2022/06/18 のログ
ご案内:「タナール砦」にトルナードさんが現れました。
トルナード > タナール砦 人と魔を分かつ代表的な分岐の場所。
ここを境目として、いつも互いの場所として入れ替わる。
ハテグやアスピダに比べ、その在り方は、地図でふと目を向ければもう入れ替わっていると言えるかもしれない。

そんなタナール砦は現在 魔族の手に渡っている。


「―――んー、雨が無くてきもちいなぁ。」


タナール砦を中心とし、その建築物が必ず視界に収まる場所で空を飛んでいるのは鳥人。
人型のシルエット 背中から生えた両翼 骨格と皮の張った姿とは違い、シルエットがくっきりと見えるなら、羽の凹凸が伺える。
しかしシルエットから外れた色合いは、羽も四肢も、光沢のない金属色。
生きているようには思えない 遠目では石灰でも振られているかのような色合い。

下では何人かの、タナール砦を占領している同じ釜の飯を食らう者
所謂仲間が、見上げていた。 空は何時だって憧れや届かない場所。
かの大蛇であっても、陸も海も口に含ませたのに、空だけはどうしようもなかったという程に。


「異常なーし あっちもなーし。」


それは速度はない。 バサリと翼を広げ、何度か仰いで広げ直せば再び空の中で浮き上がる軌道を見つける。
頬に打たれる空気はなく、黄色のレンズを嵌め込んだゴーグル越しの視界で鳥人は、何ら影響を及ぼさない黄金瞳で日差しも風も
其処に何の影響も与えることなく、タナールに向かう道筋 または、その周囲の森などで潜むような何かがいないかを見つめている。

暗い中で獲物を捕らえる梟のように、その瞳は暗いや明るいはない。
視力とゴーグルに基づいて、有るか無いか それだけを見つめている。

そして翼は、雨も湿度も感じない空に撫でられる感覚を気持ちよさげにしていた。

トルナード > 空を行き来する者。
例えば魔女 例えば乗り手 怪鳥やグリフォンのような、翼を持つ使い魔など
数は限られている上に、地上での争いに比べればその在り方は眺める事 嫌がらせなどが多い。

一度、このいくつかの空を行き来する者同士が交われば、地上ではありえない立体的な軌道と、どちらが堕ちるのか
どちらが逃げるのか それを眺めることができるだろうか。
なぜなら、陸地とは違い、見上げる場所さえあれば視界を遮るものなど、きっとないのだから。

そんな鳥人は、一人同じく飛べるような仲間は現在視界にはいない。
一人で飛んでいる様子を見せるように、悠々と飛んでいる。
時々逞しい羽を持つ大鳥が同じく視界にはいるかもしれないものの、ほんの十数秒、共に飛ぶことがあれば手を振って
鳥人は別れを告げて方向を変える。

やがて、戻ってきた様子の鳥人は、ゆっくりと長く下降し始め、四肢と翼の全貌がくっきりと見えるようになる。
砦の頂上部 見張り通りの縁に、ガリッと音を立てて爪を立てる太く逞しい、三つ指。
紅葉と呼ばれる鳥足のように、Ýの字を描くそれは全身が照りのない金属。
生きていて、間接もやわらかく動くというのに、なぜか硬い。 それを示すように翼も広げたそれからゆっくり折り曲げられ
その重量を物ともしないように、鳥人は砦の上で二つの脚と爪で降り立って、軽く伸びをした。
同じく、両腕の先が金属の鳥足となっている三つ指同士を絡ませて。


「ん~~……! 今日は平和だねー
 空も青いし、人間もいないし。」


なら人間以外は?と聞かれたら、それすらもいないと答える。

この砦に近づこうとする魔族以外は全て 敵。

判りやすい構図は、どこか幼げに見えるあまり緊張感のない言葉を持つ鳥人でも、分かる。


「この中だけだねー。」


呑気そうに、見張り通りの縁で両足をそろえたままそうにっこりと言う
同僚はそれに、同意と共に尖った耳を掻いた。

砦の中で聞こえるのは悲鳴 懇願
時々女の声も混じる。 間違いなく人間か、敵意を以てここにいただろう亜人の声。

想像に難くない 奪われた時に捕らわれた戦果 トロフィーのように愛でられている
砦を守っていた人間たちの成れの果てである。

ご案内:「タナール砦」からトルナードさんが去りました。