2022/04/18 のログ
ラボラス > (軍団の長である以上、求められて居るのは統率であり、軍略
其れが戦争の、闘争の一部であると言う事は誰よりも理解して居る
己が指揮によって、戦場の趨勢を一気に覆す事も
或いは初めから、一方的な蹂躙と制圧を以て戦場を支配する事も
或いは、拮抗した戦力同士を、様々な深謀遠慮を以てぶつけ合う盤上遊戯も

決して、否定はせぬのだが。)

「―――――俺に届く刃なぞ、最早途絶えたか。
……王国は、此処迄腑抜けに堕ちたか。」

(――軍団の練度は、高く、そして完成されている。
将としての己の手足として動き、将としての己が盾となって散る
兵として、理想的な忠誠心を持った者達の集まり

だが、それ故に。 最早、刃は己には届かぬ。
己が手足が、己が手足の代わりに敵を滅し、己が肉体の代わりに敵の刃を受け
己が手を下さずとも、戦は、終焉を迎えるのだ

其れは、己を餓えさせる。 将では無い、己と云う個を渇かせる。
闘争を、暴力を、狂乱を、欲して、欲して、獣はより獰猛となる
其れを、将と言う肩書で、鎖で、繋いで、縛めて。
そして、己自身を、此処に佇ませている。)

「―――――……護りは、堕落を産む。
貴様の選択は、間違って居たぞ。 ……人は、衰える一方だ。」

(憐れみを。 護りの中でぬくぬくと生きる者達へ、失望を。
この戦争に、ただ、"負けずに済んで居る"だけの、王国の民を
ただ嘲り、侮蔑し、そして――かつて、己が命に迫った者達を、懐かしめば

何が足りぬのか、何を以て、かつて英雄と、勇者、なぞと呼ばれた者達が再び
この地に出ずるのかに、思いを馳せた)。

ご案内:「タナール砦」にアライダさんが現れました。
アライダ > (息を殺し、顰み続け、どれだけの時間が経っただろう。
 目の前で多くの人間が惨殺されていくのを見た。
 酒を交わした兵士たちが、いともたやすく、茹でた芋でも砕くかのように、あっけなく殺されていく。
 決して兵士の練度が低いわけではない。
 それ以上に、魔族の軍の統率が優れていただけだ。

 だからこそ、軍師は、アライダに法外な額を約束し、彼女を砦の中へ残した。

 あらゆる魔法に対してステルス状態となる、隠し倉庫。
 認知され得ぬその場所は、過去に数度、魔族の軍が砦の中で拠点を構えた痕跡のある地点のすぐそばに位置していた。

 ひたすらに、耐え忍んで、待ち続けた。
 あるか無しかの睡眠と、僅かな食糧だけを糧に、数日を耐えた。

 魔族たちが勝利に緩む瞬間。
 その僅かな隙に、首魁の首を落とせと。
 
 いつものアライダであれば、一笑に付して断っていただろう。
 どれほどの金を積まれても、割りに合わない。
 生きて帰れるはずのない、片道切符の作戦だ。

 それでも、アライダが残ったのはひとえに、個人的な遺恨だ。

 今は地図からも失われ、誰もその存在を知り得ない国。
 まだアライダが武将と呼ばれていた頃、「翼在る獣」とは、愛した国の辺境で幾度も刃を交えていた。
 互いに多くを死なせた。

 あの頃の首魁が今もなおあの魔族であるのだとすれば、ひどい差がついたものだと思う。
 自分は国ごと何もかも失った。一方、あの魔族の男は、益々練度を上げた兵士たちを率いて、砦を攻めている。

 だからこれは、傭兵としての仕事ではなく、個人的な遺恨での、残留だ。
 死にそびれた亡国の武将が死にそびれの駄賃に一つ、首を所望して息を殺している。それだけの、話だ。

 アライダは、相手が一人になる瞬間を、虎視眈々と狙い続けていた。

ラボラス > (――戦場の捜索が、終わった。
何も無かった訳では無い、敗残兵や生き残りが潜んでおり
時には捕縛し、時には殺し、そして、時には止めを刺した
其れは戦場での理、法や人道と言う物とは程遠い、戦いの道理
最後まで戦士で有らんとする者には、戦士としての死を与える、ただ其れだけ

斥候達が引き上げて来る。 同時に背後で、砦への侵入が開始された。
砦内の確認が終わったのだろう、罠の解除、及び籠城兵の確保を機に
軍勢の内、決められた集団のみが砦の中へと踏み入り
残された兵は、必要分を残して周辺警備と、撤収準備に取り掛かる
本軸の防衛は、己が軍団では無い、別の集団が担うのだ
己が軍団は砦を奪い、そして、引き渡すまでの仮防衛を任されて居る

――本来ならば、不必要な交代制。
だが、そんな茶番を、もう幾度も繰り返して居るのは偏に
この砦が、護りの境界線上。 魔族が踏み込めぬ最後の一線、で在るからだ。)

「―――――――……無闇に砦を荒らすなと伝えろ。
他の事は、好きにさせてやれ。」

(――一番最後に砦の中へと踏み入り、入口で待ち構えていた部下に指示を出す
戦勝の後、兵たちが求める物が何かは、判り切って居る
食料、或いは、女。 自らが奪い取った戦利品。
それらをいかように扱うも、勝ち取った者の自由だ。
故に、其の扱いに関しては一切を不問とし、束の間の無礼講を赦した

指示が伝達され、勝利が確信へと至れば、軍勢は勝鬨を上げる
地鳴りのような咆哮が砦へと響き渡り、そして、始まる狂乱
其の中を静かに歩み、拠点となるべき場所へと、真っ直ぐに歩めば
まだ、他に誰も居ない部屋の中、指揮官が座る椅子へと腰掛け、目を閉じた

――喧噪が遠い。
部下達は、己が代わりに統率を取る為、今は離れて動いて居る
それは、決して油断、では無かった筈だ。 だが、其れでも。
命を賭して潜んだ、一人の"将"が、待ち望んだ瞬間には、違い或るまい)。

アライダ > (意識の有無は、いつ頃からか曖昧模糊としていた。
 飢えと乾きを超えたあたりで、いっそ懐かしさを覚え始めたのを最後に、人間らしい情念のたぐいはぶつりとかき消えた。
 光の有無。音の有無。
 好機を待つ外、不要な情報は遮断された。極限状況で己を永らえさせるために、アライダが得た技術。

 人間らしい思考を放棄した先、ようやく、待ちわび続けた瞬間が、訪れた。

 勝利を確信した魔族たちが、人間を蹂躙する声。
 女の悲鳴。酒に浮かれた歓喜。血。喧騒。笑い声。
 それらがどのように扱われようとも、敗北者に文句を言えた筋合いなどない。自らが勝利していれば、同じことを成したに違いないのだ。
 だが、人間たちの断末魔も、今のアライダの耳には届かない。

 そして。
 ようやく、待ちわび続けた時が、訪れた。

 殺すためのときが来たと、アライダは認識した。
 その途端、意識が急速に鮮明になった。
 身体は、動く。だが、長期の戦闘には耐えられない。どちみち大立ち回りをするような余裕はない。
 たった一撃。ただの一撃。
 それで首魁の首さえ、ラボラスの息の根さえ止められれば、それで十分だ。

 静寂の中、指揮官の座に誰かが腰を下ろしたのを、アライダはたしかに見た。
 距離は遠くない。

 得物を掴む手には、確かな力が宿っている。

 無駄な声をあげることは、しなかった。
 首魁が椅子に座し、目を閉じ。

 ひと呼吸、吐き出し、吸うわずかな間を狙って、アライダは床を蹴って飛び出した。
 ばたりと、隠し倉庫の扉が小さな音を立てる。
 携えた剣は、寸分違わず、相手の心の臓を貫こうと突き出されただろう。

 届くか、否かなど、アライダの頭には無い。おのが勝利のみを信じて、この一瞬に、文字通り全てを賭したのだ)

ラボラス > (静寂を好む訳では無い
ただ、この瞬間、己だけは餓えた儘、乾いたまま。
勝鬨を、共に響かせる程の熱に、酔いしれていないだけ
この砦で今、己だけが唯一、闘争とは無縁の存在である故に

次を考える。 次こそは、己を、将としてではなく
只の兵として、只の戦士として、満たしてくれる者と出会う為に
独り、次の戦場へと思慮を馳せるのだ。

――だが、嗚呼、確かに。 其れは油断であったろう。
今を見ずして、何時かを見た其の刹那は、確かな隙であった。
小さな音は、砦の喧騒に掻き消された。 怒号の様な兵達の狂乱に、一瞬の殺意も紛れ込んだ。
餓えた獣の本能が、極至近距離で踏み込んだ何かの気配を感じ取った其の刹那には
己が命へと迫り来る刃の、美しき煌きが、直ぐ、傍まで。)

「――――――――…………嗚呼」

(――血が、沸騰した。 肉が歓喜の声を上げた。
最早其の刃を避けるには間に合わぬ、この瞬間の為に、この一撃の為に
この人間は、延々と潜み続けて居たに違いない
数多の兵たちを、そして、己すらも出し抜き、突き出された刃は何より
己が、焦がれる程に待ち望んだモノであった。

歓喜の声が零れた。
刃の切っ先が、軟弱な刃では貫けぬ筈の礼服を裂く
肉を抉り、骨を削り、刃の先端が、背中側へと突き抜ける程に深く埋まれば
無闇に豪奢な、元は、果たして人と魔、どちらが用意したのかも判らぬ椅子の
其の背凭れへと刺さって、止まるだろう。)

「――――……其の目…其の顔…、……覚えが在るぞ、貴様…。」

(――刃を、片掌が掴んで居る。
心の臓を、寸分違わず狙った其の一撃は――僅かに、ほんの僅かに
逸らされ、致命の一撃とは為らず。 されど、確かに届いた。
刃を伝って鮮血が滴り、女の手指にも僅かに触れよう
其の姿を見て、獣の如く獰猛に笑いながら、もう片方の腕を、大きく振るい。)

「―――――……貴様の刃を身に受けたのは、此れが初めてか。 ……アライダ。」

(叶えば、女の身体を払い飛ばし、地に打ち付けんと)。

アライダ > (これほどに肉薄したのは、いつ以来だろう。
 剣戟を幾度も交え、戦場での決着は果たせないままだった。
 だからこそ、心は凪いだ。感情の起伏を伴ったまま殺せるような相手ではない。
 研ぎ澄ましきった一撃でなければ、届きすらしない。

 だから、絶好の瞬間にかけ出せた刹那、アライダは束の間、勝利を確信した。
 だが。ラボラスの目を見た瞬間、心の臓を貫けようが、貫けまいが、己の敗けだと知った。

 自分を見る、ラボラスの目。
 そこにあったのは、権力を恣にした愚鈍な将にありがちな、死への恐怖などではなかった。

 アライダの目に写ったのは、戦士としての、明確なよろこびだ。
 おのが命を脅かす仇敵の存在を心の底から待ちわびていたと――それと戦いたくて、それを叩き潰したくてたまらなかったとでも言うような、歓迎の色。

 故に、アライダは、己の敗北を知ったのだ。
 仮に殺せたとして、それはこの男にとって、よろこび以外の何ものでもないのだろう。
 アライダの思考をよそに、身体は正確に動いた。馴染んだ手応え。肉というものは存外に柔らかいのだと思い知らされる、よく知る感覚。
 心の臓を貫いた。確実に殺せたと思った。
 それでも、自分の鼓動は早いまま、息は殺したままだ。
 殺せていない。
 相手の手が、自分の一撃を、殺意を、殺しきっている)

「…………良い腕だ、本当に」

(憎々しげに唇を歪めながらも、口角は笑みを作っていた。
 次の瞬間、もう一方の腕で簡単に払い飛ばされた身体が、軽く吹き飛び、地に落ちる。
 見上げた相手の顔は、どのような表情だっただろう。
 どのみち、勝敗は決したのだ)

「あぁ、初めてだ。……悪くない冥土の土産だ」

(手についた、相手の血液を舌で舐め取る。
 今回の唯一の戦利品。勝利の美酒とはかけ離れた、敗北の辛酸。
 立ち上がろうとした脚に、力は入らなかった。すべてを出し切り、敗北し、それでも気力だけで脚を殴りつけて、無理に身体を起こす)

「……おいで。一人の夜は寂しいだろ」

(せめて最後まで刀を握り、殺意を抱いて死ぬのが己の誉だ。
 地に伏せたまま首を落とされるのを待つほど、悠長な性格はしていない。
 壁に手を付き、今にも崩れそうな膝を無理やりに伸ばして、目だけは炯々としたまま、アライダはラボラスを見据えていた)

ラボラス > (女の身体が、宙を舞う
手が離れた刃を、ゆっくりと背凭れから、そして、己が身体から引き抜けば
傷が広がる気配と、血が、ごぽりと溢れて滴る気配が、広がろう
人であれば、其れだけで致命傷。 遅かれ早かれ、命を絶つには充分な一撃
されど、己では違うと、判って居たからこそ、正確に心臓を狙ったのだろう
そしてそれは、限り無く正しい選択、であった

――椅子から、ゆっくりと立ちあがり、吹き飛んだ女へと近付いて行く
剣を放り捨て、傷口に掌を押し当てれば、簡単に紅く染まるのを見る
これ程の傷を負ったのは、久方ぶりの事。 限りなく完璧であった暗殺の術。
もしも、己が砦に辿り着くのがもう少し早ければ。
もし、己が僅かでも気付くのが遅れて居れば
結果は、容易くひっくり返って居た事だろう。)

「……いや…鈍って居ると思い知らされた。 貴様にな。」

(――かつてなら、もっと早く気付けたと。
そう、告げるのは決して、相手への気休めでは無い。
純粋なる賛辞すらも交えて、今もまだ、立ち上がった女へと相対すれば
きっと己が顔に浮かんだのは、紛う事なき、歓喜、で在った。)

「……良くぞ耐えた。 良くぞ届かせた。
……あれ程に美しい刃は、久方ぶりに見たぞ。」

(掌の血を、衣服で拭う。 そして、女の前へと歩み寄れば
まだ、地に汚れた指先で、其の顎先を上向かせれば
――衰えぬ殺意と、死への覚悟に満ちた瞳に、口端を吊り上げた後

腕を、振り上げる。
そして、女の其の喉元に、揺らめく様に顕現させた、黒の刃を一閃させよう
刃は、其の刹那確実に、其の喉笛を切り裂く軌跡を描く
されど――女の喉笛から、鮮血が噴き出す事は無く、痛みもまた、遡らず。
掌からは、黒の刃は、何時の間にか霧散しており。)

「――――――……だが、足りん。 貴様を殺せば、俺はまた餓える。
……何時か、其の身は食らい尽くしてやろう。 ……だが、今では無い。」

(――殺さぬ、と言う、選択。
其れは、戦士に対する無礼であるやも知れぬ。
命を賭して、この一瞬に掛けた女への、裏切りに当たるのやも知れぬ。
だが――そうはせぬと、己は、決めた。 其れが、勝者の権限。)

「――――殺さん。 生きて…再び、俺を殺しに来い。」

(――其れが、敗北者への呪いだ、と)。

アライダ > (相手の言葉に、わずかに目を細める。
 ぐらりと意識が揺れる。相手の声がなければ、保つのもやっとだろう。
 まだ死にたくはない。まだ、目の前の敵は生きている。まだ自分は、敵意を、手にしている。

 それでもなお、仇敵の賞賛は、幾ばくかの価値と呪詛を伴って、響いた)

「――敗けだ。国境線を引く戦いに、善戦も何も……、ないのは、……知ってる、だろ」

(がくりと力が抜ける。もう経っていられないと思った矢先、相手が自分の顎を捉えた。
 血に濡れた指だと、すぐに分かる。

 死ぬのだと思った、殺されるのだと思った。
 目を大きく見開いたまま。女に恐怖の色はなく。代わりに滲むのは屈辱、無念、そして、自分の腕への諦観。

 戦場に投げ捨てた命だ。何も惜しくはない。死を恐れていれば、こんな馬鹿げた作戦に乗りはしない。
 ただひたすらに、敗北だけが、悔しい。その念を抱えたまま、死ぬものだと思っていた。

 相手の言葉を耳にして、がくりと、今度こそ脚から力が抜けた。
 生きているに、越したことはない。将軍だった頃の誇りは、高価な甲冑とともに売り飛ばした。今の自分はすでに、しがない傭兵だ。
 命を与えるというのなら、惜しみなくいただき、またその命を狙うために、すべてを研ぎ澄まそう。
 命が永らえれば。今度こそ殺せるだろうか。少しの狂いもなく、まっすぐに、その心の臓を貫き、敗北を与えられるだろうか。

 だが、どうやって。この砦はすでに魔窟と化した。ほとんど飢餓状態の自分が生きて抜けられるはずもない。
 或いは、秘密裏に生かされるのか。ほとぼりが冷めるまで、この男に匿われて、生きるのか。

 仔細を問いただそうとした時、目の前に床が迫っていた)

「……く、そ」

(どさりと、床に倒れ伏す。今度こそ限界だった。何度も腕をついて立ち上がろうとするが、ずるずると、手のひらが床を這うばかりで力がこもらない。
 悔しさに拳を握る。目の前にいる男を、殺したくて仕方がなかったはずだろうと、無念ばかりが募る。それでもなお、体はすでに言うことを聞かなかった)

ラボラス > 「――――そうだ。 勝つか、負けるか。 其れだけだろうな。
だが、……貴様は、ただ俺を殺しに来たのだろう。
国を救う、誰かを護る、そんな大義名分では無い。
……俺を憎み、俺を殺しに来た。 ……違うか?」

(此れが戦争であったなら、女の言う事は最もであったろう。
だが、今は違う。 これは、戦争に意味を与えるやも知れぬが
女が囚われて居るのは、"この"戦争では無い。 かつての戦争だ。
故に、己だけを狙ったのだろう、と。 ……言葉は、確信を以て。

ならば、この戦いは。 この闘争は。
国家ではなく、只、己と、この女の物だ。
どれだけの間、潜んで居たのか。 消耗著しい女が、今度こそ床に崩れ落ちれば
屈み込み、其の体躯を抱え上げて、連れて行く。
己が得た、"戦利品"の如くに。 そうなれば、他の誰もが、手を出す事はあるまい。
軍団の長、其の所有物に勝手に触れる無礼なぞ、働く者は。)

「―――――……預かってやろう。 暫く、俺が愛でてやる。
――俺が居なくなれば、この砦も長くは保つまい。 其れ迄は…な。」

(そうして――女の身を、女が隠れていた、彼の倉庫部屋へと放り込んだ
其処に、女が居る事自体を、誰も知るまい。 そうして、枷で縛める事もせずに、扉を閉めれば。)

「――――――食料はくれてやる。」

(そう、言い残して、男の姿は消える。
逃げ出せはせぬと、そう確信した上で。 再び砦に、人の軍が押し寄せて来るまでは。
飼ってやる、と――そう、宣告した声が、響いて

そして、暫し女の視界は、意識は、暗闇に閉ざされる――)。

ご案内:「タナール砦」にアライダさんが現れました。
ご案内:「タナール砦」にアライダさんが現れました。
ご案内:「タナール砦」からラボラスさんが去りました。
ご案内:「」にアライダさんが現れました。
ご案内:「」にアライダさんが現れました。
ご案内:「タナール砦」にアライダさんが現れました。
アライダ > (薄れゆく意識の果で、確かに、ラボラスの言葉を聞いた。
 生かされていることを、重々に噛み締めながらも、勝者の言い分は心地よく耳に響く)

――あぁ。いつか、あたしが。情けをかける側に、なるまで。

「その命、預けた」

(かろうじて、小さく唇を動かす。相手の耳に届いたか否かの、かすれ声を最後に、女の意識はぶつりと落ちた――)

ご案内:「タナール砦」からアライダさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」にレヴニールさんが現れました。
レヴニール >  
「──なぁんだ。魔王クラスのやばい魔族がいるって報告があったから来たっていうのに」

戦火渦巻く攻防戦真っ只中の砦
到着した第七師団の活躍により徐々に人間側が推しはじめ、魔族側の軍勢は退きはじめていた

混乱する状況下ではあるものの、でかい大将首の気配はそこにはなく…

「サーちゃんが忙しそうだったからすっ飛んで来たってゆーのに、これじゃ拍子抜けね…っと!」

隙をついて飛びかかってきた──と思っていたであろう魔物を振り翳した剣で一刀の下に斬り捨て、やれやれと肩を落としていた

レヴニール >  
「ねーねー、あたし帰ってもいーい?」

剣を肩へと担ぎ、近くにいる兵士に声をかける
はぁ?!みたいな顔をされてしまった
でも戦況はここから覆らなさそうに見えるし…いなくてもいいかなって思ったのに

前の師団長の頃と違って、真面目な団員が増えたわねえと肩を竦める

まぁ居心地が悪いという程でもないし、
タナール近くに駐屯してれば戦火に不足することもない
まぁ、たまには刺激がほしいなとも思うけど

「そんじゃー、さっさと終わらせちゃいましょうか」

碧緑の瞳をギラリを光らせ、笑みを浮かべながら砦の中へと斬り込んでゆく
多少の被弾を気にする様子もなく魔物の群れに突っ込んでいく様子は周りの士気を大きく高めた…かどうかはともかく
単騎での特化戦力は師団の中でもそう数が多いわけではなく、文字通り軍勢を切り崩すように、タナールを守る魔物の群れは真っ二つに割れていった

ご案内:「タナール砦」にクレイグさんが現れました。
クレイグ > 魔物の群れに切り込んだ少女の隣、傭兵の男が一人。
攻撃特化状態にした斧盾を肩に担いで、少女に近づいてくる。

「あーあ、これじゃ、参加分の報酬しか貰えそうにないな。
レヴニールさんよ、少しは金になりそうな魔物取っといてくれよ」

呆れたように、普段は呼び捨ての名前にさんをわざとつけて、苦笑しながら声を掛ける。
何度も戦場で一緒になり、儲けがあると飯を奢り、その度に儲けが無くなったと。
機嫌良さそうに、くっくと、喉奥を慣らす悪役の様な笑いをする中年傭兵。

持つ武器の大きさは盾状態でも少女より大きく、重さも中々のそれを、振り回して戦う様は、変わり武器と合わせて少しは知られている。

レヴニール >  
「えー?
 戦場での獲物なんて基本取り合いでしょ~?」

赤熱した大剣で熱気を振りまきながら、声のしたほうへと視線を向ける

「あれ、誰かと思ったらクレイグじゃない。
 残念ねー、大将首はとっくにいなくなっちゃってたみたいよ?」

追い詰められ、襲いかかるしかなくなった巨躯の魔物を一瞥してから大剣で切り払う
逆巻く魔法の炎に魔物は巻かれ、その炎は砦を灼くことはせずに掻き消えてゆく

「いいトシなんだからさ~。
 宵越しの銭もそろそろ老後のタメに貯めていったら?」

薄ら笑いを浮かべながらの軽口
気心のしれた馴染みの顔、冗談の一つでも飛ばしてやろうというところが見てとれる

クレイグ > 「そらそうだ、少し出遅れたのが問題ではあるんだがな。
みたいだな、やる気のない大将だったのかね、もう少し、頑張れっての」

自棄になって突進してくる小型の魔獣の群れを、斧のような状態の斧盾で、薙ぎ払い。
近づいた相手には、腰の後ろから抜いた小剣で止めをさして。

「いやいや、傭兵稼業のは使ってるけど、冒険者の方は貯めてるぞ。
その年いってる傭兵より遅れてくる奴らも多いみたいだけどな」

少女があげた炎をみやりながら、派手だな、と呟いて。
後をみれば、傭兵や正規の団員、兵士などが今がチャンスとばかりに、突撃してきている所。

「こりゃ、今回はもう決まったみたいだな。
さっき、戻っていいかっていってたけど、此処まで来たら平気なんじゃないか?
とりま、ほれ甘い物だ」

小剣を振って、血を払い鞘に仕舞い、斧盾の先端を地面に押し当てて、ポールを掴んで、寄りかかる。
残敵は、後から来る一団が掃討するだろし、と腰から小袋を取って一つ少女へ放って。
中身は、干したベリーが詰まった物、男がどこにいても持ち歩いている好物で。

レヴニール >  
「先遣隊が結構頑張ったみたいだしね。
 向こうの大将格って独特の価値観のヤツが多いから、満足して帰ったとか~?」

魔族様の考えることはわからない
永命であれば享楽に最大の価値を見出すことは理解できる
もしくは戦うことが大好きか、そっちなら同類といえば同類である

今回の大勢は決した
文字通り火を見るよりも明らかな状態であることを辺りを見回して確認し、一息吐く

「え、なになに。もらっていいの?」

やったー、と破顔して小袋を受け取り、その中身を一つ取り出して頬張る
僅かな酸味と凝縮された甘さが口の中へと広がる
今回は大して疲れもしなかったが、疲労にもよく効きそうだ

「ちょっと暴れ足りないけど、まぁやることはやったかしらね~」

剣を足元へ突き立て、慌ただしく哨戒などに走ってゆく同僚達を眺めていた

クレイグ > 「魔族の考えは判らないな、ホント、変なのもいれば、騎士見たいのもいるし」

少なくとも、今回の将は不利と見たらすぐに逃げるタイプだったのだろう。
途中から魔物の統制が弱まっていたので、その段階では既にいなかった筈で。

「どうせ買うときは子樽で買ってて、余るほどあるから、消費手伝って…。
イヤ、撤回しとくか、全部食われそうな気がしてきた」

少女の食欲魔人ぷりを知る一人として、食うの手伝えはイコール全部食っていいに変換されそうだ、と苦笑して。
前に進む他の人員をみて、預けていた斧盾を持ち直すと、ポールを仕舞い込んで、背に背負う。

「あれで暴れたりないって、相手が不憫になるぞ。
とはいえ、レヴニールが出た段階で、魔物の動きが変わったし、大将がお前さんみて逃げたんだったりしてな」

くっくと機嫌良さそうに喉奥で笑って。

「欲求不満なら飯食うか、それとも他の相手でもしようか?
お前さんが言う程、トシじゃない所みせれるぞ」

飯を奢る時の決まり文句の様な言葉、大体は飯にはなしが流れ、そのまま報酬分食われるのだ。
さて、今回はどうなるか。

レヴニール >  
「んー?今手伝えって言った?」

はむはむと口を動かしならが、にんまりした目線
即座に鉄塊された言葉に残念、と肩を竦めて

「どうだか。危機感のない知恵のまわらない魔物連中ならともかく、
 第七師団が近くに控えるタナールに臆病者が現れるとは思えないけどねー」

当然のように実力者
そして戦える人間を獲物として見るような上位の魔族か、
あるいは自分と同じ気質、苛烈な戦闘行動を目的とする者
そういった手合いが過去には多かったと伝え聞いていた

「不完全燃焼ではあるけどー、んー……」

じー、と見上げるように、クレイグの顔を見る
幾重も戦場を駆けてきた証たる額の傷
線は細くないものの、崩れているわけでもない壮健な顔立ち
戦場で立ち回るに相応しい強靭さの伝わる体躯は逞しいの一言
───、一手、一手足りない

「…じゃ、お酒飲んで気分が乗ったらでどーぉ?もちろん奢りよね?
 クレイグが目も覚めるようなイケメンだったら即決なのにな~~」

奢ってもらえるならついて行かない理由は当然ないのだった

クレイグ > 「一樽暗いなら良いけどな」

にんまりとした目線に、少し折れるよに。

「ふむ、余計に何で引いたんだかな…ま、考えても仕方ないか」

確かに、実力者が来ることが多いのは何度もの奪い合いで証明されており。
それゆえに何で今回は引いたのかが疑問ではある。

「ふむ、威力偵察とかもあるか」

ふと思った事を口にするが、ことが戦略の話になるとほとんど判らない。
少女の言葉に、軽く頷いて。

「へいへい、今回も気分がか、それで乗った事ないよな。
誘った方が持つのは当然だろ。
イケメンじゃなくて悪かったな、こればっかりは変えれるもんじゃないんでな」

毎度のやり取りに、機嫌も良さげに微笑んで。
振られ続きとはいえ、若い美人と一緒に酒をのみ、飯を食えるのだから、それはそれでいいかと反応を返す。
奢るならパーッと気分良くが性分、それじゃ、行くかと少女に声を掛ける。

レヴニール >  
「ま、どんなヤツが来たかにもよるでしょうけどね~。
 お?樽ごとくれんの~?それで釣って抱こうとしてない~?」

誂うような口調で突き立てていた剣をよっこらと肩へと担いで

「熱烈に口説かれればちょっとは違うかも?なーんて、ごめんね~面食いでぇ」

けらけらと少女は笑う
この距離感がちょうどよいのだと言わんばかりで

「それとも酒で勝負でもしてみる?負ける気ないけど♡」

行くか、という男に追随するように
戦火開けて間もない慌ただしい砦を後にする

さてさて今回の報酬は殆どが少女の腹に収まるのか否か
それもまた、レヴニールの気分次第、なのだった───

クレイグ > 「とりあえずは、退いた相手の事いつまでもきにしてもな。
それで釣られるなら、大樽一杯くらい奢るぞ?」

少女の言葉に軽口で返して。

「熱烈にね、毎度誘って毎度奢って、他には、本気で抱きたいんだ!
とかいえってか?」

笑う少女に本気でという時は、真面目な声色と表情で言って。
直ぐに、くっくと喉奥で笑う。

「酒でか、それでも構わないぞ、俺も中々強い方だぞ」

とはいえ、人としてなので少女相手にはどうなるか。
毎度のように、軽口を言い合いながら、食事のできる場所へと戻る凸凹な二人であった―――

ご案内:「タナール砦」からレヴニールさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」からクレイグさんが去りました。