2022/10/20 のログ
ご案内:「タナール砦」からテレジアさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」にエリーシャさんが現れました。
■エリーシャ > どこからか、ひび割れた断末魔の咆哮が聞こえる。
それが見知った誰かの声であるのか、彼、または彼女がどんな目に遭っているのか、
冷たく硬い石造りの牢に囚われた娘には知る由も無い。
知ったところで、今の娘に出来ることと言えば、
いずれはそれが己が身にも降りかかる災いと知り、身を震わせる程度のこと。
後ろ手に頑丈な枷を施され、じめじめと薄暗い石牢の片隅に座り込んで、
同じように虜囚となった彼らの悲鳴を、耳を塞いで締め出すことも出来ず。
取り上げられたしろがねの在り処も、引き離された愛馬の行く末も知らず、
娘はただ、砦を占拠した魔の者たちへの憎悪を募らせ、
歯噛みする思いで同胞たちの嘆きを、絶叫を聞くばかりだった。
軍靴を脱がされた素足が、石床の感触に凍えつつある。
鉄格子の向こう、今はそこを通りかかる者も無く。
睨みつける相手も、罵声を浴びせる対象も居らず―――――焦らされているに等しく。
後ろ手にされた両手の指先が、苛立ちを露わに、いつしか石壁を引っ掻いていた。
■エリーシャ > 「―――――――― っ、」
また、どこかから誰かの叫び声。
今度こそ、誰のものなのか分かってしまう声に、
娘は顔を歪め、俯き、くちびるを噛み締めて―――――
明り取りの小窓から零れる、銀色の月のひかり。
それは今の娘にとって、死よりも遠い希望だった、という―――――。
ご案内:「タナール砦」からエリーシャさんが去りました。