2021/06/04 のログ
ご案内:「タナール砦」にジギィさんが現れました。
ジギィ > 「…ぅ―――――…」

今は何時だろう?
砦の地下深くで、ひとり息を殺すエルフは暗闇で目を瞬く。
砦内で戦闘中老朽化した地下の床を踏み抜いて、運悪く古井戸と思しき深い穴へ落ち込んでそのまま気を失ってしまったらしい。
ジンジン痛む後頭部にやった手に濡れた感触はなく、少しほっとするやら間抜けさに歯噛みするやら。

身を起こすと身体が軋むように痛む。
頭上からうっすら零れて来る灯りは、古井戸の壁に貼りついたヒカリゴケと、地下の部屋のランプのものらしい。どちらも心もとなく揺らめいて、でもひとまず灯りのある事に女エルフはほっとしながら身体を改める。

武器も残っている、何処も折れてはいない。
あとは兎も角、此処を這いあがるだけだが…

(……どっちが勝ったかな)

耳に届くのは遠くのざわめきで、それがヒトのものかそれ以外のものかまでは解らない。
こんな地下深くでは気の良い精霊もいないから、最大限用心して脱出しなければ。

ご案内:「タナール砦」にギュンター・ホーレルヴァッハさんが現れました。
ギュンター・ホーレルヴァッハ >  
「――……誰かいるのか?」

そんな彼女が落ち込んだ古井戸の穴。言うなれば天蓋めいた光の差込口に、一瞬影が落ちる。
乏しい灯りの中で、彼女に声の主が判別出来るだろうか。
逆光…というほどの光量は無いにせよ、灯りを背にした声の主の姿は彼女からは判別しにくいかもしれない。

取り敢えず、その声質が年若い人間のものであること。
高い少年、或いは低音の女声の様なアルトテノールであることだけは、彼女にも明確な情報として伝わるだろうか。

「……今回の戦いは、既に我々人類が勝利した。
其処に居るのが魔族であるなら、素直に降伏する事をお勧めするがね」

そして、年若い声は年齢に見合わぬ傲慢な声色で、穴の底の彼女に声を投げかける。
どうやら、声の主からも彼女の姿ははっきりとは見えていない様子。

ジギィ > 取り敢えず壁に手がかりを探り始めたところで、頭上に気配を感じて反射的に身を屈める。光が溢れる方から暗闇へと見通すのは、魔族であれど難しい筈。

「……―――えーっと」

そうやってまた息を殺していて、聞こえてきたのは意外にも悪くない響きの声。その内容も然り、だったけれども一応罠の用心はして少し言葉を選ぶ間がある。

「……そう、勝ったの。よかったー
 ………そっちは何人?…ちょっと、脚くじいちゃって
 できれば引っ張り上げてもらいたいんだけど」

実際はもうすこし灯りさえあれば登るに難はないように思えたが
たとえ本当にヒトだとしても戦場をうろつく輩同士だ。出方を観察するに越したことは無い。
すこし哀れっぽいような声で上へ声をあげて、座り込んだまま出来る精一杯で手を振って見せる。

ギュンター・ホーレルヴァッハ >  
「……ふむ」

彼女に投げかけられる声は、思案を含ませる様な声。
暫し間が空いた後、するすると彼女の下に降ろされるのは、御丁寧に握る為の結び目が作られたロープ。

「それに捕まる体力は残っているか?残っているのなら此方で引き上げる。
捕まる体力が残っていないのなら、すまないがそこらに転がってるバケツを降ろすから、それに座ってくれれば引き上げる。
何方でも構わないし、恥ずかしがる必要も無い。
どうせ、此処にいるのは私だけだからな」

と、ロープと共に投げかけられるのは、そんな答えだった。

ジギィ > さてどうくるか。
伺いながらも手は短剣の塚に一応触れていた女エルフは、目の前に降りてきたものを見て薄闇で目を瞬く。
ロープだ。しかも丁寧に結び目まである。
触れて確かめながら上から更に降って来る声を聞いて、わるいことしちゃったかなあ、と反対の手で後頭部を掻く。

「…まーべつに、裸ってわけじゃないから恥ずかしくはないけど。
 ありがと!端はどっかに結んである?
 私結構重いからね!」

親切な女性を勝手に脳裏に浮かべながら上を向かって声を返す。
そうしてその声の響きが井戸内から消える前
くん、とロープが一瞬強く引かれて
その後には軽く壁と蹴る音と共にロープがたるむ。

ふた呼吸もしない内にロープ片手に穴から跳び上がって来る女エルフは
少年がロープの引きに対応できていれば、間近に対面するように目の前に着地するはず―――若草色の瞳を真ん丸に開いて。

ギュンター・ホーレルヴァッハ >  
古井戸から身軽に飛び上がった彼女の眼前に現れたのは
奇妙…というより少し不思議な光景だったかもしれない。
彼女が握り締め、強く引いたロープの先を握っているのは身長2mはあろうかという甲冑の騎士。
天井の低い地下室で居心地悪そうにロープを握り締め、身動ぎ一つしないソレには、意志や感情といった類のモノは感じられない。
ハイエルフである彼女ならば、その騎士が所謂『ゴーレム』の類に近いものであることが分かるだろうか。

そして、彼女に声を投げかけたヒト族。
つい先程まで戦場だった砦に似合わぬ豪奢な礼服と、眩く輝く豪奢な筒状の杖を手に持った少年の姿があった。
突然、目の前に文字通り"跳んで"上がってきた彼女の姿に、驚いた様な表情を浮かべた儘、見つめていた。

「……ロープは要らなかったのではないかね?
まあ、無事であるなら何よりだが。
脚を挫いている、と言っていたな。生憎手持ちはこれしかないが、飲んでおくと良い」

と、懐から取り出した小さなガラス瓶。
中に入っているのは所謂ポーションの類。それも随分高価なもの。
捻挫や打撲に使うには些か勿体無いと言える値のソレが、ずい、と彼女に差し出された。

ジギィ > すとん、と降りるまでに、甲冑の騎士と少年とを視線が2往復。
下り立った後エルフは再度甲冑騎士を見て
手元のロープを見て、ありがと!とばかりに反対の手を上げて見せてから、漸く目の前の少年ににんまりと笑って見せる。

「バレた?
 いやほら、ヒトの親切に縋れる機会ってあんまりないから、いい機会だと思って。
 ありがと!お陰様で無事……」

言いながらたっぷり時間をかけて一往復、少年を転変からつま先まで眺める。腰に手を当てて身を乗り出しながらだから、少年に覆いかぶさらんばかりだ。

「ん―…
 ああ!ありがと。キミの優しさがおねーさんの傷まで癒してくれたみたいよ」

少年の高価な衣装に、差し出された見た目から高価なポーション。

(……魔力の強い権力者の子が、特殊不良息子化したってかんじ?)

ははーん、と訳知り顔に笑った後、おもむろに少年の頭をなでなでしようと手を伸ばした。
両手で。

ギュンター・ホーレルヴァッハ >  
「別に親切などではない。自軍の兵が負傷しているなら、救出するのは当然の事だ。
見捨てて戦力が下がるよりも有用……?」

フン、と彼女に見せるのは高慢な態度。
年齢に見合わぬ態度なのに、妙にこなれて…というよりも自然に見えるのは、普段からそういう態度なのだろう。
しかしそれは、此方をじっくりと眺める彼女の視線と仕草に中断される事になる。
高慢な表情から転じるのは、怪訝と困惑さが入り混じったもの。

「………私を眺めて何か面白い事でもあるかね?
それと、感情で傷が治癒することはない。神官だの治癒士ならまだしも、私はそういった類ではないからな」

何なんだ全く、と言わんばかりの視線。
とはいえまあ、彼女に悪意がある訳でもないので咎める事も出来ずに小さな溜息を吐き出そうとして――

「わぷっ。な、なんだいきなり。というより、私を誰だと思っているっ!」

おもむろに伸ばされた手を避けられる程、武芸に秀でている訳でも無く。
伸ばされた両手が自身の頭を撫でれば、素っ頓狂な声と共に彼女を見上げるだろうか。