2022/02/11 のログ
ご案内:「タナール砦」にアスベルさんが現れました。
アスベル > タナール砦、その男は人の国の側から現れた。
それは別に男が人間であって何かしらの目的でやって来た訳ではない。
男は一度この砦を抜け、人の国に踏み入った魔族側の存在…魔王と呼ばれる存在の一人だ。
その目的はある相手と対峙する事であり、その目的は既に果たされている。
ただ、求める結果は得られずに戻る事となっている訳だが。

口を開く事なく砦も近い場所まで歩いて着たか。
今は人か魔か、どちらが占領しているかは知らないが男は歩みを止める様子はない。
不機嫌そうに、一度魔族の国へと戻る為に砦を抜けようとしていた。

アスベル > この砦に到着する前、何度か無謀にも襲い掛かってきた賊や冒険者、騎士団らしき者達も居た。
面倒だが相手をしてみれば何ら障害に足る者は居る訳もなく。
暴れて発散出来ないのならばと、捕らえた女を犯してみても長持ちもせずに満足も出来ない。
お陰でイラつきと、無駄にフラストレーションが溜まっていく一方だ。

前に砦を抜けた時も何か居た気がしないでもない、その程度の認識。
どうせ帰りも取るに足らない相手が居るだけだと思ってしまうのは当然だろう。
耳にした話では、人間なり魔族なり少しは気の晴らせそうな存在が現れると聞いたのだが。
ただの噂に過ぎないか、偶然が重ならなければ遭遇する事もないか。
きっとそのどちらかなのだろう。

ご案内:「タナール砦」にアライダさんが現れました。
アライダ > くわえタバコで気だるそうに、どちらのものともつかぬ砦を歩く女傭兵が一人。
国がどちらのものだろうと、人が勝とうと魔が勝とうと、彼女にとってはさしたる問題ではない。
戦は金になる。その程度のシンプルな動機で動く彼女にとって、大切なのは戦場が存続していることだった。

殆どひと気のなくなったタナール砦を物色して歩き、ようやく、ちょっとした物陰を見つける。
ここであれば、つかの間の仮眠ぐらいは取れるだろう。

紫煙をゆっくり吐き出して、さて眠ろうかと膝を抱えようとした、矢先。
自分以外の何者かの気配を、強烈に感じ、女はとっさに身構えた。

足音の主はゆっくりと、どこか億劫そうに歩を進めていた。

安易にタバコを吸ったことを、今更に悔やむ。もし相手に敵意があれば、タバコの匂いや煙で居場所を察知されたかもしれない。
気配を殺し、女は相手の正体を伺った。

アスベル > どうやら帰りの砦にはやって来た時のような賑わいは無かった様だ。
こういった時もあるのだろう、期待外れの人気のない砦の中に足を踏み入れる。

気だるそうにポケットに両手を突っ込んだまま、我が物顔に砦の通路を真っ直ぐ歩む。
しかし、ある場所にまでやって来れば、その歩みがピタリと止まった。
誰も居ないのであれば、感じ取れる訳もない異臭。
煙はすぐに消えてしまっていた様だが、その臭いまでは隠せない。

「……誰も居ねぇと思ったんだがなぁ。
何だ?どこぞのゴミ虫みてぇに、この俺を襲ってみようなんて馬鹿が居んのか?」

この砦に辿り着くまでに相手をしてきた連中を思い出し、面倒そうに左手をポケットから出してガリガリと頭を掻き。
そんな言葉を周囲へと投げ掛ける。
気配を探る事、それはやろうと思えばやれるのだが、男としてはそれさえも面倒でやる気がないのだ。

アライダ > 男の言葉に、ほう、と僅かに警戒を緩める。
金にならない仕事は、命が関わらない限り、やらない主義だ。

「……ここだよ」

両手を上げて、武器を持っていないと相手に示しながら立ち上がる。

「少し休みに来ただけなんだ。この場所、今はあまり人間が居ないからちょうどよくてさ。それに、アンタみたいな血気盛んな色男に突っかかるほど、若くも馬鹿でもねぇよ、あたしは……」

互いに疲労があるのなら、無駄に争うことはしないでいいだろうと交渉するように、両手を上げたまま少し苦笑を向けた。

「酒も肉もないけど、タバコぐらいなら分けられる。お疲れのようだし、一服どう?」

アスベル > 反応が無ければ一発ぶちかまし、さっさと砦を抜けようか。
そう考えていたのだが、どうやら相手も馬鹿では無かった様だ。
無抵抗を示してか両手を上げ、その場から立ち上がったのは一人の女。
わざわざ聞かずともここに居た理由を言うのはの面倒が無くて良い。

「へぇ…物分りが良いってのは嫌いじゃねぇな。
別に疲れちゃいねぇし、すぐに壊れる玩具にゃ興味はねぇが…
その物分りの良さに免じて、素直に受け取ってやらぁ」

もう両手を上げなくても構わないと手を振ってそれを示しながら。
そんな女の方へと歩み寄る。
別に好んで吸ったりはしないが、貰えるものは貰う主義だ。

アライダ > 争わずに済むのであればそれがいい。
金が発生するわけでもないのに、命を張る理由は、今の自分には無い。
相手が話を分かってくれれば、安堵したように穏やかな笑みを見せた。

「玩具か……。どこかの傭兵さんかと思ったけど、その物言いじゃ随分、腕に自信があるか、大勢殺してきたか……実は身分の高い御仁なのか……。色々興味が沸きそうで、困るな」

好奇心は猫を殺すに違いない。
であれば、男の事情にあまり首を突っ込むべきではないのだろう。
自分の方へ歩み寄ってきた男へタバコを渡し、火を灯す。

自分も瓦礫にもたれかかって、ゆったりと深く煙を吸い込む。
人間の陣取っている方角から歩いてきたから、人間には違いないんだろうと思い込みで判断しながら、相手の姿をじっと眺める。
男がかなりの実力者なのは、一目瞭然だった。
それで、ひょっとしたら知っているのかもしれないと思い、口を開く。

「そういえば、ね。賞金稼ぎの間で、少し有名になってる男がいるんだよ。最強を謳う男がいる、って。どこかの地域じゃ、かなりの額の賞金がかけられてるらしいけど、男の首が取られるより先に、張り紙のほうが劣化したって話でさ……。お兄さん強そうだし、どこかで聞いたことぐらい、あるんじゃない? 魔王を倒した男の、成れの果ての話」

タバコの気だるさのままのんびりと、寝物語の口調でゆったりと話しかけた。
よもや本人が目の前にいるなどと、思いもよらない。

アスベル > 腕に自信があるのか、大勢殺してきたのか。
それに答えろというならば、自分は両方だと答えるだろう。
身分なんてものは昔から興味の欠片も持ってはいない。
しかし、そんな問答は今更な話。

「ただの喧嘩屋さ、俺は強ぇヤツと闘えれば、それだけで良い。
そうは言っても、そんなヤツが存在するかどうか……いや、居たな。
あれをそうだと認めたくはねぇがな」

あくまでも女は興味があると言っただけだ。
それに正直に答える必要もないが、自分の本来である生き方と、その目的だけを伝えた。
そして、何かを続けて言いかけはするものの、何か思うところがあるか、それだけに留める。

煙草を受け取り、女が火を灯せば壁を背にして久し振りの煙草を味わう。

「なかなかに面白そうな話じゃねぇか。
御伽噺にゃ興味はねぇからな、本当にそんなヤツが居るなら楽しい闘いになりそうだ。
……で?お前はどうなんだ?
その首に大層な賞金がかかってんなら、その首取ってやろうってな事を考えたりした事はあんのか?」

何が可笑しいのか、クックッと肩で笑った後。
女へとそんな質問を投げ掛けてみるのだ。
笑ったのは、自分の事がそんな話となって広まっている事に対するもの。
そして女へとそれを聞いたのは、ただの興味本位。

アライダ > 「強いやつと闘えれば、かぁ。それは屈託なくて良いな。……好敵手がいる人生は、楽しいだろ? それに、満たされる先があるのは、いくらか、羨ましいな」

相手の言葉に、少し目を細めて笑う。

久しぶりのタバコは、相手の口に合っただろうか。
少し重めだったから、じんわりと吸えば、脳の奥がくらりと揺れる心地よさがあったかもしれない。

最強の男の首を、賞金目当てに狙うかと問われて、また笑いが漏れる。

「そうだな……、本当にそんな強い男が居るなら、賞金もバカにならないだろうし。喧嘩の一つ、売ったところで損はなさそうだよねぇ……。もし巡り会えれば、だけど」

そう語りながら、不意に、小国をいくつか切り崩したかつての光景が脳裏をよぎる。
切り込み隊長として、誰よりもまっさきに鉄火場へ命を投げ捨てた時の、ヒリつく感覚。

――なぜそんなときのことを、今、こんな他愛ない会話の中で思い出したのだろう。

男の方へ、視線を戻す。

「……昔はさ、戦うのが楽しかったんだよ。だけど途中から、金でしか、重さを測れなくなってさ。最近じゃもう、金もらっても空っぽで、がらんどうになっちまってさ。困るよ、本当に。一度濁ったらもう、戻らないんだろうな、こういうのは」

語りながらも、身体にわずかに緊張が戻っている。
この男は、何者なのだろう。

好奇心ではなく、危機管理能力の部分が、警鐘を鳴らし始めていた。

アスベル > 「好敵手?いや、違うな。あれは根本的に何かが違う。
ま、確かにやり合って楽しくはあったかもしれねぇが」

そう昔の話ではない、むしろ最近の話。
この男がそうも言う相手というのはどんな存在なのか、そう思わせるかもしれないが。
しかし、それでも女がいう通りに楽しかった事は一応は認めはして。
そこで自分の言葉は一区切りとする様に、煙を大きく吐いてみせる。

そして、女の語りに静かに耳を傾けはするも。

「闘いの中の昂ぶりってもんはな、どんだけ経ったって消せやしねぇ。
お前が今そう思ってんのは、そんな相手に出会う機会がなかなか見付かりゃしねぇからだ。
それでもいつか、そんな相手と出会ったりすりゃあ、絶対ぇに戻るだろうよ。
……それは、まさに今かもしれねぇな」

そんな言葉と共に背を預けていた壁から離れれば、ゆっくりと女へと歩み寄る。
間近へと寄る前に女が何らかの行動を取れたなら、それならそれで何かしら対応をするのだが。
自分の接近を許す、何も出来ずに後退ったりしたならば追い詰めて、その腰に腕を回し抱き寄せてみようか。

アライダ > 闘いの昂ぶりは消せない。

その言葉に、少しだけ目を見開く。
自分の中にもまだ、火が残っているだろうか。
戦禍の中、同志たちとともに駆け抜けた時間が、瞼の裏にまだ、焼き付いているのだろうか。
まだ。理屈や打算抜きで、本能だけで、戦えるだろうか。

そんなことを考えていたせいで、出遅れる。
しなやかな筋肉と、女の丸みを十分に帯びた身体は、たやすく男の腕の中に抱き寄せられただろう。

ハッとして、男を見上げる。ゆっくりと手を伸ばして、相手の頬を撫でてみる。
「……アンタの名前。もしかして、アスベルだったりするのか? だとしたら、悪い冗談だ。……いや、これは、栄誉かもしれない」
自分の唇から、ゆっくりとタバコを抜いた。
眠気も、気だるさも、すでに醒めている。

アスベル > それは本音。
長い時間を魔王として生き、まともな相手もなかなか見付からなくなった自分が。
ここ最近その昂ぶりを取り戻す出来事があったからだ。

女にも思うところがあったのだろう。
ゆっくりとした動きにも関わらず、反応が遅れその身体は自分の腕の中に収められた。
こうして間近で良く見れば、少なからず興味の惹かれるもの。
女もそうだろうかは分からないが、拒まず逃げず、自分の頬に触れてくる。

「さてな、もしかしたら別人で、この流れを利用してその名を語ってるだけかもしれねぇぞ?
それが冗談でも真実でも、分かる事は一つだ。
興が乗った、俺はお前を犯す、抵抗したいならしても良いぜ?」

唇が笑みの形を作れば、きっぱりとそれを言い放ち。
まずは、その言葉を聞いた女の反応を改めて確かめる。
もっとも、どんな反応を女が示そうとも、これからやる事は変わらないのだが。

ご案内:「タナール砦」からアライダさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」からアスベルさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」にサタナキアさんが現れました。
サタナキア > 醜悪な姿の男は砦の高所で、獲物となる雌を魔道水晶を手に探している。
水晶は一瞥すれば砦全域を見渡せる程の優れもの。
自らの手に堕ち隷属する雌を求めるこの男は、サタナキアという魔王。

自分の欲望をそそられる雌であれば、それが人間であっても、魔族であっても。
或いはそれ以外であっても良かった。

ご案内:「タナール砦」からサタナキアさんが去りました。