2021/06/05 のログ
ジギィ > やだあ、カワイー
と言葉にまでは出さない。
少年の大人びた…を聊か通り越して高慢な態度は
身分とかをあんまり鑑みないこのエルフに取っては、背伸びしたがっている不良息子にしか見えないらしい。

「やだあ、知らないの?
 愛の力ってすごいのよー」

戦場の砦の中には不似合いに呑気な黄色い声を上げて、ちょっとかわいそう、なんて視線で一瞬彼を見たりする。
また大人びた態度でこちらをやれやれと見て、溜息吐こうとする態度にあははっと笑って
伸ばした両手で捉えた獲物を存分にわしわしと撫でてあげる。

やだあ、髪もサラサラー
という声も心に押しとどめて。

「ん――命の恩人?
 助かったのは本当だってば。あのまま独りだったら、無駄にビクビクしながら登らなきゃいけなかったからねー」

わしわししていた手を止めると、おもむろに少年の額に軽くキスして
幸運のおまじない、等と言ってまた笑って撫でてから漸くと少年を開放する。

「でもゴーレム連れて来るなんて度胸あるねえ。
 下手したら魔族側に操り返されたりしない?」

エルフは未だロープを持っているであろう甲冑騎士に視線を転じる。
小さく首を傾げると

「近寄っていい?解体したりしないから。」

と少年に断りを。

ギュンター・ホーレルヴァッハ >  
「その様な不確実なものに頼って戦争が出来るものか。
全く…女というものはこうも姦しいものなのかね」

じめじめとした地下室が何だか違う部屋に思える。
何だか抵抗する気も失せたので、頭も髪の毛も撫でられるに任せた儘。
そんな主の姿を見つめる騎士、もといゴーレムは意志も感情も無い筈なのに何だか遠い目をしている――様にも見えた。

「……いや、まあ。うん。それで良い。
私も、こんなところで身分差を押し出したくはない。
ちょっと喧しい兵士を助けてしまったのだと、諦める事にしよう」

額に柔らかな感触。そして、幸運のおまじないだと告げる彼女。
その一連の動作を何とも複雑な表情――王族としての少年と、年相応の少年の感情が入り混じった様な――で見つめた後
今度こそ深い溜息を吐き出した。

「……ん?ああ、そういう輩や魔族もいないことはないが…」

と、そんな感情を振り払う様に此方もゴーレムに視線を向ける。

「私の召喚出来る個数に比べれば、一体や二体奪われたところで、というのもあるし。そもそもそういった手合いは術式を完成させる前に葬っている。
……近寄るのは構わんが、別に面白い事は無いとは思うがね」

彼女の言葉に応えながら、小さく首を傾げてみせるだろう。

ご案内:「タナール砦」からギュンター・ホーレルヴァッハさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」にギュンター・ホーレルヴァッハさんが現れました。
ジギィ > 「奇跡っていうのはそういう所から生まれるんだよー
 不確実上等!」

何といわれようと上機嫌に笑って拳を挙げて見せる。
多分これも溜息の対象だが、少年のその様も女エルフが楽しんでいるのは秘密だ。

「へえー結構沢山操れるんだ。やるじゃん。
 でもだめだよ、大事にしてあげなきゃー」

少年の返答にお説教めいた言葉を返しつつ、了承をえたことで佇む騎士へと近寄る。
何となく、そおっと忍び足で近寄って目の前まで来て
これまたそおっと右手を伸ばして――――

「――ーえいっ!」

ぱかん!とその面を上げてみる。
空っぽなら盛大にガッカリ。
中身に顔があったら、それがどんなものだろうと
「いよっ!男前!イケメン!」
とか言うつもり。

勿論、本当にイケメンだったら声はかなり黄色くなるだろう。

ギュンター・ホーレルヴァッハ >  
「奇跡を否定するつもりはないがね。
奇跡がある事前提で行動するわけにもいかぬだろう」

まあ、奇跡という名の低確率の幸運を否定はしないものの。
神を信じてはいるが信仰してはいない少年にとって、奇跡だの運命だのという言葉はお気に召さないらしい。

「……消耗品を大事にしても仕方ないと思うんだが。
ましてコイツ等には、感情も理性も存在し得ぬのに」

ゴーレムに其処まで感情移入するものだろうか、と怪訝そうな表情。
ペットか何かだと思っているのだろうかと首を傾げるばかり。

さて、そんなやり取りの最中。
彼女が近づいても、ロープを握った儘の騎士はピクリとも動かない。
"そう命じられている"と言わんばかり。彫像の様に沈黙した儘。
それ故に、面を上げられても身動ぎせず――

「……私のゴーレムは、素材から全て魔力を物質に変換させたものだ。一から制作したり、素材に核を埋め込んでいる訳では無い。
だから言っただろう。面白いものなどない、と」

鎧の中にあったものは、不定形に蠢く魔力の塊。
スライム、というよりも粘度に近いだろうか。人口の筋肉や関節を再現した魔力だったものが、ぎっしりと詰まっている。
そんな騎士を模したゴーレムの面の中は…つまりのっぺらぼう。
ぎっちりとマネキンの頭が詰まっているかのような様が、彼女の視界に拡がるだろうか。

ジギィ > 「そうだなー、確かに前提にはないけど、あったら楽しいじゃない?おまけみたいなもんだよ」

女エルフの呑気な言葉は若干少年と行違う。
エルフにとって奇跡は精霊のきまぐれ。必ずあるけれど、尻尾を捕まえるのは至難の業。

「モノに思いを込めるって大事よー?
 …たとえ消耗品でも、感情も理性もなくても、世の中のものはぜーんぶ円環で繋がってるから、形は違ってもいつかまた出会っちゃうわけよ」

少年の怪訝な表情に対して、ふっふっふ、と含み笑いを返す。軽口めいた口調だけれども、視線には一種の自愛のようなものをこめて少年を見る。
命も物もすべては廻る。
少年の生の中で廻らなくても、かならず。

さておき
スパンと上げた面をしげしげと覗き込んだ女エルフが発したのは

「…えっと、まあ、イケメンね?」

魔力は解る。ぎっしり詰まったそれはまあまあ、いやかなりすごい力量だとは思うけれども。
くるり、鎧騎士から少年を振り返ったエルフの表情は少々のふくれっ面だった。

「―――…ねえ、アナタ。音楽とか絵画苦手でしょう?
 美意識ちょっとヤバいと思う!」

そのままつかつかと少年の傍までくると、再び少年の頭からつま先までを眺めて、今度は何とエルフの方が溜息を。

「…ちょっと、来なさい。
 机と椅子のあるところで教えてあげる」

そう言い放って、少年の手を取ると、地上部の部屋へ向かって歩き始めるだろう。
途中ご丁寧に、鎧ゴーレムの手も取って。

二人連れのエルフは食堂に居座ると、少年に美術の講義を延々と始めるつもりだ。途中興が乗ったら歌い始めたりもするだろう。

少年がその講義前に逃げ出せたか、それともたっぷり付き合わされることになったか
それこそ奇跡とか、運命だとのいうものの巡り合わせ次第となるのだろう

ご案内:「タナール砦」からジギィさんが去りました。
ギュンター・ホーレルヴァッハ >  
「円環、ねえ。私が生産し、私が使用し、私の中で完結する召喚物も、そんな理の中に繋がっているのかね。
理解は出来るが、納得はしかねるな」

含み笑いを零す彼女に、呆れた様な視線。
自分が召喚した従属物。まして、自意識もないモノすら大事にしろ、という考えがどうにも理解出来ない様子。
それは少年の思想であったり、今迄の育ちであったり。
或いは単純に、彼女より人生経験。もとい年齢の低さによる理解度の低さなのかもしれないが。

だからこそ、面を上げた彼女が告げる言葉と、ふくれた頬に、尚の事不思議そうな表情を浮かべるばかり。

「……いや、まあ。確かに苦手な部類ではあるけど。
戦いで使うゴーレムの中身に芸術性が必要か?」

少年にとって、ゴーレムなど謂わば消耗品。
大量生産される兵器に過ぎない。
外見は兎も角、内面まで気にする事か、と呆れた様な視線を向けようとしたが――

「……おい、待て。別にそんな事しなくても…。
というか、私はそれなりに忙しい立場なんだが…!」

抗議の声も何のその。
結局少年は騎士と共に彼女に引き摺られるように地上へ。
其の侭、げんなりした顔で彼女の講義を受ける事になったのだろう。
拒否しなかったのは、結局彼女には悪意が無いから。曲がりなりにも此方を気遣ったものであれば…少年も、強く拒絶する事は出来なかった。

それ故、激しい戦闘を終えた後の砦の食堂で。
ハイエルフの女性に美術の講義を受ける王族の少年、という不可思議な構図が完成し、兵士達の多くは怪訝そうにそれを見つめるばかり。
少年の正体を知る軍の高官達は青くなったり赤くなったりしていたのだとか。
それを全て見ていたのは、彼女が連れ出した騎士のゴーレムだけ、だったのだが。

ご案内:「タナール砦」からギュンター・ホーレルヴァッハさんが去りました。