2021/02/01 のログ
ご案内:「タナール砦」に影時さんが現れました。
ご案内:「タナール砦」にトルナードさんが現れました。
トルナード > 【同時入室失礼しました;】
ご案内:「タナール砦」からトルナードさんが去りました。
影時 > 全く――ご苦労なことだ。

今宵の砦の守備はヒトの側だが、どうにも人手が足りないらしい。
飽きもしない輪舞の如き攻守の攻防が明けてすぐとなれば、正規兵が揃わない。
道理ではある。だが、だからと言ってその不足を金で補うというのも正しくはあり、泥沼であろう。

が、そんな泥沼に好んで混じろうとする者もまた、どうかしているという謗りを受けるべきか。
まして斯様な泥沼に悦する者となれば、大概だ。

「――――」

夜天を焼くように、焦がすように火の手が上がる。
投げ掛けられた火矢や火炎魔術により、石造りではない仮設の施設が燃える。
砦の壁を挟んで、魔族の国側に仮設された支城のようなものだ。
どうやら、少しでも護りを固めようとしたのが、「向こう側」のものには面白く無かったらしい。
だが、ある種捨て石のような仮設のものにも意味はあった。少なくとも、向こう側の進行の勢いをコントロールするという意味では。

「……お陰さんで、こぉんなに、良いものを揃えるに困らねぇとはなァ」

砦の壁に梯子をかけ、勢いよく登ってくる魔物の一体。その鼻先に何かを投じた者が嗤う。
紙を貼った球状の物体だ。其処から伸びる導火線には既に火が灯り、程なくして爆ぜる。
手投げ弾である。それを投じた姿は黒い外套を翻し、口元を覆ったいでたちで肩を震わせる。眼下に獲物は、尽きない。

影時 > こういった城攻めへの防衛策として、真っ先に上がるのは掻き集めた石や丸太、バリスタの類だ。
もっと手間がかかるものとなれば煮え湯や溶けた鉛を掛ける、というのもあるが、どれもこれも時間がかかる。
先日に砦を確保した後、その手で支城を作らせた者はどうやら攻城戦における防衛策に長けていたらしい。
攻め手の攻勢の勢いを動かし、一時的でも和らげる、遅延させることが出来れば守る側の用意も整う。

面白いとばかりに、手持ちで持参した手投げ弾の類を惜しむことなく足元に転がし、周囲を見る。
砦の壁の上に陣取る者達は様々だ。装備の不揃い振りから察するに、ここは傭兵や冒険者が多く割り当てられている。
その様は、泣き喚きながら石を投げ落とす若兵が居れば、
嫁を得るだの、魔族の女を犯すんだ!と血気に逸るある種頭おかしいベテランまで、多様。

「犯すにゃイイが、縊り殺されンようになー。御同輩よ、と」

覆面の下で呆れつつ、爪先で足元の手投げ弾を蹴り上げて引っ掴む。氣力を僅かに走らせれば、導火線に直ぐ火が灯る。
作り貯めていた物は適宜使わねば、始末に困る。
投じ落とせば、齧った錬金術のレシピで火力を増した火薬が爆ぜ、混ぜ込んでいた金属の削り屑が鋭利な破片と化して濛々たる煙と共に敵を殺傷する。

嫁を殺す気か!という罵声が近くから響けば、肩を竦める。
御前の嫁はまだ居ないだろうに。……大丈夫かねと。内心で嘯き、と吐息を一つ。