2022/10/01 のログ
ご案内:「タナール砦 宵闇の刻」にエリーシャさんが現れました。
■エリーシャ > ――――――ふ、と、頭の片隅に閃くものを感じた。
砦北端の一室、剣や軍靴の手入れを常の如く淡々と、
そろそろ終わらせようかという頃合いだ。
熟練の騎士たちは束の間の休息に酒精も交じり、
虜囚とした魔族の女を慰みものにする者も居るようだけれど。
娘にはそうした趣味も無く、ただすべきことを済ませ、
あとは眠るばかり、といった時刻。
けれども、
「――――…… 近、い」
どこか、とても近いところに、あたらしい気配がする。
不意に入り込んできた、見逃すことは出来ない。
磨いていた軍靴を履き直し、寝床脇に立てかけていた長剣を掴み、
酒盛りをする先輩たちの姿を横目に、砦の外へ忍び出た。
あたりは既に、蒼い闇に呑み込まれようとしている。
剣の柄を握る手に知らず力を籠めながら、紫電の瞳がゆるり、
周囲を眺め回して――――――右手に広がる立ち枯れの森で止まった。
ほんの一瞬、誰か人を呼んでから、とも思う。
けれど察知した気配が次第に弱く、あるいは遠くなりつつあるのに気づき、
ともかく探索を優先することにした。
ざくりと軍靴で土を踏みしめ、森の中へ分け入ってゆく。
銀月は細く、弓のように――――光は、ひどく心許ない。
娘の姿はすぐに、黒々とした枝間に隠れ、砦から視認出来なくなってしまうだろう。
その程度のことで、探索を躊躇いはしないけれど――――
ご案内:「タナール砦 宵闇の刻」にエイブラさんが現れました。
■エイブラ > (今は人間側の手に落ちた砦。
暫くその砦を側で様々な感情の入り混じった目で眺めていたものの
ふ、と視線を外して砦から遠ざかる方向へと歩き始める。
以前に、自分がここで行われた大規模な戦闘に参加した際に潜んで
いた森の中をゆっくりと静かに歩を進めていく)
「あの時は、結局、どちらの手に砦は落ちてしまったのでしたっけ。
いけませんね、そんなに前のことではないはずなのに、憶えていな
いなんて。
ですが、あれからまた魔族の側に落ちたり人間側に落ちたりを相変
わらず繰り返していて、あの時の戦いは何だったのでしょうか」
(大規模な戦闘だっただけに、犠牲となった人間も魔族も数は多く
て、あのとき落としきれたにせよ守りきったにせよ、そのときの犠
牲がまるでなかったかのように今は人間が占領している。
恐らく中では囚われた魔族達が様々な責め苦を受けているのだろう
ことは想像に難くないものの、それを助けるまでの義理は自分には
なく。
この砦は存在自体がもうすでに、罪になっているのではないかと
とりとめのないことを想いながら、宵闇の中を静かに歩いていた)
■エリーシャ > 瑞々しい緑の生い茂る季節はとうに過ぎ、今はただ黒々と、寒々しく。
木々の間を縫って歩む間にも、目指す気配は遠く、近く。
「―――――― だれ、だろう」
娘の知覚を刺激したのだから、人間の気配、ではないのだろう。
けれども魔族のものなのかと言えば――――それが、何故か判然としない。
近づいていると思うのに、いったいどうして。
娘は戸惑い、普段表情に乏しい顔が戸惑いに曇った。
感じた気配の主が、あるいは特殊であった所為かも知れぬ。
けれど娘は探索を続け、続けた挙げ句に――――――結局、成果を得られなかった。
深更の夜を迎えても、砦では爛れた宴が続いている。
娘の探索はそれから逃れ、いっとき、自由を謳歌する散策と化した、という――――――
ご案内:「タナール砦 宵闇の刻」からエリーシャさんが去りました。
■エイブラ > (それから暫く森の中を歩き、空を見上げて月がかなり傾いた頃合いになってから、その場を離れて街へと戻っていった)
ご案内:「タナール砦 宵闇の刻」からエイブラさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」にサタナキアさんが現れました。
■サタナキア > 醜悪な姿の男は砦の高所で、獲物となる雌を魔道水晶を手に探している。
水晶は一瞥すれば砦全域を見渡せる程の優れもの。
自らの手に堕ち隷属する雌を求めるこの男は、サタナキアという魔王。
自分の欲望をそそられる雌であれば、それが人間であっても、魔族であっても。
或いはそれ以外であっても良かった。
ご案内:「タナール砦」からサタナキアさんが去りました。