其の太刀筋を読む事其の物が、容易いと言わざるを得ないのだ。)
「―――足りんな。 ……圧倒的に、足りん。」
(其の剣では、足りぬのだ、と。
受け止めた黒き剣が、次第にゆっくりと、受け止めた女の剣を押し返して行く
女の目前で、其の紫電を見下ろしながら、相変わらず淡々とした声で言い放てば
直後、もう片方の掌が、女の顔を鷲掴みにするよう、掴もうと伸ばされる
黒き魔力を纏う其の腕が、女を穢れに沈めようとするかに
――悪寒が奔るだろうか。 危機感を覚えるだろうか。
其れとも、女が備える他とは違う感覚が――もっと別の何かを、覚えるやも知れぬ
それは、女にとって最も悍ましきもの。 もっとも疎ましきもの。
女の内に封じられた其れと同じ――闇の、気配なのだから)。