2021/04/24 のログ
ベルナデッタ > 「……あ」

足跡を辿っていくと、ベルナデッタは川に出くわした。
川の中を上るか下るかしたのだろうか、対岸に足跡は見つからない。

「うーん、これじゃ追えませんね…」

周囲を見れば、日差しも落ちてきている。
これ以上調査を続けて遭難するのも避けたい。
また後日、新しい調査方針を考えるべきだろう。

「帰りますか…」

ベルナデッタは踵を返すと、タナール砦への道を進んだ。

ご案内:「タナール砦」からベルナデッタさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」にヴェルムさんが現れました。
ヴェルム > ここ最近の王国は控えめに言っても落ち着いている。
いや主力の騎士団たちにとってはそうではないのかもしれないが、この十三師団に至ってはごくごく平素な業務が続いていた。
今回のタナール砦攻略も定期的なルーティンワークの一つ。
多くの者がそう捉えていたのだが違った。

魔族軍に占拠された砦に侵攻を開始してから30分も経過していない…が、既に大勢は決しているような状況。
十三師団に人的被害の類は一切なく、砦は3体の『ゴーレム』によって既に蹂躙し尽くされているのだ。

王国の技術部が開発したこのゴーレムは、以前国内に出現したものを研究応用したものらしく、今回の奪還任務に際しデモンストレーションを兼ねた実戦テストを行え…というのが我々の仕事。
最も、こういった手合いがどこまで使えるのか半信半疑な我々は、この3m大の中型ゴーレム3機を前衛として投入し、後続の歩兵戦力によって勝負を決める手はずだった。

『蹂躙とはまさにこのことですね』

傍らの部下の一人がそう声をかける。
実際その通りで、投入したゴーレムは魔族軍の魔法攻撃も物理攻撃も物ともせず、装備した大槍で敵を薙ぎ払い、飛行する敵には魔力による砲撃で撃ち落とし、彼らでは手の付けられない様相。
技術革命と言わざるを得ない戦果を見せるゴーレムは、既に敗走を始めている魔族軍への追撃すら怠らず、砦屋上から容赦の無い魔法による砲撃が行われている。

「一応、国内からは出ないようには調整されているらしいな」

こういった兵器のテストをするのは初めてではない。
以前にはこのタナールで毒ガスを用いた攻撃をしたこともある…それもまた命令によるものであるが、こうも無抵抗の相手を容赦なく攻撃し続けられるのもまた感情の無い機械だからこそ。
頼もしくとも恐ろしいその性能に、犠牲なく砦を占拠できても部下たちの面持ちは勝利に喜び満ちたものではなかった。

ご案内:「タナール砦」にソラムさんが現れました。
ヴェルム > 魔族軍が一定の距離まで離れたところで、ゴーレムはその攻撃を止めて待機状態となった。

「…どうだった?」

師団長がそう問うと、空から羽を生やしたヒト…ではなく鳥人の娘が羽をはためかせ降りてくる。

『だいたい3000ってとこかな、遠くなればなるほど当たってないね』

彼女が言っているのはゴーレムの射程だ。
魔導機械が故に人よりも良い目を持っているのは確かだが、精度についてはまだまだ改良の余地があるらしい。
だが強度については目を見張るものがある、事実このゴーレムらに損傷らしい傷はほとんど付いていないのだ。
オーガの男がその装甲をゴンゴンと叩いてみるが、ゴーレムはびくともしない。

『コレが量産された暁には兵士が大量リストラされちまうぜ』

誰かが冗談めかして言うが笑えない話だ、特に彼らのような亜人種、魔族、ミレー族、そして師団長含めた訳アリ兵士で構成された、多種族のごった煮状態のこの師団にとってはいの一番に首を斬られてしまいそうだ。
王国のこういった魔導兵器の製造方法について考えれば、ミレーたちがより難儀な心持なのは仕方のないことだろうが。

「ふう…それじゃあ後続部隊が来るまでに砦の片付けと修繕だ。
それとゴーレムはすぐに隠せ、誰にも見られるな…味方にもね」

一応試作品で機密情報の塊、たとえ味方兵士であったとしてもだ。
それは任務の条件にも含まれていたことだ。

ソラム > 「......んぁ?」

砦の最奥部にある裏門の上で寝っ転がり、腑抜けた声をあげるのは、14歳程の小柄な体格の少女。
黒いコンバットスーツの上に群青色のロングコートを羽織った少女だった。
白銀の髪を背中まで伸ばし、血よりも濃い真紅の瞳を持つ顔を砦の内側へと向けると、砦の屋上から砲撃する3メートル程の巨人らしきモノが3体佇んでいた。

「何あれ。昔に見た気がするけど初めて見るな______」

一人でそんなことを言っていると、音速の域まで加速された砲撃が彼女の上半身に当たり、巻き起こった煙の中でその上半身をグラリと後ろへ倒していくが、あと少しでバランスを崩す所で静止し、目立った外傷が見当たらないまま彼女は再び上半身を起こすだろうか。

ヴェルム > 『誰かいる!』
『なぜあんなところに!?』

誰かが声を上げれば裏門の屋上に佇む人影、子供だろうか。
こんなところに普通の人間の子供がいるはずもなく、兵たちは臨戦態勢に入るが、ゴーレムは待機状態を維持したまま。
仕様書によれば、敵性魔族に反応を示すとあるが…

「あの子は魔族ではない?」
『違うと思います』

部下の魔族に問いかけて、すぐに答えが返ってくる。
まだ正確なことがわかった段階ではないが、少なくとも彼女の状態とその周囲の有様を見る限り、ゴーレムの砲撃が命中してしまったらしいことは事実だろう。
それを受けて傷一つなく立っていることも含め…着衣が無事かどうかはともかく。
彼女が何者であれ反撃をしてくる可能性もある以上、部下たちは指示が無くとも臨戦態勢を取る。
ここは先ほどまで魔族軍が支配していて、さらに今まで派手な戦闘が繰り広げられていたのだ。
魔族軍の援軍、協力者…と考えてしまうのも無理はなく。

「…君は魔族軍の者か?」

門の上で寝ていただけなんて思いもしないので、警戒心を露わにしつつ問いかけよう。
場合によってはゴーレムを動かす必要があるかもしれない。

ソラム > 「危ない危ない。あと少しで丸焦げになっちゃう所だった」

着ていた服が焦げていないことを確認すると、話しかけてきた男やその後ろの人達に視線を向けると、ついさっき裏門から逃げていった腰抜けのことかと結論づけ、

「半分YES、半分NO、だね」

そう答えるだろうか。
実際、暇潰しで此処に居座っているだけだしね、と彼女は思っているが、そんな考えなど誰にもわかる筈がないだろう。

「そう言う貴方達は?砦の奪還をしに来たように見えるけど______」

話を切り替えるように彼女は奥に視線を向け、自分を砲撃したのはどいつかなと思いつつ視線を通すだろうか。

ヴェルム > 話しかけた結果、彼女は敵対的行動を取ってこなかった。
話の内容次第でどうなるかわからないが。

『半分ってのは…雇われってことか?』
『魔族軍がそんなことするか?』

「…その通りだ、我々は王国軍第十三師団、師団長ヴェルム・アーキネクトだ。
我々は既に砦を占拠、掌握しており、これ以上の戦闘を望まない。
君に敵対意思が無いことを確認したい」

師団長を名乗る特徴の無い男がさらに声を掛ける。
せっかく被害無しで砦を占拠したのだ、話し合いで解決できるならそうしたほうが賢明。
だが、彼女の視線が彼らの奥を見るようなものと感じると、とっさにゴーレムに命令を下す。
すると待機状態であったゴーレムは踵を返し、砦内部へと戻っていこうか。
命令通りゴーレムを確認されるわけにはいかないし、面倒ごとを避けたくもあった。
攻撃が命中したことは明らかなので、何か要求をしてくることは覚悟しているが。

ソラム > 「うんと、ヴェルムさん、ね」

踵を返して戻っていった鉄っぽい巨人を一瞬ながらも視認した少女は、

「______魔族と戦闘していたって言っていたけど、此処まで無傷では来られないと思うのだけれど」

軍の人達の疲労が全く無いことに疑問を覚え、ヴェルムへと問いかけるだろうか。
彼女の隣には彼女のモノと思われる大きなバスタードソードがあり、いざ戦闘になればすぐ取れる位置に突き立てられている。