2022/03/08 のログ
ご案内:「タナール砦」にテレジアさんが現れました。
テレジア > 方々から煙の上がるタナール砦。その屋上には、揚げられたばかりの魔族の旗がたなびいていた。
今日もまた、この砦は魔族と人間の戦いの舞台となり、今回は魔族側が立てこもる王国軍を攻め落としたのだ。
砦内では魔族達の手によりせっせと消火と修復作業が行われ、瓦礫や死体が片付けられ、そして、人間の捕虜達が連行されている。

「ま、他愛もなかったわね」

魔族側の将軍、テレジアは砦内を見渡し、一息つく。
これから、この砦を修復し、防衛体制を整えた後、今回の戦いで活躍した部下に褒美を与えなければならない。
それは人間から奪った武器であったり、国の勲章であったり、あるいは…見た目麗しい人間の捕虜だったり。

「……今回は私もいただこうかしら?」

最近、自身も少々ご無沙汰だ。
捕虜に気に入ったのがいれば、発散するのも悪くない。
テレジアは部下に指示を飛ばしながら、捕虜を集めている砦内の牢のほうに歩いていく。

ご案内:「タナール砦」にラバスさんが現れました。
ラバス > 攻め手の軍勢にわずかに遅れて、後詰として砦入りした女。
防衛陣地の構築にと呼ばれているが、周囲を見てまわり、
まだ戦後処理も途中のようであれば、自身が扱うゴーレム群をいくらか呼び出し、手伝わせている。

「いち、に。いち、に。ほら、止まらず進んで」

自身はと言えば、大きな蜥蜴人型のゴーレムの肩に担がれて、気の抜けた掛け声をかけながら捕虜たちを牢へと運んでいる途中。
先に、戦闘を行った者たちから見れば、些か気軽に過ぎる様子にも見えるかもしれない。
それを、特に気にはしていない様子ではあったが――

「お、っと」

視線の先、見つけたのはいかにも雑兵とは違う様相の、高位の魔。
しかも恰好からするに、前線組だろう。
流石に見とがめられるかもしれないと、咥えたリトルシガーを口内で軽く噛みしめて。
此れが知り合いなら、此方が何処でだってこんなふうだと、解ってはいるだろうが。
露骨に捕虜搬送を止めるわけにもいかず、そのまま進んでいく。

テレジア > 「んー…?」

しばらく歩みを進めば、出会ったのはゴーレムの群れ。
はて、戦闘に参加した魔族にゴーレムなんていただろうかと、歩きながら見ていると、聞こえるのは気の抜けた掛け声。

「……あれか」

一際大きなゴーレムの肩に乗った、何か不健康そうな見た目の女魔族の姿。
恐らくゴーレムを操る主であろう。そして、テレジアにはちらりと見た覚えがある。ええと、確か…。

「ん?」

ふと顔を上げると、相手もこちらを見ている。
如何にもマズい、と言わんばかりに、リトルシガーを噛み締め、
そのまま、捕虜搬送に戻ろうとするのを、テレジアはてくてくと付いていく。

「貴女、挨拶も無しかしら?」

少なくとも、今砦を管理しているのは自分の部隊なわけで。
後から来たのなら、まず面通しをすべきだろうと。

ラバス > 流石に、掛け声は遠慮した。親しくない相手へのコミュ能力は高く無いが、
保身に繋がる空気を読むのは、苦手ではないのだ。……得意でもないが。

けれど、遅かったらしい。いや、遅いも早いも、ゴーレムの肩に乗っかったままなので
目立つのは変わらないだろう。前線組とは違い、身綺麗でもある。

掛けられる声に、あー。と。気の抜けた声を漏らしながら。

「ラッケルタ、降ろして。……有難う。
 ラバス・セル・ティリセッタ。軍属ではないので、階級は無し。
 まぁ、便利屋として後詰に混ざっているようなものです。よしなに」

蜥蜴人型のゴーレムに命令して地に足を付ければ、
コートの裾を、ドレスのスカートに見立てるように摘み、広げながら。
恭しくカーテシーにて、敬意を示す。
ただ、此処に至って相手の顔は見ていない。対人能力の低さ故である。
相手が知人か否かも、確認せずやっている。ただ、面倒はご免とばかりに。

テレジア > 目の前で巨体のゴーレムが動くのを、踏まれぬように少し後ろに下がり見ながら、
降りてきたコートの女魔族をしげしげ眺め。

「ティリセッタ…ティリセッタ……あぁ、あの。
そこの四女だったかしら?」

テレジアとて貴族の端くれにして位ある身。
直接会ったことが無かろうとも、大体の貴族の名前は頭にある。
テレジアも足を揃え頭を下げ、軍人らしい礼をする。

「テレジア・インケル。今回の攻略戦の指揮官よ。
後詰…あぁ、そういやそんな話を聞いてたわ。
とりあえず、捕虜の移動は私の部下でも出来るから、
城壁の修理の方を手伝ってくれないかしら?」

ゴーレムならさぞかし力もあるだろうと、力仕事を任せる。
だが、ラバスの様子を再度見ると、少しむっ、とした表情になり。

「……そうも露骨に顔を逸らされるとちょっと傷つくわ。
私が何かしたかしら?」

そう言って、ラバスの顔を覗き込もうと。

ラバス > 自身の出身を言われれば、自己紹介の手間が省けたとばかり、内心ため息を漏らす。
相手の名乗りを聞いて、カーテシーを戻し、器用にコートをつまむ手の指に挟んでいたシガーも口元へ戻す。

けれどやはり顔を直視せず。
彼女の鎧のほうへ視線をずらしておき。

「ん、テレジア卿の勇名は私も知っている。
 ……ラッケルタ、あちらで適当に顔見知りの指示に従っておいて」

聞き覚えのある相手の名であったから、当たり障りなく持ち上げながら。
蜥蜴人型のゴーレムは彼女の指示を聞き、重い足音と、
尻尾を引きずる音を立てながら、その場から離れていく。

それを見送って、視線を戻そうとしたところ、此方を覗き込む紫色の視線。
びくりと、一瞬身体を引きつらせ、三白眼を見開かせる。
それをごまかすように、煙をふかして。

「いや、その。親しい相手以外と、視線を重ねるのが苦手なだけで」

顔をそらし、ふー、と。煙を吐く。普通の煙草や葉巻とは違う甘い匂いが香る。
ちら、と、相手のほうを見るも、長くは見ていられないのだろう。
眼鏡越しの赤い視線は直ぐに、テレジアの顔以外のところをうろうろとする。

テレジア > 「ふぅー…ん」

顔を、視線を、相手が逸らせば、そちらに体を傾け、目線を合わせる。
身長はこちらの方が高い分、どちらを向いてもテレジアからは逃げられないだろう。

「それじゃあ、どうしたら親しくなれるのかしら?
これから会う度そういうことされると、正直言って気分が悪いわ」

遂には、がしりとラバスの両頬に手を添えて、自分の方を向かせる。
重厚な鋼に包まれた籠手は、ずっしり重く冷たさをラバスの頬に伝える。
バフォメットらしい横長の瞳孔が、彼女の瞳を覗き込む。

「そうやって目を逸らされると、私の容姿が醜く思われてるのかと不満なのよ。
自分で言うのも何だけど、私の顔は美しいはずですもの」

テレジアは、ラバスの眼鏡を不意にくい、と上げて、にこりと微笑む。

「貴女も中々綺麗じゃない。ちゃんと手入れしないのは勿体ないわよ?」

髪の毛を指先で触りながら、そう囁いて。

ラバス > 此方の瞳の見る先を塞ぐように移動してくる相手の目線。
露骨に困ったように、瞳を細めて見せて。

「いや別に私は軍属でもないしただの民間協力しゃああああああ」

眼前の彼女の直接の部下というわけでもないのだから、そう度々会うことも無いと
口早に伝えようとしたところに、頬を歪めて視線を固定されて。
冷たい感触と、見慣れない形の瞳孔が覗き来る光景に、シガーを落としかけ……
愛煙家の矜持か。なにがしかの魔術で、地には落とさず何処かに遣ったらしい。

「いやいやいや。比べるべくもない。貴女は、お奇麗だ。鎧姿でそぅ思うんだから、間違いないとも
 ……あ、牢に。牢のほうに用事があったのでは? 捕虜に何か、尋問かなにか」

自身の容姿を評価されるのも慣れず。
容姿に自信があるらしい彼女の言を肯定しながら、此方とは比べられないと、自分は下げておく。
眼鏡を上げられては、歪む視界に益々目を細めて。
髪を触られるのには、取り合えずさせるがままにした。

そうして、間近で顔を見られていれば白い肌がわずかに上気し。
誤魔化すように、彼女の元々の用向きについて言及して。

テレジア > 「民間?貴族にはノブレス・オブリージュがあるのだから民間も何も無いのよ」

そんな無茶苦茶を言いながら、にこりと微笑む。
優秀なゴーレム使いを後方で腐らせるテレジアではない。
彼女には自分と共に人間との戦いの最前線に来て貰わなくては。
そんな事を考えながら、とりあえずは手を放す。

「牢?あぁ、そうね……。
美しい人間の女騎士でも捕まってたら、楽しんでやろうかと思っていたのだけれど」

今度は、ラバスの両肩に手を置く。
籠手の重量がずしりと彼女の肩にかかるだろう。
そして、にこにこ顔を向けテレジアはラバスに言う。

「ねぇ、仕事は後でいいわ。今から私と少し…親交を深めない?」

明らかにそういう意味で、テレジアは言う。
貴女私の事を綺麗って言ったわよねと、無言の圧もかかっていた。

ラバス > 貴族籍などなんなら放り出してもいいくらいに、義務のほうが嫌いなラバスにとって、
彼女の告げた言葉はちっとも頷けないものではあったが。
手を離されてなお残る鋼の小手の感触に、胡乱な瞳で相手を眺めるに留めた。

「はーぁ。成る程、良い御趣味だ、どぅぞ其方に注力し、て……」

繰り返される理不尽に、最初よりは言葉は砕け始めている。
が、再び、今度は肩に置かれる重量。ひくり、と、頬を引きつらせ、言葉を中断させられて。

「……はー――……ァ。少し、な。『少し』、だ、テレジア卿」

私は身体が弱いんだから、と。レンズ越しの緋色は、諦めの色を浮かべている。
彼女を称した言葉に偽りもないが、自分のようなものを誘って楽しいものかと。
そんな風にも思いながら、はてさて、彼女に連れられて、何処で何をするものかと……

ご案内:「タナール砦」からテレジアさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」からラバスさんが去りました。